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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・落龍篇

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第67話(祝賀会)


一旦ハミルトン准将が首都星系に去り、無事、国境警備任務を終えて戻ってきたレイの部隊。


中佐に昇進していた前副官ジム・カイキ中佐の祝賀会を実施するリウ。


ひと時の安寧を楽しく過ごしていたが、ハミルトン准将が暴走したことで発生する危機は、刻一刻と近づいているのだった......


 今回出動した国境警備部隊は、帝國軍に遭遇することも無く、それどころかアワ・ドー星系や他の国境周辺に、帝國軍の索敵部隊すら一隻も居ないことを確認してから、任務を終えて無事に戻ってきたレイの部隊。


 新しく巡航艦の艦長になって、初出陣のジム・カイキ中佐も安心した様子で、軍事宇宙港に帰還した巡航艦「オーシャンⅢ」から地上に降りて来た。

 すると、警備部隊の司令官だったレイが地上で待っていたのだった。

 「少将閣下。 どうしてここに居られるのですか?」

 カイキ中佐が少し不思議そうな表情で尋ねる。

 「総司令官から、中佐の昇進祝いをしないかというお誘いの連絡の為です。 どうですか?」

 結構、祝い事が好きなリウ。

 自身の推薦も有って昇進したので、是非祝賀会を内輪だけで開きたいとの意向であったのだ。

 「わかりました。 総司令官のお誘いですから、遠慮なくお願いさせて頂きます」

 中佐がその様に答えたので、内輪だけのお祝い会の開催が決まったのであった。



 数日後。

 カイキ中佐の昇進祝いが軍事施設内の某飲食店で行われていた。

 「ジム・カイキ中佐の昇進を祝って、乾杯〜」

 リウの音頭で祝賀会が始まる。

 「副官も中佐か〜。 大尉からあっという間で、なかなかの出世ぶりだよな」

 ルー中将が嬉しそうに話を始める。

 「これも、リウの副官を決める時に、人事課の女性士官が持ってきたリストのお蔭だな。 あのリストの一番上に名前が無ければ、きっとまだ大尉のままだよ」

 ルー中将は、自身の副官を2年半勤めた中佐なので、結構言いたい放題。

 それを聞いて渋い表情を見せるリウとは対照的だ。

 「先輩、しつこいですよ。 もうその話はいい加減に言わないでください」

 プチ切れしたリウがジョンに苦言を呈する。

 「わかった、わかった。 もう言わないよ」

 いつもそう言うが、結局、事ある毎に同じ話をするので、呆れているコーダイ少将とレイ。

 「中佐は、リウ様の副官というよりは、副司令の副官みたいなものでしたよね」

 ディオ・アイザール少将が指摘をする。

 「まあ、私には補佐役としてレイが居るからね。 あの頃は色々秘密も有ったし、副司令も大怪我明けだったから、手伝いが必要だったでしょ?」

 リウがそう言うと、少し懐かしそうな目をしていた。


 「中佐。 艦長の椅子はどうですか?」

 内輪のお祝い会に参加させて貰っていたレイザールが、カイキ中佐に質問をする。

 レイザールは、その特殊な生い立ちが原因で、リウに保護された後も、対人恐怖症的な状況だった時、中佐との会話をきっかけに、同級生の御子息の心遣いもあって、ようやく他人に心を開く様になったことから、特に中佐への恩義を感じていたのだ。

 「落ち着かないよ。 今までは誰かの後に付いていけば良い立場だったからね。 そんな自分が指揮をすることになるとは」

 素朴で正直な中佐らしい答えに、出席者は皆、心が温まる様な感じがするのであった。

 「中佐は、『チーム・アーゼル』の癒し系だから」

 コーダイ少将が自分の言葉に頷きながら、そう評価をする。

 「確かにそうですね。 今日の出席者を見ると、全員少将以上で、しかもやり手と言われる人ばかり。 そうでないのは僕と中佐だけですから」

 レイザールが嬉しそうな表情を見せながら話すと、中佐は、

 「レイザール君だって、中将の民間部門の仕事を手伝っているのだろ? アウローラ社が無かったら、駐留軍の運用だってもっと大変になるのだから、君もやり手の一員だよ」


 恒星間航路の警備を無人の艦艇を使って維持している、リウが設立したアウローラ社。

 警備だけではなく、恒星間輸送も請け負っている。

 アルテミス王国軍が先の大戦で鹵獲した帝国軍の駆逐艦を大量購入し、それを無人化改造してから航路の警備に投入しているので、駐留軍が航路の警備業務を殆ど担当しなくて済んでいるのだ。

 しかも収益の一部が駐留軍の将兵の遠隔地手当として還元されており、他のノイエ軍と比べて1割程高い給与水準になっている。


 「もしかして、中佐が首都星系への転勤を拒否したのって、給与面で?」

 ルー中将が、彼らしい質問をする。

 すると、中佐が答える前に、

 「中将。 そんな訳ないですよ。 中佐は私達ともう少し一緒に勤務を続けたいってことです。 いつかはこのメンバーも解散しなければならない時が来る。 その日まではここに居たいってことですよね?」

