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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・落龍篇

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第89話(幽霊艦隊?)


暗殺という謀略を防ぐ為に、散ってしまった側近2人の復讐を決めたリウ。


幽霊(無人)艦隊を率いて、帝國の内乱に介入を始めたのであった。


 服喪明けから3週間経ったが、帝國の内乱は、長期戦の模様へと化していた。


 宇宙艦隊を押さえたエウドア幼帝派。

 しかし、その攻撃力を帝都に向けるべきか否か、結論が出ていなかったのだ。


 「儂は、シルバーバーチ、リューネの両邸宅だけでも、艦隊で攻撃すべきだと思うがの」

 ウォルフィー元帥は直接攻撃を主張する。


 「帝都への艦隊による攻撃は、批判の声も大きい。 最終手段にすべきだろう。 とりあえずは奴等の力の源泉である、両地方軍閥の戦力を叩いて無力化することだ」

 ルーゼリア大公はその様に主張した。


 結局、協議の結果、オズワルト大将が傘下の2個艦隊を率いて、シルバーバーチ、リューネが支配する地方軍閥の宇宙戦力を叩くことに決まった。

 「オズワルト、頼んだぞ」

 ウォルフィー元帥が盟友の肩を叩き、奮戦を促す。

 「この戦いが、膠着状態の戦局を動かすことになるでしょう。 力の限りを尽くします」

 大将が激励に答える。


 「お味方の多くの親族ばかりか、名前も知らないような遠縁の者達にまで、アンナー僭称帝派の謀略により、可哀想な大殺戮が発生してしまった。 それらの者達の英霊に捧げるためにも、両地方軍閥に味方する戦力には鉄槌を下してやらないとな」

 元帥はその様に強い言葉を掛けて、オズワルト大将の幕僚達の奮起を促す。

 「私など、血の繋がりも無い、遥か彼方の遠縁?に当たるかどうかという家族まで襲撃されて、幼子も含めて皆殺しにされました。 亡くなった者達に申し訳ない気持ちとその怒りを奴等にぶつけてきますよ」

 副司令官のボーデン中将が、憤懣やる方ない表情で奮戦を誓う。

 「頼んだぞ」

 他の廷臣達からも、次々と声が掛かる。

 アンナー派が仕掛けた大規模な暗殺という謀略は、ある程度の成果を上げたものの、リウだけでは無く、エウドア幼帝派の支持者達の敵愾心に火を点けてしまったようであった。



 帝都テラにおける地上戦は、一進一退を続けていた。

 皇宮は地理的に守りやすい場所に建設されたのだが、エウドア幼帝派の方が、支持者の数が少ないので、地上戦力は劣勢であったのだ。

 ただ宇宙戦力が保有する地上戦力を回すことで、均衡は保っている。

 本来ならば、フェルトン、ユンの両地方軍閥の地上戦力が既に参戦していた筈であり、そうなれば、一気に優勢となったのであるが、両軍閥は当主、前当主共に暗殺され、次期当主を誰にするかすら決まらない状態のままであった。


