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プロローグ ー過ちー
「ばかだ。僕はばかだ」
それを僕は、認めざるを得なかった。
なんて、酷く惨めで情けない心持ちになるのか。
平生の僕は、今の僕を憐れに思うのだろう。
実際、僕は以前、同じ言葉で今目の前に居る者を憐れんだ。
立場が逆転した現在、僕は敗者でしか無い。
己の意思に、敗けたのだ。
憐れだ、愚かだ。
色事にかまけていることに対しそう思っていたのは僕であり、こんなままならない状況に現を抜かすなど僕にはあり得てはならないはずであるのに。
俯き自分の履いている下駄の鼻緒を見つめ、どうしてこうなったのだろうと思案する。
とても苦しく、情けないことだった。
腑抜けた自分は余りにも見苦しく、馬鹿だ。
自分で認めた愚かな事実を、僕はこれから何度も噛み締めることになる。
それは、死ぬまで、いや、死して尚続くのだ。