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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・落龍篇

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第90話(成し遂げた復讐)


リウは、帝國の地方軍閥当主2人と暗殺の首謀者の少将を血祭りにあげ、亡くなった2人の護衛への復讐を果たした。


その時、ノイエ国では、追い詰められた軍主流派がクーデターを敢行していたのであった。


 4日後。

 レアー号は惑星テラの大気圏に突入していた。


 そして、帝國軍の情報システムにレアが侵入。

 シルバーバーチ邸とリューネ邸の正確な位置を再確認する。


 10分後。

 レアー号は高速で移動をして、シルバーバーチ邸上空に到達していた。

 「なんだ。 あの艦艇は」

 邸宅内で、地上戦の情勢を話し合っていた家主のヨハン・シルバーバーチがレアー号に気付き、周囲の者達に尋ねる。

 「見たことも無い形の艦艇ですね」

 「そうでは無い。 許可無く、帝都にある我が邸宅の上空を飛ぶのは許されないということだ。 直ぐに立ち去る様に警告しろ」

 そう指示された側近は、慌てて通信回線を開き、オープン回線で警告する。

 「シルバーバーチ邸上空を航行中の中型艦艇に告げる。 この上空は航行禁止区域である。 至急立ち去れ。 立ち去らねば攻撃する」


 その通信を聞いたリウは、

 「レア。 やって」

と指示を出した。

 そして、リウは祈りを捧げる。

 亡くなったキエラ・ラートリーとショ・エーレンの英霊を慰める為に......

 レアー号は急速降下を開始。

 シールドを最大出力、最大範囲で。

 レアー号が近くにつれて、軋み始めるシルバーバーチ邸の建物。

 直ぐに、破断の瞬間が訪れる。

 全ての構造物が、レアー号のシールドに押し潰され始め......

 危険に気付き、ヨハン・シルバーバーチもアウグスト・リューネも邸宅内から地下の避難壕へ逃げようとした、その時。

 2人の体は、多くの側近達や支持者達の体と一緒に圧迫されて、グチャグチャに破裂したのであった......


 レアー号のシールドの影響が及んだその範囲は、半径約500メートルであり、シルバーバーチ邸は地下の構造物も全て潰されて消滅し、瓦礫の山に変化した。


 リウは祈りを捧げながら、涙を流し続ける。

 「2人の無念は、これで晴らしたと思います。 ごめんなさい、みんな。 私の愚行に付き合わせてしまって」

 レアとパルトネール准将に謝罪をするリウ。

 跪いて、祈りを捧げ続けるリウの頭を、無言で撫でる准将。

 復讐を果たした、その瞬間であった。


 続いて、リューネ邸も同様のやり方で破壊すると、レアー号は緊急発進し、惑星テラから飛び去ってしまった。

 

 帝國軍宇宙艦隊司令部は、超高速で帝都から飛び立つ未確認艦艇一隻を探知したが、艦隊が出動する暇も無いうちに、衛星ルナを過ぎた地点で亜空間遷移に移行されてしまい、結局捕捉出来なかったのであった。



 その後帝都における地上戦は、急速にケリが付くこととなった。

 暫くの間は、ヨハン・シルバーバーチとアウグスト・リューネの死に気付いていなかったアンナー僭称帝派。

 エウドア幼帝派との陣取り合戦が続いていたが、やがて本拠地である両邸宅を呼び出しても、応答が無いことに気付く。

 そして、両邸宅周囲を固めていた部隊から情報が入ったのだ。

 「気が付くと、邸宅がバラバラに潰されていた。 連絡が付かない両家の当主は、死亡したものと認められる」

 広大な敷地内の邸宅であったことと、レアー号が攻撃では無く、シールドで押し潰したことで、気付くのが少し遅れたのだ。


 女帝を擁立する中心人物が、突然死んだという非常事態を知って、逃げ出す者が続出し始めるアンナー僭称帝派。

 一進一退の攻防が崩れて、撤退し始めたアンナー派の地上戦力の動きから、敵瓦解の動きに気付くエウドア幼帝派の部隊。

 逃げ出す部隊を追い掛けて、数時間後にアンナー派の拠点であったシルバーバーチ邸のあった場所に到達したが、邸宅は廃墟となっており、敷地内には残骸から金目のモノを奪って、逃げようとする、将兵や市民が群がっていたのだ。