 「フェルトン、ユン両家の当主は、未だに決まらないのか?」

 流石に苛立ったルーゼリア大公が周囲の者に確認する。

 「混乱状態の上に、シルバーバーチ、リューネ両家が介入しているのでしょう。 どちらの家共に、家内の意見が2つに別れてしまい、全く見込みが立たないようです」

 それを聞いた大公は、

 「引退しているから迷惑は掛けられないと、前当主に声掛けしなかったのが不味かったな。 宮中に招いておくべきだった」

 エウドア幼帝派の主要な廷臣、将軍達は主だった一族を連れて、服喪明け前日の夜遅くに宮廷に集められていたのだ。

 だから、大規模な謀殺の難を免れていた。


 「済んでしまったことは、致し方ありません。 当面はオズワルト大将達の奮闘に期待しましょう」

 イ司徒がその様に述べて、一週間後には結果が出るであろう、艦隊戦に期待を寄せていた。

 これに勝てば、一気に優勢になるのは確実。

 ウォルフィー元帥と並ぶ百戦錬磨の勇将の活躍をエウドア幼帝派全員が祈っていたのであった。



 一週間後。

 オズワルト大将の2個艦隊は、リューネ家の本拠地である、リードルフ星系に迫っていた。

 シルバーバーチ、リューネの両軍閥も、オズワルト大将麾下の2個艦隊がリードルフ星系に向かったとの情報を得ていたことから、星系外縁で待ち伏せをしていた。

 戦力的には、どちらも2個艦隊であり、ほぼ互角。

 星系外縁の有利な地形に布陣をしていた軍閥艦隊。

 先制攻撃は軍閥側からであった。


 「撃て〜」

 「撃て」

 ヨハン・シルバーバーチの長子ザクセンとアウグスト・リューネの実弟ブルンが、それぞれ1個艦隊を率いて布陣していたのだが、先制攻撃は完璧な連携、しかも絶妙なタイミングであった。

 オズワルト艦隊も攻撃を予想していたものの、タイミングが非常に良い攻撃だったので、最前方の艦艇が次々と航行不能となる。

 「狼狽えるな。 反撃せよ」

 オズワルト大将の冷静な反撃命令に、一時的に混乱した前方部隊の艦艇も、態勢を立て直して、反撃に出る。

 ボーデン中将の部隊が速度を上げて、救援に出たことも有り、序盤は劣勢であったが、直ぐに巻き返すことに成功した。


 こうなると、実戦経験の少ない軍閥艦隊は旗色が急速に悪くなる。

 「作戦、第二段階に移行するぞ」

 この展開を予想していたザクセン・シルバーバーチとブルン・リューネ両指揮官。

 直ぐに、それぞれの艦隊を予定のポイントまで引くことを決断した。


 

 第二段階とは、リードルフ星系に張り巡らされている軍事防衛衛星の攻撃力を使って、敵艦隊の侵入を防ぐものであった。

 急速に撤退する軍閥艦隊。

 一気呵成に攻めたてるオズワルト艦隊。

 軍閥艦隊は途端に劣勢となったが、戦力的に増援は無い厳しい情勢であることから、各艦艇が必死に戦っており、死兵と言える状況にあった。


 「一旦、追撃の手を緩めよ」

 オズワルト大将は冷静に状況を見極め、無闇に突撃しかけていた味方の制御につとめる。

 「参謀長。 確かこの星系には......」

 大将がそこまで言い掛けると、

 「星系の外縁部よりやや内側に、軍事防衛衛星が一万基程度設置されています」

 「一万基?」

 「はい。 それ故に徴税を免れてきたのです」

 「なるほど。 財務当局の艦船では、一瞬で蒸発してしまうだろうな」

 大将はそう答えると、全艦隊の再編成を命令するのであった。

 


 一方、必死に逃げ続けた軍閥艦隊。

 なんとか防衛衛星網の内側に逃げ込むことに成功し、一息つく。

 改めて調べると、短時間の戦闘にもかかわらず、1割弱の損害を出してしまっていた。

 「やはり、オズワルト大将恐るべし」

 指揮官以下、全将兵がそれを実感する。

 先制攻撃は成功した筈なのに、気が付いたら大逆転されている状況。 

 敵は、せいぜい30隻程度の損害で、大半は中破程度に留まったようだ。


 「いくらオズワルト大将でも、この軍事防衛衛星の攻撃力には肝を冷やすだろうな」

 両指揮官は、軍事衛星網の強大な防衛力に期待していたのだった。

 この防衛網が突破されれば、敗北。

 それが確定しているだけに必死である。

 「将兵諸君。 我々の興亡はこの一戦にある。 負ければ、全てが奪われ、犯され、そして殺される。 それが太陽系帝國の帝國軍の戦い方だ。 慈悲なんて絶対にあり得ない。 それは諸君も知っているだろ?」

