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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・落龍篇

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第93話(破られたシールド)


市民のクーデターへの反抗を知ったルー中将は、星系シールドの強行突破を仕掛ける。


そして、みんなの努力も有って、シールドが消え、クーデターは鎮圧されたのであった。


 ルー中将は、艦隊を緊急発進させ、シールド発生装置のある小惑星に向かった。


 そして、シールド発生装置に向けて、全艦で一点集中砲火を浴びせてみせる。

 流石に新型艦艇502隻の一斉攻撃であった。

 張られている星系シールドは大きく揺らぐ。

 ただ突破には至らない。


 その様子を見ていた、アーゼル財閥とLSグループの技術支援チームからルー中将に提案がなされる。

 それは、

 「技術支援艦3隻から、シールドの中和ビームを照射するので、そのポイントに集中砲火を撃ってみては」

という内容であった。


 ルー中将はその提案を早速、実戦に活用してみる。

 少し離れた宙域から技術支援艦より、星系シールドのエネルギーに対する中和ビームが放たれる。

 そこに502隻の新型艦隊の中性子ビーム砲の一点集中砲火が命中。

 するとシールドは一時的に穴が空き、ビームが突き抜けたが、発生装置を破壊する程のエネルギー量が通過することは出来なかった。


 「あと一歩だな。 俺に一つ考えがある」

 ルー中将はそう言うと、

 「シールドが薄くなった時に、戦艦クレアシオンがその部分に突撃をして、クレアシオンのシールドで星系シールドを一時的に突破。 そのまま小惑星に陸戦部隊を降下させ、シールド発生装置を破壊するというものだ。 どうだ試す価値はあるだろう」

と幕僚達に作戦の提案をした。


 しかし幕僚達は、

 「シールドを突破出来ても、旗艦一隻だと、第5艦隊に狙われます。 シールド内に一隻では、逃げ場にも反撃も限界が有ります」

と口々に言い、無謀だと司令官を止めようとする。

 ただルー中将は続けて、

 「市民達の、あのどんちゃん騒ぎに、クーデター派の首謀者が激怒すれば、弾圧を始めて、大量殺戮が発生するかもしれないだろ? その前に勝負に出なければならないからさ。 今、シールドを壊そうと努力しているみんなを信じようぜ」

