第98話(リウの遺産)
レアのコアとなったリウ。
その遺産を相続することとなったレアとレイカー。
しかし、その中に大きな負の遺産があり、その処理に苦しむこととなるのであった。
レアはレイカーと共に、リウが消えたあとの色々な手続きを始めることにした。
先ずは遺産相続関係である。
リウはアーゼル財閥の株式を2%ほど所有していた。
これは亡くなった母の保有分を相続したものであり、約25年間の保有で、支払われた配当額が約2500億ノイエドルに及んでおり、莫大な金額が口座にプールされていた。
その他にも、かつてリュウ・アーゼルとして、財閥の交渉人として稼いだ分が300億ノイエドルに及んでおり、支出した金額を除くと、リウの口座には2100億ノイエドル程が残っていたのだ。
ところが、生涯の最後に、巨額の借金をして帝國軍の中古艦艇800隻余りを購入した。
その金額、約6000億ノイエドルという巨費......
300隻をノイエ軍に売却し、差し引き約3500億ノイエドルの借金が残っている。
復讐戦で200隻余りを自爆させ、残った300隻はアウローラ社に移したが、アウローラ社の財務余力では300隻の代金を支払うのは不可能。
一応、新規株式を発行して300隻の代金に置き換えていたが、事実上無償供与状態となっている。
レイカーが相続したリウの口座に残っている金額を全部返済に充てても、約1400億ノイエドルの借金が個人として残ってしまうのであった......
「なにが大丈夫よ、リウの噓つき」
レアが半分ブチギレていた。
「私とレイは、三国同盟イチの借金王じゃない? 1400億ノイエドルも個人で借金している人、何処にもいないよ」
あまりの借金額に絶望するレア。
「まあまあ、レア落ち着いて。 アーゼル財閥の株式の価値はそれを上回っているのだから」
レイカーはレアを宥める。
それに対してレアは、
「レイ。 私はお金が掛かる存在なのよ。 エネルギー消費量がトンデモナイんだからね」
「今、請け負っている事務処理、全部キャンセルしようかな? 経済止まっちゃうけどね。 エネルギー消費量の大半はそれが原因だから」
それを聞いて、レイカーは少し慌てた様子で、
「ちょっと待って。 それは大問題になっちゃうよ」
「とりあえず、私が請け負っている事務処理契約を全て見直して、再締結する必要があるわね。 今まではリウが支払ってくれていたから、赤字で請け負ってきたけど、これからはそうもいかない。 私達、世紀の借金王」
レアは、借金王云々のフレーズが気に入ったようだ。
確かに、レアのエネルギー消費代金の支払いは、年間約30億ノイエドルにものぼっていた。
しかし、収入は半分以下の10億ノイエドルほど。
赤字で事務処理を請け負っていたのは、リウに支払われる配当金が年間100億ノイエドルほど有り、赤字でも十分補填出来ていたからだ。
先ずは、アウローラ社の事務処理請負分の年間契約額の見直しをすることにした。
アウローラ社はリウの死後、レイカーが筆頭株主で95%の権利を所有しており、見直しを簡単に承認出来るからであった。
一気に契約額を5倍に値上げして、レアの赤字を解消、エネルギー代金の変動も考慮して、少し利益が出る様に設定し直した。
それに伴い、アウローラ社の利益が半減となるが、これは致し方ない。
レアに事務処理を拒否されたら、あっという間に倒産してしまうのだから。
今まで契約関係は全てリウ名義だったが、契約変更で必要なレアの国籍・戸籍は、エルフィン人から新規発行して貰うことで解決した。
エルフィン人の国籍・戸籍証明は三国同盟内何処であっても有効であり、非常に便利だからである。
エルフィン人の最高実力者の一人、AA・アーガンに事前依頼してあったので、西暦3901年8月10日生(エルフィン人扱いなので、エルフィン暦だと全く異なる誕生日であるが)で無事に証明が発行されたのだ。
「これで、一つは解決ね」
レアが一安心する。
最も大きな契約額の一つが、アウローラ社の事務処理であったからだ。
リウの持分をレイカーに移す相続手続きも、アウローラ社分はスムーズに終わっていたので、一番早く解決出来る案件であった。
「レイ。 次は軍部門と統治部門、それぞれの契約見直しだよ。 現在の統治官は私だから、統治部門の再契約は直ぐ終わるけど、軍の方はレイに段取りお願いするね」
「はーい」
レイカーにしたら、少し間延びした返事で珍しい。
守護対象であったリウから、守護の要らないレアになった影響で、言葉遣いが柔らかくなったようだ。
軍のポジションは、宙ぶらりんのままのアーサ少将。
意識を失った時には、方面軍総司令官付き首席幕僚兼統治官補佐という肩書であったが、リウが居なくなると、何の実権も無い肩書となっていた。
