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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・落龍篇

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第65話(尾行と殺意)


長期休暇を取得して、惑星ネイト・アミューに現れたハミルトン准将。


レイの尾行を始めるが、なかなかあの美女の所在に辿り着かない。


その苛立ちはやがて、殺意へと変わっていくのであった......


 リウはレアに、ブルース・ハミルトン准将の情報を収集するように依頼をすることにした。


 それから半月ほど経ったある日。

 リウはレアより、准将の動向に関する情報を受け取った。

 惑星ネイト・アミューに到着した定期客船の乗客リストにハミルトン准将の名前があるという......



 准将は1か月に渡る長期休暇を取っていた。

 今まで貯めていた分を纏めて消化したものだ。

 惑星ネイト・アミューに到着した彼は、既に異様な高揚状態にあった。

 『やっと、あの女性と会うことが出来る』

という......

 アーサ少将の職場の場所は、既に把握済みである。

 そこで、帰りがけの少将のあとをつければ、自宅がわかる。

 占領地だから、軍の高級士官用の官舎だろうと推測していたが、自身も高級士官なので、そこで彷徨く訳にはいかなかった。

 顔見知りや准将のことを知っている者と鉢合わせとなる可能性が高いからだ。


 『自宅さえわかれば、あの美女は俺のものだ』

 そう考えているブルース・ハミルトン。

 既に常軌を逸している。

 元々、相手の気持ちや人格を尊重する考えというものが完全に欠落している人物なのだ。

 自分が好きになれば、相手がどう思っていても構わない。

 力づくで既成事実さえ作れば、彼の中ではその瞬間に自分のモノなのだ。

 准将は、極めて強い男尊女卑の超保守派思想の持主でもあった。

 だから、『女性をモノ、自身の所有物』とみなしている。

 狂人の思考というものは、常人には理解し難い。

 自宅がわかっただけで、どうしてその様な考えに結びつくのか?

 しかも、危険ラインを既に超えてしまい、余計に周りが見えなくなっている以上、その様な短絡的な思考に結び付き易いのだろう。


 車両を借りて、統治官オフィスの出入口が見えるところで張り込む准将。

 夕方になり、職員が帰宅し始めるが、少将らしき人物は現れない。


 やがて辺りが暗くなり、帰宅する職員もまばらになった頃、ようやくそれらしき人物が建物の出入口に現れた。

 「あれだな?」

 呟いた准将の視線が、数人の集団を凝視。

 アーサ少将は、アーゼル中将と共に出てきたのだ。

 側には、副官らしき男性士官ともう一人護衛の女性士官が付き添っている。

 「邪魔が2人居るが、致し方ない。 総司令官が居る以上、護衛が付くのは当然だ」


 護衛が居るので、かなり距離を置いてあとを付ける。

 5分程あとを付けると、4人は軍事宇宙港の正面ゲートから、中に入っていってしまったのだ。

 「なぜ、真っ直ぐ自宅に向かわない......」 

 歯噛みするブルース。

 自身の強烈な欲望が満たされる瞬間が、今直ぐそこまで来ている筈なのに......

 

 しかし、いくら待っても少将は出て来ない。

 やがてゲートから、先程見た副官らしき男性士官のみが出て来た。

 「何故だ。 アーサだけではなく、アーゼルも出て来ない」

 数時間待ち続ける准将。

 結局、この夜はそれ以上の動きは無かった。


 

