第97話(最後の再会、そして)
リウは、レアのコアでレイと最後の再会を果たす。
そして、リウ・アーゼルの生涯が終わり、人々は彼女の背負っていた運命を知り、感謝するのであった。
リウはレアの中に取り込まれると、レアの中核部であるコアへと案内された。
そこは、真っ白な無の空間。
その中央部に、大きな木が2本生えており、寝心地の良さそうなハンモックの様なものが、間に架けられている。
そして、そこにはリウの見知った人物がスヤスヤと寝ていた。
レイであった。
「レイ、起きて。 交代のリウが来たから」
レアが声を掛けると、欠伸と背伸びをしながら、レイが起き上がって、下に飛び降りる。
やにわに、リウに抱き着いたのであった。
「リウ。 逢いたかった。 ずっと逢いたかった......」
レイがリウを抱き締めたまま、涙を流して語り掛ける。
「どうして......ここに居るの?」
リウは、呆然としつつ涙を滲ませながら、質問をする。
「君を護る為......」
レイはそこまでで、言葉に詰まってしまった。
涙で話を続けられない......
レアがレイの代わりに事情を説明する。
「リウが襲撃された時、私もレイもそれぞれ大きな判断ミスをしてしまったの」
「......」
「どちらかのミスが無ければ、ラートリー大佐もエーレン少佐も亡くなることは無かった」
「そして、2人が亡くなったことで、リウの護衛は大幅に体制が弱体化してしまったよね?」
「それを補うには、レアのコアに誰かが存在することで、レアの判断ミスをゼロにするのが最良だったの。 私が不完全体のままで居ることは、再びミスをする原因になるから」
そこまで話を聞くと、リウは首を横に振った。
「だって、それは、私がいつまでも先延ばしにしたからだよ。 早く決断して、私がレアに取り込まれていれば、2人は今も生きていたのだから......全部私のせいなの」
そこまで話をすると、リウも号泣となってしまった。
「レアが僕の意識をなんとか戻らせようと、生命の神秘や不老装置の真実に迫り過ぎた......言い方を変えれば、神の領域に触れたことで、僕は気付くとレアのコアに居たんだよ」
「だから、僕はレアと一緒にリウを護ることを決断した。 早く意識を取り戻して、リウの残り少ない時間、一緒に愛し合いたかったよ。 もちろんね」
「でも、それでは別れの瞬間が辛すぎる。 リウと別れる時、僕は死を選んでしまうと思ったんだ」
「ここで待っていれば、リウがやって来た時に、強制的に入れ替わり、僕は意識が戻ることになる」
「一番知りたかった、リウがレアに取り込まれた後、どうなるのかということも、実体験で理解出来る」
「その為、僕はレアのコアに居続けたんだ」
「そしてコアでの経験で、僕は真実を知った」
「レアのコアは、天国の様な場所」
「そして、レアを通して、レイとリウは永遠に愛し合うことが出来る」
「僕がレアと愛し合えば、その時コアに居るリウとも一緒に愛し合っているってことがわかったんだ」
「逆にコアに居るリウも、レアを通じて、レイの愛を感じることが出来る。 一緒に絶頂を感じることもね」
「これって凄いよね......」
「私のコアは、やっぱりリウじゃなきゃ駄目なの。 私のオリジナルはリウだから」
「そして、今、レイが話をした通りだよ」
「コアに居る普段のリウは、殆ど休んでいることになる」
「でも、レアが求めた時、リウは起こされるの」
「それは、判断を求める時だけじゃなくて、生命の神秘に関わる事象の時も。 だから、私とレイが営みをする時だよね」
そう言われると、リウは少し恥ずかしそうな表情を見せた。
「僕は、レアのコアの神秘を知った。 だから意識が戻ったら、レアと一緒に死ぬまで過ごすよ。 そうすれば、ずっとリウとも一緒に居られる。 僕はリウと別れる寂しさで、死を選ぶ必要が無いって言うことを、コアでの実体験で理解出来たんだ」
