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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・龍翔篇

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第60話(カイキ少佐とレイザール)

新領土の統治体制は整いつつあったが、リウには新しい悩みが。


それはレイザールの学校生活であり、それを解決すべく、レイはカイキ少佐にあるお願いをしたのであった......


 惑星ネイト・アミューの統治官となったリウ・アーゼル中将。


 駐留軍の家族や、新しい統治機構を支える文官も続々と着任し、各種学校も新設された。


 学校が開設されたことで、保護したレイザール・アークを中学校に通わせることにしたが、生まれてこのかた学校というものの経験が無いレイザール。

 当然のことながら、集団生活に全く馴染むことが出来ないままでいた。

 リウは、レイザールの様子が気になったので、学校での様子をレアに確認して貰うと、

 『大半の時間を一人で過ごしている』

ということであった。


 「困ったわね~」

 リウは、レイに思わずこぼしてしまう。

 「リウ、何に困っているのですか?」

 「レイザールのこと。 折角カイキ少佐のご子息と学校に登下校ご一緒させて貰っているのに、ひとことも話をしないらしいの」

 「ということは......」

 「学校でも、ひとことも話さないそうよ」

 「三国公用語は問題無いよね?」

 「うん、日常会話は話せるよ。 それに翻訳機だってあるしね」

 少し考え込むレイ。

 「リウ。 ここは私に任せてもらえませんか?」

 「何か、良い考えが有るの?」

 「無いですけど、カイキ少佐に相談してみます。 こういう件は中学生の父親に尋ねた方が、解決策を持っているかもしれないですから」

 

 その後、レイは折を見て、駐留艦隊司令部を訪れて、カイキ少佐に相談してみることに。

 「少佐、少し時間有りますか?」

 「アーサ参謀長、じゃなかった、アーサ統治官補佐殿。 どの様なご用件でしょうか?」

 「総司令官の保護したレイザールのことなのですが、ご子息から何か伺っていますか?」

 「そのことですか」

 「ええ。 リウ統治官も、どうしたら良いか、困っているようなので」

 「息子から聞いている状況だと、あえて周囲と話をしていないようなのですよ」

 「そうなのですか?」

 「息子は、『自分と同じ様なことを周囲から言われるのを恐れているのではないか』と言っています」

 「それは?」


 「不相応な地位につくと、色々と周囲の妬みや文句を蔭で言われますよね? それが人間の世界というものですから」

 「確かに」

 「小官も、つい先日までアーゼル中将の副官という部不相応の地位についておりましたから、色々と批判があったことを、勿論承知しています」

 「......」

 「そういうものって、子供が通う学校の世界にも、大きく影響するのです」

 「それは......」

「小官の息子が通っている学校、ネイト・アミューに来る前もそうですが、生徒の大半が軍人や軍関係の文官のご子息ですよね?」

 「そういう学校って、親の地位や階級で子供達の間でも上下関係が出来てしまうのです。 残念ながら」

 「そうなると、上下関係から、イジメとかもやっぱり起き易くなってしまいます」

 「小官の息子は幸いにも、スポーツが万能なので、イジメられる様なことはありませんでしたが、父親がアーゼル中将の副官という地位にあったことで、『アイツの親父、士官学校出ていないクセに、少将の副官っておかしいよな?』とか『どんなインチキな手を使ったんだろうな?』などと陰口を叩かれていたそうです」