当面、総司令官も兼務となったルー大将に、レイカーはアポをとって出掛ける。
「レイ。 久しぶり」
ルー大将が親しげに声を掛けてきたので、
「大将閣下も、お元気そうで何よりです」
わざと堅い返事をするレイカー。
「どうしたんだ? 改まって」
「実は、レアより方面軍の業務委託契約金額変更の申し入れが有りましたので、その報告に参りました」
「金額の変更?」
「今までは、リウ・アーゼルの為に赤字で請負っていたのです。 そのリウが居なくなった以上、今までの金額では到底請負えないということです」
「改定に応じない場合には?」
「こうなります」
レイカーはそう言うと、指をパチンと鳴らす。
そして、そのまま無言で座り続ける2人。
3分後。
方面軍のシステムが全てダウンし、パニック状態に陥っていた。
「総司令官。 システムダウンで、何も起動しません」
ルー大将のもとに、続々と報告の為に部下が駆け寄って来る。
その報告を聞きながら、状況を冷静に見守りつつ、ルー大将はレイカーに質問をした。
「統治官は、改定に応じたのか?」
「レア自身が統治官ですからね。 レアの統治官としての規定の給料分だけ利益が出る金額で、再契約致しました」
レイカーが答えると、
「わかった。 直ぐに検討して、適正な金額をこちらで再計算させるよ」
「よろしくお願いします。 レアは請け負っている業務分のエネルギーを消費します。 かなりの代金をエネルギー企業に支払わなければなりませんから」
レイカーはそう答えると、システムダウンは即解消された。
「今までは、リウが全部支払っていたので、赤字契約だったということなのだな」
ルー大将も、状況の変化を理解した。
そして、3倍に値上げを求める改定案を見ながら、
「いやあ。 リウが大金持ちだったって、今更ながら実感したよ。 結構自腹切っていたのか?」
「レアが消費するエネルギー代金分だけで、年間20億ノイエドルですね。 自腹分」
「ひえ〜。 高い名声を得るのも、金無しでは難しいのかな?」
「彼女は出自の良さをさり気なく、社会に還元していたのですよ」
「なるほど。 それでレアの時代になり、今までの様にはいかないと」
「リウは大借金を残して、この世から消えてしまったので、レアとしては、その後始末をしてからでないと、何も始められないのです」
その言葉を聞いて、ルー大将はピーンと来た。
「それって、アルテミス王国から購入した例のヤツの代金か?」
「御明察のとおりです」
「復讐の代金としては、桁外れだろ? まあ、そういうスケールの人物だったってことだよな」
「レアも、同一人物なのですけどね。 異なるのは出自ぐらいですが」
「その差が大きいってことか。 納得したよ。 これからは、適正な価格を提示するように指示させるよ」
ルー大将とレイカーの事前打ち合わせはこれで終了した。
次は、レア本人が交渉と契約で出て来る番である。
「レイ、ありがとう。 今までが異常な安価だってのだから」
レアは御礼を言うと、
「近いうちに、クロノス星系に行かなきゃだね。 アーゼル財閥からの請負分の価格改定も重要だし、リウが総帥から預けられていた名義限定保有株式の件や借金の関係もね」
アーゼル財閥は、株式の所有権を一族に限定する特殊な株式の発行が大半を占める。
リウが母から相続した株式も、それで有った為、レイカーが相続人であっても、リウの夫というだけではアーゼル一族と認められないので、所有権が移せないのだ。
しかもこの権利を喪失すると資産が大幅減少し、レアとレイカーは、1400億ノイエドルという巨額な借金を抱えた本当の『世紀の大借金王』となってしまう。
「首都星系までは、レアー号で?」
この確認の言葉で、レイカーはレアの虎の尾を踏んでしまった。
「レイ? レアー号でクロノス星系往復するのに、幾ら掛かるかわかっている?」
タジタジのレイカー。
レアの怒った様子も、
『カワイイ』
と思いながら、一応恐縮した表情を見せる。
そうしないと、マジビンタが来そうな雰囲気だったからだ。
「往復で2000万ノイエドルは掛かるのよ。 その他に停泊代だって掛かるし、事務処理業務を沢山請負っているネイト・アミューとの間の通信費だって掛かる。 私達が客船で行けば、1万ドルで済むんだからね。 リウに慣らされていたから仕方ないけど、レイも意識を変えないと。 私達は世紀の借金王なのだから」
「はい......」
「借金を整理し終えたら、前の様な移動方法も使うけど、今は我慢して。 私は襲撃されたって傷一つ付かないし、護衛の心配無用だから」
「わかっているよ。 ゴメン」
「それにたまには、客船も良いわよ。 することが少ないから、アレ三昧の旅になるかもよ」
何だかレアは少し楽しそうである。
