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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・落龍篇

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第64話(17年ぶり)


ブルース・ハミルトン准将は、一目惚れしたリウのことを割り出そうと、調査を始めてしまった。


その情報を得たアイザール少将。

リウの為、親友にハミルトン准将に対する調査を依頼するのであった。


 ブルース・ハミルトン准将は、レイカー・アーサ少将の妻の情報を集める為に、軍監察官という特権を活かして、各所に照会をかけていた。


 個人的な理由で他者の情報を収集するのは、完全な違法行為であったが、彼は美女に対する執着・執念が極めて強い人柄で、自分の欲望を抑えることが出来ず、その様なものを無視してしまう性分であったのだ。


 ところが、リスクを犯してまで実行した照会の結果からは、レイカー・アーサ少将の戸籍の入手が非常に難しい事実が明らかになっただけで、実りは殆ど無かった。


 先ず、ノイエ国の役所に問い合わせるも、4年前に、国籍が他国に移動した事実が判明したのみ。

 アーサ少将は入籍を期に、リウの秘密保持の一環として、ノイエ国からアルテミス王国に国籍を移していたからであった。

 少将の両親は、それぞれノイエ国人とアルテミス王国人であるので、国籍を移すのは容易。

 両親の線からも准将は調査したが、こちらは完全に所在不明。

 数十年間、何処に居るのか、ノイエ国には全く情報が無く、家族の線からの調査も直ぐに行き詰まったのだ。


 そこで准将は、思い切ってアルテミス王国側にアーサ少将の戸籍について、照会をかけてみたものの、その回答は

 『王室関係者の為、回答不能。 これ以上当該国民への調査を実施されるのであれば、貴政府に警告文書を発出する』

というものであった。

 リウとレイは、王室の教会で極秘挙式を行った後、国籍を変えたのだが、その際王室が配慮をし、二人の戸籍を王室関係者として最高機密に指定したのだ。

 『流石に不味いな。 憲兵隊にこの照会事実がバレたら、下手したら罪を問われる』

 准将はそう判断し、戸籍からの調査は一旦諦めざるを得なくなった。


 しかし、これで諦めるような性格では無い。

 既に一線を超えた以上、自制心は皆無となっていた。

 人間というのは、ある一線を超えてしまうと、歯止めが効かなくなる。

 会社や顧客の金の使い込みなどが、その典型例。

 ハミルトン准将も、既にその様な心境に陥っており、奈落に向かい始めていた。


 しかも、過去に美女への執着という同じ様なことを繰り返しても、軍の事なかれ主義や隠蔽体質、更には准将自身が士官学校出のエリートということもあって、ほぼお咎め無しの処分で済んでいた。

 これは、フォー・プロシードや同期生が庇ってくれていたことによる影響も大きかったのだが、こうした経験が、彼の考えを非常に甘いものにしていたのだ。


 どうしても、少将の妻らしき女性を自分のものにしたい。

 准将の心は、そのことだけに囚われてしまっていた。

 しかし、相手は上位者で、しかも遠隔地に居る。


 戸籍調査が行き詰まった以上、この女性について他の方法で調べるしか無かった。

 だが、調査は准将一人で行うしかない。

 違法調査なので、部下を使う訳にはいかないからだ。

 色々と考えた結果、少将の部下として赴任する可能性があるという人事異動予測をでっち上げて、ネイト・アミュー方面軍から、軍中央に戻って来た下士官や兵士から情報を得てみることにしたのだった。



 軍監察官からの呼び出しということで、怯えながらも、准将のもとに順次と出頭する、百人以上のリウやレイの元部下達。

 彼等の恐怖心を刺激し過ぎない様に、十人ずつ呼び出していた。

 そして准将は、優しく話を仕向ける。

 「実は今度の人事異動で、アーサ少将の配下として異動しそうなんだ。 だから少将の人となりについて聞きたいんだよね。 君達に何か有っての呼び出しでは無いから、安心して欲しい」