 事態を把握し、アンナー僭称帝とその母アンズ・シルバーバーチを探すように命じるルーゼリア大公。 

 それと、アンナー派の主要な廷臣や将軍達の邸宅に向けて、一気に軍を侵攻させたのであった。



 その頃、地方軍閥の拠点であるシルバーバーチ領を制圧したオズワルト艦隊。

 情報統制をしたまま速やかに侵攻したことで、シルバーバーチ一族を全て捕えることにも成功していた。

 帝都に、その報告をする大将。

 すると、この日有った出来事をウォルフィー元帥から聞かされたのであった。

 「不思議なことじゃが、気付いたらシルバーバーチ邸とリューネ邸が破壊され、ヨハン・シルバーバーチもアウグスト・リューネも所在不明となっておったのじゃ」


 すると、オズワルト大将は元帥にこう語った。

 「一週間程前、こちらも両家の軍閥艦隊と対峙中に、女神が派遣したであろう幽霊艦隊と遭遇しました。 そして幽霊艦隊がリューネ領の軍事防衛衛星を乗っ取り、軍閥艦隊に自爆攻撃をしたことで、戦局は一気に決したのです」

 「幽霊艦隊?」

 「先の大戦で降伏した艦隊の艦艇でしたよ。 おそらく無人艦隊だったので、幽霊と名付けました。 亡霊艦隊の方が良かったですかね?」

 「なるほど。 それで幽霊艦隊か......ところで大将は、いま女神って言ったかの?」

 その話の筋から元帥は、大将が語る女神が誰のことを指すのかに気付き、

 「シルバーバーチ等は、三国同盟の要人にも暗殺の刺客を放っていたらしい。 それで虎の尾を踏んでしまったのじゃろうな」

 「虎というのは失礼でしょう。 女神のドレスの裾を踏んだ、ですかな?」

 大将はそう答えると、豪快に笑った。

 「この出来事は、一つの教訓じゃ。 謀略や暗殺で歴史の流れは変えられないってことのな」

 そう答えると、お互いに戦闘の労いの挨拶をしてから、通信を切った。


 帝國の内乱は終息へと向かい、敗北した僭称帝派に属した多くの者達が罰を受けることになるだろう。

 そして、この内乱の爪痕は数十年に渡って、帝國の内政に悪影響を与える。

 「老骨に鞭打って、もうひと頑張りせんとな」

 老元帥はそう呟くと、やり方は良くないが、内乱の早期終結に貢献してくれたリウ・アーゼルという女神に、一応感謝することにした。

 彼女の個人的な介入が無ければ、下手すれば年単位の内乱になった可能性が高かったからだ。

 


 アンナー僭称帝は、数日後に確保された。

 リウが復讐を果たした時には、運良く母アンズとシルバーバーチ家が所有する山岳地帯にある別宅へ移されていたからだ。

 2人は確保されると、宮中に囚人として護送され、そして廷臣達の面前で、帝を僭称したことへの謝罪表明と、エウドア幼帝への支持、それと皇籍離脱宣言書を書かされることとなった。

 ただ、幼帝エウドアは、それ以上の処罰はしなかった。

 広大な宮中の一角を与えられ、軟禁状態ではあるが、一応の礼遇をもって扱われることとなったのだ。

 たった3人しか居ない異母兄姉妹。

 野心家の野望に翻弄されねば、アンナーは血筋の良さから皇帝となっていた可能性が高かった人物なのであるのだから......



 

 レアー号が、ノイエ軍の情報が入手出来るポイントまで戻った時に、ノイエ国で非常事態が発生していることを知った。

 既に、ルー中将が首都星系に向けて、ネイト・アミュー駐留艦隊の全軍を率いて出発していたのだ。

 帝國の内乱が長引きそうな気配に触発されたのだろう。

 ノイエ軍主流派を自称する連中が、軍事クーデターを引き起こしていたのであった...... 

