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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・落龍篇

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第77話(後継者)


クリス・アーゼルは伯父の首相と共に、ヒエン国務長官との非公式会談に臨むと、長官はリウが背負った悲劇の運命の一部を語る。


そして、超光速通信でリウと話をするクリス。

リウから自身の後継者に任命され、想いを引継ぐことを命じられたのであった。


 宇宙艦隊司令長官タイラー大将の命令を無視して軍を出動させたノイエ軍第5艦隊の動きを制圧した後、西上国のヒエン国務長官はクロノス星系第五惑星ヘーラーの軍事宇宙港に旗艦飛燕を停泊させ、ノイエ国首相ウィリアム・ラインシュトナーの招請に応じて、首相府を表敬訪問していた。



 「これはこれは、ヒエン国務長官殿。 遠路はるばる我が国迄お越し頂き、恐悦至極に存じ上げます。 また速やかなる我が国への援軍、誠に痛み入ります」

 首相は、少し大袈裟な挨拶をしてみせた。

 「いえいえ。 こちらこそ、かなり久しくお目にかかっておらず、あまりにも時間が空いてしまったこと、申し訳なく思っております、首相猊下」

 ヒエン元帥もその様に丁寧な返礼をする。

 そして、クリス・アーゼルの方を見て、

 「こちらのお若い方は?」


 「我が一族の、若きリーダーであるクリス・ラインシュトナーと申す者で、既にLSグループの代表をつとめております」

 首相は、その様に紹介したのであった。

 「LSグループの代表とは。 それは凄い。 ところでクリス殿は、誰かに似ていらっしゃる様な気がするのですが......」

 元帥は、少し考え込む。

 「私は、リウ・アーゼル中将の面影があると、よく言われます。 中将の叔父に当たりますので」

 クリスがその様に答えると、

 「だからですね。 納得しました」

 元帥は、それまでの険しい表情を大いに崩して、にこやかな顔をしたのであった。

 『やはり、リウは丞相や元帥と特別な繋がりが有るのだな。 そうでなければ、この様な表情は見せないだろう』

 クリスはヒエン元帥の様子を見ながら、その様なことを考えていた。


 双方簡単な挨拶を終えると、

 「今回は非公式な訪問ですので、これ以後の会話は、記録に残さない形式にさせて頂いてよろしいですか?」

 元帥は首相とクリスに対して、突如その様に要望をした。

 「全然構いませんが......」

 首相が答えると、元帥は、

 「それでは、これからごく一部の方にだけ重大なお話をさせて頂こうと思います。 首相猊下とクリス殿の2人だけに」

と言い出したので、首相は特別室に案内をし、側近も遠ざけたのであった。


 「それで、お話とは?」

 首相が元帥に問い掛けると、

 「今回のことで、我が国やアルテミス王国が、何故リウ・アーゼル殿に対して特別対応をするのか、ノイエ国の指導者の方々は理解に苦しむ面もあろうかと思いましてね。 ある真実をお話しておく必要性を感じたのです」

 その様に元帥は話を切り出した。

 「確かに、そう思うこともあります。 度々」

 首相が本心を語ると、

 「それは、或る真実を知らないからでしょうね。 当然の考えですよ」

 元帥はそう言いながら、

 「詳しいことは、リウ・アーゼル殿から口止めをされているので、お話出来ません。 この真実が全て明らかになるのは、彼女が亡くなって以後のことでしょう......」

 この時元帥は、少し残念そうな表情を見せる。


 そして2人に対して質問を始める。

 「先の大戦で、帝國軍に勝つことが出来た最大の要因は何だとお二方はお考えですか?」

 首相とクリスは、

 「それは、新型艦艇艦隊の整備がギリギリ間に合ったからでしょう」

 「あれだけの高性能な艦艇を揃えられたことで、百戦錬磨の帝國軍とて対応出来ずに、途中からは一方的な結果になりましたよね?」

 2人は当然の意見を述べた。


 すると元帥は、

 「その通りです。 ただあれだけの高性能艦艇を簡単に設計、整備出来るものではありませんよね?」

 「そうでしょうね。 ゲームチェンジャーになった重要ツールですが、今までの地球人テラの技術力を一世紀以上凌駕するテクノロジーが、いきなり登場されたら、勝負にならないのは当然です」