そう話したレイは、再びリウを強く抱き締めた。
やはり、別れは辛い。
レアとリウは、似て異なる者。
でも、リウが完全に消えてしまう訳では無い。
2人は、コア内で抱き締め合うことで、お互いの気持ちを完全に共有出来たのであった。
すると、
「レイが自分の体に戻る前に、一つ言わなきゃイケナイことが有るんだ......」
レアが珍しく、歯切れの悪い喋り方をする。
「どうしたの?」
「ごめん。 意識回復させようと不老装置弄り過ぎて、リミッター外れちゃった......」
「それって、どういうこと?」
リウとレイが声を揃えて確認する。
ドンピシャのタイミングで同じ言葉を口にしたので、笑い合う2人。
「寿命が『∞』になっちゃったみたい......」
レアは、両手で丸を2つ作り、胸の前で、くっつけてみせた。
「まさか、無限ってこと? 若いままで?」
「たぶんね」
顔を見合わせるリウとレイ。
2人共、『ずっと一緒に居られる』と思い、嬉しそうな表情を見せたので、レアは安心した。
「それでは、もう時間だよ。 リウはあの大木の間に立って。 そうすれば、レイは私のコアから追い出されて、自分の体に戻るから」
ゆっくりと大木の間に向かうリウ。
そして、その場所に立った瞬間、リウはレアのコアに完全に取り込まれ、レイは外に弾き出されたのだった。
レイカーはレアー号の手術台カプセルの中で、ようやく目を覚ました。
あの襲撃で大怪我をしてから、半年以上が経っていた。
カプセルから出ると、もちろん素っ裸。
そして、そこには、同じく一糸も纏っていない、リウとそっくりな女性が立っていた。
「レアだよね?」
レイカーの質問に女性が答える。
「そうだよ」
やがて、2人は抱き合う。
「初めて、レアの全てを見た感想は?」
とレアは質問したものの、
「聞く迄もないね。 アレが反応して答えてくれているから」
そう言うと、レアはクスクス笑う。
「いいかな?」
レイカーがレアに、いきなり営みを求める。
「もう。 仕方ないな~。 みんなが司令部で待っているんだよ?」
「待たせておけばイイさ。 先ずは新しく始まる2人の時間の方が大事だよ。 コアに入ったばかりのリウにとってもね」
レイカーはそう言うと、レアに唇を重ねる。
レアの手は、既に大きく反応しているレイカーの大事なモノを優しく触り始めるのであった......
それは、コアに入ったばかりのリウにも伝わる。
『まだ、レアが完全体になったばかりなのに......』
そして、レイカーの唇の感触が伝わってくる。
『本当だ。 今、まさにレイと抱き合って、キスされた感覚だ』
そして、コアに居るリウも快感に包まれ始めたのであった......
約1時間後。
レアとレイカーの2人は着替えて、司令部に向かう。
「30分くらい待っててと、最後にリウは言っていたけど......」
1時間以上待ち惚け状態のルー大将以下の面々。
リウが、本当に消えてしまった悲しさから、待っている間、全員が殆ど言葉を発しなかった。
その場に残ったリウの制服や下着等を、リウの依頼通り畳んで預かった副官のリン・キートラン中佐。
すると、方面軍艦隊司令部の司令官執務室のドアが突然開いた。
守衛の機械兵が、誰かを通したようだ。
ドアの向こう側には、一人の女性の姿が見えていた。
『リウ?』
その女性を見て、みんながそう考えた。
顔はリウ・アーゼルと全く同じで、私服姿の女性が入ってきたのだ。
「彼女は、レア・アーサ。 リウ・アーゼルでは無いよ」
その声を聞いて、その場に居たほぼ全員が驚く。
声の主は、レイカー・アーサであったからだ。
そして、レアの紹介をしながら、執務室に入ってきた。
「レイカー。 意識が戻ったのか?」
コーダイ中将とジン准将が、嬉しそうに声を掛ける。
そして次々と、レイカーと握手をする、方面軍司令部で待っていた面々。
マリー・ルーナ中将とは、最後にハイタッチをした。