レアの言葉を聞きながら、
『創業者のリウには申し訳ないけど、アウローラ社の売却も考えないと駄目かな?』
そんなことも考え始めたレイカーであった。
数日して、方面軍との業務委託再契約の日がやって来た。
ルー大将から、算定し直したとの連絡があったからだ。
この日は、レアひとりで方面軍艦隊司令部に向かう。
護衛機械兵は、相変わらずレアを見てもチェック等を行おうとせず、何の反応もしない。
それは、機械兵から見たらレアは御主人様だから、致し方ない。
そのまま素通りして、ノックもせずに司令官室の中へ入って行った。
いきなり入って来たレアに驚く、側近や参謀達。
「先輩、ゴメン。前の癖で」
リウの記憶から、つい同じ様な行動になってしまうという。
「まあ、そこに座って」
慣れた様子でルー大将自ら、応接セットのソファーに座るよう勧める。
レアはリウと異なり、オシャレに気を遣っている。
だから、この日も、リウの私服姿とは全く別人という感じであった。
「レアになって、見違えたなあ~。 やっぱりリウは超美人だったんだな」
開口一番、宣う大将。
「リウも、総帥に変な育てられ方していなければ、こういう感じだったのよ。 私はそれを具現化しているだけ。 彼女の潜在意識にはオシャレしたいっていう、女性として当たり前の願望も有ったのだからね」
暫くは、こういうスタイルをして、リウが実現出来なかった願望を叶えてあげているそうだ。
「じゃあ、そのうち、前みたいなズボラな格好に戻るのかい?」
「そうなるよ。 だって私達、世紀の借金王だから」
「何だ? そのワード」
「暫く使うよ。 借金が無くなるまで」
個人としては有り得ない金額の借金を背負っている2人。
英雄の残した負の遺産であった。
「名声の裏に、残った借金。 リウの名誉の為にも何とか返済するしかないのだな。 死後直ぐに夫が破産では、外聞が悪過ぎるから」
そう言いながら、ルー大将は新しい契約関係書類を見せる。
じっくり見るレア。
頭の中で、エネルギーコストを計算してから、
「厳しい数字ね。 あと1割契約金額上げてくれないと、赤字なんだけど」
そう言って、大将に書類を返す。
「そうなのか?」
「交渉ってそんなものよ。 いきなり妥結出来る様な数字を官僚達が出してくる訳ないじゃない? 軍だってこういう部門はただの官僚だからね」
残念そうな表情のレア。
一度で再契約出来ず、面倒だなと思っている。
「今まで、リウがあまりにも安い金額で請け負っていた反動だから、仕方ないけど......本音を言わせて貰えば、私としては軍部門の事務処理は、請け負わなくても構わないんだよ」
それを聞いて渋い表情になる大将。
「いきなり打ち切りは困るよ」
「それがわかっているから、突き返したの。 もう一度属僚達に、今から自前で全て揃えるコストと、このまま私に委託するコストを計算させて、どっちがお得か真剣に議論してみてね」
そう言うと、レアは立ち上がる。
「長官も忙しいでしょ? リウも居なくなって」
「まあ、そうだな~」
「邪魔しちゃ悪いから帰るね。 その再契約の見直しの返事は、ちょっと先で良いよ。 とりあえず、もっと早く片付けなきゃならないことが沢山有って、首都星系に行くから」
レアはそう言いながら、ルー大将に手を振り、
「先輩、じゃあね。 またそのうち。 こっちに戻って来たらレイから連絡させるよ。 首都星系でレイの軍における身分も正式に決めてくるから」
そう言い残すと、方面軍艦隊司令部の建物をあとにするのだった。
その2日後。
レアとレイカーの姿は、惑星ネイト・アミューの民間宇宙港ターミナルにあった。
待合室で、予約した貨客船を待つ2人。
ごく普通の人々と一緒に待っている姿は、リウの時代には考えられない光景だ。
やがて乗船し、3等客室の個室に入って行く2人。
レアが美女であることを考慮して、流石に4人相部屋を選ぶことはしなかったが。
「壁が薄いね」
手で叩きながら、レアもケチり過ぎたかと、ちょっと後悔。
「薄くても、隣の声は聞こえないように作られているよ。 3等客室といえども、40世紀時代の宇宙航行貨客船だからね」
レイカーは解説をする。
「レイ。 誰に解説しているの? 私は基本的になんでも知っているから、解説要らないよ」
レイカーは読者に解説しているのだ。
「長い旅だから、2人で存分に過ごそうね」
レアはレイカーに意味深な言い方をする。
「では、早速......」
レイカーは不老装置のリミッターをレアに外された影響で、20歳くらいに若返っていたので、元気いっぱい。
若い2人が、何の娯楽も無い貨客船で過ごすのだから、することはアレぐらいしかない。
直ぐに、2人だけの世界に入ってしまったのであった......