という風に。

 雑談をしながら、タイミングをみて本題について質問をする。

 「少将の妻について、何か知っていますか?」

と。


 しかし、なかなか確信に迫る情報を持っている者は居なかったのだ。

 大半の者の答えは、

 「アーサ少将って結婚しているのですか?」

と、逆質問されてしまうものであった。

 新領土においては、一般兵士や下士官と統治官補佐の役職にあるアーサ少将との接点が殆ど無いので、知らないのは当然であった。

 下士官や兵士から見た少将の印象は、

  総司令官アーゼル中将と、いつも一緒に居る人

というだけなのだ。


 ただ、中には、

 「休日に街中で、少将が物凄い美人と一緒に歩いているのを見たことがありますよ。 相手の女性はかなり背の高い方なので、目立っていましたから、覚えています」

と答える者がおり、合計3名が同じ答えをした。

 ただ、それ以上のことは、当然何もわからず、女性の特定に繋がる様な情報を得ることは出来なかったのであった。


 『これまで集めた情報や状況を総合すると、部下達が噂していた通り、あの美女が少将の妻であるのは間違いない。 こうなったら、休暇をとって、実地調査するしかない』

 准将はその様に決断して、長期休暇を取るタイミングを図るのであった。



 ただ、こうした動きは、当然財閥派の耳にも入る様になり、アイザール少将のもとにこの情報が入ったのは、ハミルトン准将が連日の様に、下士官や兵士を呼び出して事情聴取をしていた時から、程なくしてであった。

 『アイツがリウ様とレイのことを、色々と嗅ぎ回っているらしいな』

 自身の妻も、准将のストーカー行為に苦しんだ経験を持つディオとしては、アイツ呼ばわりする程度の存在でしかない。

 統治官のオフィスで仕事中に、一報を受けたので、チラリとリウの方を見たアイザール少将。

 その後、レイの方にも視線を送りながら、対策を考えることにする。

 『同期に調査を依頼するか。 ここでは遠過ぎて、ヤツの動きを探り様が無いからな』

 ディオはその様な結論を出して、密かに准将の行為に対する調査依頼を行った。

 同期生で財閥派に属し、信頼出来る、憲兵隊のサガラ・ソーラ大佐宛てに。


 『軍の監察官ブルース・ハミルトン准将が、ネイト・アミュー方面軍総司令官リウ・アーゼル中将とその夫であるレイカー・アーサ少将に対して、軍法を犯しての調査を実施している。 その理由は准将の過去を見ればわかる通り、美女に対する執着心によるものである。 准将の動向を調査し、法を犯していれば、その証拠収集をして頂けると有り難い。 ディオ・アイザール』

 この秘密文書を受け取ったサガラ・ソーラ大佐は、文書を抹消してから、准将に対する極秘調査を開始することとしたのだった。



 ハミルトン准将の欲望やその行動について、何も知らないリウ。

 自身の容姿が人目を引くことに対する理解は持っていたが、結婚して身を納めていても、なお異常な執着心を持つ者の独占欲を満たす為に狙われる対象になるとは、その様な考えと無縁である故に想像が付かなかったのは、致し方ないだろう。

 アイザール少将も、ただでさえ精神的に重い負荷を受け続ける人生を歩んで来た総司令官の胸襟を騒がせる様なことは、出来るだけしたくなかったので、今回入手した情報とその対応策について、レイにだけしか話をしていなかった。