 市民の行動や協力してくれる人達の行動に、嬉しそうな表情を見せながら、

 「それに、この艦は旗艦として、特別にシールドが強化されている。 この機能はリウからの贈り物なんだよ。 それを活用しないでどうする?」


 結局幕僚達は、司令官の気持ちを尊重することにし、

 「アーゼル少将に、こちらの突撃と同時のタイミングで、シールド装置指揮室への特殊工作員の突入を提案してみては?」

と勧めてみた。

 それを是としたルー中将は、直ぐにアーゼル少将と協議をして、同時作戦とすることに決まったのであった。



 早速作戦開始。

 技術支援艦を最大の5隻に増やし、小惑星に最も近いポイントの星系シールドに中和ビームを浴びせる。

 そこに、501隻の新型艦艇から発射された中性子ビーム砲が注がれる。

 激しいエネルギー流が生じて、シールドが非常に薄くなる。

 「イルバール准将。 準備は良いか?」

 「司令官。 強襲揚陸艦緊急発進準備完了ですぞ」

 「よし、戦艦クレアシオン。 ポイントに向けて突撃」

 司令官の命令を合図に、旗艦のシールドパワー最大出力で、薄くなった星系シールド部分に突入する。

 そして、激しくぶつかるシールドとシールドのエネルギー。

 その瞬間、クレアシオンが星系シールドを突破して、内側に入ったのであった。

 歓声があがるルー中将の艦隊。

 旗艦クレアシオンも、

 「やったー」

とガッツポーズやハイタッチで艦内が包まれる。


 「これからは、暫く一人ぼっちだ。 いずれ第5艦隊がこっちに向かって来るぞ」

 ルー中将は、浮かれる指揮室の雰囲気を引き締めると、

 「直ぐに、シールド発生装置を破壊する。 作戦開始」

と指示を出した。

 クレアシオンから、多数の亜光速光子ミサイルがシールド発生装置が有る小惑星に向けて発射される。

 小惑星に設置されていた対宙ビーム砲を狙って。

 次々と破壊され、反撃のビームが見えなくなる。


 「強襲揚陸艦発進。 イルバール准将頼む。 装置内には機械兵が配置されているから、注意しろよ」

 ルー中将の大きな声が指揮室に響くと、ハッチが全開となって、強襲揚陸艦3隻が真っ直ぐ小惑星に向かって突進し、30秒後には強行着陸する。

 次々に小惑星に降り立つ特殊部隊員。

 そして、人工構造物の中に突入していくのだった。


 「旗艦停止。 強襲揚陸艦を防護するぞ」

 ルー中将が次の指示を出して、シールドを張った戦艦クレアシオンが小惑星にアンカーを引っ掛けて停止する。

 第5艦隊が緊急発進して、ここに到着するまで10分程度の猶予しかないだろうと予想されていた。

 だから、それまでにシールドを消滅させないと、大ピンチとなる。

 一連の作戦は、一か八かのルー中将らしい、思い切ったモノであった。



 一方、シールド装置指揮室の入口付近では、アーゼル少将が編成した特殊工作員達と、指揮室を守るクーデター派の士官達との間で熾烈な銃撃戦が始まっていた。

 装甲服を着て、万全の装備で突入を図る工作員達。

 クーデター派の士官達は、突然、出入口横の壁を破って現れた工作員達から攻撃を受けて、倒れる者が続出し、慌てふためいていたものの、態勢を立て直して必死に応戦をする。

 クーデター派の士官達の死体が積み上がる中、それでも指揮室を守ろうと、通路の奥から次々と出入口に向けて、銃撃のビームが放たれる。

 クーデター派の士官達の数が多いので、工作員側も一気に出入口確保とはいかない。

 数分間に渡り、激しい攻防が続いていた。



 惑星ヘーラーに有る、統合参謀本部ビルの中央作戦司令室に籠もって、全体指揮をとっていたクーデター派の幹部達。

 突然、シールド外に居た方面軍艦隊から、シールド発生装置に向けての攻撃が開始されたので、慌てて対応策を協議していた。

 「サトー准将、スペンサー准将。 どうするのだ。 敵艦隊が猛攻を加えてきて、シールドが破られそうだぞ」

 他の幹部達は、首謀者である2名の准将に対応策を求める。

 しかし、2人は意見を述べず、なかなか結論の出ない討議をしていたところに、

 「大変です。 シールドが一部突破されて、シールド発生装置が攻撃を受けています。 破壊されるのも時間の問題かと」

と、駆け込んで来た士官から最新情報が入った。

 すると、静かに討議を聞いていたサトー准将が、

 「第5艦隊に緊急発進命令を出せ。 そして、シールド内に侵入した敵を撃滅するよう指示しろ」

 そう言い放つと、クーデター派幹部達は討議を中断して、サトー准将の指示を第5艦隊に伝えて、艦隊の奮戦を見守ることとなった。



 生体頭脳レアも、クーデターの情報収集につとめていた。

 結局、自爆攻撃に使わなかった600隻あまりの元帝國軍艦艇群と再合流し、通常速度で悠々とネイト・アミューに向かっていた。

 リウは、病状の悪化したパルトネール准将の病室に滞在して、看病をしながら、色々な昔話をしており、クーデターの情勢には殆ど興味を示さなかった。


 「レイ。 クロノス星系のシールド装置の攻防戦が始まったみたいだよ」

 レアは、新型艦艇に極秘設置されている統括システムから得た情報を、コアで眠っていたレイに説明し始める。

 「旗艦クレアシオンが単艦でシールドを突破したって。 クレアシオンの人工頭脳からも私に通信が入った」


 すると、レアのコアの中で休んでいたレイが起き上がり、真っ白な何も無い空間で立ち上がると、レアが空間に映し出した映像を見ながら、

 「へー。 思い切った作戦だね。 でもシールド発生装置の破壊に手間取ると、危機に陥っちゃうね」

 レアの問い掛けにその様に返事をした。

 「そうだから、クレアシオンより私に緊急連絡が有ったんだよ」 

 

