なんともない日々
『ピロロロロピロロロロピロロロロピロロロロ…』
目覚まし時計。めんどくさい…無視しよ。
「にんにく!なんで時計鳴ってるのに寝てるの!」
俺はきょうだいのガーリックに起こされた。
にんにく「今日くらいいいだろ…」
ガーリック「毎日それ聞いてるよ!そして早く朝ご飯食べなさい!」
にんにく「はいはい」
年上のきょうだいは皆仕切りたがりなんだろうか。そう思いながら二人で朝飯を食べた。今日は焼きサンマだった。骨を分けるのに苦戦している間に、ガーリックはとっくにサンマを平らげていた。
よしどこか行こう。どこに行こうか。何も考えずただボーッと道を歩くだけでも良い、ニラと遊ぶのも良い、図書館に本を読みに行くのもいい。決めた、図書館に行こう。
図書館への道をのんびり歩くのも、また良いものだ。行き交う人々、走る車の音……実に賑やかな騒音だ。こんなのがあるから無意識に静かな場所を選ぶのだろうか。
そう考えていたらもう図書館だ。ここの図書館は世界で見てもかなりの数の本があると噂があるすげぇところだ。
とりあえず本を読もう、これ良さそうだ。
にんにく「…国語辞典?まぁいいや」
言葉がずらっと載ってる。頭が痛くなりそうだ。
にんにく「どれどれ〜…剣鎧。読み方、けんがい。意味、二つの物事が食い違って…ツジツマが合わないこと。由来、ある商人がどんな鎧でも断てる剣と、どんな剣でも断てない鎧を売っていた。それを見た人がその剣でその鎧を攻撃するとどうなるかと問い、商人は答えられなかった。…は?」
なんだこれ詐欺だろ。
さて次の本を取ろう。
にんにく「料理本か、悪くない」
料理なんてほとんどしないけれども、料理を食べるのは好きだ。
にんにく「えっと、砂糖百グラム、塩ショーショー……どれくらいだよ」
図書館ってこんなに難しい本ばかりだったか。難しいのは苦手だ。図書館はやめよう。
次はどこに行こうか。そういえばそろそろ稽古の時間だ
『プルルルルルプルルルルルプルルルルル…』
電話、こんなときに誰だろうか。
にんにく「誰だ?」
『ガーリックだけど。』
にんにく「どうした?」
ガーリック『洗剤買っといて。』
にんにく「財布無いぞ」
ガーリック『財布は常に持っておきなさいよ。ほら取りに帰って。』
にんにく「財布あったところで金が…」
ガーリック『じゃ、よろしく。』
なんで出かけるときに言ってこなかったのか。いつもそうだ。…まぁいいや、たまには買い物も悪くない。
家に戻ってサイフを持ってまた出かける。馬鹿げているよ。
面倒だ、一番近い店で済ませよう。
洗剤コーナーに来たはいいが、普段どれを使っているかなんて知らない。どれも同じに見える。
適当に洗剤を取って会計を済ませたら、財布の中身はちょうど無くなった。ちょっと寂しい。
玄関に洗剤を置いて、今度こそ稽古に行こう。まずは急いでニラの家に行かねば。
ちょっとばかりまわりの家より大きな家。この国の王族は謙虚だ。強い熊族が世襲するのだからもっと大きくても良いだろうに。
そんなことを考えつつもとりあえずインターホンを押す。
『ぴんぼーん』
…
返事がない。留守だろうか。
「すみません。」
にんにく「うぉ!?」
びっくりした……なんだ、執事のシトルイユか。
シトルイユ「どうしましたか?」
にんにく「ニラを呼びに来た もうすぐ稽古の時間なので、」
シトルイユ「かしこまりました。ニラ様をお呼びします。」
にんにく「待て待て、念の為俺も行く」
暇があれば寝てるしなぁ……
ところで、執事はそんな無警戒で雇い主の家に入れていいのか、昔からニラと一緒にいるからこそ警戒していないのかと、少し問おうと思ったが、面倒なことになっても面倒だ。
階段を上って右に曲がったあと、二つ目の左の曲がり道を曲がった先がニラの部屋。やはり迷路のようだ。
案の定ニラは眠っていた。サナギのように布団にくるまっている。
にんにく「執事さんはいつもどうやってコイツを起こしているんだっけ?」