レアは、リンからリウの制服と下着を受け取ると、
「オークションに掛けられても困るからね~。 最期にリウが着ていた服だっていうことでね」
そんなことを言ったので、みんながビックリしてしまった。
声もリウと同じ。
皮肉の言い方迄、似た雰囲気だったからだ。
「初めましてだよね? 皆さん」
レアが挨拶をすると、
「そうだよ。 前に一度レアの姿を見たのは、アイザール先輩と亡くなったパルトネール少将だけだから」
レイカーがレアに説明をする。
「皆さん。 今までリウ・アーゼルの為に、身命を賭して一緒に戦って頂き、ありがとうございました」
レアは感謝を述べると、頭を下げた。
続けて、
「リウ・アーゼルは死んだのではありません。 前人未踏の壮大な計画の、約束した対価を払う為に、皆さんの前から去らざるを得なかっただけです」
「これからは、皆さん自身がリウの分も合わせて考えて行動し、彼女が生涯を賭けて成し遂げた、『三国同盟に住む市民を侵略者から護る』という果実が、いつまでも実り続ける様に、努力して欲しいなと思います」
そう言うと、レアはリウと全く同じ笑顔を見せたのであった。
「私も、私の中に居るリウも、これからは皆さんを手伝うことは出来ません。 私の能力は人智を遥かに超えており、歴史を歪めてしまうからです」
「私が出来るのは、今までもやってきた、統治官や企業活動の事務処理ぐらいに限られます」
「だから、私に、レアとリウに期待しないで下さいね」
その様に説明したのだ。
「リウ・アーゼルについては、どう説明したら良いのかな?」
ルー大将は待っている間、今回の件を居なくなったとすべきか、亡くなったとすべきか、発表方法の判断を迷っていたのだ。
「この日が来るのは、シヴァ丞相やアルテミス王室も事前に知っていたことです。 両国と協議をして、同じ内容で発表されるのが宜しいでしょう。 概ね事実に沿った形の内容で発表することになると思いますよ」
レアは、他の2カ国と相談する様に勧めたのであった。
「もしかして、レアってリウより背が低いのかな? それと胸の大きさが全然違う様に思うのだけど」
ルー大将が続けて質問をする。
「やっぱり先輩は、むっつりすけべーだね。 でも正解。 その2つがリウのコンプレックスだったんだよ。 だから、新しいリウである私は、それを修正したの。 やっぱりリウは、なるべく完璧で有って欲しいじゃない?」
レアによると、
身長は179センチ→175センチに
胸はAカップ→Cカップに
なったそうだ。
「リウにも容姿でコンプレックスが有ったなんてね。 胸はわかるけど、高身長もだったとは」
マリー・ルーナ中将は、
『アルテミス王国社交界の華』
と言われていた、女性のリウを知っていたので、予想外だと話したのであった。
「それで、レアは今後、どうするのだ?」
ルー大将が核心を突く質問をした。
「皆さんとは、さようならだね。 寂しいけど」
レアは簡潔に答える。
「また何処かで見掛けた時は、声ぐらい掛けてね」
笑顔を見せると、
「とりあえずは、リウがやり残したことが幾つか残っているので、それをやってみようかな? 軍事的なことや政治的なことじゃなくて、ごくごく普通の女性としてのね」
そう言って、今後の方針を仄めかしたのであった。
一通り挨拶を終えると、レアはレイカーと一緒に帰って行った。
そして5分後には、レアー号も何処かヘ飛び去ったのだ。
「基本的には、もう会えないってことだな」
あっという間に、姿を晦ましたレアとレイカーの行動を見て、ルー大将はそのことに気付かされたのであった。
「まさか。 今、挨拶に来たのに?」
ジン准将がそう答えると、
「大将閣下の言う通りだと思う。 さっきのは永遠の別れに近い挨拶だよ」
コーダイ中将は、レイカーの表情を見て、そう感じていたそうだ。
「ルーナ中将はどう思います?」
ジン准将が、一番付き合いの長かった、同じ女性としての意見を求めた。
