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夢見る虹

作者: タルト

開いてくださりありがとうございます。


活動3周年記念の作品となります。


評価・感想をいただければ幸いです。

 水面(みなも)の上に少女が立っている。平たく広い湖の中心、彼女の足下だけ、水が円柱状に盛り上がっている。風はない。水面は波立たない。まるで凍っているように、一切の動きがない。

 少女が楽しそうに跳ね回り始めると、湖もそれに応えるように、彼女の足場を作り始めた。足が水から浮き上がると、そこにあった水は、何もなかったかのように静かに元に戻る。その代わりに、次の水が立ち上がる。

 暫く彼女の上にいた快晴は、黒雲の群れに変わった。機嫌の悪い風が湖の頬を打って、雨粒もそれに加勢する。少女はみるみる変わっていく湖に絶望したのか、動きを止めてしまった。そして、沈んでいってしまった。


 

 上から眺めていたら、あの子は君が来るのを待ってるよ、と声が聞こえた。恐らくは、今し方通りかかった鳥だろう。僕はそうだね、とだけ呟くと、下に向かった。上と下はまるで別世界だ。見えるものの色も形も、まるで違う。

 僕がその姿を現すと、彼女はいつも笑ってくれた。大きく手を振ってくれた。でも、今日は違う。ただ会いに行くんじゃない。迎えに行くんだ。

 僕は湖にお願いして、彼女のいるところまで道を空けてもらった。彼女の顔は湖よりも静かで、身体も湖より冷たかった。抱きしめると、目が開いた。瞳には七つの光が映っている。僕が笑いかけると、彼女も笑いかけた。もしかしたら、そう見えただけかもしれない。人間の心は他の動物よりも多様だから、実に難しい。

 その後、彼女は氷のような表情で僕を渡った。最後に見る太陽の輝きは綺麗だったと言っていた。僕とどっちが美しいか聞いたら、太陽だと言われた。僕は苦笑いした。彼女は太陽と、水と、空に愛された。陸に愛されないのは、結構珍しいかもしれない。僕はいつも見ているわけではないから、分からないけど。空に聞けば教えてくれるかな。いや、空は気難しいから、苦労しそう。僕は空の一部だけど、空は僕じゃない。喧嘩をすると、負けてしまう。でも、空よりも僕の方をありがたがる人は、意外と多い。ただの水と光でできた橋なのに、人間は本当に分からないものだね。

 その点、人間に比べると、鳥は冷たい。僕よりも空が好きらしい。そして、それ以上に太陽を信奉している。

 そうでない鳥もいるけれど、そういう鳥は大抵、大地が一番好きなんだ。そして、大地にいる動物たちは、僕が見えないのか、それとも興味がないのか、殆ど優しくしてくれない。

 たまには僕も人間以外に好かれたい。

 そう思いながらも、僕はいつも通り空に浮かんで、いつも通り光の橋の役目をこなすんだ。

最後までお読みくださりありがとうございました。


前書きの通り、本日で3周年を迎える運びとなりました。

以前よりも頻度は下がっていますが、活動そのものは続けているので、今後も応援していただければ幸いです。

末筆ですが、評価・感想をいただければ嬉しいです。よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
幻想的な世界と同時に世の中の厳しさをも描かれていて、現代社会を反映させているようでした。 万物に存在する全てのものに好かれるのは難しいですが、少なからずの存在に好かれ受け入れられるという役目を果たせ…
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