第69話(アワ・ドーでの開戦)
生体頭脳レアにより解析された暗号通信文は、ハミルトン准将が帝國軍ウォルフィー元帥宛てに内通した内容であった。
既に進発していた国境警備艦隊に危機が迫っていた......
レアが解析を始めたハミルトン准将の暗号通信文。
流石のレアでも、だいぶ苦戦している様であった。
暗号通信文の解析に失敗したクリス・アーゼル准将は、エルフィン人の未知の技術で作られた生体頭脳の存在を思い出して、一縷の望みを賭けてリウに依頼したというのが、実情だった。
そこで、リウがレアに相談したところ、暗号のコピーだと、恒星間通信の送信過程で、データが自動的に変わるプログラムが内含されている可能性があるから、生データで欲しいという要望だったことで、准将が直接持ってきたのであった。
そして、レアが解析を始めて5日が経過した夜中に、リウとレイはレアから叩き起こされた。
眠い目を擦りながらリウが、
「レア、どうしたの?」
と確認する。
「どうしたのじゃないよ。 暗号通信文の暗号が全部解けたから読んでみて。 直ぐに招集を掛けなければならないよ」
レアにそう言われて、眠気が吹っ飛んだリウとレイ。
その通信文を読んで見ると、内容はこうであった。
『帝國軍ウォルフィー元帥閣下殿宛
当方の要請に応じて頂けるとのこと、誠に有り難く思っております。
当初から情報をお知らせしている通り、当方等とも敵対している、リウ・アーゼル中将、ジョン・ルー中将両名が、極秘に国境視察とアワ・ドー星系を訪問する予定日は以下の通りとなっています。
西暦3☓☓☓年◯月△日頃
日付けは前後する場合が有りますが、通常の警備時よりも随行艦数を少し増やして訪問するとの情報もありますので、3個艦隊も動員して頂ければ、確実だと思います。
先の大戦やムーアー領域で、帝國軍艦隊を敗北に導いたのは、2人の中将が中心となってのことでした。
しかし、今回の極秘訪問時に、帝國軍随一の名将であらせられる元帥閣下が急襲されれば、いくら軍才溢れる両名であっても、ひとたまりもなく、一敗地にまみれ、間違いなく敗死することでしょう。
それが成就されれば、帝國軍にとっても大きな戦果となりますし、当方等にとっても邪魔者が居なくなり、双方にとって最良の結果となること疑いありません。
それでは、吉報をお待ちしています。
ノイエ国軍准将ブルース・ハミルトン』
この内容を読むと、リウは即全軍の緊急招集を発令した。
リウとレイも超速で着替えてから、方面軍艦隊司令部に急ぐ。
艦隊自体は全艦即応態勢を取っていたので、人員さえ集まれば、直ぐに出動出来る状態にある。
艦隊司令部に2人が到着すると暫くして、続々と人員が集まって来た。
幸い、占領地のため、ほぼ全将兵が軍事宇宙港周辺で暮らしているので、招集を掛ければ数時間で集まれる状況だった。
リウとレイが真っ先に到着したので、司令部室で全艦隊出動命令を改めて発してから、出動準備を始めていると、幹部も続々と入室してきた。
「リウ、何が有ったんだ」
制服のボタンを留める暇も惜しんで到着したルー中将が、ボタンをかけながら問い掛ける。
「国境警備艦隊が帝國軍の待ち伏せ攻撃を受けているよ。 早く救援部隊を出動させないと」
そう説明したので、ルー中将は驚いて、出動中のコーダイ少将を超光速通信で呼び出すも、通信妨害で応答が無い。
一瞬でリウの言っていることが事実であると把握し、
「事態は明白だ。 一体どうして......」
ルー中将は、リウに疑問を投げかけるが、
「説明は全幹部が揃ったらするから。 直ぐに出動準備を」
リウはその様に指示をして、ルー中将も準備を始めるのだった。
約10分後。
アルテミス王国軍艦隊のマリー・ルーナ少将も到着したので、状況説明を始めるリウ。
「我が軍のハミルトン准将が、帝國軍と内通のやり取りをしていた事実が先程発覚した。 情報部がハミルトン准将の送った暗号通信文を入手し、生体頭脳レアが解析したところ、たった今、その内容が判明したのだ」