 一方、レアー号に帰宅したリウとレイ。

 准将が2人の周辺をうろついていることを勿論知っていた。

 「レア。 状況は?」

 准将を監視中の生体頭脳レアに、現在の准将の動きの説明を求める。

 「軍事宇宙港の正面ゲートから、約100メートル離れた駐車場に居るよ。 ずっとレイが出て来るのを待っているんだろうね」

 レアはリウに状況を教える。

 それを聞いて、レアー号内の待機室で待たせていたラートリー大佐とエーレン少佐のところに戻ったリウは、

 「副官は正面ゲートから帰ってくれないかな? 大佐は別のゲートから帰宅してよ。 アイツは女性への執着心が異常らしいから、念の為」

と指示した。

 2人は、

 「総司令官。 了解しました」

 敬礼して答えると、それぞれ帰宅の途へつく。


 「面倒だけど、2週間くらいは仕方がないね」

 リウがレイに語り掛ける。

 「私は10日後に、国境警備部隊の指揮官として出動予定なのですよね。 どうしましょうか?」

 レイはリウが心配で、側に居たい様だ。

 「そういう予定だったんだ。 最近は艦隊司令部に顔も出して居ないからね~。 思い切って、私も一緒に出動するかな?」

 リウは一瞬笑顔だったものの、

 「と言いたいところだけど、出動って約2週間この惑星を離れることになるから、無理かな。 帰って来たら決裁の山で、逃げ出したくなっちゃう」

 そう言うと、残念そうな表情に変化する。


 「良い機会じゃない? 准将が核心に迫っているのかどうかを判断するには」

 それを聞いて、『えっ』という表情を見せたレイ。

 「レイが出動して、諦めて帰るのなら、レイの妻が私って気付いていないっていう結論になるでしょ?」

 「でも、逆の場合は......」

 「大丈夫よ。 みんなが居るじゃない? そして、何と言っても、この惑星にはレアが居るんだから」

 「そうですよ、レイ。 私が居る以上、この惑星上における警護は万全です」

 レアもレイに力強い言葉を発してくれた。


 「それでは、警備部隊での出動は私が責任者のまま、予定通りってことで」

 レイは、渋々ながら承諾するのだった。



 翌朝。

 この日も早朝から張り込んでいるハミルトン准将。

 すると、軍事宇宙港の正面ゲートから、アルテミス王国軍の制服を着た女性士官と一緒にアーゼル中将が出て来るのが、准将にも見えた。

 「あれは、アーゼル。 それと昨日の副官だな」

 「他の2人は、アルテミス王国軍の司令官と副官だろう」

 准将は、目で見た状況を呟きながら、じーっと様子を窺い続ける。

 「アーサが居ないな」

 また呟く。

 4人が駐車場の前を通り過ぎると直ぐに、もう一人ゲートから歩いて出て来る人物が。

 凝視する准将。

 そして、

 「あれは、アーサだな」

 そう判断してから、レイの動きを凝視し続ける准将。

 どうも、4人とは違う場所へ向かうようだ。

 「もしかしたら、自宅に寄るのかもな」

 都合の良い考えしか浮かばない精神状態のブルース。

 少し距離を置いて、あとを付ける。

 既に周囲の様子は目もくれず、レイへの尾行モードに入ってしまったのだ。

 

 一緒立ち止まったエーレン少佐。

 その場で振り返ると、ハミルトン准将がレイの尾行をしている姿が確認出来た。

 「先生、どうしましたか?」

 リウは少佐が立ち止まったので、尋ねる。

 すると、少佐の顔が少し、レイの歩いている方角に動いた。

 リウがその方向に視線を向けると、レイと准将が脇道に入っていく様子が見えたのだった。

 「あれが、中将をストーカーしている奴ね」

 一緒に様子を見ていたマリー・ルーナ少将が尋ねると、

 「正式には、レイをストーカーしている状態ですね」

 苦笑いしながら、リウが答える。


 「美人過ぎるのも考えものね。 こんな面倒な奴がねっとりくっついて来るのだから」

 再び、統治官オフィス方向へと歩き出しながら、マリーはリウに語り掛ける。

 「いや、そう言われても......難しいですよね。 狂った性格の人にまで、対応は出来ないですから」

 そういう会話をしているうちに、統治官オフィスのある建物に到着した。


 「マリーさん、寄っていきますか?」

 「そうね。 このあと訓練に行くのかしら」

 「その予定です」

 相変わらず特殊部隊の訓練に、随時参加しているリウ。

 この日は元々参加予定だったので、迎えが来るのを待つ。

 「リウさんの予定を聞いて、今日は私も参加するつもりだったから、待たせて貰うわ」

 マリーがそう答えて、待合スペースに移動すると、エーレン少佐がコーヒーを人数分持って戻って来た。

 「少佐、ありがとう」

 マリーが御礼を言って、受取る。

 「先生、ありがとうございます」

 リウも受取る。

 すると、マリーは気になったことをリウに尋ねる。

 「中将。 どうして副官のことを先生って呼ぶようになったの」

 「先日、首都星系からこちらに来た旧知の士官が、少佐のことを先生って呼んでいたので、その呼び方が気に入っちゃって。 少佐は、地球時代から続く東洋系古武術の達人なので」

