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英雄の杖を狼に  作者: マサ
王都ハーヴェス編
5/9

不器用な芽吹き


夜月が映える二十二時過ぎ、ホウレン宅に人影がひとつあった。


『コンコンコン』


ホウレン「はい、おぉアサツキか。こんな時間にどうした。」


扉を開けたホウレンの前にいたのは、現君主・アサツキであった。


アサツキ「少しお話したいことがあって…良いお酒持ってきましたんで…」


ホウレン「そうか、上がれ。」


ホウレンはアサツキを家に入れた。良いお酒が気になったのか、話を聞こうと思ったのか。


アサツキがホウレンの前に腰を下ろすと、持参した瓶の栓を抜き、二つの杯にお酒を注いだ。


ホウレン「美味いな、これ。で、話ってなんだ?」


ホウレンはアサツキの真剣な眼差しを見て、只事でないことを瞬時に理解した。


アサツキ「…あの子供は危険です。杖に選ばれただけでなく、ヘムロック捕縛に一週間の期限を与えたが、たった一日で終わらせてしまった。それ程の実力者を野放しにしておくと何が起こるか分かりません。」


ホウレン「……分かっていながらそれを言うか。あの依頼が一日で終わることを踏んでいたからこそ、あんなにスムーズに動けたのだろう。」


アサツキ「やはり見透かされましたか…。まだ師匠には敵いませんね。」


ホウレン「お前を何年見てきたと思っているんだ。未来予知に近い程の先見の明があることを嫌という程知っている。」


アサツキ「……買い被りですよ。私はただ、あの子供ならこう動くだろうと信じていただけですよ。」


ホウレン「信じていただけか、まったく。てっきり盤面を読み切った上での『確信』かとな。」


アサツキ「そんな…私をなんだと思っているんですか。流石にそこまで頭回りませんよ。」


ホウレン「まぁ、だろうな。ただカマをかけただけだ。」


アサツキ「…変わってないですね、師匠。」


ホウレン「お前もな。」


――――――――――――――――


翌日。そんな他愛もない噂話をされていたことも露知らず、にんにく達は『ドクダミ』という老人の家で草むしりをしていた。


にんにく「あー!腰いてぇ!」


ニラ「回復魔法かければいいじゃん」


にんにく「効くならやってるっての」


ドクダミ「ほっほっほ、ふたりともありがとう。雑草がみるみる抜けていってますよ。」


二人は次々と雑草を抜いていった。草を抜けるだけ抜いた。


ニラ「…ふぅ」


にんにく「あ゛ぁ゛〜疲れた あ゛ぁ゛〜腰痛い」


ドクダミ「おつかれさまです。ドクダミ特製ドクダミ茶、飲みますか?」


にんにく「お茶か?喉渇いてんだ」


ニラ「うん…」


ドクダミはドクダミ茶を注いだコップを二つ持ってきた。二人は差し出されたドクダミ茶を飲んだ。


ドクダミ「どうでしょう?お口にあうでしょうか?」


にんにく「………まぁ」


ニラ「………う、うん」


ドクダミ「そうでしょうそうでしょう。しかもすごく身体にいいんですよ。」


にんにく「………そうなのか」


二人は頑張って飲み干した。舌の絶望と引き換えに健康を手に入れるべく。


にんにく「………さて、俺は雑草を持って行きたいんだけど、いいか?」


ドクダミ「かまいませんよ。好きなだけどうぞ。」


許可を得るなり、にんにくは杖を取り出し、軽く振った。


にんにく「よし、じゃあ根っこ!出てこい!」


うねうねと根っこが地面から生えてきた。それは以前に比べると少し大くなっている。根っこで抜いた雑草を束ね、地面から切り離し、横腹に抱える。


にんにく「こうすると楽なんだよ」


ニラ「根っこ、便利そうだね。」


にんにく「束ねるとか結ぶとかならだいたいできるしな じゃ、いざ薬屋へ」


二人はドクダミ宅を出ると、薬屋へ向かって走り出した。


道中、何度もほどけた。


薬屋に着くなり、にんにくは苦労して運び込んだ雑草の山を店主へ突き出した。


にんにく「使えそうな草ある?あるなら売りたいんだけど」


店主「またこんなに…あのね、仕分けも楽じゃないんだよホントに…。」


店主は一本一本丁寧に草を調べていった。調べ終わるのに三十分ほど掛かった。


店主「使えそうな草はドクダミ七十五本。これなら三千七百五十円ほどだね。」


にんにく「了解 売るわ」


にんにくは店主が差し出したお金を受け取った。


にんにく「ありがとう 多分また来るよ」


二人が薬屋を出ると、にんにくが計算をしている。


にんにく「五十円玉一枚、百円玉二枚、五百円玉一枚に、千円札が三枚……どう分ければ良いだろうか」


ニラ「分ける?あぁ、僕いらないよ。」


にんにく「俺が分けたいから分けるんだよ」


ニラ「そう…。じゃあ二千円と千七百五十円で分けたらいいんじゃない?」


にんにく「じゃあそうするか」


そう言ってにんにくはニラに二千円手渡した。


ニラ「僕が多い方なんだ。」


ニラは少し驚いたように尋ねた。


にんにく「そりゃ、お前のが草抜いてたしな」


ニラ「…なるほど。」


にんにく(…やけに素直だ)


にんにく「よし…あ、そろそろ稽古の時間だ 急ぐぞ!」


にんにくが走り出した。続くようにニラも走った。


蹴り上げた砂が風に乗って飛んでゆく。


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