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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・落龍篇

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第83話(二世皇帝の死)


帝國第二代皇帝ザッハ・フォン・アークが死に、三代目の座を巡って、激しい争いになりそうな情勢となった。


すると、リウのもとに使者がやって来た。

レイザールを保護していた事で、リウも跡目争いに巻き込まれつつあったのだ。


 人類社会の統一を目指して、太陽系帝國テラの二世皇帝が進めた大遠征が想定外の大失敗に終わり、多くの血が流されたこともあって、その精神的な負荷は皇帝ザッハ・フォン・アークの体を蝕んでいった。


 そこに、旧ムーアー国領域における戦いで大敗したことが重なり、二世皇帝は精神的な健康を完全に損ねてしまっていたのだ。


 しかし、彼は偉大な初代皇帝の跡を継承した者であり、巨大な帝國に居住する1000億人の人民の上に立っていることから、戦いで敗れたからといって、帝位を譲って責任を放棄し、安息の日々を過ごすことを許される立場では無かった。

 そもそも、帝位を譲る相手すら誰も居なかったのだ。

 帝位を争った兄弟を、謀略で亡き者にし続けたツケが、ここに来て現れてしまったと、当の二世皇帝自身も気付いたが、もはやどうにもならない事態であった。

 血族はたった2人しか残っておらず、しかもそのうち一人は、大帝の養子であって、皇位を継ぐ立場になく、もう一人は病弱過ぎて、巨大帝國の帝位に就くことは不可能であったのだから......


 そう言った重責が、知らず知らずのうちに、二世皇帝の心臓に大きな負荷を掛けていたのであろう。


 ただ彼は、軍才は無かったが、政治家としては優秀な人物であった。

 大敗をキッカケに、大帝以来続いていた軍による残虐行為や略奪行為を廃止にすることを進める等、あれ程の大敗北であっても、帝國内は安定しており、政治面の手腕は評価が高かったのだ。


 


 突然、二世皇帝は亡くなったが、後継者を決めていなかったことで、三代皇帝の座を巡る争いが直ぐに表面化することとなった。


 皇宮に住まう候補者は2名。

 二世皇帝の直系血筋を引く人物は、どちらも女児であった。

 一人は、アンナー・フォン・アーク。

 年齢は12歳。

 もう一人は、エウドア・フォン・アーク。

 こちらも年齢は12歳。


 母親が、大帝時代以来の有力な廷臣であるシルバーバーチ家出身であり、有力な外戚の支持があるアンナーと、母の身分が低く、外戚の居ないエウドアでは大きな勢力の差があり、その点だけを見れば、三代皇帝の席は直ぐに決まるものと思われた。

 ところが、後継者争いを複雑にする要素が幾つも有ったのだ。


 エウドアの母は、晩年の二世皇帝の寵愛を独り占めしていたこと。

 アンナーの背後に居る外戚のシルバーバーチ一族に人気が無かったこと。

 そして、二世皇帝が崩御直前に、廷臣が見守るところで、薄れてゆく意識の中、「レイザールに......」と最後に口走ってしまったこと。


 これらが複雑に絡み合って、すんなりとアンナーが女帝の座に就く状況にならなかったのだ。

 特に、どちらの女児とも縁のない、多くの有力廷臣からすれば、忘れられていた年長で唯一の男子後継者のレイザール皇太子がまだ生きているのであれば、場合によって大逆転の目も出て来るからだ。



 リウは、レイザールの保護者になった後、実父である二世皇帝に極秘の書簡を送っていた。

 その内容は非常に短く、

 『レイザールを保護したので育てる。 一応実父である皇帝に通告しておく』

というものでしか無かったが。

 この書簡の存在は、帝國宰相ルーゼリア大公や大将軍ウォルフィー元帥、他数名しか知らないものであり、二世皇帝も周囲に話したことは無かったが、今際の際で口にした言葉が憶測を呼び、「レイザールに跡を継がせる」と言いたかったのだという解釈が一部で為される様になってしまっていた。


 そこで、第三勢力を目指す廷臣や将軍達が、書簡の存在を知る数少ない人物の一人である皇帝侍従長を監禁して、問い詰めた結果、敵将リウ・アーゼルのもとでレイザール皇太子が生きているという事実が明らかになってしまったのだ。