「帝國軍はウォルフィー元帥が率いる数個艦隊を動員し、ハミルトン准将が持ち掛けた偽情報、私と先輩が前線視察に行くというものを一応信じて、アワ・ドー星系周辺で待ち伏せをしている可能性が高い。 それは既に出動中の国境警備艦隊と連絡が取れなくなっていることからも明らかだ」
という内容であった。
「私が全軍を率いて救援に向かうよ。 マリー少将も麾下艦隊を率いて同行をお願いします」
リウが先駆けてそう発言すると、マリー少将が待ったをかけた。
「アーゼル中将。 ここはルー中将と私に任せてくれないかな? 5日前の中将の依頼を聞いて直ぐに、私から応援要請を出したの。 アルテミス王国軍は既にルーナ大将率いる援軍の艦隊がこちらに向けて出動していますから、数日後には帝國軍より戦力が多くなるでしょう」
マリーは先ずそう述べると、更に、
「中将は、軍中央に戻って、獅子身中の虫を排除しなければならないわよね? 貴方がノイエ軍最高幹部達に奇襲を仕掛けて、統合参謀本部議長や司令長官、それと国家元首のフォー・プロシードと先に直談判しないと、今回の犯人の准将は言い逃れしようとするわよ。 被害者は貴方だし、貴方の言葉が一番説得力があるの。 そして貴方は自身が思っている以上の権力があるのだから、それを行使すべき時が今だわ」
マリーが意見を述べ終わると、ルー中将も、
「今回は俺達に任せろ、リウ。 ルーナ大将もあと2日で到着するらしいし、コーダイ少将も出発時のリウの念押しの訓示通り、通信妨害で異変を感じて撤退戦に入っているだろうからさ。 みんなを信じて、リウはリウのやるべきことをやって来い。 フォーにガツンと言ってくるんだぞ。 嫌がらせの監査や監察を止めて、それどころか新型艦艇をもう少し最前線に配備しろって」
そう言うと、大笑いをする。
「他に意見の有る人は?」
ルー中将が集まった全員に確認すると、マリーとルー中将の提案に対して、もちろん反対は誰も居なかったので、ルー中将が全軍を率いて、レイとアイザール少将が左右を固め、更にルーナ少将の半個艦隊もルー中将の指揮下に入ることで、結論を見た。
「みんな......」
リウはそう言うと、涙を滲ませ、先輩や部下達の配慮に感謝するのだった。
「リウ。 僕が一緒に付いて行って話をするから、いい加減フォー・プロシードにハミルトン准将をキチンと処断させよう。 何人も女性の被害者が出ているのに、彼が准将を庇い続けて重用した結果が、今日の事態を招いたのだから」
最後にそう言ってくれたのは、アーゼル准将であった。
初めて准将を見たルー中将とマリーは、
「リウが2人居る」
と最初思ったくらい、リウと雰囲気が似ている准将であった。
事前に即応態勢を取っていたこともあり、夜中の招集であったが、3時間後には出動準備が整った。
「ラートリー大佐、エーレン少佐。 リウの護衛よろしくお願いします」
レイは、レアー号でこれから急遽首都星系に向かうことに決まったリウのことを心配して、軍事宇宙港のターミナル内でも重ねてお願いをしていた。
すると、ラートリー大佐は、
「任せておいてよ、少将。 私の射撃の腕は知っているでしょ?」
と、レイを安心させる為の言葉を口にし、少佐も珍しく、右腕を高く上げて、
『任せておけ』
というジェスチャーを見せたのであった。
また、出動でごった返している中、リウが気付くと、ミカ・アイザールも夫の出征を見送りにやって来ていた。
そしてミカは、
「リウ。 フォー・プロシードと喧嘩しに行くんだってね」
少し愉しげな様子で話し掛ける。
「そうだけど......もしかして一緒に来る気?」
「もちろん。 その為のこの格好よ」
ミカは、誰がどう見ても、旅装の姿で来ており、リウと一緒に行く気満々であった。
それで心配になったリウは、
「ミカ、お子さん達は?」
と同行を阻止しようと尋ねるも、