「私人として偶然に会って、食事するとかお茶するとかは有り得るでしょうね。 または、社交界に突然出て来たり、はたまた芸能人になったりして、日常生活でレアちゃんを見掛けるということは、今後も十分有ると思うわ」
「でも、リウみたいに、私達の直ぐ側にずっと居てくれるとか、頼りになる隣人で居続けてくれるとか、一緒の目的を目指す盟友や親友になってくれるとか、そういうのは、もう永遠に無いと思う」
その様に話すマリーは、流石に寂しそうであった。
「遠くに行ってしまったということなのですね」
3人の意見を聞いてようやく、状況を把握出来たジン准将。
「きっと、大きなピンチになった時とかに、さり気なく支援してくれるのでしょう。 または道を大きく外れてしまった時には、強制的にリセットを掛けたり」
「でも、我々の前に姿を見せることは無い。 そういうことですかね?」
ジン准将のその意見に皆が頷く。
そして、リウ・アーゼルが使ったモノとか、使っていたモノとかを整理し始めた、方面軍艦隊司令部のメンバー。
ようやく、リウと二度と会えないという実感が出て来たことから、リウに関する資料が散逸しないようにとの気遣いであった。
『現実の存在から、伝説の存在へ』
リウ・アーゼルが、歴史上の過去の人物となった瞬間であった......
レアは、レアー号を発進させたが、別にみんなの前から直ぐ居なくなろうとした訳では無かった。
リウが現実から去れば、軍事宇宙港に民間船?のレアー号を停泊させておくのは問題が有ると考えただけであった。
「レアー号、何処に停泊させるの?」
レイカーがレアに質問をする。
「とりあえず、宇宙空間。 だってタダでしょ?」
レアが明快な答えをする。
「流石だね~」
レイカーが褒めると、
「まあ、これからが色々大変よ。 私はリウと違って大金持ちじゃないから......」
現実を考え、ゲンナリした表情をして話すレアを見て、
「レアって、やっぱりリウだね。 その言い方といい、表情といい、全く同じだよ」
レイカーがそう言うと、レアは褒めてくれた御礼のキスをするのであった。
「さて。 エミーナに連絡するかな」
レアの最初の大きな仕事は、丞相への連絡であった。
リウ・アーゼルがついに、三種族との約束を履行したと聞き、シヴァ丞相は非常に寂しい思いがした。
知恵者同士、お互い刺激するものが有ったが、もう意見を交わすことは二度と出来ないのだという。
同時に、自身の成長も止まってしまう気がしたのだ。
「レアが連絡して来たのは、リウ・アーゼルが永遠に居なくなったことを発表する方法について、三国同盟間ですり合わせる様にということだね」
エミーナに丞相は、レアの意図を説明する。
ところが、この件は初耳だったエミーナは、ショックで泣き崩れていた。
「ごめん、エミーナ。 リウお嬢様から、固く口止めされていたので、君にも話せなかった」
丞相は、つい、自分が知っていたので、リウと親しい人達が受けるショックについて、考えが及んで居なかったのだ。
「わかっているよ〜。 わかっているけど、なんでそこまで一人が抱え込まなきゃいけないの。 リウが可哀想過ぎるよ〜」
帝國軍による蹂躙から、人々を救う為の決断とはいえ、引き替えに過酷な運命を背負っていた事実。
それを知り、同い年の親友として、計り知れないショックを受けていたのであった。
すると、
「リウ(レア)が再びエミーナを呼んでいるよ」
と子供達がエミーナのところに駆け寄って来て、呼びに現れたのだ。
その為、通信室に戻ると、専用の超光速通信のスクリーンには、レアが映っていた。
「エミーナ。 少しは落ち着いた?」
先程は、大泣きで話が続けられずに、一旦諦めたレアが通信を打ち切っていたのだ。
スクリーンで改めて見るレアは、どう見てもリウで有り、実感が湧かないエミーナ。
「ずっと言えなくてゴメン」
「辛いのは、リウだから」
「いや、私はリウじゃないのよ」