 レアから、そのことを聞いたリウは、

 「急ぐ必要は無いよ。 無人艦隊を回収したら、通常速度で帰りましょう」

 その様に指示をした。

 「リウ、良いの? そんな悠長なことを言って」

 レアが再度方針を確認すると、

 「主流派を自称する連中のクーデターぐらい、直ぐに鎮圧出来ないような人達しか、今のノイエ軍に居ないのなら、歴史を作っていく資格は無いわ」

 リウはそう答えただけであった。



 レアはどうして良いかわからず、レイに確認をする。

 『リウの言う通りだよ。 レアはリウと一緒になって以後も、みんなを助け続けるつもりなの?』

 『ううん。 基本、手出しはしないよ』

 『じゃあ、今回もその方針で良いんだよ。 リウが歴史に関与するのは、先程済ませた帝國の内乱への介入が本当に最期のだから。 本来はそれも関与すべきじゃなかったけど、将来の停戦に繋がる可能性のある幼帝側を支援したという風に考えれば、一定の正当性は主張出来るよね?』

 『そうだね』

 『アンナー派は、謀略で人類全体を掻き乱そうとした。 それも暗殺という手段で。 だから、歴史を作る側からリウが排除したってこと』

 『やっぱり、レイってちゃんと考えているんだね。 流石、将来の後方司令官って言われていたことは有るね』

 『......』

 『私は忙しいから、またね~』 

 レアはコアに居るレイにそう告げると、レイは再び何も無い無音の世界で眠りにつく。

 コアに居る間は、基本的に眠り続ける。

 レアが求めた時だけ、目覚めれば良いのだから......




 ノイエ国の首都星系クロノスで軍事クーデターが発生したのは、リウ達がオズワルト艦隊と協力して軍閥艦隊を撃破後、無人艦隊を隠し、テラに向かった時であった。

 ブルース・ハミルトン准将の陰謀から、第5艦隊の反乱に繋がった例の事象に伴い、情報部から追放された、元プロシード派の中心人物、ヒロ・サトー准将が首謀者であった。

 旧プロシード派の中でも、能力の高さが周囲から認められていた人物だったのだが、愚か者の同期生の陰謀に連座させられ、情報部から追放されたことを激しく恨んでいたのだ。

 そして、不遇を託つ同期や同志を誘って、仲間を増やし、機会を伺っていた。

 リウから後継に指名されていたクリス・アーゼル少将は、LSグループの舵取りが忙しくて、追放された旧主流派の監視を少し怠っていたので、異変に気付くのがやや遅れてしまったいた。



 サトー准将等の動きに、最初に気付いたのは、新たに赴任したマイケル・ジン大佐であった。

 同期生ということで、准将の人となりをある程度知っていたことから、

 『まだ若いから、このまま諦める様な人物では無い。 捲土重来を図って、何かを仕掛けようとしている筈だ。 プライドも高いし』

と考えており、密かに行動監視をしていたのだ。

 ただ、部下に任せると、准将は長年情報部に居たこともあり、行動パターンを読まれて、直ぐにバレてしまうだろうと考え、情報部畑では無い、素人のジン大佐自身が監視者になることとしたのだ。


 情報部長代理アーゼル少将の承諾を貰って、サトー准将の監視を続ける大佐。

 すると、閑職に左遷された筈なのに、積極的に動き回っている事実が直ぐに確認出来たのだ。

 自身が閑職に居た時のことを思い出すだけで、その行動がおかしいことに気付くジン大佐。

 『左遷先は仕事なんて殆ど無いのだから、普通一日中デスクに座って、時間を潰して終わりの毎日が続く筈。 自分もそうだった。 なのにサトー准将は......』

 准将は今まで、華やかな活躍をしていた。

 だから、そうした動きが当然だと思っており、不穏な動きを隠す警戒すべきポイントに気付いていなかったのであった。


 連日、動き回る准将。

 訪問先は、元情報部で地上軍に左遷された同期のスペンサー准将、元参謀本部で、補給基地の司令官に左遷された同期のストロングバーム准将、前第5艦隊司令官で退役させられたゴート元中将と言った、旧プロシード派の幹部将校ばかり。