 「死にものぐるいで戦え。 指揮官のザクセン、ブルンも死を賭して戦う。 よろしく頼むぞ」

 「おー」

 軍閥艦隊の各艦艇に響く、気合いの入った掛け声。

 帝國軍の悪名を活かした鼓舞であり、効果は高かった。

 


 再編を終えてからオズワルト大将は、攻撃命令を出した。

 「全艦艇の長射程ミサイルで、軍事防衛衛星を破壊せよ」

 その様に指示し、初めて戦う軍事防衛衛星の能力を見極めようとしたのだ。

 約1000隻の艦隊から新型長射程ミサイルが、軍閥艦隊に向けて発射された。

 すると、射程内にある軍閥艦隊に到達する手前で、無数のビーム砲を浴びて、長射程ミサイルが爆発してしまった。

 ミサイルの爆発に巻き込まれて、軍事防衛衛星も誘爆する。

 しかし、せいぜい50基が破壊されただけであった。


 「自動自己防衛システムが搭載されているのか......」

 オズワルト大将は、険しい顔をする。

 「かなり高価な衛星なのでしょう」

 参謀長のエイ少将が、司令官の質問に答える。

 「こっちのミサイルが尽きるまで攻撃しても、500基くらいしか破壊出来ないだろう。 それでは突破が難しいな」

 大将は左右の者にそう告げると、

 「全艦隊、総力戦用意。 密集隊形で軍閥艦隊へ突撃」

 思い切った命令を出したオズワルト大将。

 猛攻撃を始めたのだった。

 軍閥側も応戦を開始する。

 軍事防衛衛星網の自動防衛システムはかなり強力で、オズワルト艦隊のビーム砲と激しい撃ち合いとなる。

 そこに、軍閥艦隊からの攻撃も加わり、乱戦状態に陥ってしまった。

 激しいエネルギー流が、両艦隊の間を渦巻く。

 軍事衛星もそれに巻き込まれて、次々と破壊される。

 3時間程の激しい撃ち合いは、双方の艦隊を消耗させ、オズワルト大将も一旦陣形を立て直す為、艦隊に後退を命じたのであった。

 艦隊の損害は互いに1割程。

 軍事衛星も1000基以上が破壊されたが、まだ十分な防衛衛星網を維持していたのだった。


 「軍事衛星防衛網が邪魔だな」

 オズワルト大将は、改めてその効果を実感する。

 「まだ9000基弱も残っていますから」

 参謀長も渋い表情をしていた。

 「信頼出来る増援艦隊が居れば、要請したいところだが......」

 「裏切られた場合、挟み撃ちにされてしまう危険性が高いですから」

 宇宙艦隊は、ウォルフィー元帥とオズワルト大将の実績に脅威を感じて、一応従ってはいるが、マー衛将軍がアンナー派に協力する様に工作をしていた艦隊司令官が何人も居る筈なのだ。