 「申し訳ありません、少佐。 そこまで気を回すことが出来ずに......」

 「いや、良いのですよ。 軍自体が上下関係が厳しく、士官学校出とそれ以外の出身者の差が非常に大きい、そういう世界ですから、子供達の世界にも影響が有るのは当然です」

 「......」

 「おそらく、レイザール君も、アーゼル統治官が保護者になったということで、『自分が余計なことを言えば、迷惑を掛けるのではないか?』と思っているのでしょう」

 「それに、育ち方もだいぶ複雑なようですから、あえて誰とも喋らない、いや喋れないふりをしているのだと思います」


 「なるほど、よくわかりました。 それで少佐には、そうした状況を改善する、何か良い方法をご存知ではないでしょうか?」

 「難しいですね。 小官に出来るのは、自分の体験を話すことぐらいですが......」

 「お願い出来ますか?」

 「構わないですよ。 ずっと何も喋らないまま、学校に通っているのも不憫ですから......」


 その後、学校帰りのレイザールとカイキ少佐の息子である、ジェフが一緒に歩いているところで、レイと少佐は声を掛けた。

 「レイザール、少し話をする時間、良いかな?」

 頷くレイザール。

 「それでは、少佐。 お願いします」

 「ジェフ君は、私と少し話をしようか?」

 そう言うと、レイはジェフを連れて、少し離れた場所で2人の様子を見守ることにした。


 「レイザール君、私のことを覚えているかい?」

 すると、頷くレイザール。

 「君をあの旧宮殿で見つけた時に、アーゼル中将と一緒に居た、元副官のジム・カイキ少佐です」

 「自己紹介するのは、初めてですよね」

 再び頷くレイザール。

 「君が、学校でも登下校中も、ひとことの言葉も発しないと聞いて、中将が心配しているそうなので、私が君と話をしてみることにしたのです。 黙ったままでいいので、聞いてて欲しいな」

 「......」

 「君が、黙っている理由は、中将に迷惑を掛けたく無いからっていうことだよね」

 「君は、保護してくれた中将が、三国同盟における英雄的軍人だということを知ったことで、『帝国人であることが知れたら、大きな迷惑を掛けてしまうのでは無いか?』と考えているのでしょ?」

 「......」

 「そして、英雄が保護者になったことで、周囲から妬まれることも非常に恐れているのかな?」

 「......」

 「私も、そうだったんです」

 「私は、士官学校を出ていない、一兵卒から軍学校を経て、尉官に昇任した人間なんだ」

 「退役前の最終的階級は、通常であれば、大尉か少佐止まりの筈だった」

 「......」

 「ただ、三国同盟と帝国の大きな戦争が有ったことで、2階級自動的に上がってしまったんだ」

 「だから本来は今、中尉だったと思うんだよ。 それが無ければね」

 「......」

 「でも、大尉になってしまった。 まさか三十代で大尉になるなんて思っても居なかったから、人生設計が大きく変わってしまってね」

 「あの大きな戦争で、レイザール君の人生も大きく変わったが、私の様なごく普通の兵士の人生も大きく変わってしまったんだよね」

 レイザールは、カイキ少佐の言葉を聞いて、大きく頷いたのであった。


 「それだけだったら、今後大きな戦さもなさそうだし、少佐止まりの人生が、中佐ぐらいまで昇任したら退役だったのかなって思っていたのだけど、まさかアーゼル中将の副官、当時は少将だったけど、それを拝命しちゃったので、本当に驚いたよ」

 「それと同時に、周囲から羨望の眼差しだけではなく、妬みや誹謗中傷も凄かった」

 「本来、アーゼル少将の副官に任じられる人は、士官学校出で、しかもその中でも成績優秀なエリート軍人であるべきものだからね」

 「だから、当時の私は、今のレイザール君と同じ立場だったということになるね」

 「副官のポジションを辞退しようとも考えたよ。 人事課にその話をしたら、『少将の指名ですので、少将から申し出が無い限り、変更出来ません』って言われてしまって......」

 「......」

「私が、少将にそんな申し出を出来る訳が無い。 軍隊だから、上官の意向に逆らうようなことを言えば、退役を覚悟しなきゃいけないけど、子供も家族も居るし、露頭に迷ってしまうから......」