 『これは、不満を述べているだけでは無く、良からぬ計画を立案している可能性が高い』

 その様に判断した。

 しかし、上司のアーゼル少将に極秘報告するも、

 「確かに、大佐の報告も一理あるけど、実権は奪ったから、何も出来ないと思うけどな」

 そういう反応で、暴発の対策を取ろうとしなかった。



 困ってしまったジン大佐。

 アーゼル中将から、

 「叔父のことよろしく頼む」

と言われていたのに、これでは打つ手が無い。

 そんな時を過ごしていたところ、ジン大佐がクロノス星系に戻って来たことを知った統一政府国家元首の二期目に入っていたフォー・プロシード氏から、

 「久しぶりに会って話がしたい」

との申し出があったのだ。

 ジン大佐はフォーのことを苦手だったので、あまり会いたい気持ちは無かったが、貰った謝罪文の礼ぐらい言わないと失礼かと思い、勤務時間終了後、指定された高級飲食店に行ってみることにした。


 店に着くと、既にフォーが待っていると言われて、慌てて案内された個室に入る。

 すると、フォーが笑顔で出迎えたのだった。

 「ジン大佐。 昇進おめでとう。 それと改めて詫びを入れさせてくれ。 士官学校時代、僕と首席を争ったことで、色々と迷惑を掛けてしまったことを。 閑職に飛ばされて昇進が遅れたことを。 全て僕の未熟さが引き起こしてしまったことだった。 本当に申し訳なかった」

 謝罪をするフォー・プロシードの表情は、今までに見たことがない真剣なものであった。

 「もう、済んだことです。 時を戻すことは出来ません。 それだけです」

 ジン大佐は短く答えるだけであった。


 すると、衝立ての後ろから一人の男が現れた。

 ショウ・グエン大佐であった。

 「マイケル、久しぶり」

 親しげに話し掛けるグエン大佐。

 「ショウ。 本当に久しぶりだね。 元気にしてた?」

 ジン大佐も親しげな様子であった。

 士官学校時代、プロシード一派に属しながらも、ジン大佐と親しかった唯一の人物がグエン大佐だったのだ。

 それは、4年間同部屋だったからである。

 「2人共、ひとまず座ろうよ」

 フォーが2人の大佐を促すと、3人は席に座ったのであった。


 店員を呼び、料理と酒を注文するフォー。

 その姿を見ながら、グエン大佐が、

 「今日は、国家元首殿の奢りだそうだから、遠慮せずに」

 そう言うと、フォーが、

 「それは、僕が言うセリフだろ?」

 少し困った顔をしながら、指摘する。

 「まあ、そうだね」

 そう答えたグエン大佐を見て2人が笑う。

 「そうだ。 ハミルトンの大馬鹿がジン大佐にも迷惑を掛けてしまい、申し訳ない」

 フォーが再び謝罪すると、

 「あれは、個人の資質の問題です。 あの出来事以後、フォーは派閥の解消を行ったのでしょ? それで十分なのでは?」

 ジン大佐、あまり謝り過ぎない様にと忠告する。


 「そう言えば、帝國軍艦隊との戦いの記録、見たよ。 ジン中佐が大活躍していたよな?」

 グエン大佐が自身のことの様に嬉しそうに語る。

 「あれは、亡くなったカイキ准将の手柄ですよ。 僕は彼が亡くなった後、指揮を引き継いだだけですから」

 「それは謙遜だよ。 40隻しか無い新型艦艇部隊を指揮して、救援艦隊が到着するまでの約30分間の激闘を乗り切れたのは、マイケルの指揮能力も有ってのことだよ」

 初耳の話を聞いたフォーは、

 「それはすごいね。 相手は?」

と確認する。

 グエン大佐は、

 「あのウォルフィー元帥率いる1500隻の艦艇ですよ」

 それに対し、ジン大佐が、

 「新型艦艇の性能のお蔭ですよ。 僕の能力では無いですから」

と謙遜すると、フォーは、

 「ウォルフィーの爺さんか。 それは『おお』だね。 じゃあ准将になったら、方面軍の前線指揮官になるのかな」


 ここでグエン大佐がジン大佐に質問する。

 「ところで、どうして情報部なの?」

 「それは、中将から、『アーゼル少将を支えてくれ』と言われて......」

 「そうか。 それで畑違いの部門にね」

 2人の会話にフォーは、

 「リウは優しいな。 不遇の身だったジンをいつの間にか、それなりの地位とポジションにまで引き上げてくれて。 そして重要な任務を委嘱する程にまで、ジンを信頼している」


