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第三十四話「宿敵」

 

「ルシファー様、着きましたよ」


「うん?もうか?」


 ルシファー達が到着したのはルシファーズハンマーLA支店。

 ルシファーが愛用していた現代のナイトクラブだ。

 異世界のルシファーズハンマーの名前はここから拝借した。

 漆黒のビルに漆黒の内装と何から何まで黒ずくめで、この店はルシファーのお気に入りだ。


「ルシファー様がお帰りになったぞ!」


 おおおおおおおおお!!!!


 クラブ内にいた悪魔達の歓声が上がる。

 長らく不在だった王の帰還なのだ、当然であろう。


「とりあえずここのみんなにモヒートを奢るぞ!今日は僕がバーテンをやる!」


 ルシファーは女神に授かった能力で極上のモヒートを作り出すと、配下の悪魔達に振舞った。

 天使の本拠地である東京の議事堂壊滅の祝い酒でもあった。


「ルシファー様、お久しぶりです」


 ルシファーの名を呼んだのはグレースーツのグレーヘアーの短髪の中年紳士だった。

 彼の名はアザゼル、現在は悪魔軍最高司令官である、ルシファーが戻った今は元が付くが。


「アザゼル、僕がいない間に不備はないか」


「はい、なんとか天使軍とは渡り合えています。が、ルシファー様不在、そしてミカエルがいる分こちらが圧倒的に不利でした。人間の玩具(兵器)を駆使してなんとか凌いでる所です」


「人間の兵器か。それは天使側も同じだろう。核の管理はちゃんとしているんだろうな」


「はい、それは厳重に。しかしあの兵器を天使に使わないのですか?」


「あれを使った所は僕達も住めなくなるからな」


 核、神の焔と称されたソレは絶大な威力を誇るが、放射能という災害を残す振るう側にも害のある剣であった。

 奪いたい土地を住めなくするのでは意味がない。

 まあ最もルシファーは現代にも「終末」をもたらそうとしているので杞憂ではあるが、核と放射能で余韻も無く終末を台無しにする程ルシファーは愚か?ではなかった。

 ミカエルも人間の兵器や化学を異端と断じる主義な以上、極力科学技術は使わない方向でいた。


「で、ミカエルはあのミサイル攻撃で死んだのか?」


「いえ、地下のシェルターに逃れた様です」


「よし、今直ぐ奴の所に乗り込むぞ、チャーター機を用意しろ」


「お連れの方はどうなさいますか?」


「ここに置いていく。彼女達は客人だからな、丁重に扱えよ」


「承知しました、ルシファー様」


 ルシファーは懐のカインの剣を握るとこれから起きる宿敵との戦いに身震いした。

 異世界のメンツを置いてきたのもこの楽しみを邪魔されたくないと思う気持ちもあった。


 ―チャータージェット機の中


 ルシファーはジェット機の中でモヒートを楽しんでいた。

 今後のミカエル戦に備えての気付けの一杯である(23杯目だが)。

 ルシファーが次の一杯を楽しんでいると配下の悪魔が大声で叫んだ。


「駄目です!直撃します、避けられません!」


 それは人間の兵器、戦闘機による物だった。

 翼を失った鉄の鳥は落下している。

 ルシファーはパラシュートと背負うとそのまま地上へ落下した。


「イヤッホオオオオオオウウウウウ!!!」


 ルシファーは今この上なく興奮していた、アドレナリン全開と言う奴だ。

 そしてそのまま地上へパラシュートを開き着地した。


 近くの建物を見ると新宿駅と書かれていた。

 同じ東京都内である永田町にある議事堂も近い距離である。

 ルシファーは近くの悪魔の拠点で大型バイク、ハーレーダビットソンを借りると単身議事堂へ向かった。


 ―議事堂周辺


 議事堂周辺はルシファーが放ったICBMにより焼け野原と化していた。

 ルシファーの駆るハーレーは大排気量のV型ツインエンジンによる独特の排気音を奏で、 そして重量感ある車体がその存在感を強調している。

 そしてルシファーは胸ポケットのサングラスを掛けると、議事堂の見張りの天使に天使殺しの弾を詰めたショットガンを次々とお見舞いした。

 このバイクに乗りながら撃つのは大好きな日本の人間のドラマで見た奴の真似である。


「邦題はあぶない悪魔!うーん痺れるねぇ~!」


 ルシファーはそう自分に酔いしれながら地下シェルターへの入り口を見つけた。

 重い扉を開けると見張りが一人もいない地下への階段が現れる。

 それはミカエルの一対一で戦ってやるという強い意思表示だった。

 そして地下シェルターの扉を開けると白いローブに身を纏った天使がいた。

 大天使ミカエルである。


「待たせたな、兄弟」


「あれだけの同胞を殺しておいて・・・・・・もう許さんぞ!」


 ミカエルは槍を構える。

 かつての異世界の槍同様に天使や悪魔を必ず殺せる武器だ。

 一方でルシファーもカインの剣(短剣)を構える。

 それを見たミカエルは驚いた様だった。


「馬鹿な!?カインの遺体と剣はこちらで回収したはず!どこでそれを!?」


「異世界さ!」


 ルシファーが一気に距離を詰めカインの剣で斬りかかる。

 しかしそれはミカエルの血肉を切り裂くには至らなかった。

 間一髪で避けたミカエルはルシファーにその槍を突き刺した。


「やった!ついにやったぞ!これで私が神となるのだ!」


「それはどうかな?」


 ルシファーは完全に油断していたミカエルの心臓にカインの剣を突き刺した。


「僕の心臓は反対側にあってね。それにカインの刻印で丈夫になっているようだ」


「そ、そんな……」


「おおっと、忘れ物だ」


 ルシファーは塵と化す寸前のミカエルの手を握ると、カインの刻印を引き継いだ。

 そして刻印はミカエルと共に消えた。

 後でミカエルの槍と現代のカインの剣も破壊すればルシファーを脅かすものはもうない。

 ルシファーは完全に天使に勝利したのだ。


 ―天界


「ここも懐かしいな」


 ルシファーは久々の天界を目に深呼吸する。

 そこは内装白一色で天国と呼ばれる魂の在処が部屋としてある。

 天国に運ばれた人間の魂はそこで極上の夢を永遠に見続けるのだ。

 そしてその廊下の先の一番大きな扉が開いた。

 神の間である。

 かつて神のいたその部屋には偉大な白い玉座が一つあった。

 神のみが座る事ができる神の座である。


「これで僕が神となる訳か」


 ルシファーが新時代の神となり現代の終末は幕を開けた。

 後は現代でも4騎士を召喚し、この世を破滅に導くだけだった。

 天使も人間も後は死ぬだけである。



 魔王ルシファーの怪物退治!〜異世界転移した最強の魔王は魔物を持ち帰り現代を侵略する〜-完-











「汝に神の資格があるか問う」


 神々しい何かの声が聞こえた。

 玉座が光輝くとルシファーと共に消えた。

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