 その答えを聞いて、レイは確認をした。

 「旗艦の人工頭脳は、レアとお互い話せるの?」

 「話っていうよりは、情報交換かな。 旗艦に搭載されている人工頭脳は特殊なタイプで、自己生存本能を持っているから」

 「他の情勢は?」

 「クレアシオンが調べたところ、シールド装置の指揮室前で、工作員が突入して指揮室を奪い返そうとしているけど、クーデター派の必死の抵抗で、手間取っているって」


 「あっ。 第5艦隊が緊急出動したみたい。 クレアシオンを目指して一直線に向かって来ているって。 どうしようか?」

 事態の悪化に、レアは少し困った様子で、レイの判断を求める。

 「レアは、クレアシオンを通じて、シールド装置のシステム乗っ取りが出来るのかな?」

 「出来るよ。 随分遠いけど、クレアシオンが居るから大丈夫」

 「じゃあ、直ぐに準備しておいて。 ギリギリまで星系シールドの解除は待ってね。 あまり安易に介入するとリウに怒られるから、最低限で」

 「クレアシオンが本当にヤバくなったら、シールドを解除して助けてあげてね」

 レイはそう指示すると、再び眠りに就いてしまうのであった。



 ルー中将艦隊の作戦を、隣に布陣して傍観していた独立艦隊。

 旗艦クレアシオンがシールド内に突入に成功したのを見て、

 「司令官。 独立艦隊もシールド解除に対応する為、第5艦隊と遭遇する予想ポイントに移動して、即応態勢を取りましょう」

 ジン大佐が、クリス・アーゼル少将に提案をする。

 「了解。 予め、ルー中将を救援する準備をしておくのだね」

 特殊工作員部隊と逐次連絡を取り、指揮をとっていたクリスが答えた。


 「シールド解除は時間的にギリギリでしょうから、第5艦隊の旗艦を一発で捉えて撃滅しましょう。 そうなれば第5艦隊の攻撃はおそらく即停止されて全面降伏することになり、最低限の犠牲で済むと思われます」

 ジン大佐が説明を付け加えると、旗艦クレアシオンと新型艦隊の位置を計算して、第5艦隊に横撃を加えられるポジションに独立艦隊を移動させたのであった。



 小惑星では、発生装置の施設内に突入した特殊部隊員と、設備を守る機械兵との戦闘が続いていた。

 なんとか抵抗を排除して、シールド発生装置に辿り着いた時には、突入から5分半が経過していた。

 爆弾を幾つもセットし、タイマーを設定。

 3分後に爆発させる。

 「総員即撤退しろ、直ぐに強襲揚陸艦に乗り込め。 そうしないと爆発に巻き込まれて死ぬぞ」

 大きな声でイルバール准将は指示すると、作戦に従事した全特殊部隊員は、必死にシールド発生装置の施設内からの離脱を図る。

 ここまで全力で全員が逃げる姿は、なかなか見ることが出来ない。

 重力が無いので、走るというよりは、飛ぶ様な感じだ。

 巧みに装甲スーツのノズルを操作して、出口へと急ぐ。

 約2分半で、全隊員が強襲揚陸艦に乗り込み、半分出入口が開いたままの緊急発進。

 直ぐ側に停泊していた、戦艦クレアシオンの巨大なハッチ内に収容されると、クレアシオンはアンカーを切り離し、シールドを最大出力で張って、小惑星を緊急離脱した。

 間近に、恒星の光を浴びてキラキラ光っている第5艦隊が迫って来ているのが、肉眼でも小さく見えるぐらいの距離であった。




 戦艦クレアシオンが第5艦隊の射程距離内に入った、その時。

 そして、シールド発生装置に仕掛けた特殊な爆弾が爆発する直前に、

 シールドが消えた

のであった......

 これは、レアがクレアシオンの人工頭脳を使って、シールドシステムを乗っ取り、シールドを解除したのだ。


 すると、司令官を救おうと、臨戦態勢をとっていた新型艦隊のビーム砲が一斉に第5艦隊に先頭部隊に襲いかかる。

 その後、シールド発生装置が大爆発。

 この順番に物事は発生した。


 シールドが突然消えたことで、第5艦隊の艦艇は新型艦隊の攻撃をまともに受けてしまい、次々に爆発する。

 ここで、ジン大佐指揮の独立艦隊が第5艦隊の側面に急速接近しながら猛撃を加えて、艦隊の中央部に居た第5艦隊旗艦リヒテルを集中的に狙ったことで、旗艦は轟沈。

 司令官ゴート元中将は脱出する暇もなく、艦砲ビームのエネルギー流に全身が焼かれて消滅したのであった。

 司令官が戦死したことで、第5艦隊の残存部隊は、即白旗をあげて、全面降伏した。

 そうしなければ、第5艦隊は宇宙の藻屑となってしまっていたであろう。


 この時、特殊工作員部隊がついにシールド制御指揮室出入口を突破。

 指揮室内に居て、更に抵抗を続けたクーデター派士官を全員殺害。

 第5艦隊という唯一の機動戦力を喪ったのに続き、星系シールド防御指揮室をもクーデター派は失陥したのであった。

 