シトルイユ「普段はベッドを揺らしたり、手を叩いたりなどをしていますが、起きた試しはありません。」
にんにく「はぁ…まぁそれじゃあ起きないだろうな」
仕方ない、飛び乗るか。
にんにく「行くぞ…」
『ドスッ』
ニラの腰を確実に蹴ったが、、
にんにく「まぁ寝てるか」
なら次はシンプルにビンタでいこうかね。
手のひらいっぱいに力を込め、脇腹を狙う。
にんにく「起きねぇなぁ」
どうすればこれは起きるのか。
ふと時計を見ると時間が迫ってきている。急がないと遅刻する。昨日のようにすればワンチャン起きるかね。
にんにく「おい!起きろ!遅刻するぞ!」
…
うん、無理だ。コイツを起こせる奴がいれば俺はソイツを賞賛しよう。
ニラ「ん…おはよう…」
にんにく「やっと起きた… 稽古に遅刻するぞ」
ニラを起こせるのはニラだけなのかもしれない。俺はこんな奴を賞賛しないといけないのか?
にんにく「行くぞ!早く!」
ニラ「ちょっとまって」
時間が迫ってきているというのに、マイペースな奴だ。無理矢理にでも引っ張らないと間に合わない。
あぁもう毎日毎日…どっちが年上だかわからんなこれ。
急いだらなんとか間に合った。門の前には変わらずホウレンがいる。
ホウレン「今日は遅刻しなかったようだな。…そうだ、久しぶりに模擬戦はどうだ?」
ホウレンの剣術は凄い。格上との模擬戦で得られる経験値は大きいだろう。
いつものようにホウレンの家の中庭へ移動して、木刀を持った。
ホウレン「さあ、二人とも位置について。」
にんにく「あ?アンタとするんじゃねぇの?」
ホウレン「いつ私がすると言った?」
にんにく「言っちゃあいないけどよ……まぁいいよ、どの道格上相手は避けられないし」
木刀を構えて立つ。昨日一日しなかっただけで久しぶりな感覚だ。さて、どう抗おうか。
ホウレン「よーい…始め!」
コイツの弱点を知らない。が、やるしかない。
にんにく「オルァ!」
先手必勝だと思ったが簡単に受け流された。これが技術の差か。
ガンガン木刀を打ち付ける音、構え、目線…どこを見ても隙が見えない…
互いに打ち付け合うだけではただ日が暮れるだけだ。そろそろ決着をつけよう……
今日こそ振り上げで倒せるだろう。
ニラ「隙。」
気が付くと脇腹に木刀がぶつかった
ホウレン「勝負あり。」
すごい痛い。心臓が早くなっている。
にんにく「!!!ッ………、回…復だ…」
おかしい。思うように回復魔法ができない。
ホウレン「言い忘れていたかな。ここは魔力を制限する結界を張っておる。」
にんにく「なんでだよ…!」
ホウレン「魔法で誤魔化す卑怯者がいるかもしれないからな。」
にんにく「まるで俺がそんな奴みたいな言い種だな。とりあえず結界解いてくれないか?」
そう言うとホウレンは結界を解いてくれた。
適当に回復魔法『活性』をかけたので、また模擬戦を始めようかね。
ホウレン「無理はするなよ。」
にんにく「もう平気だ!続きしようぜ」
ホウレン「いや、今日は終わりだ。怪我をしたあとに稽古、ましてや模擬戦などするものではない。」
にんにく「今度こそ打ち負かしてやろうと思ったんだがなぁ…」
ニラ「ごめん…。僕が怪我させちゃったから…」
にんにく「煽りか?」
模擬戦前より元気になったのだが、ホウレンが許さないならできない。実に残念だ。
ホウレンが家の奥から何か持ってきた。水晶玉か?なんだこれ。
ホウレン「時間が余ったので、魔法をどれだけ扱えるか調べてみることにしよう。これは特殊なガラス玉だ。ここに魔素を注ぐことで光を放つのだ。光が大きいほど魔力が高く、鋭いほど保有できる魔素が多い。光の色は魔法の属性を表しており、得意な属性が分かる。」
ニラ「魔法の属性?得意な属性って?」
ホウレン「属性は火、水、草、電気、風、土、闇、光、無の九つがある。得意な属性は、使える魔法の属性で、最も練度が高いものだ。つまり、それが色に反映される。……無属性だと他の効果も現れるがな。」
つまり今の実力が分かるってことか。実に面白そうだ。
ホウレンがガラス玉に手を置いた。試すのだろうか?
