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英雄の杖を狼に  作者: 真っ逆
王都ハーヴェス編
6/9

魔術の勉強


図書館、それは様々な分野の本が数多く置かれてある場所。にんにくは、そこで魔術の勉強をしようとしている。


にんにく(この辺だったような……あったあった)


にんにくは『魔術大全』という本を手に取った。魔法の命中精度が極端に悪かったのが、この杖を手にした途端それが嘘かのように改善されており、その理由を知るために読むのだ。


ドラゴンの目に吸い込まれた水滴。ヘムロックの四肢を正確に捕らえた根。

自分の実力を「下の下」だと自覚しているにんにくにとって、それらは「たまたま」で片付けるにはあまりに不自然な精度だった。


本を開き、杖のことが書かれてあるページを探している。


にんにく(俺ほどなら魔法が目に映れば上等だろうよ…)


にんにく「どれどれ〜……杖の素材に使われている物質の純度が高いほどより安定した魔法を放てる…… これ木だぜ?」


にんにくは本を読み進めたが、アニスの杖や純度の高い木などの情報は見当たらなかった。


にんにく(分からないな…まぁいいや 魔法一覧読も)


魔法一覧と言っても、世間一般で広まっている魔法しか載っていない。誰かが個人的に作ったものや、国家機密のような特別な魔法は書かれていない。


にんにく(属性ごとに別れてるのか 水見てみるか…)


『《水属性》日常生活でも戦闘でも利用しやすい汎用性が強み。』


にんにく(汎用性!良い言葉だ さて、どんな魔法があるかね)


『[ぬるま湯]使用者にとって最も飲みやすい温度の軟水を出す魔法。』


『[びしゃびしゃ]使用者の上空から水を降らせる魔法。』


『[霧]小さな水の粒を一度に複数出す魔法。』


にんにく(どれもネーミングセンス終わってんな)


『[水蒸気爆発]水属性と炎属性の混合魔法。周囲を爆発させ、気温を上昇させる。』


にんにく(物騒だな〜…)


にんにくはページをパラパラめくり、火属性のページに入った。


『《火属性》日常生活でも戦闘でも利用しやすい汎用性が強み。』


にんにく「同じじゃねぇか …ネーミングセンスは大丈夫か?」


『[火炎(フレイム)]基礎的な火魔法。使用者は燃えない火を出す魔法。延焼した火には注意が必要。』


『[マッチ]草属性と土属性と火属性の混合魔法。火が着いた状態のマッチを作り出す。』


『[激辛]辛いものを食べた後に使うと火を吹ける魔法。辛さが収まると効果が無くなる。』


にんにく(イマイチパッとしねぇなぁ…)


そして、無属性のページに入った。


『《無属性》他属性の傾向がない余り物。』


にんにく(書き方どうにかならなかったのか…)


専門家や大衆向けというより、子供向けな本のようににんにくは感じた。


『[自然治癒力強化]対象の治癒力を強化する魔法。名前が長いので略されることが多い。』


にんにく(『活性』と同じじゃん こんな名前だったとはな)


『[バリアー]最も簡易的な防御魔法。攻撃を防ぐ盾や、一時的な壁として使える。反転魔法[バリアフリー]で無効化される。』


『[バリアフリー]反転魔法の一種。防御魔法[バリアー]を無効化する魔法。』


『[暴食魔]どんなでも食べてしまう魔獣を召喚する魔法。使用者の精密な調整が必要で、失敗すると使用者が食べられることもある。魂をも食べたという伝説がある。』


にんにく(『暴食魔』すげぇなこれ)


そんな魔法がズラっと並んでいる中、一つだけ最後のページに堂々と載っている魔法があった。


『[死者蘇生(リザレクション)]脳と心臓を元通り治し、脳幹の調整機能を無理やりハッキングして、止まった心臓に再始動の合図を送る魔法。魔族や人間などの知的生命体を五万体以上手に掛けると使用できるようになると言われている。六十代目ゼレニア国王のアスパラガスと英雄アニスのみ使用が確認されている。』


にんにく「……文字数多いわ」


めくったページを戻っていくと、ある魔法がにんにくの目に映った。


『[土人形(ゴーレム)]土のボディを持った人型のロボットや魔獣のこと。役割や用途に応じて大小様々なゴーレムが作られる。』


にんにく(ゴーレムかぁ〜…作ってみるか)


図書館から出て、魔術の稽古をしている原っぱへ向かった。


にんにく「さて、ゴーレムはどうやって作れるんだろうか いでよ!ゴーレム!」


ゴーレムは現れなかった。草原には静寂が走る。


にんにく「土のボディって書いてあったよな……土!出てこい!」


ドサッと乾いた土が降ってきた。風に吹かれるだけで簡単に崩れていく。


にんにく(これじゃ工作には使えないなぁ まぁいいや、水出すか)


杖の先から水が勢いよく飛び出し、土の山に向かっている。水は土の山に当たると弾け飛んだ。


にんにく(どうしようか…)