アルテミス星系経由の貨客船。
惑星アルテミスまで1週間。
そこで、貨物船として荷物の積替え等が有るので、1日停泊して、クロノス星系まで1週間。
合計15日間の行程で、惑星ヘーラーに到着する。
惑星アルテミスに着いた時、レイカーは腰痛で動けなくなっていた。
「ゴメン、レア。 動けない......」
「だらしないわね。 私は全然大丈夫なのに」
レアは2人っきりでずっと過ごせて大満足の様子であった。
「レア様が尋常な方でないことは、よくわかりました......」
レイカーは冗談っぽい言い方をするも、結構重傷のようだ。
2人っきりで存分に愛し合えて非常に嬉しかったものの、その代償は肉体に如実に出てしまっていた。
「レイ。 ちょっと治療してあげるわ」
気の毒そうな表情でレアはそう言うと、レイカーに腰部に対して、手を当てる。
暫くすると、
「腰痛が無くなった」
レイカーは不思議そうな顔をして、立ち上がる。
「まあ、ちょっとヤり過ぎたね。 ふふふ」
レアはそう言いながら、
「さあ、久しぶりに地面に足をつけられるんだから、一息入れに外に出掛けようよ」
惑星アルテミスの街中に繰り出したレアとレイカー。
久しぶりの訪問である。
レアはもちろん初めて。
とは言っても、リウの記憶を全て引き継いでいるので、当人に初めてという感覚は無い。
すれ違う人々が次々と、レアをチラ見する。
「レイ。 みんな、どうして私をチラ見するの?」
レアはレイカーに質問をする。
「それは、レアが超美女だからだよ」
「リウは、こんなにチラ見されていなかったよね?」
「リウはオシャレしなかったから。 レアはお洒落しているよね。 その差だよ」
「なるほど~。 見た目が全く同じでも、着ている服装や髪型で反応が異なるんだね」
レアはレイカーの答えに納得したのであった。
「一つ勉強になったな~。 レイありがとう」
王宮に近い繁華街のシャレたカフェで、2人でゆっくり過ごしている時に、レアが御礼を言ったので、
「何が勉強になったのですか?」
「同じ人物に対しても、姿が少し違うだけで、人の見方が変わるってことにね」
「なるほど~。 生体頭脳から人になったことで、情報やリウの記憶だけではわからない、経験で得るものが有るってことですね?」
レイカーがレアに確認すると、レアが満面の笑顔を見せる。
その笑顔を見て、
『やっぱり、レアかわいすぎる~』
レイカーがそんなことを思いながら、ふと見渡すと、2人の周囲は人だかりになっていた。
レアのことをモデルだと思っている通り掛かりの人が大勢いて、立ち止まる人が増えたことで、人が人を呼び、ちょっとした騒ぎになりかけていたのだ。
「レア、店に迷惑掛けるから出よっか〜」
レイカーがレアに声を掛けると、レアも騒ぎに気付いて、
「そうしよう。 皆さん、私は一般人で、なんでも無いですよ」
そう言いながら、騒々しい雰囲気に、慌てて店を出る。
その時、偶然通り掛かったエリー・シュンゲンが、人だかりに気付いて、近寄ってみたところ、見知った2人だったので、
「リウ? それとレイ?」
と言いながら、レアとレイカーに声を掛けて来たのだった。
声を掛けられて、振り返る2人。
「エリーさん?」
レアが思わず声をあげる。
「2人とも随分、人が集まってお困りのようだから、場所を変えましょうか?」
エリーがそう言うと、エリーの護衛の者達が、集まっていた人達を巧みに誘導して、騒ぎは収まる。
「ありがとうございます。 エリーさん」
レアが御礼を述べると、
「亡くなったのだから、リウじゃないわよね。 でも私のことを知っているの?」
「それについては、場所を変えてお話します」
レイカーがエリーにそう話すと、
「リウの旦那さんから聞いた方が早いわね。 それでは、うちのオフィスに行きましょうか?」