 そこで、ジン大佐は思い切って2人に質問をしてみる。

 「最近、ヒロ・サトー准将が随分活発に動いているみたいなんだけど......」

 すると、グエン大佐が、

 「アイツ......フォー、話しても良いか?」

 「良いよ。 今日はその為にジン大佐を呼んだのだから」

 運ばれて来た料理を食べながら、フォーが答える。

 「マイケルも知っての通り、アイツはプライドが結構高い。 だから閑職に回されて我慢ならないんだろう。 クーデターを計画して、派閥の連中を焚き付けているよ」

 ジン大佐が疑っていた事実をアッサリと教えてくれた。


 「僕もグエンも、派閥連中から狙われている立場だからね。 なるべく殺されないように、情報交換しているんだよ」

 フォーが何でも無いような雰囲気だったので、ジン大佐は、

 「狙われていて、大丈夫なのかい?」

 「大丈夫っていう訳では無いけどね。 ところで、この話を情報部長代理にしたのだろ? ジンは」

 「ところが、少将はあまり真剣に捉えてくれなかった。 ジン大佐は困っている。 リウからくれぐれも頼むと言われたのに」

 「ってところかな? なあグエン」

 「そうだろ? マイケル」

 フォーもグエン大佐も、あまりの情報通で、ジン大佐はビックリしてしまった。


 「ヒロが首謀者で、クーデターを起こしても、結局は失敗するさ。 それは間違いない」

 フォーはそう断言すると、

 「サトー准将やその同志の能力では、そこまでってこと。 だから、彼等が蜂起する時に、クーデター派に囚われの身にさえならない様にすれば、良いだけのことだよ」

と対応策を答える。

 「マイケルも、今の状況をアーゼル中将に報告しておけば、それで十分。 彼女が遠くで大きな戦力を保持している以上、クーデターは必ず鎮圧される運命」

 「まあ、そういうことだ。 俺達は彼等の蜂起日を探っている。 その日に首都星系を離れていないと、殺されるかもしれないから」

 グエン大佐はそう話すと、小さなメモを手渡した。

 「クーデターが発生した後の俺達の連絡先だ。 蜂起した奴等を鎮圧しなければならないからな」


 「どうして、ここまで......」

 ジン大佐は思わず本音が漏れてしまう。

 「ジンがヒロを監視している様に、俺達もヒロやマイクといった旧派閥の幹部を監視しているんだよ。 いくら離脱したとはいえ、あの派閥を組織した責任もあるからな」

 グエン大佐が答えると、フォーも頷く。

 「ジンは、先ずリウにアーゼル少将の態度を告げ口して、彼女から少将を叱責して貰えよ。 そうすれば、少将も態度を改めるさ」

 ニヤリとしながら、今後のことをアドバイスする。

 「まだ若いとはいえ、少将はあのリウ・アーゼルが後継者に指名したと言われている程の俊英さ。 彼をクーデター派から護るのがジンの役目だな。 当面はね」

 そう言うと、この話は終了となり、雑談になった。


 ジン大佐が手帳に挟んでいる写真が話題となった。

 「マイケル。 何だその写真」

 グエン大佐から渡されたメモを手帳に仕舞う時に、写真がはみ出していたのだ。

 「これは、首都星系に赴任する前に、最後に撮った写真だよ」

 取り出しながら説明するジン大佐。

 「リウとアーサ。 夫妻と一緒に撮ったのか〜。 真ん中にマイケルが座っているなんて贅沢だなー。 しかもリウが女性の制服姿っていうのは極めて貴重だぞ」

 フォーが写真を見て、少し羨ましそうに話す。

 「そうなの? よくわからないけど」

 「彼女は、映像に映らないことで有名だからな。 妨害装置を常にオンにしているから、写真はほぼゼロ。 しかも女性姿は皆無だと言われている」

 そう説明を受けて、

 『そんなものなのかな〜』

と思いながら、写真を仕舞ったジン大佐。


 実は、ネイト・アミューを去る前日に撮ったあの写真は、後に相当話題になる。

 フォーの言った通り、リウの軍服女性姿の写真は、この一枚しか残っていなかったのだ。

 それを知ってから、ジン大佐は本当の意味で感謝することになる。

 『リウが不遇の身に甘んじていた自分を相当気にかけて、引っ張り上げてくれていた事実に......』

 

 

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