 マー将軍が序盤で戦死したことにより、逆に誰を切り崩していたのか、全くわからなくなってしまい、全員を疑うしかない状況であった。


 「仕方ない。 軍事防衛衛星を地道に破壊していこうか」

 大将はその様に指示をし、一旦将兵に休養を取らせることにしたのであった。



 リードルフ星系から少し離れたところで、数時間の休養を取らせていると、帝都と反対方向から近付いて来る、謎の艦隊がレーダーに感知され始めた。

 近づくに連れて徐々に数が増えてくる。

 「全艦隊、戦闘態勢を取れ」

 報告を受けたオズワルト大将が未確認艦隊を警戒して、指示を出した。

 「こんなところに艦隊がやって来るなんて。 増援派遣の話は聞いていないよな?」

 堂々と進んで来たので、知らぬ間に増援が決まったのかと少し思ったのだ。

 「それならば、我が艦隊の後方からやって来る筈。 前方から来るなんて、あり得ないことです」

 ボーデン中将もエイ少将も首を傾げている。

 「2個艦隊近い大兵力。 一体何処から?」

 「リードルフ星系よりも三国同盟側に、艦隊が駐留している星系は無い筈ですが」

 突然湧いて出た謎の艦隊に強い警戒心を見せるオズワルト艦隊。

 「とりあえず、通信を送ってみろ」

 大将はその様に指示して、反応を見たが、返信は無かった。


 近付いて来た艦隊の様子が、スクリーンに映し出される。

 その映像を見たオズワルト大将は驚いていた。

 「識別番号を見ろ」

 両隣に居たボーデン中将とエイ少将も確認する。

 「20......21も?」

 「第20艦隊と第21艦隊?」

 2人が呟くと大将は、

 「どちらも先の大戦の大敗の時に消えた艦隊だ。 しかも全ての信号が消えている」

と答えた。

 それを聞いたボーデン中将が、

 「何処かで、奇跡的に生き残っていたのか?」

と呟くと、参謀長が、 

 「5年以上経っています。 生き残りが今頃帰って来る筈が無い。 おそらく敵中で孤立し飢えて、どちらも降伏した艦隊でしょう」

と指摘したのであった。


 「全ての艦艇の生命維持装置が停止している。 幽霊艦隊?」 

 中将が思わずそういう言い方をした。

 すると、オズワルト大将が、

 「そうだよ、幽霊艦隊だ。 きっと女神が送ってきたものだな」

 その言葉に、2人が意味がわからないという表情を見せたので、

 「後で意味は教えよう。 とりあえず様子見だ。 俺の考えが当たっていればおそらく......」

 大将はその様に指示をした。

 臨戦態勢のまま、幽霊艦隊の様子を見守るオズワルト艦隊。

 すると幽霊艦隊は、リードルフ星系に張られた軍事防衛衛星網を難なくすり抜けたのであった......



 一方、軍閥艦隊。

 急速に接近する謎の艦隊より通信を受けていた。

 「こちらは、フェルトン家・ユン家の連合軍閥艦隊。 両家はアンナー皇女殿下にお味方する方針となった。 援軍としてやって来た」

との。

 「そんな話は聞いていないが......」

 怪しむブルン・リューネ指揮官。


 続けて、

 「我々はアウグスト・リューネ様より、防衛衛星システムの解除コードを預かっている。 だから、防衛衛星網を通過出来る。 今は帝國軍艦隊が直ぐ近くに居るので、迷惑掛けないように合流する」

 その様に言ってきた。

 すると、接近中の艦隊の反対側から、オズワルト艦隊も接近して来る。

 「リューネ殿。 真偽はともかく、オズワルト艦隊に対応せねば」

 「そうだ。 本当にコードを知っているのなら、応援艦隊なのかもな。 正体不明の艦隊は軍事防衛衛星に任せよう。 我等はひとまずオズワルト艦隊を迎撃せねば」

 ブルン・リューネは、ザクセン・シルバーバーチにそう話すと、軍閥艦隊に迎撃態勢を取るように指示をした。


 そして、応援を名乗った謎の艦隊は、軍事防衛衛星網をすり抜けたのだった。



 幽霊艦隊の正体は、レアー号に率いられた無人艦隊である。

 リウが、

 「レア。 軍事衛星が沢山有るんだけど、無力化出来る?」 

と確認してきた。

 「ちょっと待って」

 レアは軍事防衛衛星を解析する。

 「大丈夫。 かなり旧型のシステムだから、楽勝で出来るよ。 何ならコントロールも奪えるけど」

 「じゃあ、奪っちゃって」

 その様に指示されたので、約9000基の軍事衛星を全てレアのコントロール下におく。

 「軍閥の艦隊がこっちを攻撃して来たら、乗っ取った軍事衛星に攻撃させて。 軍閥艦隊が帝國艦隊を攻撃するのならば、そのまま合流してから攻撃しましょう」

 リウはレアに指示をすると、軍閥艦隊への合流を目指す。

 軍閥艦隊は無人艦隊には目もくれず、オズワルト艦隊への迎撃態勢を取る。

 そして、無人艦隊は軍閥艦隊の真後ろに到着し、合流を果たしたのであった。



 「謎の艦隊が我々に合流したぞ」

 「援軍らしい」 

 軍閥艦隊の将兵は不安な気持ちを抱えながら、援軍らしいと知って士気が上がり始めた。

 「よし。 4個艦隊ならば、オズワルト艦隊に勝てるかも」

 口々に楽観的な言葉を口にし始め、そういう空気が軍閥艦隊を包んだ時、オズワルト艦隊が長射程ミサイルで攻撃を開始した。

 軍事防衛衛星網が長射程ミサイルを迎撃する筈......