にんにくは水魔法を様々な方法で出してみたが、どれも上手くいかなかった。


にんにく「…まぁワンチャンいつものようにやればできるだろう」


にんにくは杖で地面を指した。


にんにく「ゴーレム!出てこい!」


すると杖の先から土が出てきて、形を成し始めた。しばらくすると、脚、胴、頭とできていった。


にんにく「おぉ〜 あれ、犬?」


ゴーレムを生成した結果、犬のゴーレムができた。ワンチャンでわんちゃんができたのだ。


にんにく(土“人形”でゴーレムなんだよな 人型のロボットだとも書いてあったし 犬型だとなにかおかしいよな…)


魔獣とも書いてあったことを忘れている。


そんなことも気にせず犬のゴーレムは原っぱをあちこち駆け回っている。


にんにく「おーい、お前は今日から『オートマタ』だ! 字は…『機動魔土』で良いだろ!」


にんにく(犬ができたってことは他の動物もできるのかね とりあえずやってみるか)


にんにく「ゴー…機動魔土(オートマタ)!出てこい!」


また杖の先から土が出てきた。今度は鳥のような形をしている。パタパタと羽ばたき空を飛んでいる。


にんにく「鳥か!小さいし何かに使えそうだな…ていうか順調過ぎてちょっと怖いわ」


そう考えつつも好奇心には勝てない。また杖で地面を指した。


にんにく「機動魔土(オートマタ)出てこい」


またまた杖の先から土が出てきた。土が形を成していくが、犬や鳥のときより遅い。だが少しずつ二本の脚が生えてきている


にんにく「…!!人型か!?」


上に伸びた胴体、足先まで届くような長い腕が生えてきた。


にんにく「これは人型と呼べそうだ」


そう安心した瞬間、四足で走り出し、木に登った。


にんにく「なんだよ、サル型かよ でも木登りが得意ならこれも使えそうだな」


短時間で三種類もロボットを作り出した。だがにんにくお手製なので一般的なロボットやゴーレムに比べ耐久力は低いだろう。


にんにく「よし、お前らは『犬型』、『鳥型』、『おサル』だ」


皆話を聞いていない。ゴーレムは本来創造主に忠実だ。話を聞かないのは創造主だと気付いていないのか、それとも指示を出していないからか。


にんにく「おいおいお前ら、話聞けよな」


すると三体はにんにくの方を向いた。どうやら指示を出していなかったからのようだ。


にんにく「なぁ、お前らって戦えるかな?とりあえず戦ってみてほしいんだが」


三体はまた自由に行動し始めた。すると木に登ったおサルが木の実を取ってにんにくに投げた。


にんにく「おっと危ねぇな お前程度の攻撃は効かないぜ」


自身が生み出した魔獣相手に決め台詞を放つにんにく。おサルは木から降りて今度は木の実を手に持ったままにんにくに近付いた。


にんにく「んあ?くれるのか?ありがとな」


にんにく(こいつらもしかして戦わないタイプか?…でもこれは使えるわ)


にんにくは貰った木の実を一口食べた。


にんにく「…………ッ!?スゥゥゥーーーー」


あまりの酸っぱさに声が出ない。


にんにく(コイツ……)


にんにく「……そろそろ戻れ」


そう言うと三体は杖の中に吸い込まれるようにして消えた。さっきまで犬型が走り回って、鳥型が飛び回って、おサルが木に登っていたのが嘘かのように静かに、そして何事も無かったかのように消えた。


にんにく「おぉ、まさか戻れで消えるとは やはりこれは使えるな」


にんにく(次は…結界とか言うのを作ってみようかね)


結界を作るには高い魔力とそれを維持する強靭な精神が必要だ。結界が大きいほどそれは困難なものになる。


にんにく「…そもそも結界ってどう作るんだ? 防御結界!出てこい!……まぁ無理だよな」


結界作りに疲れたにんにくは、魔法を自慢しにホウレンの家へ向かった。


『ゴンゴンゴン』


にんにく「あのー!」


ホウレン「はいはい、ってにんにくか。どうしたんだ?稽古はまだだぞ」


にんにく「魔法で模擬戦してほしいんだ」


ホウレン「それは構わないが後でな。今昼食を食べているところなんだよ。好きに本を読んでいていいからあそこの部屋で待ってなさい。」


そう言うとホウレンはにんにくを家に入れて部屋に向かわせた。進んでいくと劣化や汚れのない真っ白な壁、チリひとつ落ちていない廊下、まるで鏡のようなドアノブがあった。そんな所を抜けた先には、机とベッドがある小さな部屋が。本棚から溢れんばかりの本や、既に溢れて山のように本が重なっていることを除けば至って普通な部屋だ。


にんにく(……おぉ)


にんにくが本の山を確認すると、解剖学やトレーニングの本、料理本など、身体に関わる内容の本が多くあった。齢八十のホウレンが、若者顔負けの強さを持っているのはこのためだろう。