 ただ、調査を依頼した憲兵隊のサガラ・ソーラ大佐より、

 『アーサ少将夫妻に一つお願いしたいことがある』 

という要望が届いたことから、面会の段取りを取る為、簡単に状況を話すこととなった。


 「リウ様。 少しよろしいでしょうか?」

 合間を見てディオは、直ぐ側で仕事中のリウに話し掛ける。

 普段からポーカーフェイスのディオ・アイザールであるが、この時は眉間にシワがよっていたので、リウも少し深刻な話だと察して、

 「いいけど......どうしたの?」

と珍しく真面目な返事をする。

 すると少将は、レイも呼んで、3人は応接セットに移動すると、少将は本題の話を始めるのだった。


 「リウ様。 妻のミカの話を覚えていますか?」

 「うん。 士官学校時代からストーカー被害に遭って、退役を早めた件だよね」

 「その通りです。 そして今回、問題の士官の矛先はリウ様に向かっているのです」

 それを聞いたリウは、少し驚いた表情を見せたが、意外には思っていなかった。

 既に同様のことが、過去に何回も発生していたからだ。

 「え~と......相手は誰だっけ? 4年課程の同期生だということは覚えているけど」

 『やっぱり、眼中に無い小人のことは、覚える気も無いんだな』

 その反応を見たレイは、そんなことを考えていた。

 「ブルース・ハミルトン准将です。 知っていますか?」

 「いや、全然。 一応同期だから、名前だけだね。 聞いたことあるの」

 「准将は自身が一目惚れした女性が、レイの妻だとはわかっていますが、リウ様だと気付いていない様です。 あっちこっちに照会をかけているらしいので。 ただ気付くのも時間の問題と思われます」

 ディオは現状を説明する。


 続けて、

 「そこで、私の方から憲兵隊大佐の親友に、准将に対する調査依頼をしてあります。 まだ調査途中なのですが、大佐の方から、リウ様とレイにお願いしたいことがあるそうなのです」