エリーは2人にそう勧めると、直ぐにやって来た迎えの車両に案内するのであった。
「びっくりしたわ。 まさにリウの生き写し。 しかもオシャレしていたから、あまりの美女ぶりに物凄い人集りになっていて」
エリーは開口一番そう切り出す。
「まあ、私はリウの生まれ変わりみたいなものですから」
レアはその様に自己紹介する。
そして、レイカーが事情を簡単に説明し、口外しないようにお願いもする。
「なるほど〜。 じゃあ、リウはレアの中に居るってことなのね。 なんだか不思議」
エリーは真相を知り、その感想を述べる。
「エリーさん。 リウが口約束して、果たしていないことがありましたよね?」
レアがリウの記憶を辿ってから、確認する。
「うちの製品のモデルをやらないかっていう話? あの後、大元帥様になっちゃったから、頼めなくなっちゃったのよ」
エリーが答えると、
「やってもイイですよ、そのモデル。 私で良ければですが......」
レアが予想外の返事をしたので、
「本当に? 本気で? やってくれるの?」
エリーは既に興奮状態。
「私でつとまるのなら......ですよ?」
「全然つとまるよ~。 さっきの街中での注目度、凄かったじゃない? レアさんの方がリウよりも女性らしい体型だし、やってくれるのならば、きっとうちの商品、大ヒットするわ」
超乗り気のエリー女史。
レアは、数年前の口約束を、リウの代わりに果たさねばと考えただけだったのだが、トントン拍子に決まってしまいそうな雰囲気だった。
「今、私達、首都星系に帰る途中なので、用事を済ませたら、帰路でもう一度惑星アルテミスに寄ります。 詳しくはその時に」
レアが提案すると、
「わかったわ~。 今日は、少し時間有るかしら。 レアさんの体型データだけでも採らせて欲しいのよ」
エリーはそう言うと、側近の者を呼び、やがて部門の責任者と担当者がやって来た。
そして、自動のシステムで採寸や撮影等の簡単な作業は、あっという間に終わる。
「それでは、クロノス星系での用件が終わったら連絡入れます」
レアはエリーの直接の連絡先を教えて貰い、改めて約束する。
「じゃあ、お願いね。 待っていますから」
エリーは念押しすると、レアとエリーはハグをしてから、エリーのオフィスの玄関先で別れたのだった。
「レアはリウの代わりに、彼女が約束していたことを果たしていきたいの?」
レイカーは、レアの真意を知りたくて、質問をする。
「当面はね。 彼女が約束したことで実現出来ていないことは、そんなに残っていないから、レイに迷惑掛けることにはならないと思うよ。 それに」
「?」
「この仕事も成功すれば、一定の収入源になるでしょ? 私達借金王だから」
「そのフレーズ、そんなに気に入ったの?」
「ふふふ。 どうかしらね」
民間宇宙港へ歩いて向かいながら、2人は他愛の無い会話を続ける。
すれ違う人々の多くが、レアの容姿に惹かれて、ちらっと一瞥していくものの、レアはそういうのを気にする性格では無いようだ。
「リウは英雄だったから注目を浴びていたけど、レアは容姿で注目を浴びるのだな。 同一人物なのに不思議な差」
レイカーは、周囲の様子に少し警戒しながら、そんなことを考えていた。
「いずれレアのことが知れ渡る様になり、これからの永遠に近い様な時の流れの中で、必ずレアの超越した能力を狙ってくる権力者層が現れるだろう。 そういう対策も2人で考えていかないとダメだな。 リウの時と異なるのは、僕達には2人しか居ないってこと」
レアの美し過ぎる横顔を眺めながら、新たな決意をするのであった......
更新したあらすじに少し記載して有りますが、新章を鋭意作成中となります。
その為、RIU篇とREA篇の間を繋ぐ話を数話作成予定です。
予定より2週間程早いですが、98話を投稿させて頂きました。




