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短編コメディ

その思い出、買い取ります。

作者: 馬

穏やかな休日の午後。

商社に勤める俺は、お客と仕入先の間に挟まれ、

ヘーコラする毎日を送っていた。


数週間前までは違った。

俺には彼女がいた。

週末はいつもデート。

映画を見に行ったり、遊園地にいったり、水族館にいったり、旅行の計画を立てたり・・・。

夜には交代で手料理なんかも振舞ってた。

ナツキ・・・俺の初恋の・・・そして初めての女性。


恋心を拭い去れないまま過ごす日々。

ボーッとするのが殆ど。

二人の写真を時折ながめては、物思いにふける。

そんなある日・・・。


ピンポーン!

ピンポーン!

ピンポーン!


・・・ん?なんだよ、勧誘か?N○Kか?


携帯電話全盛のこのご時勢にアポイント無しで、自宅に来るやつなんざ居ない。

いちいち相手なんかしてられるかよ。


ピンポーン!

ピンポーン!

ピンポーン!ピンポーン!!


っだよ!うるせぇな!

早く帰りやがれ!


「ショウさーーん!! ミズタニショウさーーん!!」


えぇ?名前知ってる?

うちに表札なんかもちろん無い。

しかも女の声だな・・・。


でも、待てよ。

ノコノコ出ていって、話を聞こうものなら高い壷だの、フトンだの買わされるんだろ、どうせw


ピンポーン!

ピンポーン!


「居るの判ってるんですよー! 出てきてくださーい!」


気持ちわるっ・・・借金取りかよ?!


ピンポーン!

ピンポーン!


「ナツキの友達なんだけどーー!!!」


!!!


え???


ナツキの友達?



「ちょ・・・ちょっと待って! 今開けるから!!」


俺が最も愛した女性ナツキ・・・いや、今もなお・・・。

その友達ときたら、出ないわけにはいかん!!!


ガチャ


「ふぅ・・・やっと開けてくれましたねぇ。 ほんっとにもぅ」


黒いパンツスーツ姿で、長い髪を後ろで束ねた女性がそこにいた。

歳は24、25・・・ぐらいか

顔はまぁそこそこかな。


「いやいや、ごめんごめん。 今パジャマだったから、着替えてたんだよ。・・・で?何の用?」


俺の胸は期待感でいっぱいだ。


「えーーーっと、まずは自己紹介からね。」


「はい? あぁ、はい。」


「私はこういうものです。」


「メモリークラブ?バイヤー? くるま・・・ジュン?」


「はい、私メモリークラブのバイヤーをさせて頂いております、とどろき ジュンと申します。」


「あ・・・トドロキね・・はい。で、そのトドロキさんが何の用で?」


「貴方の記憶を買取に伺いました」


・・・ふむ。

変な女だ。

ナツキの友達というのは疑うべきだろうか。


「ええっと、意味がわかりません。」


「貴方とナツキさんの交際記憶を買い取りたいのですが・・・」


「もっと意味がわかりません」


「査定させていただきますと・・・50万円になりますが・・・いかがでしょうか?」


「ご・・・50万??」

なんだなんだ? いきなり金の話を?


「先方から強い希望がありまして・・・いかがでしょうか?」


「ちょ・・・ちょっと待って! 俺の記憶を買うわけ?」


「はい、おっしゃる通りです」


淡々と言いやがって。

「どうなるの?それって?」


「貴方とナツキさんの思い出は無くなります、はい。」


「・・・そ・・・それはちょっとキツイな。ハハ・・・ハハ・・」


泣けてくる・・・そればっかりは。


「他の思い出を買い取ってよ?」

要らない思い出はいっぱいあるもんだ。


「と、いいますと?」


「えーーっと、中学の時に振られた事とか?」


「少々お待ち下さい・・・」


「え?買い取れるの?」


トドロキさんはカバンからパソコンを取り出し、

何やら打ち込んでいる・・・。


「14歳の夏・・・お相手は渋谷クミコさんでよろしいでしょうか?」


「ええっ?!そんな事まで分かるの??」


「はい、全て把握しております」

怖っ・・・怖いな、それ。


「で・・・でも、渋谷さんへの告白は忘れたくないんだけど・・・」


「こちらも先方から強い希望が出ておりまして・・・1万円になります」


「い・・・一万円か・・・・」

でも、さっきから先方、先方って?だれだ?


「あのー永田ユメコさんへの告白を買い取って欲しいだけど・・・」

永田・・・永田ユメコ。

俺の中学時代での最大の汚点。

この子に告白した時点で俺の青春は変わってしまった。

そう・・・罰ゲームで。

そして、永田は俺の告白にOKを出し、俺の彼女だと言い回った。

それさえ無ければ、渋谷さんにだって、長野さんにだって、相川さんにだって振られなかったはず・・・だ!


「そちらは買い取りできません」

ええっ?!

先方はどうした先方は?!

「なんでだよ!!!」

「買い手が見当たりませんので・・・申し訳ございません」


「変わりにといってはなんですが・・・・長野さんへの告白は2万円で買い取り可能です。」

その差は何なんだ・・・・

「相川さんへの告白は?」

「1000円です」


ど・・・どういう事だ?!


「高校時代のもあるか?」


「はい、もちろんありますよ。 ええっと告白だけで・・・12件ですね」

合ってる・・・バッチリ合ってる・・・。


「すげぇな・・・怖い・・・怖いよメモリークラブ・・・」


「ええっと、高校時代告白セット12件で一式 1万8千円になりますね」


安っ!!

「安すぎるだろ!!それ!!」


「だ・・・大学時代は?」


「5件ですね・・・セットで390円になります」


マッ○ランチか!俺の思い出は!!