「でも、やっぱりリウだよ」
スクリーン越しだと、どうしてもそういう会話になってしまう。
「仕方ないな。 実感出来ないみたいだから、そのうちエミーナのところに遊びに行くよ」
すると、エミーナは泣き腫らした顔に、ようやく笑顔を重ねて見せた。
「本当に? もうずっと実物と会えていないものね」
「これからは、軍務も政務も無いから。 一度会ってお茶でもした方が、実感してくれるでしょ?」
その様な会話で再会の約束をしてから、通信は切れた。
レアは、リウの関係者を巡る旅を考え始めたようであった。
その2日後。
リウ・アーゼルが現実世界から姿を消したことについて、ノイエ国、アルテミス王国、西上国共同での発表が行われた。
結局、『亡くなった』という表現での公表に決まったのであった。
レアが存在するとはいえ、レアはリウ・アーゼルでは無いという事実に変わりは無いからだ。
そして、経緯も発表された。
リウが、帝國軍の侵攻とその後の殺戮や略奪を不回避と予想していたこと。
唯一、確実に勝つ方法が三国同盟に住む異種族の協力を得て、新しい技術を導入した新型艦艇の艦隊を整備することだと判断したこと。
オーバーテクノロジーを提供する側として、その力が自分達に向けられる刃とならない様に、特殊なシステムによる管理とそのシステムの中核部に、リウ・アーゼル自身の提供を求めたこと。
それに対して、900億人以上の人々を守る為、リウが決断して、その過酷な運命を全て受け容れたこと。
そして、現在の平和が、帝國の奴隷や下僕にならずに済んだ大戦の勝利という結果が、リウの決断と自己犠牲の上に成り立っていること。
それらが全て公表され、三国の政府は7日間の喪に服すと発表したのだ。
ただ故人の意思に背くことになるので、服喪期間中、弔意を示すか否かの判断は、個々人の考えや思想で決めて欲しいということも併せて発表された。
この発表を聞いたレアは、レイカーに、
「流石、リョウ・シヴァだね。 私の、リウ・アーゼルの考え、意向を完璧に把握して、活かした内容になっているよ」
そう感想を述べて、嬉しそうな表情を浮かべていたのだった。
発表を聞いてから、ネイト・アミュー方面軍艦隊司令部も厳かな雰囲気に包まれていた。
一部屋を除いて。
そこは司令官室。
司令官のジョン・ルー大将、副官のレン・ルコール中佐とリウの副官だったリン・キートラン中佐の他にも、在室している人物が居たのだ。
レア・アーサとレイカー・アーサであった。
「あの〜、どうしてここまで普通に入って来れるの?」
ルー大将が、守衛機械兵が何の役にも立っていない現状を嘆く。
「だって、この惑星のシステム、全部私が制御しているんだよ。 当たり前じゃん」
レアは、リンが出したお菓子を食べながら答える。
「てっきり、何処かに行ってしまって、二度と会えないって思ったのに。 俺、あの時みんなに結構イイこと言ったのにな~。 格好も付けてさ〜......」
ルー大将は、予想が外れたことも嘆いていたのだ。
そこでレアは、リンに事情を説明する様に求める。
「2日前、レアー号が軍事宇宙港から直ぐに飛び去ったので、もう永遠に会えないっていうことをおっしゃったのです」
詳しい事情を聞いたレアは、
「先輩。 私は議長閣下から、リウの後釜に直接任命されている、この星系の統治官よ。 いきなり仕事を投げ出して、何処か行ってしまう訳ないじゃない?」
そう言って、生前のリウがレアに残した任命書を見せる。
「それに......」
「?」
「リウの遺産相続とか、レイカー・アーサの軍での地位をどうするとか、解決しておかねばならないことが山積みなのですよ。 レイがリウの遺産を引継ぐのだろうけど、リウの資産の大半はアーゼル財閥の株だから、総帥の意向も絡んでくるし」
山積みの処理について、面倒くさそうな表情で語ったので、
「そういう表情、リウは見せなかったぞ」
