第四話 姉ちゃんズは肉食系女子
三話と微妙に続いています。
「くりしゅねーたま、おかえりなしゃい」
「ただいま。わたくしのかわいいリーナ(ちゅ)」
「しあねーたま、おかえりなしゃい」
「ただいまリーナ。いい子にしてた?(ちゅ)」
姉ちゃんズは自分から私の身長まで屈んでくれる。
そして彼女達から私のほっぺにただいまのキスがくるのだ。
「わぁ~~本当に可愛い!ウサギさんだ~」
「ホント可愛いなぁ。シア達が自慢するのも頷けるよ」
「?????おにーたまたち、だえ?(訳:お兄様達、誰?)」
頭上からふってきた“変声期を過ぎたばかりの男の子”の声が二つ。
思わず見上げるとそこにいるのは姉ちゃんズと同じようなデザインの制服……何と白とブルーの上下で襟がセーラーカラーなんだよ?どこの水兵さんだ?……を着た色白のヤギ少年と褐色肌のヤギ少年で……
「あら?こんやくしゃのわたくしよりもいもうとなの?」
「まさか。僕の一番はいつだってクリスだよ?」
「うわきはゆるさなくてよ?」
「君の大切な妹君に挨拶しようとしてただけだよ?僕はシアしか愛せないんだから」
拗ねた様子の姉ちゃん達をそれぞれ抱っこして、ほっぺとか唇にちゅっちゅしてるよ。しかも二人同時に。
……ウチの玄関にバカップルが二組もいる。うっわーーーーーーーーーーっ!砂吐きそ………
小学生の低学年と高学年でゲロ甘トークかましてるし……この低年齢カップルはロミオとジュリエットも真っ青だね。
「あらごめんなさいリーナ。しょうかいするわ。わたくしのこんやくしゃ、チムールよ」
「よろしくね?未来の妹君」
チムール……確か中東でそんな名前の英雄がいたな。シルクロードあたりだっけ?
白ヤギさんがチムールくんね。はい。覚えました。
「リーナ。わたくしのこんやくしゃ、フョードルよ」
「よろしく」
フョードル……シア姉ちゃんのフィアンセは“大帝様”ですか……世界史の有名人オンパレードだな。はい。黒ヤギさんのフョードルさんも覚えたよ?
「きいてちょうだい!リーナ、わたくし、うまれてはじめて“ひとめぼれ”というのをけいけんしましたの!」
「それが、ぐうぜんにもわたくしもクリスとおなじようなけいけんを。
しかも、ふたりどうじにしてしまったのですわ!」
ほう……二人同時に恋に落ちたと…?
「ほら、わたくしたちって、“このみ”や“せいかく”がおんなじじゃない?」
「そう。それで“おなじひと”に“こいしてしまったら”どうしようっておもっていたやさきに…」
「「この二人にであったんですの」」
なるほどね……。って、事はこのヤギさん達は…
「「実は僕達も双子なんだ」」
はい。お約束ですね。
金髪の白ヤギさんがチムール義兄ちゃん……姉ちゃんの婚約者だから義兄ちゃんで良いよね?……で、黒髪の黒ヤギさんがフョードル義兄ちゃんね。
―――――――くれぐれも手紙を食べちゃダメだよ?
********
「彼等がクリス達の婚約者ねぇ……」
「いいんじゃね?俺らの後輩だし、二人ともサポート得意だし?」
「それに、あの二人に欠けてる要素を十分補える性格してるよね」
「「「俺は賛成!」」」
兄ちゃんズは全員一致で姉ちゃんズがいつの間にかしたらしい婚約を認めるらしい。
肉食女子に草食男子って組み合わせってよくあるよね……
「ね、にーたまたち?」
「「「ん?何?」」」
「こんやくちゃ(しゃ)って、いくちゅになったらできりゅの?(訳:婚約者っていくつになったら出来るの?)
ねーたまたちのよーにしょとーぶいちねんしぇいのとき?(姉様達のように初等部1年生の時?)」
結婚適齢期は向こうでいうところの平安貴族あたりを基準にすれば良いだろう…そう思って兄ちゃんズに質問したのだが…
「「「ダメ!早すぎる!」」」
「???」
「クリス達は、彼女達の性格からして自分達で見つけてくるだろうと父上が言ったから、校内で捕まえてきたんだ」
うわぁ~~齢6歳にして自分の伴侶を見つけてしまうって……姉ちゃん達さすが肉食系だな……しかも義兄ちゃん達草食系だし?こりゃあカカア天下決定だな。
「「「リーナの結婚相手は俺が認めたヤツでないと絶対に許さん!!(アレク王子以外はっ!!)」」」
ほら来たお約束。
大丈夫ですよ~~。“向こう”でだって結婚どころか彼氏すらいなかったんですから!
「にーたまたち、あたち、ねーたまたちほどもてないでしゅよ?(訳:兄様達、私、姉様達程もてないですよ?)」
「「「リーナ……」」」
「じゅっとにーたまたちといっちょにいましゅ(訳:ずっと兄様達と一緒にいます)
兄ちゃんズの顔を見ながらにっこり笑顔でそう言うと…
「「「リーナお前!!!」」」
叫ぶと同時に鼻を押さえた兄ちゃんズだった。
……???どして?
三歳って喋れる子とそうでない子が分かれてくる時期ですよね。
次、リーナがちょこっとだけ成長します。