 ところが、何の反応もしない。

 やがて、オズワルト軍の長射程ミサイルがそのまま軍閥艦隊に到達して、前方に布陣していた艦艇が次々と爆発するのだった。



 オズワルト大将は、幽霊艦隊と軍閥艦隊の反応を見る為、

 「軍閥艦隊に向けて、長射程ミサイル発射」

と命令を下した。

 数千発のミサイルが軍閥艦隊へと向かう。

 さっきはビーム砲で迎撃してきた軍事衛星。

 しかし、今回は何の反応も見せない。

 「やはりな」

 オズワルト大将が呟くと、次の瞬間。

 ミサイルは軍閥艦隊へ到達し、爆発が連鎖的に起きたのであった。


 「大将閣下。 これは......」

 副司令官のボーデン中将が思わず質問する。

 「だから言っただろ? あの幽霊艦隊は女神の贈り物だと」

 そう答えると、

 「さあ、忙しくなるぞ。 リードルフ星系の制圧準備だ。 ボーデン中将、自身の艦に戻って、先鋒部隊の指揮を。 エイ少将、陸戦隊に降下作戦の準備を発動してくれ」

 オズワルト大将の指示に驚いた中将と少将。

 やがて2人共、勝利の確信を持ち、急いで指示に従うのであった。

 目の前の軍閥艦隊から、大きな爆発が続くのを横目で見ながら。



 軍閥艦隊では、軍事防衛衛星が攻撃をしなかったことで、動揺が広がっていた。

 「おい、衛星はどうなっているんだ。 故障か? それとも妨害か?」

 指揮官の2人は大汗を掻きながら、周囲の者達に確認させる。

 すると、突然軍事防衛衛星全てが、軍閥艦隊に牙を剝く。

 オズワルト艦隊にでは無く、軍閥艦隊を攻撃し始めたのだ。

 次々と轟沈する軍閥艦隊の艦艇。

 そして、謎の艦隊も背後から攻撃を開始。

 「うおおーー」

 「どうなっているんだ。 ぎゃあああーー」

 次々と沈んでゆく軍閥艦隊。

 「やはり、敵だったか。 後背の謎の艦隊にミサイル攻撃を」

 指揮官はその様に指示した。

 軍閥艦隊の艦列に突入してきた謎の艦隊。

 その艦隊をミサイル攻撃したところ、謎の艦隊の艦艇はミサイルが直撃すると大爆発を起こしたのであった......