「ちょうどいま、両親が孫に会いに来て長期滞在中だから、預けて来たよ。 それにアイツ(ハミルトン准将)の被害の酷さは、私もよく知っているから、被害者同士フォーに直談判しようよ。 ねっ」
そこまで言われると、同期生の押しには意外と弱いリウ。
アイザール少将からも、
「我々夫婦も、アイツのことをずっと憎んでいますからね。 是非一緒に連れて行ってあげて下さい。 サガラ大佐にも、先程ハミルトン准将の逃亡阻止と身柄拘束に向けた対応を取るように依頼しておきました」
ディオからもミカの気持ちを叶えてあげて欲しいと言われ、結局リウは首都星系クロノスまでの同行を承諾したのだった。
ネイト・アミューの軍事宇宙港では全艦発進態勢が整った。
リウ以下数名の幹部だけが残り、将兵の家族達と共に、出動を見送る。
「それでは、総司令官閣下。 行って参ります」
ルー中将が敬礼をして申告すると、リウは、
「気を付けて......」
とだけ言って敬礼を返す。
その短すぎる返礼に、少しズッコケたルー中将。
「もう少し、気の利いた挨拶をして欲しかったな」
そう言いながらも、今の言葉は、リウの気持ちがこもった最大限の挨拶であることを、リウを知るみんながわかっていた。
次々とリウの前を通り過ぎる出動する将兵達。
全員が乗艦するまで、リウはずっと敬礼をしたままであった。
そして出発した約1000隻の艦艇。
惑星ネイト・アミューの上空に浮上し始める全艦艇。
やがて、大気圏外に出ると、艦隊司令官ルー中将が、旗艦クレアシオンの指揮デッキから、
「全艦、発進」
と告げる。
すると艦隊は、あっという間に、惑星ネイト・アミューの重力圏を脱して、アワ・ドー星系に向けて小さな点となっていったのだった。
「さて、私達首都星系クロノスの惑星ヘーラー急襲組も出発しよう」
リウは同行する、アーゼル准将、ラートリー大佐、エーレン少佐とミカ・アイザール、レイザール・アークの5人に告げる。
「パルトネール准将、ブルーム准将、イルバール准将。 留守をお願いします」
そう言うと、リウは艦隊の出発を一緒に見送った居残りの幹部3名に、
「アウローラ社が保有する攻撃能力が有る警備艦艇を100隻程、惑星ネイト・アミューの防空圏に配置しておきますので、当面は宇宙艦隊が居なくても大丈夫でしょう。 それ程長い戦いにはならないでしょうし、アルテミス王国軍艦隊も2日後には、到着するそうなので」
当面、宇宙戦力が無い状況の惑星防衛対応策を話す。
そして、3名の准将から敬礼を受けると、リウは、
「それでは行ってきます」
そう告げて、レアー号に乗り込むと、直ちに発進して、首都星系方面へと一瞬で飛び去って行ったのだった。
「行ってしまいましたね」
ブルーム准将が2人の准将に話し掛ける。
「こんなに急な戦いが発生するとは。 それも想定外の裏切り行為で」
イルバール准将が返事をすると、パルトネール准将が、
「総司令官より、3日間だけは艦隊出動も、中将の首都星系急襲も、軍中央にはバレないようにして欲しいと依頼がありました。 例のハミルトン准将の身柄を拘束するまではとのことです。 幸い、アルテミス王国艦隊の援軍は、訓練名目で出動しているそうなので、暫くは首都星系も異常事態に気付かないでしょう」
2人の准将にその様に話すと、両名は了承したのであった。
その頃、国境警備に出動していたコーダイ少将率いる半個艦隊は、通信妨害を受けて、アワ・ドー星系方面への進行を取り止めていた。
「こんなところで通信妨害が有るとは......」
不審に思った少将は、出発時のアーゼル中将の念押しを思い出していた。
そして、
「全艦、全速力で惑星ネイト・アミュー方面へ後退」
少将は急遽麾下部隊に、新たな命令を下した。
反転後退は危険とみて、そのままの隊形での後退を指示したのだ。
すると、間もなく各艦艇の警報が鳴り始める。
そう、それは帝國軍艦隊を探知した警報音であった......