 色めく廷臣達。

 お互いがお互いを利用して、巨大な太陽系帝國を牛耳り、我が世の春を謳歌しようと、野心剥き出しの裏工作を始めるのであった。



 この動きを憂慮した帝國宰相ルーゼリア大公は、やがてエウドア皇女とその母親を保護する決断をした。

 このまま放置すれば、勢力の弱い皇女が暗殺されると見ての措置であった。


 これに憤ったシルバーバーチ一族や一族を支持する廷臣・将軍達。

 老臣ルーゼリア大公は、先帝の崩御と共に引退して、地位を引き渡すべきだと猛抗議を始めて、実力行使を匂わすまでの状況になる。

 ルーゼリア大公は政治的な影響力は大きいが、固有の軍事力が少ないという弱点を突こうとした。

 ところが、それに対して、ウォルフィー元帥とオズワルト大将という、当初中立な立場を表面していた大帝以来の老将軍2名が、この事態を憂慮すると宣言したのだ。

 そして事実上、ルーゼリア大公に軍事力で肩入れする態度を見せたことから、三代皇帝の座を巡る争いは、泥沼化してゆくのだった......



 「帝國宰相は、二代皇帝陛下のご崩御と共に、引退して然るべき存在。 それなのに、よりにもよってエウドア皇女に肩入れするとは」

 シルバーバーチ家当主ヨハンは憤懣やる方ない態度で、支持者達に話し掛ける。

 「エウドア皇女など、どう言い繕っても高貴な身分とは言えますまい。 その母御はただの踊り娘ですぞ」

 ヨハン・シルバーバーチの妻エレンの一族、リューネ家の当主アウグストも同調する。

 「我等に味方する勢力を糾合すれば、帝國軍の4割超の軍事力となる。 ルーゼリア大公如きは相手にもならん」

 ヨハンは味方の諸侯を前に、アンナー皇女を支持する勢力の強さを誇示する。


 「しかし問題は、エウドア皇女殿下では無く、今ひとりの方ではありませんか?」

 アンナー皇女支持派で、最も勇名高い衛将軍のマー中将が冷静に指摘をする。

 「皇太子殿下を庇護下におく敵将アーゼル中将。 動員兵力は15個艦隊を超えると言われている。 今や軍事力は大逆転をしてしまっているのですから」

 マー中将は、戦力分析をその様に説明した。


 「なに。 それほど動員出来るのか?」

 「あくまで、最大兵力の話です。 奴等の版図から帝國本領域は遠いので、せいぜい5個艦隊動員が現実的な兵力でしょうが」

 「それでも、我等と互角だ。 それは由々しき事態だな」

 「エウドア皇女派が奴等と手を結ぶ可能性だってあるやもしれません。 劣勢であるが故に大逆転を狙うのであれば、そういう選択肢もあるのは事実」

 「ひとまずは、多数派工作だ。 レイザール皇太子など、弑逆犯が生んだ子。 いくら男子とはいえ、三代皇帝に即位する資格は無いのだからな。 日和見派を我等の勢力に誘うのが肝心だ。 皆々様、よろしく頼みますぞ」

 「我等こそ正義。 我等が勝つ」

 「おー」

 支持者を集めた大きなパーティーで、我が世の春を夢見るアンナー皇女派。

 この時点では明らかに優勢で、ヨハン・シルバーバーチもアウグスト・リューネも、三代皇帝の座はほぼ決まりだと勝利を確信していたのであった。



 一方、エウドア皇女派。

 主だった支持者は、帝國宰相のゴーズ・ルーゼリア大公、宰相を支える帝國政府ナンバー2の地位である司空のジャック・ローベル、ナンバー3の地位である司徒のイ・スシン、大将軍のミンタル・ウォルフィー元帥、驃騎将軍のジョージ・オズワルト大将ぐらいしかおらず、大帝以来の老臣、老将軍ばかりであった。