 「......」

 「アーゼル少将はお優しい方でね。 レイザール君は一緒に暮らしているから実感して居るだろうから、よくわかるだろうけど」

 「だから、結局言ってみたんだよ。 『どうして、私を副官に選んだのですか?』って」

 「そうしたら、『人事課の女性士官に早く決める様に厳しく言われて、最年長の候補者だから選んじゃった』って」

 それを聞いたレイザールは少し笑みを浮かべた。

 「『でも、結果的に正解だったと思っています。 若手のエリートから選んだら、司令部内が今ほど上手く纏まら無かったでしょうから』って言われてね」

 「嬉しかったよ。 そういう評価をしてくれていたって聞いて。 それを聞いたら、他者の妬みや誹謗や中傷なんて、どうでもよくなっちゃったんだよ」

 「偶然とはいえ、折角そういう出会いが有ったのだから、そっちを大切にしたいって思うようになってね」

 「......」


 「私が少将の副官だったことで、息子には辛い思いを少しさせてしまったかもしれないけど、息子にも胸を張って、『親父は少将の副官だ、何が悪い』って言えって伝えたよ」

 「レイザール君も、帝国人だとか、総司令官が保護者だとか、そんなの気にする必要は無いと思うんだよ」

 「あの時、君が旧王宮の地下室に隠れていたのを発見したのは、偶然に過ぎない」

 「でも、下手したら終わっていたかもしれない君の人生が、今こうして普通の中学生としての生活を送れる様になっているのだから、その幸運を活かそうと思わなきゃな。 無理を続けるのではなくて、君らしい学校生活を過してみようとは思わないかい?」

 「幸い、私の息子は同じクラスだし、何か有ったら、君を護る様にも言ってある」

 「しかも、君は見た目も非凡なものがあるし、勉強も出来るそうじゃ無いか?。 普段通りに中学校でも過ごせば、きっと楽しい学生生活を送ることが出来ると思うぞ」

 カイキ少佐は、その様に意見を言うと、

 「もう少し、気楽にいこうよ」

と言いながら、レイザールの頭をくしゃくしゃにするのであった。


 少佐の息子のジェフは、この様なことを言う父を誇りに思ったのであった。

 レイも、

 「ジェフ君のお父さんは、立派はノイエ軍の士官だよ。 胸を張ってくれよな? 私が保証する」

 そう言って、嬉しそうに笑い掛けたのであった。


 レイがレイザールの肩をポンポンと軽く叩いてから、少佐と司令部に戻ろうとした時になってレイザールが、

 「少佐殿。 私の為に貴重な時間を割いて頂きありがとうございました。 よく考えてみます」

と漸く重い口を開いたのであった。


 その後、レイザールは学校で少しづつ喋る様になったそうだ。

 暫く経つと、学校生活にも徐々に慣れて、普通の中学生になりつつあった。

 それをレアから聞いたリウは、

 「レイ、ありがとう。 レイザールが学校生活に溶け込める様になったって」

 「礼を言うのならば、カイキ少佐に言って下さい」

 「少佐の話は、私達も見落としてしまいがちな部分を、再認識させてくれる素晴らしいものでしたから」

 「私も聞かせて欲しいなあ~」

 「リウには、話しづらいかもしれないですね。 ただ、下士官や一般の兵士に対して、彼等が思っていることを少し知る良い機会ですから、お願いしてみては?」

 「そうなんだ~。 じゃあ、余計に聞かせて貰わないと」


 その後リウは、ルー中将の司令部に行って、副官のカイキ少佐に、レイザールに話したものを聞かせて欲しいとねだった。

 その結果、根負けした少佐は、リウだけではなく、幹部が揃う席で、同じ話をする羽目になったそうだ。

 めちゃくちゃ緊張して、噛みまくりだったそうだが、司令部の幹部は、一様に少佐の話を褒め称えたそうである。



 今は消えてしまったリウ・プロクターの立てた戦略に基づく、対帝国軍の作戦は全て終了した。

 本来の人格のリウ・アーゼルは、自身の中に居たリウ・プロクターに対して、

 『何とか、作戦は成功させることが出来ました。 これからは、私自身が考えて、帝国との大規模な戦争が起きないように努力しますね』

と呟きながら、ネイト・アミューから見える、生まれ故郷とは大きく異なる星空に向かって、その様に誓うのであった。



龍翔篇最終話です。

次話からは別篇となります。


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