 「いいよ。 わざわざこの惑星に迄来てくれるんでしょ?」

 「ええ。 明後日でよろしいですか?」

 「もう、そこまで進んでいたの? この話」

 「私の独断で、大佐には了承の返事をしておりましたから」

 「わかった。 着いたら教えてね、時間作るから」

 リウはその様に返事をすると、この件の話は一旦終了とした。

 細かい話は、大佐より聞けば十分だからである。



 2日後。

 惑星ネイト・アミューに、民間船で到着したサガラ・ソーラ大佐。

 「いやあ〜、噂通りの綺麗な水の惑星だな~」 

 初めて降り立った惑星の感想を呟きながら、ノイエ軍の施設が集中する地区へと向かう。

 そして、統治官のオフィスが入る建物の前に到着すると、アイザール少将に連絡を入れた。

 入館の際に、憲兵隊所属だと言うと、要らぬ詮索や噂が立つからだ。

 直ぐに迎えに出てきたアイザール少将。

 「ソーラ、久しぶりだな。 元気そうで何よりだよ」

 「ディオこそ、遠いところで大変そうだな。 随分久しぶりな親友って扱いだけどな、俺は」

 そう言いながら、ガッチリと再会の握手をする。

 「そんなこと言わずにさ〜。 積もる話は中で」


 アイザール少将が出迎えたことで、入館時のチェックは軍の身分証をゲートにかざすだけで通ることが出来た。

 「司令官は覚えているかな? 俺のこと」

 「17年以上経っているから、わからないけど、覚えていそうな気がするな。 記憶力のいい人だから」

 そんな会話をしながら、統治官のオフィスに入る2人。

 ちょうどリウは、レイと一緒に席を外しているタイミングだったので、大佐は応接室で待つこととなった。


 暫くすると、アイザール少将がリウとレイを連れて、応接室に現れた。

 中将の登場に、サーッと起立する大佐。

 それに対して、

 「遠慮せず座ってください、サガラ大佐。 遠路はるばる、私達夫婦に関わる事象の為に来て頂き、誠にありがとうございます」

 リウは丁寧な挨拶をして、慰労する。

 「いえいえ。 こちらこそ、軍高官の不祥事の調査に協力して頂き、ありがとうございます」

 大佐が挨拶を返してから、中将に勧められたのでソファーに座ると、対面するソファーに座ったリウは、

 「大佐とは、以前何処かでお目にかかったことがある様な気がするのですが......」

 「小官は若い頃、アーゼル財閥の社員でしたので、その時お目にかかっております。 リュウ様」

 その呼び名を聞いて、リウは思い出した。

 「惑星アルテミスで、財閥での交渉人を初めてやった時に、本社から派遣されてきた社員さんですよね? ディオと一緒に」

 「そうです。 覚えて頂いていて光栄です」

 「じゃあ、その後ディオと同じ道を歩まされたのですか? 財閥に」

 「そういうことになります。 私は少将程出来が良く無いので、大佐止まりの状況ですが」

 「じゃあ、来年には財閥に戻られるということ?」

 「いえ。 私は少将の様に、帰参要請の催促を受けていませんので、もう少し軍に残る予定です」

 「そうですか。 それでは今度も宜しくお願いしますね」

 美女であるリウにそう言われると、少し恥ずかしさを覚えたのか、大佐は頭を掻いていた。


 「大佐。 ところで肝心な用件ですが......」

 レイがその様に言ったので、本題に入ることに。

 「ハミルトン准将は、アーサ少将の妻を割り出す為に、少将が国籍を移したアルテミス王国へ照会を出した形跡があります。 その書面や王国側の回答書を少将夫妻に入手して欲しいのです」

 サガラ大佐はその要請の為に、惑星ネイト・アミューまでやってきたのだ。

 「ディオを通して要請しても良かったのですが、一応現在まで判明していることもお話ししておこうと思いまして。 それとお二人の意思の確認も」

 

 「私達の意思ですか。 現在のところ実害が無いので、処罰は難しいですよね?」

 リウの質問に大佐は、

 「せいぜい厳重注意止まりでしょう。 今までもその様な処分止まりでしたが、この様な性格の人に注意処分では、効果が全く無いので、結局同じことの繰り返しになるのです。 しかも、階級が上がってきているので、掣肘しにくくなってきていますから、このままだと、より大きな被害が出る可能性が高いですね」

 すると、アイザール少将が、

 「もし彼が、アーサ少将の妻が総司令官だと知った場合、諦める可能性もありますからね。 流石に警護も厳重で、リウ様自身の武勇も相当なものなので、何らかの性犯罪を犯そうとしても、実行はほぼ不可能ですから」

 それを聞いたレイは、

 「そうなると、別の女性に矛先が変わって、新しい被害者が出ると?」

 その意見に対して、大佐は、 

 「彼の過去の経歴からすると、その可能性が高いですね」

と答えた。


 「では、こうしましょう」

 リウは3人の話を聞いていて、一つの方針を示した。

 「大佐には御足労をお掛けしますが、このまま調査を続けて下さい。 要請のあった王国側にある書面は、私の方からお願いして、ルーナ夫妻経由で、ここに届く様に手配します。 そうすれば、准将が憲兵隊の調査に気付く可能性は無いでしょ?」

 「現在は実害が無いので、大した処分は出来ないでしょうから、准将が大きなリアクションを起こした場合に、私達は事件化へ動くことにしましょう」

 「私の方でも、別の方法で准将の動きを監視させます。 既にここに居る皆さんそれぞれが、私の為に色々な方法で情報収集に動いて下さっているのですから、その動きは継続して、情報を沢山集めておきましょう。 必要があれば、私自身が軍中央に乗り込んで、色々と話をつけますから」

 リウは、3人の配慮に感謝すると共に、今回の機会を活かして、准将が大きな行動に出れば、一刀両断に処分するということを決めたのだった。


 「恐らく、近いうちに、彼は長期休暇をとって、この惑星にやって来るでしょう。 ですからアーサ少将は、総司令官と一緒にプライベートでの外出は控えて下さい。 刺激が強過ぎて、思わぬ行動に出る恐れがあるので」

