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見た目でカチコミと勘違いされた件

 エイドとラプンツェルは山のふもとの町までやってきていた。


「おっ、エイドの旦那じゃないですか。今日は女の子を連れてどうしたんですか。妹さん?」

「まぁ、そんなものだ」


 今までも木材や農作物などを売りに来ていたので、ある程度は顔見知りがいる。

 一年前の印象だと小さな町だなと思ったが、実際に近くに住んでみると結構色々なものが揃っているとわかる。


 近くにダンジョンや、魔族が支配する地域が点々としていて、その関係で冒険者ギルドもある。

 そこから冒険者需要で武具屋、鍛冶屋、魔術用品店、宿屋、酒場、雑貨屋、小規模市場、農家、駅馬車――それとそれらを支えるためにエイドのような山から色々と持って来て売るような人間もいる。


「エイドのお兄さん! そろそろアタシたちの店にも来てよぉ~」

「そ、それは……。か、考えておく」


 女性特有の甘ったるい猫なで声で呼び止められるが、それを振り切った。

 相手は胸元を大胆に見せている薄着で、化粧もしっかりとしている〝オトナの店〟の客引きだ。


 お客になりそうな相手には、誰にでもやっているとわかっていても、エイドとしては本能で引き寄せられる感じがあるので断固たる意志を持って『か、考えておく』と断るしか無い。


「ねーねー、エイドさん。今の人は?」

「……ラプンツェルのような子供は知らなくていい。俺もまだ行ったこと無いけど」

「え~?」


 さすがに〝オトナのお店〟だとはいえないし、もしどんなところか知らなくても説明するのは気が引ける。

 血気盛んな冒険者たちがいるのだから、そういうお店の需要もあるということだ。


 ちなみにこの世界は女冒険者というのもそれなりにいるので、イケメンたちがズラッと待機している店もあるらしい。

 まぁどちらにしろ、そんなところへ行ったらリビから白い目で見られて実家に帰られてしまいそうなのでスルーするしかない。

 正直、そういう場所が怖いというのもある……!


「さて、目的の場所に着いたぞ」


 顔見知りの住人達に声をかけられながらも辿り着いたのは、この町では比較的大きな二階建ての頑丈そうな建物だ。

 出入りしている人々は目付きがヤバかったり、顔に傷があったりと明らかにカタギの人間では無く、武器持ちが多い。


「エイドさん、ここはなぁに?」

「冒険者ギルド……らしい」

「らしい?」

「いや、俺も入るのは初めてだからな」


 エイドとしては、この町に来た頃は貧弱ボーヤだったので、冒険者ギルドに用事などなかった。

 しかし、一年間身体を鍛えると想像以上に強くなってしまい、段々と冒険者ギルドに興味を持つも、初っぱな出会ってしまったのが魔王四天王クラスの相手だったのでトラウマ的に戦いたくなかったのだ。


 オークをぶん殴ったら意外と簡単に倒せてしまったことや、ラプンツェルの過去探しという目的があるので勇気を持って一歩踏み出せているだけだ。

 内心、冒険者という荒事専門の奴らが集う場所にガクブルだ。


(こえ~……緊張するぅ~……)


 エイドは入り口の前に30分程度棒立ちだった。

 横にいるラプンツェルから哀れみの眼で見上げられている。


(そ、そんな目で見るなよ……クソッ、行くよ。行けばいいんだろ……!)


 さすがにメンタルをヒールしなければならないレベルでダメージを負ってきたので、意を決して冒険者ギルドの中に入ることにする。

 西部劇の酒場でしか見ないような両開きの小さなドアを開け――。


(あっ、やべ)


 腕の力が強すぎてベギンッと取り付け金具ごとへし折ってしまった。

 冒険者ギルドの中から刺すような視線が集まる。


(ひぃ~……見ないでください~……。前世では一般人だったんですぅ~……)


 ヤクザめいたオーラを纏う冒険者が多く、そういう事務所にカチコミをしてしまった気分だ。

 しかし、雰囲気がおかしい。

 ざわめき、警戒されているようだ。


(あれ? こういうのってお約束的にヌシっぽいのが新入りの品定めをするように、いびってくるものでは?)


 エイドは忘れていた。

 今、リビというゴッツい全身鎧を着ていて、しかも頭には魔王四天王のデカい角を二本も戦利品として取り付けているのだ。


 それが30分も扉の前で仁王立ちして、扉を壊して入ってきたのだ。

 冒険者たちからすれば『単機による襲撃』という正気の沙汰ではない想定をするしかない。

 もちろんエイドは、そんなことには気付かない。


(何も言ってこないということは、俺が過剰に気にしすぎていただけか……。なーんだ、色々と考えて損した)


 エイドは一歩を踏み出した。

 鎧の重量が重く、足を踏み込みすぎてズシンと響いてしまう。

 テーブルの上の酒が振動で揺れ、波紋を広げる。


(いっけね、ご近所さんの迷惑になってしまう)


 冒険者たちは挑発されていると思い、しびれを切らして話しかける者が出てきた。


「お、おい。テメェここに何しに来やがった……!?」


 冒険者は腰の後ろに帯びているナイフに手を置いてすぐ抜けるようにしている。

 エイドは、それを勘違いして――。


(冒険者バッジ的なものをくれる人かな?)


「もらいにきた」

「なっ!? (タマ)ぁ、取りに来たってのかよ……!!」


 冒険者たちは一斉に武器を抜き放った。


「ん?」


 エイドはいきなり敵対された意味がわからなかった。

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