 「それでなのね。 訓練で時々ご一緒させて頂いているので、少佐の武術が凄いってことは、勿論知っていますよ」

 マリーは納得した様子であった。

 「迎えが来ました。 ではいきましょう」

 特殊部隊の大型装甲車が到着したのを見て、リウがマリーを誘うと、それぞれの副官を含めた4人は車両に乗り込んで、市街地の外れにある訓練場に向かうのであった。



 尾行されているレイは、艦隊司令部の建物に向かっていた。

 あえて、気付かないふりをして歩くレイ。

 『こういうの慣れていないから、逆に難しい......』

 本来、諜報員的な人物であるレイが、逆の立場になっていることで、だいぶ固い動きになってしまっていた。

 とはいえ、艦隊司令部は軍事宇宙港の直ぐ側。

 ゲートを出て3分も歩くと、到着してしまう。

 そのまま、中に入って最上階の司令部室に入ったレイ。

 「司令官、おはようございます」

 ルー中将に挨拶したレイ。

 「おー、おはようレイ。 どうだ、奴の様子は?」

 既に事情を知っているルー中将。

 妙に愉しげな雰囲気だ。

 「他人事だからって、なんだか嬉しそうですね」

 「平穏なだけじゃつまらないだろ? やっぱり人生には波瀾の出来事も無いと」

 「それだから、何度も監察官を呼んでいるのですか? 挑発して」

 そう言うとレイは思わず笑ってしまった。

 3年間で10回以上受けた嫌がらせ監査・監察。

 「段々とリウに似てきたな。 以前はそういうこと言わなかったのに。 まあ、夫婦はお互い似てくるって言うしな」

 レイの冗談に、半ば降参といった表情を見せるジョンであった。


 「今日は、国境警備での艦隊出動準備で立ち寄りました」

 レイが中将に来訪目的を告げる。

 「9日後だけど、予定通りで良いのか?」

 「今は、少将が3人しか居ないですからね」

 ハミルトン准将が首都星系に戻るまでは、リウの側に居たいという内心が言葉尻に出てしまう、レイ。

 「俺が変わろうか?」

 それを察知したルー中将が申し出る。

 「艦隊司令官が出動するのなら、出動部隊を増やさなければならないですし、総司令官からも予定通り出動するように命令されましたので」

 「リウがそう言ったのか? じゃあ仕方ないな」

 そう言うと、中将が作った出動部隊の編成表と日程表をレイは受け取った。

 それに目を通すと、レイは一人の名前に気付く。

 「カイキ中佐は巡航艦の艦長になったのですね。 今回の出動部隊の中に名前があるので」

 「彼は初めての艦長勤務だから、よろしく頼むな」


 ルー中将の副官を2年半勤めたあと、最近、総司令官の推薦枠で昇進していたジム・カイキ中佐。

 リウは、中佐のお子さんの教育環境も考えて、ノイエ国系の大学が無いネイト・アミューから首都星系への転籍をさせようとしたが、本人の希望でネイト・アミュー方面軍に在籍のままとなっていた。


 「わかりました。 当面、帝國軍が侵入してくる事態は発生しないでしょうから、無事戻って来れますよ」

 レイはそう言うと、受け取った書類を自身のデスクの引き出しに仕舞ってから、艦隊の一部部隊出動準備の仕事に取り掛かるのであった。


 一方、尾行をしていたハミルトン准将。

 暫く様子を見ていたが、レイは一向に出てくる気配が無く、一旦艦隊司令部のある建物から離れていた。

 本来は尾行に色々なハイテク装備も駆使したいのだが、軍の施設内とその周辺は数々の妨害装置が設置されている上、各種妨害波も常時放出されているので、人海戦術しか取りようが無いのだ。

 流石に疲れたので、一旦軍事施設周辺から離れて、ホテルに向かうのであった。


 夕方になる前に、再び張り込みを開始した准将。

 すると、統治官オフィスの建物から、アーゼル中将と一緒に出てきたアーサ少将を発見する。

 中将の警護員は前日と同様の2人。

 そして、やはり正面ゲートから軍事宇宙港内に入って行くと、この日は誰も出て来なかった。


 翌朝も前日の朝と同様に、正面ゲートからアーゼル中将とアーサ少将、それに副官の男の3名が出て来て、統治官オフィスに向かう。

 そして、夜になる迄オフィスから外出しないレイ。

 外出するのは、帰宅時だけであった。


 連日、ほぼ同じ状況に焦りを覚えるハミルトン准将。

 『いったい、アーサは何処で暮らしているのだ......毎日軍港内に帰ってゆく......まさか軍艦内なのか?』

 ようやく、そういう考えに辿り着いた准将。

 『軍艦内に居住っていうことは、あの女性は軍人? いや、あんな美人な軍人が居れば噂になっていて、下士官や兵士が知らない訳が無い......するとアーサは単身赴任で、あの女性が離れたところに暮らしている、そういうことか......』

 想像以上に女性の住処を割り出すことが難しいことに気付いた准将。

 沸々と怒りが込み上げて来て、その怒りはアーサ少将に向き始めていた。

 『アイツが居なくなれば、あの女は俺のモノになる......』

 『そうだ、アイツを殺ればイイのだ』

 ついに不気味なセリフを呟く様になってしまった。


 既に精神状態に異常をきたしている准将。

 今まで、気に入った女性が居れば、エリート軍人という立場を利用して、直ぐに所在を探し当て、強引に己のモノとしてきた過去が多数ある。

 もちろん、何度も大きなトラブルになっていたのだが、懲りるどころか、年々エスカレートしてきていた。

 しかも今回のターゲットは、准将の過去の中でも最上級の美女であり、思い通りにならない状況への怒りが、美女への執着心の極致に達したことと化学反応を起こし、とうとうレイに殺意を覚えるところまで、行き着いてしまったのであった......

 

 

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