 「アンナー皇女殿下派は、大宴会を開いたそうですぞ」

 「我等と比べたら、若い連中ばかりですからな。 さぞかし華やかなパーティーだったのでしょう」

 司空のローベル、司徒のイと言った大臣が相手方の意気揚々とした様子を想像しながら、討議を始める。

 「シルバーバーチ家も、リューネ家も地方刺史で地方軍閥だからな。 先の大戦の敗北の影響も殆ど無いので、実兵力はかなりのものがある」

 先ずオズワルト大将が、アンナー皇女の外戚二家の優勢ぶりに危機感を覚えていると話す。


 「兵力も金も溜め込むばかりの守銭奴っていうだけじゃろ。 戦えば負けるとは微塵も思わないがな」

 ウォルフィー元帥がそう評価すると、大公は深刻な表情で、

 「あの連中にこの巨大帝國を委ねれば、あっという間に腐敗と賄賂がまかり通る衆愚政治になるのは確実。 下手すれば三国同盟に攻め込まれなくても、自滅して滅んでしまう。 それでは黄泉の世界で再会した時に、大帝に申し開きが出来ない」


 大帝という英才に選ばれた老臣、老将軍達は老いたりといえども優秀な臣下達であった。

 

 「しかし、劣勢も劣勢、大劣勢じゃな」

 ウォルフィー元帥が笑ってしまう程の支持の少なさであった。

 「兵力は、元帥と私で4個艦隊ってところだろうから、軍事力だけなら太刀打ち出来るけどな。 それ以外がどうにもならん。 宰相閣下には良き考えがありますかな?」

 オズワルト大将が宰相に良策の提案を求める。

 すると、ルーゼリア大公は、

 「鍵は、レイザール皇太子殿下だと考えている」

 「ははは、流石ですなー。 儂もそう思っておりました」

 ウォルフィー元帥が相槌を打つと、

 「エウドア皇女殿下の支持をして貰う。 そうすれば逆転勝ちも見込める」

 「しかし、それは非常に難しいのでは?」

 大公の提案に、ローベル大臣が自身の意見を述べながら、質問をする。


 それに対して、大公は、

 「それは、当たり前だ。 ただレイザール皇太子殿下に、太陽系帝國の三代皇帝に就く意思は、全く無いだろう」

と述べると、オズワルト大将が同意する。

 「そうでしょうな。 散々冷遇されて、敵中に置き去りにされたのに、今更戻って来たって、5年後には墓場に入る人となってしまう。 それがわからない程、愚か者では無いでしょう」


 そこで両大臣が、改めて宰相に質問をする。

 「ただ、どうやって話を付けるのですか?」

 「帝國に戻らない限り、皇籍を離脱して自由にして構わないという条件を出すのだよ。 余計な争いにも絶対に巻き込まないと。 その代わりにエウドア皇女殿下を支持して欲しいと申し出る」