にんにく(こんな本読まねぇよ…)


にんにくが読めそうな本を探して漁る。読まないという選択肢は無さそうだ。


漁り始めてしばらく経った頃、ボロボロになった数冊の本を見つけた。


にんにく「お、漫画か…なんだこれ うにボうズ??」


正式名称は『元気なウニボうズクン2』。にんにくが生まれるよりずっと昔にあった漫画で、2と書いてあるが初代があったわけではない。当時を知る者でもこの漫画を知る者は少ないほど無名だ。主人公『うにぼウず』の周りで起こる、笑うべきか困る内容の四コマ漫画が、淡々と続くシンプルでブラックな漫画だ。


にんにくは早速読んだ。見開き一ページ呼んだ頃、


にんにく「これつまんね」


面白い本を見つけられなかったからか、ベッドに寝転がってスマホを取りだした。


にんにく(動画見よ……あれ、繋がんね………あぁ、ここ圏外なんだ)


本格的に暇になったにんにくは、ホウレンの元へ行った。


にんにく「もう食い終わってんじゃん」


ホウレン「食休みだ。」


にんにく「チッ 小難しい本ばっかりで電波も飛んでないし、暇つぶししろと言うんだよ」


ホウレン「その小難しい本でも読んでいたらいいだろう。」


にんにく「わかったよわったよ そこまで言うなら読んでやるよ」


にんにくは部屋へ走って戻った。ホコリが舞うがすぐに消えていく。


にんにくは早速解剖学の本を手に取って読んだ。

目に飛び込んできたのは、内臓や筋肉が事細かに描かれた緻密な写生図と、小さな文章達だった。


にんにく「 」


理解できるほどの知能と根気を持ち合わせていなかった。


にんにく「あぁもう怒った 俺は怒った 練習してやる」


にんにくは杖を目線の中央に突き出した。


にんにく「火!火!……あれ、出ねぇや 水!水!…これも出ないと 結界か?」


予想通り家には結界が張ってある。魔力制限結界だけでなく、自動掃除結界や、防御結界など、様々な結界が張られてある。


にんにく(魔力制限の結界があるっぽいなこれ…まぁいいや、そろそろ終わっただろ)


にんにくはまたホウレンの元へ行った。


ホウレン「おぉ丁度いいところに。そろそろ始めるか。」


にんにく「あぁ」


ホウレンが魔力制限結界を外し、二人は中庭に移動した。にんにくが杖を持って戦闘態勢をしているのに対し、ホウレンはただ立っているだけだ。


ホウレン「…そういえば、レフェリーがいないようだが。」


にんにく「そういえばそうだ よし、機動魔土(おサル)!レフェリーを頼む」


杖の先からおサルが出てきた。さっきのおふざけが無かったかのように大人しい。


ホウレン「ほうゴーレムか、大したものだな。そこまでの相手なら本気で挑ませてもらおうか。」


にんにく「…おう」


おサルが試合開始の合図をした。途端辺りが眩い光に包まれた。


にんにく「!!ウッ…」


光が止むとにんにくは防御結界に閉じ込められていることに気付いた。


にんにく(…どうなってんだ)


だんだん防御結界が狭まっていく。腕を振る隙間もない。にんにくは棒立ちになる他無くなった。


ホウレン「私の結界程度なら簡単に破れるだろうに。」


にんにく(杖が使えない状態で魔法を放つ…か 水出てこい)


にんにくはそれを聞いて魔法を放つ。コップ一杯ほどの水がにんにくの頭に降りかかった。


にんにく「…」


ホウレン「どうやら買い被っていたようだな。」


呆れたようにホウレンが防御結界を解く。直後、無防備な少年の顔面に巨大な火球が肉薄したが、火は不自然に掻き消える。


にんにく「…あ???何が起こった」


ホウレン「これは反射神経を鍛えねば…。」


呆然と立ち尽くすにんにく。その横で、おサルは冷淡にホウレンの勝利を宣告した。


模擬戦が終わって休憩している時、


にんにく「ホウレンはなんでそんな強いんだ?」


ホウレン「そうだな、魔法を六十年間ずっと鍛えているからだろうか。」


にんにく「じゃあエルフとか長生きする奴はもっと強いのか?」


ホウレン「数百数千年間鍛え続けている者がいればな。」


にんにく「ふーん…世界って広いな」


ホウレン「らしくないセリフだな。」


にんにく「…じゃあそろそろ帰るわ」


ホウレン「もうすぐ稽…」


にんにくはホウレンの話を聞かず玄関に飛び出して行った。


家から出て走っていると、向かいからニラの姿が見えた。


ニラ「なんで戻ってるの?忘れ物?」


にんにく「あ?……あぁ!稽古か………俺休むわ!」


ニラ「うん、分かった。」


帰ると言った矢先に戻って行くなど恥だと、にんにくは直感的に思い、そのまま家へと走って行った。その足取りはいつもより少しだけ速くなっている。


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