ルー大将が指摘をする。
「それは違うよ。 彼女も内心、面倒なことは面倒って素直に思っていたの。 それが表情に出にくいのは、総帥の爺さんが幼い頃に、厳しく躾けたことによるもの」
レアは、リウがもっと人間らしい人物だったと言いたかったのだ。
「でも、そこで暇そうにお菓子食っている、リウそっくりなレアが居ると、リウ追悼の厳かな雰囲気なのに、その気分が全く出ないんだけど......」
ルー大将は追悼したいのに......と苦言を呈するのであった。
この日の午後には、リウが事前に購入していた墓地において、墓碑のお披露目式が為されることになっていた。
墓碑自体は、リウが自分で決めて制作済み、設置する日迄、事前に決めていたのだった。
ただ、急に決まったお披露目式は、方面軍の主催であり、式の費用も方面軍持ちであった。
英雄の墓碑の除幕式であり、服喪期間中に実施することで、神格化したい意向が見え隠れしていた。
そして、一般参列者の中に混じって、レアが居た。
変装していたので、気付く人は誰もいなかったが。
『リウ。 こんな感じで良いのかな?』
コアに居るリウに確認する。
『神格化ってこと?』
眠りから目覚めさせられたリウが一言発する。
『私には判断が付かなくて』
レアが質問すると、
『まあ、いいんじゃない? 度が過ぎたら止めてくれれば十分かな』
一定の神格化は受け容れようよとリウは答えると、再び眠りについてしまった。
『あまり関心がなさそうね』
レアはそう判断すると、式典を終了まで見守り続ける。
それ以後大きな動きは無く、服喪期間が明けて、日常が戻ったのであった。
服喪が明けたその日、レアはレイカーと一緒に、『リウの丘』にやって来ていた。
『リウの丘』とは、リウの墓碑に加えて、この地で亡くなったパルトネール少将、ラートリー少将、カイキ准将、エーレン大佐の墓碑が立ち並ぶ墓地一帯を指し示す名称として、新たに付けられたものだ。
英雄の墓地として、追加整備も決定されている。
「レイ。 リウ達の墓碑もなんだか騒々しい場所になってしまったね」
5人の墓参を済ませた後、レアがレイカーに語り掛ける。
「忘れられて、放置されるよりは良いと思うよ」
「リウは私の中に居るからイイけど、他の4人にとっては迷惑なんじゃないかな?」
レアが少し感傷的なことを言うと、
「いずれは、リウを支えた人達が、他に何人もこの地に墓碑を創ると思うな〜。 リウを偲んでね」
レイカーはそんな未来を予想していた。
「暫くの間は、多くの人達がリウに感謝して墓参しに来てくれるけど、いずれは誰も来なくなるんだろうね」
「その時は、僕等が沢山来てあげようよ。 雑草まみれになった墓地を綺麗にしてあげてさ」
レイカーはレアの肩を抱き寄せながら、『リウの丘』からの景色を心に刻む。
「きっと、コアで寝ているリウが、今頃くしゃみをしているよ。 そしてレイの言葉を聞いて、感謝しているかもね。 みんなの墓碑を長く守ると約束したことに」
いつかは忘れ去られるだろう。
この時代も。
リウが命を賭けて守った価値観と弱い人々の命のことも。
でも、レアとレイカーは忘れない。
2人の永遠に近い命が尽きる、その日まで......ずっと......
この第97話にて、一旦ひと区切りです。
リウ・アーゼルの生涯は終幕となりました。
ここまで読んで頂いた方々、少し長い話となりましたが、本当にありがとうございました。
話は、まだまだ、かなり続きます。
リウ→レアになりましたが、死んだ訳では無く、逆にレアの人間姿での登場が人類社会全体に大きな波乱を引き起こしてしまうからです。
それと、ちょっと短か過ぎた第二章合計15話分の書き直しも始めました。
また、第98話以降も既に書き始めていますが、2024年に入ってから投稿する予定です。
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