 レイが中佐の心情を代弁すると、その通りだと頷く中佐。

 そうした話を聞きながら、レイザールは羨ましく思うのだった。

 『こんな仲間が居たら、人生がより充実し、楽しく過ごすことが出来るのだろうな~』

と。


 ザッハー少将が退役したことで、現在中佐が最年長者である『チーム・アーゼル』。

 その最年長者が、穏やかな性格のカイキ中佐であることは、チームの潤滑剤として、非常に重要なことであった。

 「ところでレイザールは、私を除いてこの中で誰を一番尊敬しているの?」

 リウが、ワザと変わったことを質問してみる。

 するとレイザールは、

 「中将を除いたら、やっぱりカイキ中佐かな? 僕がこうして外に出て、普通に会話も出来る様になったのは、中佐のお蔭ですから」

 その様に答えると、リウは当然だという表情を見せた。

 「ほら。 やっぱり見ている人は見ているのです。 カイキ中佐の価値は、皆さんが思っている以上に高いのですよ」  

 リウはその様に評価すると、超美女の英雄に褒められて、中佐は顔が真っ赤になる。

 「でも、本当に良かったのですか? 上の息子さんは来年大学生でしょ? この惑星にも大学は沢山有りますが、本国の大学に進学された方が、将来を考えると良いと思うのですが......」

 リウが改めて意思を確認する。

 「確かに、その通りですが、息子も惑星ネイト・アミューを気に入っている様ですし、家族会議を開いて決めました。 折角皆さんと知り合えたので、もう少しこのままお手伝いしたいという気持ちが強いのも有ります」

 中佐はその様に答えたので、その件は再び一旦保留ということとなった。


 その後も和やかに時が流れる祝いの宴。

 総司令官は、いくら酒を飲んでも酔わない(不老装置の副作用)ので、レイと一緒に酔いが回ってきた参加者達の介抱を始める。

 やがて愉しい時間は終了し、お開きに。

 レイが、ルー中将とコーダイ少将、アイザール少将の3人を高級士官用の家族官舎迄送り届け、リウとレイザールがカイキ中佐と一緒に佐官用家族官舎へ。

 総司令官の護衛の為、待機していた副官のエーレン少佐が合流して、4人で向かうことになった。


 「中将。 本日は小官の為に、この様な楽しい宴の席を設けて頂き、ありがとうございました。 また、家族のことまで気にかけて頂いて、感謝に耐えません」

 中佐は律義に丁寧な挨拶をする。

 「無事、国境警備への初出動も終わったのですし、その慰労を込めての祝賀会です。 こっちに来てから、私もルー先輩も責任者になったので、こういう機会も少なくなってしまいましたから。 首都星系に居た頃が、少し懐かしいですよ」

 リウがしみじみと語る。

 中佐が、当時のアーゼル少将の副官になった頃は、週2回位食事会や飲み会を開いていたが、こちらに来てから半年に一回も開けていないのだ。


 「中将ご自身は全く酔えないのに、飲み会が好きですよね?」

 中佐が少し酔いが回っていたのか、珍しく質問のような確認をしてきた。

 するとリウは、

 「私は、みんなの本音も聞けて、しかも楽しそうな表情を沢山見ることが出来るから好きなんだよね。 宴が」

 「そうですね」

 「大戦で、沢山の笑顔が消えてしまったから......生き残ったみんなの笑顔が見たいんだ。 そしてその瞬間をしっかり心に刻みつけておきたいの。 私の人生は短いからさ」

 リウはその様に語ると、中佐は泣き出してしまった。

 「中佐は、泣き上戸だったけ?」

 少し誂う感じで、リウが畳み掛ける。

 「いえ。 ただ、飲み会にも中将がそこまでの想いを込めていたのかと思うと、自然と涙が出て来てしまって......」

 中佐は涙を見せながら答えるとリウは、

 「それと、レイザールのこと、今まで色々と気にかけてくれてありがとうございます。 この様に立派な青年に成れたのは、中佐がレイザールの心に響く言葉を話してくれたお蔭です」

 感謝の言葉を続けると、レイザール迄泣き出してしまった。

 「やれやれ。 私の周囲に居る男達はみんな泣き虫だね~。 女性陣は強くて、涙見たことないけど」

 リウがつくづく感じたことを言いながら、エーレン少佐に同意を求めると、少佐は、

 『その通りだ』

とばかりに頷くのであった。


 10分程で家族官舎に到着すると、官舎から父親の帰りを出迎える妻と2人の息子が出て来た。

 そして、総司令官の姿を見て驚いた様子であった。

 「中将閣下。 わざわざ酔っ払いの主人を自宅迄お送り頂き、感謝の言葉もありません」

 中佐の妻が本当に申し訳ない表情で、何度も頭を下げる。

 「奥さま。 そんなに恐縮なさらないで下さい。 私が発案した祝賀会で、主賓に何か有ったら申し訳ないですからね」

 リウは、中佐の妻の手を取って、その様に語り掛ける。

 「それに、私はお酒を飲んでも、全く酔わないので、最後まで送り届ける人物としては適任だからですよ」

 その様に答えると、中佐が、

 「総司令官。 本日はありがとうございました。 それでは失礼致します」

 その様に言って頭を下げると、カイキ一家に対してリウは手を振ってから、副官とレイザールを連れて、中佐の自宅を後にした。

 

