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一般向けのエッセイ

「シン・仮面ライダー」 感想

 庵野秀明の「シン・仮面ライダー」を見ました。感想を書こうと思います。


 庵野秀明については何度か触れていて「才能はあるけど、限界がある」という取り扱いをしていました。「シン・仮面ライダー」を見る前も特に期待はしていませんでした。大体こんな感じでくるだろう、とハードルを立てた上で見ていました。


 結論から言うと、ハードルを越えてきた、という感じです。というか、(え? こんな映画作れるの? じゃあ、最初からやってよ!)という感じです。


 なので作品としては良かったです。というか、普通に好きな映画の一つになりました。まさか庵野秀明作品から「好きな作品」が出てくるとは思わなかったので、驚きました。


 ここで庵野秀明の作品を振り返るのも大変ですが、簡単に印象を書きます。やっぱり一番に名前があがるのはエヴァンゲリオンでしょう。エヴァンゲリオンは色々なバージョンがあるのですが、最終的にきちんと話が終わったというのは、一つもなかったという印象です。


 「シン・エヴァンゲリオン」のラストは嫌いじゃないですが、作品としては総じてわかりにくいものでした。そのわかりにくさは、作品そのものが複雑難解というよりは、作者が思わせぶりな要素を詰め込んで、それを解決できなかった為だと思います。とはいえ、庵野秀明も全く才能がないわけではなく、ところどころ興味深い所もあるので、全く駄目というわけでもなく、とはいえ本当に深い哲学性があるわけでもなく、どっちとも言えない、評価が難しい作品になってしまいました。


 「エヴァンゲリオン」はそんな風に「才能は感じるけど整理されていない作品」「エンタメ作品なのか文学的な作品なのか作者自身も決定できなかった作品」と見ていました。そういうごちゃごちゃしたところに、考察やら何やらが入ってきて勝手に神格化されていったという印象です。


 その後には「シン・ゴジラ」を見て、(駄目だこりゃ)と思いました。庵野秀明の作家性が薄められて、世間に迎合するストーリーだったので(庵野秀明は終わったな)と私は思いました。


 時系列的に言えば「シン・ゴジラ」の後に「シン・エヴァンゲリオン」を見たので、その印象は改訂され、(あ、庵野秀明はまだ死んでなかったんだ)と思いました。


 「シン・ウルトラマン」は未見なので印象はありません。そんな状況で「シン・仮面ライダー」を見ました。


 見て、驚いたのは、話が綺麗に収束しているという事です。作中では、最近のヒーロー物によくある感じで、「ヒーローが暴力を振るう事に葛藤を抱く」というテーマが挟まれていました。


 この問題をエンターテイメント作品が綺麗に解く事を私は期待していないし、この問題を突き詰めて解くのは極めて難しい事です。理屈だけで言えば、この問題の解き方は、「暴力を振るうヒーローが最後には暴力によって倒される」以外にはないように私には思えます。ただ、この問題について考えだすと面倒になるので、ここではこれ以上話さないようにします。


 いずれにしろ、こうした問題は作品内部でやりだすと難しい話になるので、私はこの問題を庵野秀明が綺麗に解くのを全く期待していませんでした。(またエヴァみたいな感じで放り出されるんだろうな)と身構えていたら、ラストで、それなりに納得のできる結論が示され(おお)と思いました。


 このラストに関しては、エンターテイメント作品としてはかなり苦い味わいの残る終わり方で、なんだかんだエンタメの枠を越える事はできないだろうと予測してい庵野秀明が一歩、二歩、そこを破ってきた事に驚きました。(やればできるんだ!)というのはそういう事です。 


 とはいえ、エンタメ作品として悪をぶっ倒す爽快感を求めていた人から不満の残る作品だったろうと予測されます。そういうスカッとするストーリーはかなり抑制されていたので、エンタメを期待していた人は失望したでしょう。


 作品全体の質は、わざと低いものを狙っている感じがありました。CGはしょぼいし、戦いのシーンも安っぽいし、役者は棒読みだしで、自主制作映画的な感じがありました。


 ですが、そういう自主制作映画的な雰囲気が私は嫌いではありませんでした。というより、六十過ぎて、もう一度初心に還ったような作品を撮れるのが(なかなかいいな)と思ったぐらいです。


 作品の欠点に関しては上記で書いたように沢山あります。人類を救うとか救わないとかいう大きな話なのに、いつも数人のメンバーが喋ったり、殴り合ったりしているだけで作品のスケール感が感じられないというのも欠点の一つでしょう。


 ですが、その欠点も私はそれほど気にならなかったです。正直、あまりにしょぼすぎて苦笑するシーンもあったし「辛いという字に一本線を足せば幸福の幸になる」と、ヒロインの女の子が言う場面も、(おっさんの説教か!)と笑ってしまいました。


 しかし作品も終盤になると普通に見入っている自分がいました。作品のまとめ方に関しては今までの庵野秀明作品にない、整合性がある終わり方になっていて、見終わった後、いい映画を見終わった時にある、ある感触を味わった気がしました。この感触を庵野作品から得られるとは思いもしなかったです。


 そんなわけで、今回の「シン・仮面ライダー」は私の予想を覆すものでした。というわけで、これまでの私は庵野秀明を見損なっていたという事になりますから、ここで庵野秀明に勝手に謝罪しようと思います。庵野秀明監督、すいませんでした。こんな作品が作れるとは思いませんでした。


 …そんな感じで、私は「シン・仮面ライダー」という作品を気に入っています。正直、次の作品が楽しみですね。六十の齢を過ぎて、庵野秀明が一段いい作品を作るとは思いもしなかったので、いいサプライズになりました。おすすめです。


 ※ 私は昔の仮面ライダーは見た事ないので、この作品がどういうなのかわかっていません。この作品のバランスが、原作を重視した結果「たまたま」取れたバランスだったら嫌だなあ…と思っています。

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