ピンク髪のビルギット伯爵令嬢
異世界に転生したら、ピンク髪の伯爵令嬢ビルギットになってしまった。この異世界のピンク髪の女性は、ぶりっ子として見られて嫌われるらしい。
「ぶりっ子とは、男性受けを狙っている女性というイメージなのですが。しかし、ピンク髪の女性は、男性受けが飛び抜けて優れているのでしょうか。個人的には違うと思うのですけれど」
私はそんなことを呟いてしまう。前世の二次元イラストなどにおいて、ピンク髪女性キャラは、男性受けがそこそこよかった。でも、そこそこ止まりの人気に見えた。
男性受けがすごくいい女性キャラは、寒色系の髪が圧倒的に多かった気もする。あと、銀髪女性キャラ辺りも男性人気が結構高く見えた。もちろん、あくまで個人的偏見ではあるけれどね。
そう、ピンク髪女性キャラが男性人気ナンバーワンだった印象は、やっぱり私にはない。むしろ素朴な茶髪女性キャラとかの方がまだ、ピンク髪女性キャラよりは男性受けするイメージがある。
「なんか納得いきませんね。しかも、髪色を染めることは、この国の法律で禁止されています。生まれつきの髪色を維持しないと、親に無礼だからという法律らしいのですけれど。まずは髪色による偏見をなくしてから、髪染め禁止法を作ってほしいものです」
そう言いつつも、私はできる限りの努力をした。ピンク髪をまとめて、きっちりとしたシニヨンにしてみたし。髪飾りや帽子が許される場面なら、ピンク髪を積極的に隠した。
それでも、私のピンク髪に文句を言ってくる人は、結構多かった。特に子爵令嬢のフィーネがひどかった。
「ビルギット様ったら、今日もピンク髪がツヤツヤで美しいですわあ。ビルギット様はピンク髪を見せびらかして、男を誘惑しているのでしょうか。ピンク髪の女はビッチだってウワサ、やっぱり本当みたいですね。ビルギット様は伯爵令嬢のくせに、立派な売女気取りですかあ。すごいですわあ」
フィーネはそんなことを言ってくる。ちなみに、フィーネは茶髪で、ダウンスタイルの髪型だった。
「私はピンク髪をシニヨンにしていますよ。髪を下ろして見せびらかすなど、全くしておりません。髪を見せびらかす女性がビッチだとおっしゃるのなら、今のフィーネ様は魅力的すぎる姿なのでしょうね」
私は丁寧に嫌味を言っておいた。攻撃的すぎる言葉だったかもしれない。
でも、ひたすら文句を言ってくる相手には、多少反撃しておかないといけない。でないと、文句をどんどんエスカレートさせる人もいるからだ。
「ふん。私はビルギット様と違ってピンク髪じゃないので、私が髪を下ろしてもビッチじゃないんですよ。ビルギット様はピンク髪というだけで罪なんです。そう、ビルギット様の生きること自体が重罪です。ビルギット様なんて死んでしまえばいいんですよ」
フィーネがそう言い捨てて、華麗に立ち去ろうとした。すると、他の貴族達がヒソヒソと話し始めた。
「そう言われてみれば、ビルギット様の話も一理ありますね。フィーネ様の髪の方が、ぶりっ子で嫌な女性に見えます」
他の貴族達の小声を受けて、フィーネがブチ切れ出した。
「ふざけないでください。ピンク髪のビルギット様より、私の方がぶりっ子だなんて風評被害もいいところです。大体、女が男に媚びて、何が悪いんですか。女が男にツンツン冷たくしたら、『可愛げも愛想もない礼儀知らずの女』とか言ってくるくせにっ」
フィーネはそんなことを叫びだす。けれど、他の貴族達はますます冷たくなるばかりだった。
「ビルギット様をビッチ呼ばわりしたのは、フィーネ様でしょう。そんなフィーネ様が、男性に媚びて何が悪いとか言ってもねえ」
他の貴族達の声を受けて、フィーネがふるえ出す。そのふるえは怒りだろうか、それとも悲しみだろうか。
「私は悪くないんです。私はピンク髪じゃないので、私を批判しないでくださいよっ。ほら、ここにピンク髪のビルギット様がいるのですから、皆様はビルギット様のことを叩きましょうよっ」
フィーネが怒鳴りだす。そんなフィーネを見て、他貴族達はますます冷やかすのだった。
それから、貴族達から私に対する風当たりが、少しだけ弱まったように感じられた。私に対してピンク髪と罵る貴族は、かなり減った気がする。
そうやって過ごすうちに、私にプロポーズしてくれる男性が現れた。公爵家の出のオットマールだ。ちなみに、オットマールはとても美しい銀髪だった。
「ピンク髪について色々言われてもめげずに立ち向かう、ビルギット様の生き様に惚れました。どうか結婚してください」
オットマールはそんなことを言ってくる。オットマールの発言は嬉しいけれど、悩ましいなあ。
「ありがとうございます。しかし、オットマール様と私の子どもが産まれた場合、ピンク髪が遺伝してしまうかもしれません」
そのように伝えてみた。すると、オットマールがゆったりと微笑んだ。
「でしたら、僕がこの国を変えてみせましょう。ピンク髪への偏見をなくしてみせます」
オットマールがやけにはっきり言う。そんなオットマールを試してみたくなった。
「かしこまりました。オットマール様と結婚させてください」
そのように伝えて、私はオットマールと結ばれた。もちろん、私はオットマールのことをそこまで信用していなかった。
けれど、オットマールは裏で動き始めた。公爵家という高い地位を活かして、オットマールは法律を書き換え始めた。そして、生まれつきの髪色の批判を禁止する、なんて法律ができあがった。
オットマールが優しすぎて、私は感動してしまった。こんなオットマールと結婚して本当によかった。




