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男子枠

作者: 平田智剛
掲載日:2026/10/31

 私は女性団体の記録係だった。会議はすべて録音した。


 都立高校入試で女子の合格者が少ないと、女たちが声を上げた。


「女子の定員を確保すべきです」


 男たちは反対した。


「同じ点なら、同じ扱いにすべきです。性別による優遇は不公平です」


 代表は答えた。


「女性には、進学の機会を奪われてきた歴史的背景があります」


 私は要望書に、男子にも同数の定員を設けると書き加えた。これなら公平だと思った。


 男女別定員制度ができた。


 数年後、女子の平均点が男子を上回った。同じ点で男子は合格し、女子は落ちるようになった。


 女たちは抗議した。


「同じ点なら、同じ扱いにすべきです。性別による優遇は不公平です」


 その晩、幹部だけの反省会で、代表は言った。


「男子の席まで保障したのが、間違いだったわね」


 私は、自分が書き加えた一行を見た。


 男女別定員制度は廃止された。


 今度は、理工系大学の女子合格者が少ないと、女たちが声を上げた。


 私は古い要望書の学校名を書き換え、あの一行を削った。


 大学に女子枠ができた。


 数年後、女子の合格者が半数を超え、女子枠は廃止された。さらに数年たつと、合格者の大半が女子になった。


 男たちが男子枠を求めた。


 代表は答えた。


「同じ点なら、同じ扱いにすべきです。性別による優遇は不公平です」


「女子枠はあったでしょう」


「あれには歴史的背景がありました。男性にはありません」


 私は団体を辞め、反省会の録音を公表した。今度こそ、同じ点なら同じ扱いになると思った。


〈男子の席まで保障したのが、間違いだったわね〉


 音声は、男たちの集会で繰り返し流された。


「男性には、進学の機会を奪われてきた歴史的背景があります」


 翌春、大学に男子枠ができた。


「歴史的背景って、便利な言葉だな」

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