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吸血鬼城ドラキュラ

 古城近くに到着すると、その様子が確認できた。

 石壁が苔むして朽ちてはいるが、立派な尖塔がある大きな城で、頑丈そうな門は現役だ。

 そこに門番がいるのだが、かなり大柄な身長二メートルほどある兵士ゾンビが二体守りを固めていた。


「ふーむ、村のときとは違って戦闘用のゾンビっぽいな。いや、吸血鬼のしもべならグールか? あまり判断はつかんが」


 エイドは遠くの物陰に隠れながら、そんなことを呟いていた。

 しばらくすると斥候に出ていた二人がほぼ同時に戻ってきた。


「偵察終わりー。西側は入れそうなところはなかったよー」

「東側もなかったぜ」

「となると、正面から何とかするしかないか」


 ここからどうするか。

 エイド一人なら、普通に門番二体を倒して古城へ突入コースだろう。

 しかし、カ・マーセがいるとなると、戦っている姿を見せるか悩むところではある。

 ヒールを直接使っていなくても、簡単にゾンビを倒すところを見られると新人冒険者として怪しまれる可能性が高い。

 しかも、村の弱い村人ゾンビではなく、門番の兵士ゾンビを見るに戦闘用の強いゾンビたちの可能性が高いのだ。

 なるべくなら目撃者になりそうなカ・マーセをどうにかしたい。


 まさかこんな予想外の方面で逆境になるとは思ってもみなかった。

 だが、逆境こそチャンスという言葉もある。


「すまん、突入前にトイレだ」

「おいおい。緊張感がねぇなぁ、後輩。早くそっちの茂みで済ませてくるんだぜ~」


 ラプンツェルには事前に作戦は伝えていたので、本当に決行するのだと理解してくれたようだ。

 知らないのはカ・マーセだけである。

 エイドは近くの茂みに移動してから、リビを脱いで久しぶりに中の人の姿になった。

 そして、リビだけ――つまり動く鎧だけ二人のところに戻す。


「お、エイド。早かったな。遅かったらウンコ認定していたところだったぜ! ギャハハ!」

「……」

「お、おい……ウンコいじりして悪かったよ。そんなに無言になるなよ……ゴメンて……」


 リビなので喋らない。

 ここから打ち合わせ通りに進めていく。


「エイドさん! もしかして、自分一人で正面突破するんですかー!?」

「急にどうした、後輩?」


 リビは門番の方を指差した。


(ラプンツェル、順序が違う! セリフが早い……!! リビが敵の方を指差してからだろ!!)


 ラプンツェルも気が付いたのか、少し混乱した表情になっている。

 少し不味そうだ、カ・マーセに感付かれてしまうかもしれない。


「なるほど。相棒同士、相手の行動の先がわかっていたってわけか……恐れ入るぜ……」


 どうやら結果オーライらしい。


「それじゃあ、村をゾンビから開放したというお手並み拝見といくぜ!」

「……!」


 リビはグッと親指を上げるサムズアップのポーズをした。

 そして、全力疾走して門番の方へ走っていく。

 エイドは初めて客観的に見たが、重戦車のようだと思った。


『グオォ!?』


 驚いた門番の兵士ゾンビは、持っていた大きな棍棒でリビを軽く一撃。

 ガゴンッ。


「は? 後輩……?」


 リビはその場で倒れて動かない――演技をした。

 ラプンツェルが大声をあげる。


「うーわー! たいへんだー! こうなったら、わたしたちで、てきをひきつけなきゃー!」


 全米が驚くレベルの棒読みである。

 それでも逼迫した状況なので、カ・マーセは気付いていないらしく、必死に自分に向けてヘイトを集めようとしていた。


「こ、こっちへ来るといいぜ! ゾンビ野郎ー!」

『グオォン!!』


 兵士ゾンビ二体は、大柄な身体でドスドスと走ってカ・マーセへと向かって行く。


(よし、そろそろ中の人である俺の出番か)


 エイドは鎧を着てない身軽な布の服状態で、鍛え上げられた身体能力を発揮する。

 走り幅跳びのような格好で30メートルほど横っ飛び、兵士ゾンビ一体に蹴りをかましたのだ。

 突然の乱入者に注目が集まる。

 解説役のラプンツェルが棒読みをした。


「あ、あれはー!? むらのゾンビのときも、かげながらてだすけしてくれた、すごいつよいひとだー!! かたほうはあのひとと、わたしにまかせて、せんぱいは、もうかたほうをひきつれてにげつづけてぇー!!」

「は? え? オレ様が片方を引き連れて逃げ続ける? というか、村のゾンビを倒したのってお前らじゃなくて、黒髪のアイツなの?」


 何も知らないカ・マーセは混乱しているが、一応は冒険者なので指示に従うようだ。


「そ、それじゃあ任されたぜ!? ちゃんとエイドを救出してやってくれよな!?」


 最後まで心配してくれて、意外と良い奴で心が痛んだりもする。

 一応は逃げるくらいの実力はあるので、兵士ゾンビを引き付け続けて、きっと良い感じのタイミングで戻ってきてくれるだろう。

 カ・マーセが遠くへ行ったのを確認すると、再び動き出そうとしていた兵士ゾンビの胴体に手をやって――。


「ヒール」


 敵を消し飛ばした。


「さぁ、一匹残らず消滅させてやる。天国の門は開けてやれないが、地獄の門はいつでも――ウェルカムだ……」

「エイドさん、また変な決め台詞考えてきたの……?」


 手で顔を覆うような厨二病ポーズをしていると、ラプンツェルからツッコミが入ってしまった。

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