探知の幅を切り替えると、徐々に増えてゆく、レーダーに映る敵艦影。
早い判断が功を奏して、敵と接触までは数時間の猶予が有るものと見込まれた。
「司令官。 このままでは、いずれ追い付かれます」
参謀長代理のヴァルト大佐が進言するが、
「敵前で反転後退なんてやったら、あっという間に全滅するぞ。 とにかくこのまま全速力での後退を続けろ。 我々との通信途絶に気付いた味方の援軍が既にこちらに向かっている。 だから、出来るだけネイト・アミュー近くまで戻るのだ」
そう指示したコーダイ少将の判断は正しかった。
敵は百戦錬磨の帝國軍ウォルフィー元帥が率いる3個艦隊。
ハミルトン准将の情報を信じた訳では無かったが、罠の存在を念頭に置き、慎重を期しながらも、チャンスがあればと念の為に出陣していたのだ。
「ひとまず、あまり急激に追いすぎるのは避けよ。 情報自体が我々を嵌める罠かもしれないのじゃからな。 敵の数が情報より遥かに多いようだし」
ウォルフィー元帥は麾下の艦隊に、少し様子見をしながらも、ネイト・アミュー方面へ撤退中の敵艦隊を距離を取って追撃する様に指示を出していた。
帝國軍も先の大戦での大損害に続いて、ムーアー国領域の戦いで大敗を喫したことで、かつてのような猛攻一辺倒の様な戦い方は絶対に止めるよう、二世皇帝から厳命が出ていた。
これ以上戦力を失うことになれば、共和勢力が逆に侵攻して来る事態にもなりかねないからである。
ただ、帝國軍のこの慎重姿勢が、コーダイ少将の艦隊には良い時間稼ぎとなってくれていた。
警報が鳴って6時間経過したが、帝國軍は一定の距離を取ったまま追撃をしている模様で、殆ど双方の距離が縮まっていなかったからだ。
『これは、3年半前の戦いの大敗で、帝國軍が慎重になっているからだな』
リウ・アーゼルが指揮を采ったあの戦いで、4個艦隊が惨敗した影響が予想以上に出ていることに気付いたコーダイ少将。
そこで、命令を少し変えてみることにした。
「全艦、後退速度を70%に変更せよ」
と。
すると、帝國軍の追撃速度も少し緩くなるのであった。
『当面、後退速度は全速力の85%に設定させよう』
その様に決めた少将。
麾下全艦にその命令を徹底させて、敵が全速力で追撃してきた場合に備えられる方針へと変更したのであった。
そのまま12時間あまりが経過した、双方の艦隊。
ついにウォルフィー元帥が決断をした。
「どうも、目前の敵が我々を敵中に引きずり込む役割をしている訳では無さそうじゃな。 そうであれば、もう左右から敵が殺到して来る頃じゃろからな?」
側近にその様に状況を説明した元帥。
「全艦、目前の敵を全速力で捕捉するのじゃ」
明確な命令が帝國艦隊に下った瞬間であった。
「少将。 敵が速力を上げました」
ヴァルト大佐が悲鳴の様な声を上げる。
「全艦、全速力で後退に変更」
即、コーダイ少将が命令を変更する。
「大佐。 本艦隊のうち、新型艦艇は何隻ある?」
少将が一応確認をした。
「戦艦が2隻、巡航艦が10隻、駆逐艦が30隻ですね」
艦隊の編成表を見ながら、大佐が答える。
「援軍との合流まで、新型艦艇を上手く使うしかないな。 足が速くて射程が長いし、新型のミサイルもあるから、それで牽制しつつ撤退し続けよう」
少将は参謀長代理にそう説明すると、全速後退しつつ、艦隊編成の変更を始める。
速力差が大きい新型艦艇も全速力で後退させて、少し離れた場所で再編成することにしたのだ。
3時間後には、艦隊主力より更に後退した場所で、新型艦艇だけの部隊を作ることに成功していた。
「敵と接触まで、あと3時間だな」
コーダイ少将はそう判断し、2時間半後に先ずは新型艦艇だけで先制攻撃して、敵の足を止める作戦を決断するのであった。
その新型艦艇の部隊の中に、巡航艦オーシャンⅢも入っていた。
ジム・カイキ中佐が艦長の巡航艦である。
国境警備という任務中に、敵と遭遇してしまうというまさかの事態。
しかも敵1500隻に対して、味方は300隻。
カイキ中佐の軍人人生の中でも、最大のピンチであった。
しかし中佐は、今こそ恩返しの時だと、張り切っている様子。