 「そして、皇女殿下が女帝に即位した暁には、命の保証もする。 なんなら、女帝陛下が承諾すれば、三国同盟に有利な条件で停戦条約を結ぶとも持ち掛ける」

 それを聞いたオズワルト大将が、

 「うーん。 皇太子殿下側から見て、そんなに魅力的な条件だとは思えないな。 既に兵力は逆転して向こうが優勢だし、まして敵将の庇護下にあるのだろ?」

と難色を示すと、宰相は、

 「こっちが出せる条件が無いのだよ。 結局のところ」

と苦笑しながら、正直な考えを述べた。

 「まあ、それは確かにだな」


 その後も議論は続く。

 「アンナー皇女殿下が皇帝になれば、支持者達は何をするかわからない。 レイザール皇太子殿下の暗殺を企てるかもしれないって持ち掛けてみるのも一つの手かもな」

 「あの連中は阿呆だから、本当にやりかねん」

 「そんなことしてみろ。 アーゼル中将なる人物がどういう御仁かは知らんが、大軍で攻め込む口実を与えるだけ。 百害あって一利無しじゃろ?」


 そして、エウドア皇女を支持する老臣グループは一つの結論を出した。

 「まあ、やってみて損は無い。 特使を出してみるか」

 エウドア皇女派は、リウに使者を出すことに決めたのであった。



 それが形になったのは、リウのもとに二世皇帝が崩御したとの情報が入って、3週間ほど経った日であった。

 アワ・ドー星系にある小さな無人の外交事務所に、謎の訪問客が来ているとの報告が有ったのだ。

 「詳細は直接で無いと話せないが、帝國宰相ルーゼリア大公の使者だ」

と、訪れて来た男3人は言っているというものであった。

 ひとまずリウは、

 「ネイト・アミューまで来るのを許可する」

と指示を出して、出迎えの部隊を派遣したのであった。


 そして、5日後。

 ルーゼリア大公の使者を名乗る男3名は、惑星ネイト・アミューに到着した。

 帝國がこの宙域を失陥してから約5年。

 あまりの変貌ぶりに驚く使者達。

 全く活気が無く、沈んだイメージしかなかったのだが、惑星は建設ラッシュで、衛星軌道上に巨大な構造物の構築も始まっている。

 しかも、着陸する時に見えた軍事宇宙港には無数の軍艦が並んでいるのが確認出来たのであった。

 「帝國からの使者に、ネイト・アミューの様子をあえて隠す必要は無い」というリウの指示が有ったので、自由に見させていたのであった。



 やがて、儀礼用旗艦ベルクに案内された使者達。

 暫く待っていると、久しぶりに男装をしたリウ・アーゼルが現れた。

 特に護衛も付けず、ただ一人の将校を伴っていただけであった。

 「遠路はるばる、わざわざお越しになられて、ご苦労さまです」

 リウは開口一番、使者を労うと、

 「私はこの星域の総司令官をつとめるリウ・アーゼル中将と申す者。 随行のこの者は首席幕僚のアーサ少将と言います」

と丁寧に自己紹介をした。

 帝國宰相の使者はこの時点で既に、気遅れしていた。

 『こんなに若い美丈夫が、有名なアーゼル中将なのか。 これでは三国同盟の勢力が伸長する一方になるのでは、と』


 「それで、面識無い帝國宰相ルーゼリア大公閣下が使者を送って来られるとは、どの様なご用件でしょうか?」

 中将は単刀直入に質問をしてみせたが、

 「と言ってみましたが、ご用件はこれでしょうね?」

 そう言うと、一つの指輪を使者に見せたのであった。

 それは、レイザールが保護された時に身に着けていたアーク家の紋章が入っている、非常に高価な宝石が散りばめられた指輪であった。

 「これは、弑逆犯として自害されたシンキ元皇妃が二代皇帝殿より送られた指輪だと聞いています」

 リウは使者にその様に説明して、皇太子レイザールが自身の庇護下にあることを示したのであった。


 「私達がこの惑星まで派遣された理由は、提督の考えられている通りでしょう。 庇護されておられるレイザール皇太子殿下に、我等が擁立しているエウドア皇女殿下が三代皇帝の地位に即位することへの支持をお願い致したく、こちらに参りました」

 使者達は、その様に訪問理由を説明した。

 流石のリウも、この申し出は予想外であった。

 「支持ですか? どの様な皇女様なのか、わからないのに?」

 更に質問をして、相手方の意図を確認する。


 「宰相閣下は、皇太子殿下が帝位に就く意思は全く無いだろうと言っておられます」

 「その通りです」

 「二代皇帝陛下は跡継ぎを指名出来ないまま崩御なされました。 専制国家である以上、形式だけであっても帝國皇帝の地位が空席で有り続ける訳にはいきません」

 「そうでしょうね」

 「現在、その地位を争っているのは、2人の皇女殿下。 しかし、宰相閣下が擁立しているエウドア皇女殿下は実母の身分が低く、劣勢の状況であらせられます」


 「......」

 リウは黙ったまま、使者の話を聞き続ける。

 「それであれば、もう一人のアンナー皇女殿下を三代皇帝の地位に擁立すればと、思われるでしょうが、外戚の力が強過ぎるのです。 アンナー皇女殿下が皇帝の地位を手に入れれば、程なく太陽系帝國の政治は混乱し、下手すれば国境地帯を巻き込んだ戦乱等の発生も予想され、レイザール皇太子殿下を暗殺しようとする等、の良からぬ事象も発生することになりましょう」