にんにく「うわ…!?」
めちゃくちゃ眩しい。目が痛い……
ホウレン「私の場合だと白い光だ。これなら光属性が最も得意と言えるだろう。」
なんでコイツは属性にしか触れないんだ?
まあいいか。
にんにく「俺だとどうなるかね やってみていいか?」
ホウレン「良いとも。」
さて、特殊なガラス玉とは言っていたが、ただのガラス玉と遜色無いように見える。そんなことは置いておいて、ホウレンの真似をしてみよう。
…ちっさい光が緑色でギザギザ。ウニみてぇ。
ホウレン「ほう、にんにくは魔力が非常に弱いようだが魔素保有はかなりのものだ。そして属性は水のようだな。」
にんにく「草属性じゃないのか?」
ホウレン「緑色は水属性を指すのだよ。水属性が得意な者だと緑色に光る。」
実にややこしい。とりあえず次はニラの番か。
にんにく「ニラ!次はお前だ」
ニラ「…うん」
どこか元気が無いな。さっき俺をウキウキで叩き切っていたくせに。あ〜思い出したら痛みが思い出される…
ニラはゆっくりと手を乗せて、ゆっくり魔素を注いだ。青いような黒いような禍々しい色をしたぐにゃぐにゃな光がものすごい大きくなっている。銀河の渦みたいだ。
ホウレン「ほう…」
ホウレンがなんか険しい顔してる。
ホウレン「ニラは魔力も魔素保有も高い。属性は闇と電気が得意なようだ。」
にんにく「二つの属性が得意なのか、すげぇな」
ホウレン「二十人に一人くらいの珍しさだな。まぁ…それは置いておこうか。あの光の形は、魔法を制御できないことの表れだ。」
ニラ「…。」
ニラが魔法を好まないのはこれが原因だろうか。練習を怠っているからじゃないのか?…その考えは無粋だな。
にんにく「まぁつまりお前は強いってことだろ!」
ホウレン「…そうだな、どちらも一級品だ。」
ニラ「…うん」
さて元気が…どうしようかね……
にんにく「じゃ、俺らそろそろ魔術の方の稽古行くわ。」
ホウレン「そうか、気を付けるのだぞ。」
ニラ「じゃあ、ホウレンさん、また。」
とりあえず家を出て、ニラをどうしようか……帰るか。
にんにく「じゃ、帰るわ」
ニラ「魔術の稽古するんじゃないの?」
呆れた。さっきまでその魔術で落ち込んでた奴が言うセリフか?
