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少女の防具試着ファッションショー

 エイドが冒険者カードを作ったあと、ラプンツェルもカードを作ることにした。

 記憶喪失なのですでに冒険者として登録されている可能性も考えたが、どうやらそれは杞憂だったらしく、完全に新規登録となった。


 職業適性は物理アタッカーと表示されていた。

 やはり小柄ですばしっこいシーフとかアサシンなのだろうか、その職業が本当にあるか知らないが。


「あっ、そういえば私、装備がない!」


 そのラプンツェルの一言で、まずは近くにある武具屋に行くことにした。




 武具屋自体は豪華でもなく、目立つ作りでもないが、需要はあるらしく品揃えは豊富だ。

 剣、槍、斧、ナイフ、杖、金属鎧、布のローブ、革のブーツ、木製の盾――。

 棚や壁に飾られた装備も手入れが行き届いており、カウンターに座る店主もご自由にと言ってくれている。


「これ可愛い! 着てみる!」


 ラプンツェルは初めての武具屋に、まるで普通のウィンドウショッピングしにきたかのようなテンションではしゃぐ。

 性能無視で、見た目の良い服ばかりを取っ替え引っ替えで試着してこちらに見せてくる。


 これがお姉さんの水着とかなら嬉しいが、お子様体型なラプンツェルが白いワンピースや、ピンクのフリル、魔法学校っぽいミニスカート、お姫様っぽいドレスなどのファッションショーを見せてきても『あ、うん』くらいしか言えない。

 長い黒髪を活かして、ヘアスタイルも結ったりして変えている努力は認めるのだが、ついツッコミを入れてしまった。


「それ戦えるのか?」

「うっ」


 女性の買い物は長いと言うが、本当にこんなに時間がかかるとは思ってもみなかった。

 このままだと明日までかかりそうなのと、普通に防具選びをミスって死なれても困るので、店の人間に選んでもらうことにした。


「すみません。こいつの体型に合うので、素早さ重視の近接アタッカー用の装備を見繕ってくれませんか?」

「最近は不死系の敵が増えてきたので、お客さんみたいな全身鎧も人気ですね」

「あー、防御力はそこまで重視しなくても平気です。予算はこのくらいまでいけます」


 手持ちの金貨袋を見せたら驚かれたが、山生活で意外と稼げてしまったので小金持ちではあるのだ。

 伝説の剣みたいな超高額品は買えないが、市販品の良い装備くらいは余裕だ。

 それにエイドのヒールもあるので、即死さえしなければいいくらいの防御力で充分である。


「あ、私なるべくオシャレで可愛いのがいい! エイドさんからの初めてのプレゼントだもの!」

「わかった、わかった」


 ラプンツェルの要望はスルーしてもいいのだが、さすがにご機嫌斜めになられても面倒だ。

 性能を阻害しない程度では考慮すべきなのだろう。


「そうなると、お客さんにはこれがオススメですね。この近くにある村――そこ村長さんが娘の将来のために……とオーダーメイドを頼まれたんですが、連絡が付かなくてキャンセルになってしまった物です。子供向けの装備なんて需要がないので、これならお安くしておきますよ」

「ほう」


 そう聞かされるとすごいお得な気がしてきた。

 いや、セールストークのプロなのだから上手くて当然だ。

 実際に試着してみないと危険かもしれない。

 前世でもお値打ち品に食い付いて、実際には使えず物置やタンスの肥やしになってしまった経験がある。


「わっ、全身揃ってる。着替えるけど試着室は覗かないでよね!」

「そんな冗談は十年後くらいに言え。もっとも、大人に育っても中身がお前だと思うと無理そうだが」

「ひっど!」


 光源氏的なものは自分に関係ないフィクションだから楽しめるのであって、そうでなければ責任感や何やらでアレだろう。

 そもそも男女関係より、リビに愛想を尽かされる方が生活面で死活問題だ。

 鎧のくせに意外と常識があるリビに認められるような人間でなければならない。


 ――とそのとき、いつの間にか店内に黒猫がいて、こちらを眺めてきていた。

 なかなかの美人さんである、きっと黒猫界隈ではお姉さんだろう。


「あー、どこかに俺と清く正しいお付き合いをしてくれる女の子はいないかな~……。黒猫ちゃん、キミはどう?」

「ちょっとエイドさん、奇行はやめてくださいよ……恥ずかしい……」


 ラプンツェルは試着室から顔だけ出そうとして身体も少し見えてしまっていて、そっちの方が恥ずかしいぞと言おうとしたが、その間に黒猫が逃げてしまっていた……残念。

 という気持ちでエイドは溜め息を吐いた。


「はぁ~あ」

「あ、何かムカつく」


 なぜかラプンツェルはご機嫌斜めのようだ。

 そうしていると、試着室のカーテンが開けられた。


「お、馬子にも衣装ってやつか」

「褒めてるの? それ?」

「客観的に見ても、お前のリクエスト通りのオシャレで可愛い装備だと思うぞ」

「えへへ」

「装備を褒めただけだからな」


 革の編み上げブーツにスカート、短いジャケット、グローブなどもあるが、ヘソや二の腕が見えている。

 それなりにお高いので、ファンタジーの謎素材で防御力は確保されているのだろう。

 その思考が表情に出ていたのか、店主が説明をしてくる。


「こちら、希少なグリフォン素材を使用しておりまして軽く、そして頑丈です。しかも魔力による強化を全身に通しやすく、露出している肌に対しても心配はございません」


 魔力による強化とは、体内の魔力を体表に張り巡らせることによって攻撃を防いだりする方法だ。

 逆に筋肉や刃に魔力を注いで攻撃力を増したりする、というのもある。

 これらは特殊な素材を通すことによって効果が上がったりするが、それでも転生直後の騎士団が普通にぶった切られていたのを見ると過信はできないだろう。

 ラプンツェルは回避が重要だ。


「ラプンツェル、動きやすさはどうだ?」

「軽い! まるで裸みたい!」

「その表現方法はコンプラ的にまずいから止めるんだ」

「じゃあ、エイドさんと初めて会った頃みたいにボロ布一枚のときのよう、とか?」

「もっとヤバい」


 店主がドン引きの目で見ている。

 テキトーなナイフも見繕い、速攻で金を払って、さらにチップで口止めをして急いで店を出た。

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