 クリスは自分の考えを正直に語ってみた。


 「我々の技術力を遥かに凌駕するオーバーテクノロジー。 それは三国同盟の領域で遥か古代より、ひっそりと生きてきた、エルフィン人、アトラス人、ドヴェルグ人の3種族が切り札として、代々隠し持ちながら、少しずつ利用してきたものです」

 「それは、そんな簡単に提供されるものではないし、提供すべきものでもない。 地球人が悪用したら、3種族自身が滅びてしまう可能性を秘めているのですから......」

 ヒエン元帥は、簡潔に語る。

 そこで、クリスは、

 「新型艦艇に関しては、帝國軍の非道な残虐性を恐れて、3種族の協力が有ったという話ではないのですか? リウはそう言っていましたよ」

 その様に確認すると、元帥は、

 「それなのです。 協力の部分に、実は超難題が有ったのです」

 表情は一気に険しくなった。


 「お二方は、3種族が協力したという話を他に聞いたことが有りますか?」

 「いえ、全く」

 「彼等から教えて貰いましたが、過去の歴史上、協力したことは一切無いそうですよ」

 元帥は、歴史の事実を教えてくれた。


 「それが、今回実ったのは、リウ・アーゼル殿が彼等が出した厳しい条件を全て飲んだからです。 命を投げ売って......」

 そこまで話すと、元帥は落涙し始めてしまった。


(元帥の回想)

『「これは......」

 「これが協力の条件なのですか?」

 「帝國軍の脅威というのは、我々も理解しています。 いずれ彼等はやって来るし、貴方がたに協力しなければ、我々3種族の同朋達も、多くの者が戦闘に巻き込まれて死ぬでしょう。 でもそれは歴史を司る創造主が決めたこと。 我ら3種族はその運命に贖うつもりはありません。 座して滅亡するのみ......」

 「......」

 「我々からみたら、テラ帝國も三国同盟も同じ地球人なのですよ。 残念ながら、そういうことです」

 「......」

 「3種族はそれぞれの判断で、少しずつ同盟側に協力してきました。 それ以上のことは、この条件が満たされない限り、絶対に出来ません」

 「わかりました。 では対帝國軍については、三国同盟側だけで努力します。 残念ですが......」

 「この条件を満たす人物は、現状2人しか居ないし、その2人のどちらかに、数百億人の業を全て背負わせること、そんな決定は我々に出来ません」

 「......」


 「お待ち下さい」

 「リュウ殿。 止め給え」

 「貴方がこの様な悲運を背負う必要は無い。 それだけは絶対にダメだ」

 「少し時間を頂けませんか?」

 「リュウ殿。 こんな条件を飲む必要は無い。 それならば、我々は帝國軍との戦いに臨み、そこでの勝敗に命運を賭けるべきだし、負ければその結果を受け容れるべきなのだ」


 「1か月後に、もう一度お話の場を設定して下さい。 そこで私なりの回答を致しますから」

 「......」

 「......」 』



 「失礼致しました。 その交渉の場にはシヴァ丞相と私、ドヴェルグ人と深い繋がりを持つナミュール会長、アトラス人と親しい間柄のアルテミス王、そしてエルフィン人と繋がりのあるアーゼル財閥の本家一族で、新型艦艇協力プロジェクト発案者のリウ・アーゼル殿の5人で臨みました。 そして3種族が共同で出した条件に全員が凍りついたのです。 とても飲める条件では無かったから......」

 元帥はその時の様子を思い出しながら、少しだけ話をする。


 「1度目の交渉は即決裂となって、新型艦艇の開発は3種族の協力無しで行う方針に変更となったのです。 もし、そのままであれば、先の大戦で勝ったのは帝國軍で、失礼ながらノイエ国とアルテミス王国は滅び、西上国は帝國の属国となっていたことでしょう」