 大佐は苦り切った表情でそう話すと、ハミルトン准将が統合参謀本部議長宛てに届出した、休暇申請の写しをリウに手渡した。


 その写しを確認するなり、

 「1か月も休むの? いいな~」

 その第一声は、如何にもリウらしい言い方だったので、レイとディオは思わず笑ってしまった。

 「せっかく大佐がこんな遠くまで来てくれたのに。 緊張感が無い言い方はダメですよ」

 レイが一応リウに釘を刺す。

 「わかっているって。 大佐、ゴメンなさい」

 素直に謝るリウ。

 「中将らしいと言えば、らしい感想なので構わないですよ」

 大佐も少し笑いながら答えると、

 「今日これからのご予定はあるのですか?」

 レイが大佐に質問する。

 「いえ。 アイザール少将と久しぶりに一杯やろうかなと考えていただけです」

 その答えを聞いたリウは、

 「じゃあ、今日の夕ご飯はご一緒させて貰おうよ。 レイ」

 「先輩、構わないですか?」

 「何も決めて無かったから、構わないけど......」

 そういうことであっさり決まったミニ飲み会。

 「大佐はゆっくりして下さい。 私達は統治関係の仕事を片付けてきますので」

 レイはそう言ってから、まだ喋り足りないという雰囲気を醸し出していたリウを連れて応接室を出て、執務室に戻って行った。

 飲み会を言い出したリウをサボらせずに、今日の分の仕事だけはキチンと終わらせる為であった。


 「変わらないね。 お嬢様は」

 サガラ大佐が懐かしそうな表情を見せながら、少将に語り掛ける。

 「17年前のままだよ。 中身も外見もね」

 ディオがその感想に同意する。

 「入札の時は、アルテミス王国軍本部ビルの大会議室が人だかりだったよな。 懐かしいな~」

 「そうだったね。 俺達も若かったし」



 あの時、みんなが憧れた超高嶺の花「リュウ(リウ)・アーゼル」。

 惑星アルテミスの財閥本店で初めて会った時の衝撃を、アイザール少将もサガラ大佐も、ついこの間の出来事の様に覚えていた。

 『こんなに綺麗な人が、財閥に居るのだ』という衝撃を。

 その後、あの時リュウが担当したアルテミス王国軍関連の仕事の後処理を、1か月以上かかったが、無事終えて、クロノス星系へ帰る時に、リュウの帰国と偶然一緒の船になった2人。