 「詳しいことは知りませんが、それ程にまで、外戚達の質が良くないということですか?」

 「はい。 地方軍閥の者達で、今までも自身の勢力下でヤリタイ放題。 その姿勢を国政に持ち込まれれば、間違いなく大混乱に陥るでしょう」


 「......」

 リウは返事をせず、使者に続きを促す。

 「他国から見れば、帝國内の混乱は自業自得、逆に思う壺と思われるでしょう。 しかし、苦しむのは民衆達。 宰相閣下はそれを心配しておられるので、外戚の力が無く、大人しくて思いやりがあるエウドア皇女殿下の支持に回られたのです。 勝ち目が殆ど無いのにも関わらず......」


 劣勢の皇女を擁立したと聞いて、もう一人の皇女に問題があるのだろうと推測し、リウは質問をしてみる。 

 「アンナー皇女とは、どういう方なのですか? ここは帝國の力が及ばぬ他国の地。 お話されてもこちらから告げ口する様なことはありませんよ」

 「外戚の二家の勢力を背景に、ご実母様は非常に猛々しい態度を廷臣にとっております。 その様な方に育てられているので......」

 「自尊心と自惚れが強く、我儘な性格ってことですね」

 「口の端に乗せるのも憚ることではありますが......」


 リウは、エウドア皇女の支持者を確認する。

 「宰相閣下にお味方されているのは、どなたですか?」

 「大将軍ウォルフィー元帥、驃騎将軍オズワルト大将、それと三公のお二方が主な有力廷臣です」

 「大将軍も三公の一つでしたよね? すると帝國のトップ4人が支持していると」

 「そのとおりなのですが......」


 使者の言葉尻から、劣勢なのだと予想したので、

 「老臣、老将ばかりで支持が広がっていない。 大半の廷臣はアンナー皇女が三代皇帝になりそうだと見ているから」

 「はい。 そのとおりです」

 「しかし、レイザールがエウドア皇女殿下の支持を表明しても、大きな効果は無いと思いますが。 あの子も冷遇されていて、何の力も無いですよね?」

 「廷臣の過半は、男子が皇位に就くことを望んでおります。 ですから、皇太子殿下が生きていることを知った廷臣の一部が擁立を企てているのです。 その可能性がゼロだと、わかっているにも関わらず」


 可能性が無いと言うので、リウはその理由を再確認してみる。

 「ゼロ?」

 「妹の2人が15歳になったら、処刑される予定だったのです。 それ程に冷遇されていたのに、今更三代皇帝の地位に就けるから戻って来なさいと言われて、戻る方がおられるでしょうか? 利用されて用済みになれば、強制的に退位させられて、いずれ毒殺という結末だと、誰しもが気付くことですよね?」

 「はい、そのとおりでしょう」

 「それで、もし宜しければ、皇太子殿下とエウドア皇女殿下を支持している有力廷臣との極秘会談が出来る様に、提督のお力添えを頂けないでしょうか? 殿下より直接意向をお聞きしたいのですが」

 「それは難しいですね。 それと私の意見ですが、レイザールとは会われない方が宜しいと思いますよ」

 「どういう意味でしょうか?」

 「知らぬが仏ということわざがありますよね? 成長したレイザールの姿を見てしまうと、この者を帝位に就けたいと思うようになってしまうということです。 野心家であれば皆がそう考えてしまう程に......」

 それを聞いて使者達は、少し相談をしていた。


 その様子を見て相当困っていると理解したリウは、提案を変更することにした。

 「エウドア皇女殿下を支持しておられる方々は、先の大遠征に反対した方々でしたよね?」

 「ええ。 そのとおりですが......」

 「貴国の事情もわかりました。 ウォルフィー元帥閣下かオズワルト大将閣下であれば、極秘会談のセッティングをして差し上げましょう。 直接レイザールの意思を聞いて、持ち帰って貰った方が宜しいと思いますから」


 すると使者達は、

 「実は、元帥閣下と大将閣下が既に国境地帯で待機しておられるのです。 時間が経てば経つほど、帝都から出れない情勢となってしまうので」

 随分思い切ったことをするなと感じたリウとレイ。

 「では、アワ・ドー星系外縁の国境で極秘に会うということで宜しいですか?」

 リウはそう答えて、会談の実施を承諾したのだった。


 急遽決まった老将軍達とレイザールとの面会。

 これが、人類社会のあちらこちらに嵐を呼ぶ合図となるとは、リウも、ウォルフィー元帥も、そして誰もが思って居なかったのであった......


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