男子枠
私は女性団体の記録係だった。会議はすべて録音した。
都立高校入試で女子の合格者が少ないと、女たちが声を上げた。
「女子の定員を確保すべきです」
男たちは反対した。
「同じ点なら、同じ扱いにすべきです。性別による優遇は不公平です」
代表は答えた。
「女性には、進学の機会を奪われてきた歴史的背景があります」
私は要望書に、男子にも同数の定員を設けると書き加えた。これなら公平だと思った。
男女別定員制度ができた。
数年後、女子の平均点が男子を上回った。同じ点で男子は合格し、女子は落ちるようになった。
女たちは抗議した。
「同じ点なら、同じ扱いにすべきです。性別による優遇は不公平です」
その晩、幹部だけの反省会で、代表は言った。
「男子の席まで保障したのが、間違いだったわね」
私は、自分が書き加えた一行を見た。
男女別定員制度は廃止された。
今度は、理工系大学の女子合格者が少ないと、女たちが声を上げた。
私は古い要望書の学校名を書き換え、あの一行を削った。
大学に女子枠ができた。
数年後、女子の合格者が半数を超え、女子枠は廃止された。さらに数年たつと、合格者の大半が女子になった。
男たちが男子枠を求めた。
代表は答えた。
「同じ点なら、同じ扱いにすべきです。性別による優遇は不公平です」
「女子枠はあったでしょう」
「あれには歴史的背景がありました。男性にはありません」
私は団体を辞め、反省会の録音を公表した。今度こそ、同じ点なら同じ扱いになると思った。
〈男子の席まで保障したのが、間違いだったわね〉
音声は、男たちの集会で繰り返し流された。
「男性には、進学の機会を奪われてきた歴史的背景があります」
翌春、大学に男子枠ができた。
「歴史的背景って、便利な言葉だな」