 船内でリュウから気さくに声を掛けられ、何度か食事を一緒に食べたのだが、緊張の連続で、料理を味わえなかったことも、今となっては良い想い出だ。


 そんな昔話になった4人の飲み会。

 場所は、リウが気にいっている街中の定食屋であった。

 「美男美女夫妻、いらっしゃい。 いつもありがとうね」

 初老の店主夫婦に声を掛けられると、

 「おっちゃん、奥の個室イイ?」

 リウも気さくに店の奥へと入っていく。

 「イイよ。 今日は5人だよね?」

 「そうだよ。 一人はカウンター」

 「あいよ」

 そういうやり取りをして個室に入った4人。


 適当に料理の注文をしてから、サガラ大佐は、

 「あと一人の方っていうのは?」

と質問する。

 「ちょうど今、店に入って来たよ」 

 リウがそう言ったので、大佐がカウンター席の方を覗くと、見覚えの有る人物であった。

 「あの人は、武術の達人の......ショさんですよね?」

 「当たり〜。 大佐ご存知なのですか?」

 「憲兵隊って、軍人の身柄を拘束する立場なので、定期的にオリエンタルな古武術などの訓練があるのです。 ショ先生にも何度も来て頂きました」

 「へー。 私も一緒に訓練しているんだよね、こっちでは」

 リウが『先生』って言葉に、だいぶ興味を持ったようだ。


 「最近、中央で見掛けないと思っていたら、こちらの方面軍の所属だったのですね。 ところで先生の役職は?」

 大佐が質問すると、

 「私の副官ですよ」

 「総司令官の?」

 「そうです。 意外ですか?」

 「意外と言えば意外です。 でも護衛官とみれば最適任ですよね」

 「でも、どうしてあの席に座るのです」

 大佐が疑問をぶつけるとレイが

 「将官と一緒に食べても落ち着かないって言うのです。 それとどんな時でも、中将の護衛任務は全うすると言ってきかないので」

 副官が常に護衛任務を第一に考えて行動していることを説明した。

 すると、アイザール少将が、

 「落ち着かないと言えば、初めてリュウ様と民間船で一緒になった時、食事を何回かご一緒させて頂きましたが、味がしなかったですね。 緊張で」

という会話になり、そこから17年前の惑星アルテミスにおける最初の出会いの衝撃という想い出話に繋がったのだ。


 「ところで、このお店の店主夫婦は、総司令官だということ、あの様子だと知らないですよね?」

 大佐が確認すると、

 「軍人ってこと以外、何も知らないですよ。 それで良いんですって。 西上国の三英も、こういう感じのお店を使っていて、それが凄い素敵で、同じ様な関係を作ってみたかったそうです」

 レイが大佐に詳しく説明をした。

 「確かにそうですね。 元お嬢様だから、こういうお店の常連さんになっていたのが予想外でしたが、成功したことで、逆にこういうお店に通わない様な人物になったのでは、ちょっと残念ですから」

 大佐もリウと同じ考えの持ち主であったのだ。


 その後も昔話に花を咲かせる4人。

 17年前の、それぞれのリュウ(リウ)との出会いから、今まで歩んで来た人生を振り返る、良い機会になった飲み会であった。


 「先生、帰りますよ」

 カウンターでチビチビやりながら、4人の会合が終わるのを待っていたエーレン少佐。

 「先生」

って呼ばれたことに、一瞬表情を変えたが、見知った顔の憲兵隊大隊長だったので、

 「お久しぶりです」

とだけ答えて、それ以上余計なことは話さず席を立つ。

 そして、店外の様子を確認してから、警戒態勢を維持したまま中将を待つ、無口な少佐。

 その間に支払いを済ますリウ。

 「毎度あり〜」

 「また来るね~」

 店主と挨拶を交わしてから、少将と大佐に手を振りながら帰宅の途につく、リウとレイ。

 2人を護衛する為、数歩あとを歩く副官。


 その姿を見送ってから、アイザール少将とサガラ大佐も軍の施設に向かう。

 今日は、軍施設内にある高官用の家族官舎に住む少将の家で過ごすのだ。

 「あの2人は何処に住んでいるの?」

 「軍事宇宙港に停泊中の小型戦艦だよ」

 「それはすごいね。 個人所有の?」

 「そう。 リュウ様はアーゼル財閥本家直系だからね」


 「ところで、久しぶりにリュウ様と話をしてみて、どうだった?」

 「何も変わっていなくて、素敵な人のままだね」

 「俺が退役を先延ばしにしてきたのも、わかるだろ?」

 「もちろん。 側近だからな、ディオは。 信頼されてて、少し羨ましいよ」

 「でも、俺をリュウ様の側近にしたのは、旦那の方」

 「そうなの? てっきりリュウ様に抜擢されたのだと思っていたよ」

 「側近になるまで、リュウ様がリウ・プロクターだって知らなかったからなあ。 だから呼ぶべきか躊躇していたらしい」

 「俺は、仕事柄知っちゃった感じだな。 どうしたって無理が有るからね、一人の人物が二人を演じるのは。 パルトネールさんが色々と策を弄して、人事データの性別を巧妙に誤魔化していたんだけどね」

 「基本的に、もう隠して居ないよ。 こっちに来てからその件は」

 「それで、今回の事態に」

 「ハミルトンの件は予想外だけどな。 アイツが軍監察官なんて、不適任中の不適任だろ?」

 「ぽっかり空いてしまったポジション。 そこにエリートだけど問題ある人物だからこそ、上層部としては逆に据えてみたのだろ? ショック療法ってやつだよ。 完全に裏目だけどな」

 「まあ、引き続き宜しく頼むな。 我等がリュウ様の為に......」


 リウ・アーゼルは、今まで出会って来た色々な人々に、陰に陽に支えられている。

 それを実感する、17年ぶりの再会であった......


 


 少し長くなってしまいました。

 予定では6000字程度でしたが、その1.5倍に......

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