コーダイ少将が新型艦艇だけの部隊を再編成した時に、この部隊の指揮を申し入れていた。
それは、新型戦艦は2隻しか無いので、旗艦ベルクの護衛部隊にするよう進言して、残りの巡航艦10隻、駆逐艦30隻の合計40隻の新型艦艇部隊を指揮させて欲しいというものであった。
少将は、他の巡航艦艦長に意向を確認すると、カイキ中佐がアーゼル中将とルー中将の副官を歴任していることで、逆に支持を得ている状態であることを知った。
『2人の優れた指揮官の副官を相次いでつとめた名声というものも、意外に大きいのだな』
それに気付かされた少将。
やがて、コーダイ少将から了承を得られたので、少将の命令を直接受けて、中佐が代理指揮を采るということになった。
先ず速力差を活かして、やや斜め方向に後退し続けたカイキ中佐の部隊。
コーダイ少将の攻撃開始命令を受けてから、新型の長射程亜光速光子ミサイル数百発を帝国軍の先頭部隊に斜め方向から撃ち込んでみせた。
すると数隻が爆発して、航行不能となり、帝國軍艦隊の足が急速に鈍くなる。
帝國軍は、目前のノイエ軍艦隊の位置外からの攻撃に、奇襲攻撃、待ち伏せ攻撃だと最初判断して、一旦追撃停止命令が出た様で、味方艦隊との距離が再び大きく開いた。
それを見たコーダイ少将は、
『中佐。 上手くやったな』
と内心喜んでいた。
実際、新型艦艇による帝国軍への先制攻撃は大成功であった。
ただ、当然のことだが、この時点でミサイルを全弾撃ち尽くす訳にはいかないので、波状攻撃は出来ず、帝國艦隊も攻撃が一時的だったことから、待ち伏せでは無かったと気付き、再び追撃を再開する。
カイキ中佐も少将の指示を得て、味方艦隊の中央部に戻り、全速後退を再開したのであった。
再びジリジリと差が縮まってくる敵味方の距離。
最初の先制攻撃から3時間後、コーダイ少将はカイキ中佐が所属する新型艦艇部隊に、艦砲射撃を命じた。
「撃て」
「撃て」
「撃て」
各艦の艦長が攻撃命令を発すると、新型の駆逐艦と巡航艦の中性子ビーム砲が、帝國軍の先頭部隊目掛けて集中砲火で放たれ、幾つかの爆発の光が輝く。
攻撃に参加した艦艇は一旦速力が落ちるが、その後速力差を活かして、直ぐに元の艦列に復帰する。
この集中砲火によって、再び帝國軍の足が鈍くなり、少し差が開く。
二度目の攻撃も成功であった。
『これなら、何とかなるかな?』
コーダイ少将も少し楽観的な予測を持ち始めた時であった。
帝國軍艦隊がいきなり長射程のミサイル攻撃をしてきたのだ。
長射程ミサイルといえども、ギリギリ届く距離であったが、双方の艦砲射撃の射程外からの攻撃であったので、防御しきれず不意討ちに近い状況となってしまった。
これは敵の新型艦艇との性能差に危機感を抱いた帝國軍が対応策の一つとして開発した新型の長射程ミサイルで、後に「艦橋キラーミサイル」と名付けられた、共和国陣営の大型艦艇攻撃に特化したミサイルでもあった。
その異名の通り、艦艇を破壊するというよりは、共和国陣営の戦艦、巡航艦共通の特徴である、大型の艦橋を狙って、指揮官や艦長クラスの士官が居るその場所の破壊を目指すと同時に、無数の散弾が着弾時に破裂して艦橋付近に居る人命を奪い、指揮系統を壊滅させる目的に特化した特殊なミサイルであった。
最前方に布陣していた、いくつかのノイエ艦隊の大型艦艇の艦橋がこのミサイルで破壊され、艦艇の指揮官クラスの士官が多数命を落として交戦不能となり、落伍してゆく。
最初の帝國軍の新型ミサイル攻撃で、戦艦と巡航艦合計10隻あまりに被害が出てしまった。
「不味いな。 新型のミサイルなのか?」
コーダイ少将も帝國軍の本来射程外だった筈なのに、攻撃を受けたことに、ショックを隠せない。
そこで、カイキ中佐に連絡し、定期的に帝國軍先頭部隊に長射程のビーム砲を発射して、新型ミサイルの発射を牽制する様に指示を出し直した。
張り切るカイキ中佐。
タイミングを見計らいながら、新型艦艇でのビーム砲の集中攻撃を続ける。
次々と爆発する帝國軍艦艇。
その隙に再び距離を開く味方艦隊。
まだまだ、イタチごっこの様な状況が続くのであった......