 十数年前に行われた極秘交渉の経過と、交渉決裂のままであった場合の『IF』の話を聞いて、黙り込む首相とクリス。


 「その後、もう一度だけ再交渉の場を設けることとなりました。 その場でリウ・アーゼル殿が3種族の条件を全て飲むとおっしゃったのです」

 「『この条件を飲めるのは私しか居ないから』と言って。 丞相も会長も国王も、そして私も、彼女を止めました。 しかし彼女の意思は固く、3種族もその姿勢を見て、少しだけ条件を軟化してくれましたが......」


 「この条件がどういうもので有ったのか、リウお嬢様から固く口止めされているので、現時点では申せません。 それは数年後、彼女が亡くなった後に明らかにされるでしょう。 そして、その時、三国同盟の国民は、彼女の決断に、真の意味で感謝することになるのです。 彼女の決断が無ければ、新型艦艇は産まれず、新型艦艇が産まれ無ければ、帝國軍に負けていて、殺されるか奴隷になっていたのですから......」



 「首相とクリス殿にお願いしたいのは、厳しい経緯が有っての新型艦艇の誕生とその存在なので、今回の様に一部の勢力が彼女の想いや意思に反して独占する様な事態を引き起こすのは絶対に止めにして頂きたいということです」

 「そして、もし次に同じ様なことが発生した場合には、ノイエ軍に対して、我々両国は懲罰を加えることを決定しております。 たとえ彼女がそれを望まなくても......」

 非常に険しい表情に変わった元帥。

 続けて、

 「もちろん今回の件で、少しでも彼女を罪に問う気がある場合には、それにも容赦しません」


 黙り込む首相とクリス。

 暫く間が有ってから、

 「わかりました。 リウ・アーゼル中将の決断が無ければ、我々は負けていたのですね。 そして、彼女をもっと適正に、大切に処遇して欲しいと」

 「我々一族と首相の権限の及ぶ範囲ですが、彼女に恩返しを致しましょう。 残り少ないという彼女の時間が無駄にならない様に......」

 首相はその様に元帥に回答をした。


 少し考えていたクリスは、

 「私からの提案なのですが、ノイエ軍に対する新型艦艇の供給はあと50隻受領したら、一旦打ち切りにしませんか? 残念ながら、ノイエ政府のコントロールが軍の主流派に対して効かない状況が続いていますから......」

 「今回、彼女が全部持っていってしまったので、軍主流派は一隻も新型艦艇を保有していません。 財閥総帥がプレゼントした100隻を彼女が保有しているので、現在452隻が彼女の手元に有ります」

 「あと50隻程受領すれば、1個艦隊となります。 ちょうど区切りも良いですし、当面帝國軍に対応するには、ネイト・アミューにはアルテミス王国艦隊も常駐しているので、それで十分でしょう」


 そして、クリスは珍しく非常に真剣な表情をしながら、

 「この50隻は、軍を通さず極秘のうちに、建艦を請け負っているアーゼル財閥からLSグループで受け取り、私の責任で中将の手元に届けます」

 「そして、新型艦艇供給契約は一旦白紙に戻して、ノイエ軍が共和国の軍隊だと同盟二国に対して、胸を張って言える様な状態に戻ったら、改めて整備計画を立てましょう」

 「契約は首相府の範疇ですし、軍が金を出している訳ではありません。 軍部に対しては、今回の契約違反で新型艦艇の供給が止まって、2カ国の同意が無ければ再開が見込めないと云っておけば、それ以上彼等は文句を言えない。 それに復興事業に掛かる経費が巨額過ぎて、艦隊整備に割く資金が無く、借金が膨らむ一方ですから、ちょうど良い機会だと思います」

とクリスは大胆な提案をした。


 更に、

 「352隻分の代金のうち、建艦を請け負ったASVグループには、私が建替えで支払っておきましょう。 そうすれば艦艇の所有権は代金を受け取っていないアーゼル財閥とLSグループが持つことになり、軍主流派は口出し出来なくなりますから」