「なんか・・・寂しくなってきたよ・・・俺」


「ええっと・・・お高い物をご希望でしたら・・・」

あぁ・・・慰めてくれ。

高い、高価な思い出を教えてくれ・・・。


「未来のものでもよろしいでしょうか?」


「ええっ?!未来?!」

そんなものもわかるのか?


「はい、未来です。 プロポーズが10件ありますね。」


「ちょ・・・ちょっと待て・・・プロポーズ10件? って未来に?」


「はい、10件あります。未来なので10倍の査定が付きますが・・・」


「で・・・でも売ったらどうなるのそれ?」


「貴方の未来が消滅しますね、プロポーズの。」

いやいやいや・・・・それはヤバイっしょ。


「セットで200万円になります」

おおっ!!高い!!

って、ダメだ・・・未来なんて切り売りしてしまっては・・・。


「いかがなさいますか??」


「嫌です、結婚したいです。」


「もっと被害の少なくて、高いものって無いの???」


「わがままですね・・・ショウさん」

ほっといてくれ・・・。


「ええっと・・・、 あ!これがありました!衝撃の告白 2件!!」

なんじゃそら?!

「衝撃の告白?!」


「内容は売ると同意した方にしかお伝えできません」

もったいつけるなーー!そこはーー!!


「いくらなの??」


「1件目は300万円ですね。2件目は500万円です。」


高---い! 衝撃の告白たかーーーい!!

これは・・・ちょっと売ってもいいかもしれん・・・。


「トドロキさん・・・害は少ないんだよね?」


「はい、1件目なんか全くの無害ですよ」


「う・・・売っちゃおうかな?」

被害無しで、300万とは良い話じゃないか?!


「ありがとうございます! 助かります!」


「え?なんで助かるの?」


「あ・・・え・・・ええっと、買い取り金額のノルマがありまして・・・そのつい・・・」


「ほえーー大変なんだねー」


「衝撃の告白 32歳の夏 お売りいただけますね?」


「32歳の夏なんだ・・・何があるんだろう・・・」


「お売りいただけますね?」


「え・・・あ・・・はい。いいでしょう!!!」


「ではこの契約書にサインをお願いします!」


トドロキさんは書類をそそくさと出し、俺にペンを握らせてきた。


言われるがままに俺も同意書にサインをした。


「ええっと事前にお金をお渡しいたします。 300万円です!」


「おおーー!!現金ですかーーい!」


「では内容をお話いたします」


「はい・・・」


「貴方は・・・貴方のご両親は・・・」


「え?・・・俺の話じゃないの?」


「最後まで聞いてくださいね。」


「あ・・・はい。」


「貴方のご両親は、本当の両親ではありません。 以上です!」


「ええーーーーーー!!!!! しかもそんだけーーー?!」


「では、これを吸ってください!」

トドロキさんはなにやらスプレーを取り出した。


「いやいや、ちょっと待って?! もっと情報をくれないと納得できないって!」


「問答無用!!」


シューーーーーー!!!









「あれ?なんの話だっけ?」


「ええっと・・・ナツキさんとの思い出をお売りいただけませんでしょうか?」


「あれ?そんな話だったっけ?っていうかそのお金と書類は何?」


「あ・・・えっと、売って頂くための資金と誓約書です!ナツキさんとの思い出を!!」


いやいや、お金じゃないだろ・・・そこは。

大事な・・・大切な俺の思い出だ


「先方の強い希望って・・・ナツキが言ってるのか?それ?」


「それはお答えできません」


いや、ナツキしかいないだろ?!


「こればっかりはお金じゃないんだ。 帰ってもらえるかな!!」

ったく!馬鹿な話だ!

ナツキもナツキだ!

俺の記憶から自分を消そうなんて・・・。

振られた上に、さらにそんな事までするか?!

こんな屈辱は初めてだ!

くそっ・・・初めての恋だったのに・・・。

こんな事があっていいのか?

くそっ!くそぉおぉぉーー!!


ええーーーい!不謹慎だ!無礼だ!

「もういい! トドロキさん!帰ってくれ!!」



「そこを何とか・・・300万円で!!!」



「はい、売ります」


俺の初恋は300人の福沢と化した。


シューーーーーーー・・・・










あれ?・・・えっと・・・俺は何やってたんだっけ?

んーーー思い出せない。

だれかと会っていたような・・・気がするが、気のせいか?

ん?なんだ、この写真立て・・・中身入れてなかったっけか?

まぁいいか、明日も仕事だし早く晩飯食って寝ようかな。

いい加減に飯作ってくれる彼女とか欲しいなーーー。

あーあー一生彼女無しなんて・・・。




ピンポーン!

ピンポーン!

ピンポーン!


・・・ん?なんだよ、勧誘か?N○Kか?

ピンポーン!

ピンポーン!

ピンポーン!ピンポーン!!



「ショウさーーん!! ミズタニショウさーーん!!」


えぇ?名前知ってる?

しかも女の声だな・・・。


でも、待てよ。

ノコノコ出ていって、話を聞こうものなら高い絵だの、浄水器だの買わされるんだろ、どうせw


ピンポーン!

ピンポーン!


「居るの判ってるんですよー! 出てきてくださーい!」


気持ちわるっ・・・借金取りかよ?!


ピンポーン!

ピンポーン!


「中学時代の渋谷クミコの友達なんだけどーー!!!」


笑うところの少ないコメディーになってしまいました。

世にも○妙な物語みたいな感じで仕上がりました。


もうちょっと主人公がお金に困ってる描写が必要だったかも。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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