 このタイミングで、クリス・アーゼル少将は、第四惑星ティアー、第五惑星ヘーラーのそれぞれに潜伏中の特殊工作員部隊に連絡。

 クロノス星系の軍が管理する機械兵、クローン兵をコントロールするシステムを、参謀本部内の制御室からティアーの軍事宇宙港にある予備室に切り替える様に命令を出したのだ。

 既にクーデター派の蜂起前から、システムを納入したアーゼル財閥とLSグループの協力を得て、システム制御プログラムの書き換えを実施しており、準備万全。

 クリスも、クーデター派の蜂起に備えて、色々な事前対策を行っていたのであった。

 


 その後、第2艦隊、ルー中将の方面軍新型艦隊、コーダイ少将が率いる方面軍旧型艦隊の合計3個艦隊が惑星ヘーラーの上空に殺到する。

 独立艦隊は、第5艦隊の武装解除を担当したため、そのままクロノス星系外縁部に駐留していた。


 やがて、3つの艦隊から陸戦部隊が続々と降下を開始する。

 イルバール准将が指揮の特殊部隊員も降下を開始。

 クーデター派は地上戦で最後の抵抗を検討していた。


 ところがクーデター派に、軍が管理する陸戦機械兵やクローン兵の制御を喪失したとの連絡が入ってきた。

 「なに〜。 軍の陸戦機械兵とクローン兵のコントロールを奪われただと〜」

 クーデター派幹部が詰める、参謀本部中央作戦司令室内は、どよめきがおきる。

 コントロールを失ったということは、指揮室から出れば、参謀本部ビル内にも多数居る機械兵に攻撃され、身柄を拘束される可能性が高い。

 慌てて、中央作戦司令室の出入口をバリケードを作って固めるクーデター派幹部達。


 続々と各地に居るクーデター派の士官達から悲鳴の連絡が入り始める。

 「助けてくれ〜」

 「機械兵に襲われている。 応援を、応援を......」

 そして、連絡が途絶える......


「もう、終わりだ」

 中央作戦司令室に詰めていた100名余りの将校達は、

がっくり肩を落とす。

 「どうするのだ。 降伏するか」

 「今回は、降伏しても許されないだろう......」

 「軍法会議にかけられて、終身刑だな」

 「本当か。 終身刑って」

 「クーデターは反乱だぞ。 しかもクロノス星系の住民を人質にとったのだから......」

 スクリーンに映し出される各地の状況。

 降下して来る方面軍艦隊や第2艦隊の部隊を大歓迎する市民達。

 元々、お祭り騒ぎだったのが、狂喜乱舞へと変わっていく様子が手に取るように伝わる。

 そして、シールドが消えた外側の宙域には、クーデターを鎮圧する為に集まっていた数万隻の民間船。

 それらの艦艇も、続々とヘーラーの民間宇宙港を目指して航行を開始している。

 その状況を見つめるクーデター派将校の大半は、

 『我々は、市民の支持を得られていなかったのだ。 独り善がりの蜂起だったということだった......』

 ようやくそのことに、気付かされたのであった

 


 ここに来てクーデター派は継戦断念を決定した。

 誰彼ともなく、その様に決まった。

 既に、中央作戦司令室に閉じ込められており、最後まで抗戦出来る状況では無かったからだ。

 現状を追認しただけの決定であったが......

 やがて、司令室内を一発のレーザー銃の発砲音が響いた。

 首謀者のサトー准将は自害したのだ。

 しかし、誰もその遺体に近付くことすらしなかった。

 その場に居る全員が、首謀者であるサトー准将に責任を押し付けることを考え始めたからだ。

 それは盟友のスペンサー准将も、だった。


 人はおぞましい生き物。

 窮地に陥った以上、使えるものは死者でも使おうという考えが100人以上の者達の脳裏を駆け巡っていた。

 打算という魔物が、作戦司令室を支配したのだった......

 

 

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