 「そして、両社所有の新型艦艇をリースという形で、ノイエ国政府に貸し付け、それをアーゼル中将とネイト・アミュー方面軍にだけ供与する。 政府は両社にリース料を支払うという形式に改めれば、今回の様な事態を防げます。 いずれもしっかり契約書を作成して、軍主流派が関与出来ない様に固めてしまいましょう」

と申し出て、首相もヒエン元帥も同意した。

 「おお。 それは、名案だと」


 

 その後、

 『膳は急げ』

と、関係者間で連絡を交わして、ノイエ国軍に対する新型艦艇供給契約の破棄とそれに代わる新たな契約関係の準備が、この日のうちに一気に進められた。

 今回の事態を契機にして、再発防止と共に、現状のノイエ国の財政力に見合った新しいものに、艦隊の整備計画を改訂する為でもあった。


 そして、関係者の一人であるリウには、クリスが直接連絡をつけることになった。

 概要を聞いたリウは、

 「ゴメンね、クリス。 ここまで配慮して貰って」

 素直に感謝の言葉を述べる。

 「いや、良いんだよ。 元帥から裏事情を聞かせて貰ったから。 少しだけだけど」

 『余計なこと言いやがって』

 リウはそう思ったものの、同時に感謝もしていた。


 「それで、あの話のさわりを聞いたクリスはどう思っているの?」

 「それが、今回の結論だよ。 ひとまず、こうすれば、再発は防げるだろ?」

 「まあ、そうだけど......」

 「それと、ありがとうリウ。 みんなの為に」

 「イイのよ、そんな言葉は。 私は子供を生めない体だし、エルフィン人に助けて貰った命で、寿命も短い。 だから勝つ為に、3種族の希望を受け容れただけだから」

 そう答えるリウの表情は、予想外に晴れ晴れとしていた。


 「私から、事情を知ってしまったクリスへのお願いは、この先のこと」

 「?」

 「『守成は創業より難し』っていうでしょ? 現在の新しい三国同盟の形は、帝國軍の大侵攻を破って、その力を大きく削ぐことで、丞相や私達が作ったよね?」

 「うん。 本当に感謝している」

 「今後、その力関係をなるべく維持しながら、みんなの幸せを守るのは、クリスやルー先輩の役目だよ。 私や丞相の三英、ルーナ夫妻の役割じゃない」


 「私達の想いを受け継いで、守成の難しさを新しい世代の俊英達が経験し、そして後世へとバトンタッチし続けて欲しい。 歴史の1ページを作る側になりなさい。 私の分はクリスに引き継ぐからね、今から」

 「えっ、今から?」

 そう確認するも、リウは手を振りながら

 「今の言葉で、私の想いは引き継いだから。 またね〜。 今度は契約書を交わす時に」

といいながら、通信を切られてしまった。

 突然、重いバトンを手渡されたクリス。

 『守成の難しさか』

 確かに大戦が終わって以降も、リウが色々と道筋を作ってくれたのに、ノイエ国は全く軌道に乗っていない。

 それどころか、脱線ばかりで、他の2カ国に大きな遅れをとってしまっている。

 「誰かが立て直さねば、衰退する一方か」

 そう呟くクリス・アーゼルであった。



 一方リウは、先日来からの出来事の中で、ようやく自身の後継者を見つけたと感じていた。

 軍事面はジョン・ルーであったが、それ以外の分野の後継者が今まで見当たらなかったのだ。 

 「クリス・アーゼル・ラインシュトナー」

 彼しか居ないと既に決めていた。

 リウよりやや謀略家であるが、その分、より軍師的な人物であり、しかもリウより知恵深い。

 その様に判断していた。

 守成の時代は、そんな人物の方が適任だ。


 『しかし、こんなに身近に居たとは気付かなかったな』

 リウはそんなことを考えると、自然と笑みが溢れてくる。

 背負ってきた重荷が、少し軽くなった様な気がしたから......

 「さて、受け容れ準備だね」

 強奪した艦艇は間もなく、ネイト・アミューに到着する。

 ある一定数の主流派軍人が搭乗したままであると連絡を受けている。

 その対応準備の為、リウは立ち上がって、司令部に向かうのだった。

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