にんにく「やりたいなら勝手に行けばいいだろうよ 俺は帰るわ」
ニラ「…いや、僕も帰るよ」
にんにく「じゃあな」
はぁ〜~〜~〜~〜~疲れた。身体は元気なんだがなぁ…
帰ったらすぐ風呂入ろ…
家が見えてきた。着実に近付いているのに遠くなっているような気分だ。
気分は気分だった。思っていたよりすぐ着いた。
さて風呂だ。
にんにく「冷た!!」
またやった。なんで最初冷たいんだ?温かくしろよな。
あ〜、温かくなってきた。四十度、やっぱり好きだわこの温度。一度でも違うと全然違う、結構シビアなんだよな…
シャンプーしようシャンプー……出ないや。
詰め替えねば……メンドクセ
にんにく「寒!!風呂場との温度差よ!!」
脱衣所は寒くて風呂場は暑い。これは恐らく互いに隣人を愛せていないからだろう。
棚の一番下だったか?……ビンゴ!一発だ。
あー寒い。そして風呂場は暑い。ヒートテックだったか?ならないよう気を付けねば。
シャンプーの詰め替えってのは面倒だ。ほらこぼれた。もったいないよなぁこういうの。
でも俺はスゴいからこぼれたので床掃除するんだよ。
足でちょいちょいっとすれ…
『ドガァン!!』
にんにく「いってぇ…」
これでコケたのは初めてだ。こんなことも気を付けないと。
ま、詰め替えはできたし結果オーライ。さてシャンプーだ。
ガーリック美容好きだったよな、だからこんなお高いシャンプーなのか。ていねいに使おう。…鼻につく匂いなのは気に食わない。
ちょま耳入るなっちょあま
散々な目に遭った…
さて次はトリートメントだ。コンディショナーとかリンスとかと何が違うんだか。
……泡立たないからできてるのか分からんのよなこれ。シャンプーを見習え。
えっと次はコンディショナー…だな。これこそリンスと何が違うんだか。変わらないなら響きが分かりやすいリンスを選ぶべきだ。でもガーリックは頑なにコンディショナーを選ぶ。やっぱり何か違うのか?
……やはりトリートメントより酷いぞこれ。シャンプーとまでは言わない、まずはトリートメントを見習おう。
しっかしだ、こいつすげぇ落としにくいんだよな。ずっとベタベタしてるわ。
ようやく落ちた。五分くらいかね?
次は…ボディソープか。
コイツは凄いからなぁ。シャンプーと肩を並べる圧倒的実力者だ。
ただでさえそんなお方が、泡立ちやすいタオルでもしゃもしゃにされるんだ。すごい。
でもなぁ、ちょっと残念だ。このタオル痛いんだよな。ザラザラというかなんというか…泡はすごいのに武器が残念。
あ、髪に着いた。長いしそろそろ切ろうかね……でも気に入ってんだよなこれ。
ぼーっとしてたらもう風呂終わりだ。なんというか、あっけないものだ。暑いし部屋に戻っとこ。
『ガチャン、ガチャン』
…鍵の音が聞こえる。ガーリックか?
「ただいまー」
まぁガーリックか。
ドスドス近付いてくる…絶対怒ってるわこれ。
『ダン!』
心臓に悪いわ。扉くらいゆっくり開けろよな。
ガーリック「洗剤ちゃんと買ったよね?」
にんにく「買った」
ガーリック「どこに置いた?」
にんにく「玄関」
ガーリック「無かったけど。」
にんにく「んな馬鹿な ちゃんと調べれ」
ちゃんと玄関に置いたはずだ。俺はそこから一切動かしていない。
ガーリック「あっそうだ、玄関にこんなの落ちてたんだけど…」
うん、俺が買った洗剤だそれ。ガーリックは洗剤を見分けられないほど老い……鈍くなったんだろう。
にんにく「それが洗剤だ なんだちゃんと見てるじゃないか」
ガーリック「そう、で、なんで『これ』なの?」
にんにく「それしか買えなかったもん 文句言うなら小遣いやらなかった自分に言えよな」
ガーリック「……まぁ、買えないものは仕方ないか」
にんにく「で?何か言うことあるんじゃないの?」
ガーリック「は?無いわよ。」
にんにく「あぁそうだな 言われたいこと無いわ」
ガーリックが風呂に行った。よし自由だ。
…と思ったら風呂の熱がもう冷めた。
なんなんだろうこういうの。何かしようと思うけど、何もしたくないとも思う。これが『剣鎧』ってやつか?きっとそうだろう。また一つ賢くなった。
賢くなったと言ったら、誰かが「一生勉強」だなんて言ってたな。じゃあエルフとかヴァンパイアとかは他種族より賢いのかね。そもそも勉強したらもれなく賢くなるのかね…
あー!面倒だ!難しい!やめよう。
夜飯………は面倒臭い気分だ。寝よ。