 その大爆発の光が、オズワルト艦隊から見えていたのだ。

 「全艦、軍閥艦隊に突撃。 さあ大チャンスだ。 一気に奴等を沈めよう」 


 1時間後。

 軍閥艦隊は全滅していた。

 文字通りの全滅。

 非常救難艇以外、一隻も残らず。

 オズワルト艦隊と軍事防衛衛星、リウの無人艦隊に囲まれて攻撃を受けた以上、ただ殲滅されるだけであった。



 オズワルト艦隊は、幽霊艦隊を放っておいて、まずリードルフ星系の制圧を開始する。

 長年、帝國内の独立国の様な存在であったが、ついに終焉の日を迎えたのだ。

 ここを押さえたら、直ぐにシルバーバーチの領地である星域に転進して、それも押さえなければならないのだ。

 そして、オズワルト大将が気付いた時には、幽霊艦隊は姿を眩ましていた。

 「まさしく幽霊だな」

 そういう感想を抱いた大将。

 オズワルト艦隊がリードルフ星系の制圧行動中に、何処かへと移動して行ったようであった。

 その間に軍事防衛衛星は、衛星同士が攻撃し合って全滅。

 リードルフ星系を含むリューネ家が支配していた地方軍閥は、翌日にはオズワルト大将の艦隊に完全制圧され、帝國政府直轄領へと編入されたのであった。



 リウの無人艦隊は、リードルフ星系を離脱して、テラ星系へと向かっていた。

 今回の戦いで200隻程が自爆をしたので、600隻余りに減少していた。

 「思ったより、残ったね」

 軍事衛星が有ったことで、そのコントロールを奪い、軍閥艦隊を攻撃出来たからだ。

 「とりあえず、この近くの無人星系に艦隊を隠してから進もうよ」

 リウはレアにそう指示すると、レアが星図から隠すのに最適な星系を探して、600隻を隠したのであった。


 ここから先は、レアー号だけで惑星テラに突入する予定。

 一隻ならば目立たないし、商船と偽って航行すれば、見つかる可能性はほぼ無い。

 「通常で約一週間の航路だけど、4日半で到着出来るかな」

 レアがリウに航行予定を説明した。

 「内乱中だから、無事テラの衛星軌道上に辿り着けるでしょう」

 「さっきの帝國艦隊は?」

 「あれは、もう一つの地方軍閥の制圧に向かうから、隠した無人艦隊が見つかる可能性は無いよ。 ここから通常航路で、5日以上離れている場所にある地方軍閥なんだって」

 帝國領内に入ってから多くの最新情報を入手し、それを見ながらリウとレアは話をしていた。

 「最後の作戦は? レアー号は攻撃力無いのだからね」

 「大丈夫よ。 着いてからのお楽しみってことで」

 レアはリウにはぐらかされてしまった。


 『レイ。 大丈夫かな?』

 心配そうなレア。

 『リウがやろうとしていることの想像はつくけどね。 惑星テラでは地上戦が繰り広げられているらしいから、レアー号が傷付く可能性は無いですよ』

 レイの答えを聞いて、一安心する。

 『早く終わりにして、帰りたいな~』

 レアにとって、帝國領内での居心地は良くないようであった。



 オズワルト大将は、麾下艦隊に略奪や暴行の絶対禁止を命じていた。

 しかし、多くの将兵が居る上に、軍事力がほぼ無くなったリューネ領には多くの財宝がある。

 それを盗んだ将兵が一定数出てしまったのだ。

 大将はそれを聞くと、直ぐにリューネ領の治安組織に引き渡し、法に基づいて処罰するように指示を出した。

 まさか、リューネ領の治安組織に拘禁されることになるとは予想しておらず、恐怖におののく盗みを働いた将兵達。

 報復されることを恐れたのだ。

 その処置を知ったオズワルト艦隊は綱紀粛正で引き締まった。

 「将兵に今回の処置を伝えておくように。 それに勝てば黙っていても多くの褒賞が貰える。 それも我が艦隊は、いの一番にな。 盗みや暴行、性犯罪や殺人等をすれば、その権利が無くなるのだぞ。 そのことも周知徹底させるように」

 大将は部下達に、その様な指示を出していた。


 「軍閥艦隊が全滅したことを大々的にアピールしなくて宜しいのですか?」

 ボーデン中将が質問する。

 「シルバーバーチの地方軍閥の制圧が、これからだからな。 それにアピールも良いけど、それをすると、シルバーバーチの一族が巨万の財宝を持って亡命してしまう。 奴等の領地は西上国に近いから」

 「なるほど。 地方軍閥を完全制圧してから、アピールする方が懸命だと」

 「そういうこと。 完全制圧後にアピールをすれば、アンナー皇女派は一気に瓦解するのは確実。 早くアピールし過ぎて、鞍替えしようとする連中が急速に増えても、味方が困るだろ?」

 大将はそういうと、リューネ領はボーデン中将に任せて、シルバーバーチ領へと飛び立って行った。

 『一週間後には、趨勢は決するだろう』

 ボーデン中将はその様に考えながら、リードルフ星系を見つめるのであった。


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