 「中佐の2人の息子さんは、中将に家迄送って貰った父親を、誇りに思ったのではないでしょうか?」

 「僕が中佐の息子さんだったら、間違いなくそう思います」

 レイザールがリウに同意を求める様に確認する。

 「そうだと言いわね。 この程度のことで、そう思って貰えるのなら、光栄だわ」

 リウはそう言うと、帰宅への足を早める。

 「急にスピードをあげて、どうしたのです?」

 「私も早く自宅に帰らないと。 既に迷惑を被っている少佐さんが居るでしょ?」

 エーレン少佐の方を見ながら、そう言ったリウ。

 そのまま早足でレアー号に帰るのであった。



 翌日。

 オフィスでリウは、情報部に居る叔父から送られて来た極秘の報告書を読んでいた。

 そこには、ハミルトン准将が惑星ネイト・アミューで何をしていたのか、こと細かく書かれていた。

 行動的には目立ったものは無かったが、執念深さは感じられる。

 「リウ。 何を真剣に読んでいるのですか?」

 レイが少し気になった様で、確認しに席のところにやって来た。

 「私も調査を依頼して有ってね。 その報告書が届いたのよ」

 そう答えると、リウは報告書をレイに渡す。

 それを熟読するレイ。

 そして、報告書を返しながら、

 「これだと、私に対するストーカーですね。 それは、それで嫌ですが」

 感想を述べると、

 「ところで、どなたに依頼したのですか? ここまで細かい調査結果ということは、准将を監視する別の人達が居たということですよね?」


 するとリウは、少し質問をしてみることにした。

 「最近の言い方だけど『もう一人のアーゼル』って聞いたことある? レイは」

 「小耳には挟んだことが有りますが、実態不明の方ですよね。 私も長年参謀本部に居たのに、色々な噂を聞く方でしたが一度も見たことがありません」

 「レイでもそうなんだ。 結構やるね、クリスも゙」

 そう呟くリウ。

 それを聞いたレイは、

 「リウは会ったことが有るのですか?」

 「向こうから何回か挨拶に来たわよ。 極秘で」

 「そうなのですか?」

 「私がリウ・プロクターだった時は、『もう一人』は付かなかったわよね?」

 「はい。 総帥の関係者で『アーゼル』姓を名乗る士官が居ると、財閥派内では噂が渦巻いていましたよ。 以前から」

 「そこまで、秘密にしているのなら、レイにも教えるの止めようかな」

 リウは少し意地悪そうな表情を見せる。

 「それに、ディオもケイトも、耳がダンボになっているわよ」

 同じ部屋内に居る2人の様子を見て、リウが少し笑いながら、その様に言うので、みんなの手が止まってしまった。


 「3人共、気になって、仕事が手に付かない?」

 リウが質問をすると、3人が同時に、

 「はい」

と答えたので、リウは大笑いを始めてしまう。

 そして、落ち着いてから、

 「ゴメンゴメン。 あの人がそこまで隠れた存在だなんて、知らなかったから。 私の性別と同じ位謎の様ね」

 自身も秘密を抱えたまま、中将迄昇任したので、その姿を重ね合わせる表現をしたリウ。

 「私には叔父が居るの。 総帥と血の繋がりが有る、もう一人の直系アーゼル一族が存在するのよ」

 「ただ、財閥を継ぐ権利は有して居ないわ。 あくまで曾祖父さんの愛人が生んだ子の系統だからね」

 そこまで話すと、レイが質問した。

 「叔父さんということは、長年ずっと軍に居るのですか?」

 「レイ。 彼は私達の後輩よ」

 それを聞いたレイは意外そうな表情を見せる。

 「叔父さんなのに、年下なのですか?」

 「そうよ。 曾祖父様ひいおじいさまの晩年の若い愛人絡みだから」

 「......」

 「軍に居る叔父は、総帥の弟の子供なの。 ただ愛人絡みなので、アーゼル姓は名乗れるけど、財閥の権利は殆ど持って居ないわよ」

 少し勿体ぶった話をしてからリウは、本題に入る。

 「その人の名は、クリス・アーゼル准将。 年齢は31歳。 軍情報部第三情報室の責任者よ」

 そこまで聞くと、知識欲が満たされた3人。

 『31歳で准将とは、相当優秀な方なのだな』

 そう思ったものの、それ以上は秘密にしておくべきだと思い、余計な詮索は止めることにしたのだった。


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