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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・龍翔篇

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第58話(新領地の占領)

リウは迷いが吹っ切れたことで、新しい領地の占領政策に本腰を入れ始めた。


 リウは、レイと手を繫いで歩いている。

 旧王宮の石碑の丘からずっと。


 「このまま、旗艦迄行くのですか?」

 『ちょっと不味いのでは?』

と思い、レイが尋ねる。 

 「ダメ〜?」 

 「ここなら私のこと知っている人、誰も居ない。 大丈夫だよ」

 嬉しそうに話すリウ。

 『この笑顔のリウを止めてはいけない』

 そう悟ったレイは、それ以上何も言わなかった。

 迷いが、だいぶ吹っ切れたリウ。


 確かに、外を出歩いているノイエ軍人は居ない。

 軍事宇宙港は、最初の攻撃の際に一部破壊されており、第三艦隊の大半は惑星の周回軌道上に駐留している。

 第四艦隊は、周辺星系の制圧に出撃しているし、昨日惑星ネイト・アミューに降下して休みを取っていたアルテミス王国の艦隊も、周辺星系制圧の応援に出発したばかりで、ネイト・アミューに居る軍の数が少ないのだ。。


 「リウ。 旗艦に戻る前に、レアー号に寄っても良いですか?」

 「そうしよっか」

 レアー号に戻ると、生体頭脳レアが驚いていた。

 「レイ。 リウと一緒に仲良く戻って来るとは......」

 レアはリウの心と繋がると、先程の出来事を全部知り、リウとレイの気持ちも理解して、

 「そういうことなら、何も言う事は無いよ。 2人の気持ちが一番だから」

 

 リウは、レイザールの様子を見に行った。

 「勉強しているとは、感心だね~」

 「外に出ては、ダメですか?」

 「うーん。 ノイエの軍人も出歩くのを控えているぐらいだから、暫く我慢してよ」

 「わかりました」

 レイザールは、そう答えると、勉強に戻る。

 今のところレイザール少年には、リウのことを特別に思う気持ちは無かった。


 レイが制服に着替えたので、旗艦ベルクに戻った2人。

 まだ、色々な問題を指揮デッキで討議中だった副司令以下は、司令官の表情を見て安心した。

 『何があったのか知らないけど、いつもの司令官に戻ったみたいだな』


 「急ぎの議題だった、官舎の建設と仮司令部の建物の選定だけど、アーサ准将がもう手配したって。 官舎は既存の移動式大型集合住居を多数発注したし、仮庁舎は先の大戦で帝國軍から捕獲した大型輸送艦の内装をフルリフォームしたものを持って来て、暫く利用しましょう」

 リウは、副司令以下にそう話すと続けて、

 「問題は経費の捻出だね。 帝國軍が徴収していた税収のプールを押さえてあるけど、帝國通貨のままだから、このままでは使えない。 これが一番の問題点だね」

 帝國ユアンとノイエドルとの交換レートは決まっているが、国交も経済的な繋がりも無いので、交換量に制限があるのだ。

 「ネイト・アミューの地域通貨とノイエドルとの交換レートも決めないと」

 「国を一つ、イチから作り直すのだから、最初が肝心だよね」


 「だから、私をここに異動させたのでしょ? 能吏の私を」

 パルトネール大佐が冷静に指摘する。

 「先程は、ごめんなさい。 一人でモヤモヤし過ぎて、みんなに迷惑を掛けてしまいました」

 「リウ。 貴方はまだ三十歳と若いし、新婚なのだから、色々な悩みが有るのは当然。 だから気にすることなんて無いのよ」

 「人より多くの責任も背負わされているのだから、必要が有ったら休みなさい、これからは」

 「休む時は不惑の歳を超えた、私やコーダイ准将を遠慮なく頼るの。 その為に年長者が居るのだから」

 パルトネール大佐が珍しく彼女なりの優しい言葉をかけると、リウは涙が滲んできてしまった。

 「リウ、少し涙脆くなったんじゃない?」

 「前は、ちょっと優しい言葉を掛けられたからって、泣く子じゃなかったのにね」

 以前より、精神的に不安定になっている。

 そう暗に指摘する、パルトネール大佐であった。


 結局、当面の経費はリウ個人が立替えることになった。

 最も近いアルテミス王国での物資の調達費用は、直ぐに支払わねばならないからだ。

 リウが立替える分を除いた、費用面の計算や惑星ネイト・アミューでの直接調達、費用の徴収などは、パルトネール大佐を責任者とすることに決した。

 早速大佐は、今回の第三艦隊への異動に際し、一緒に異動させた数人の専門的な部下を呼んで、兵士を伴い、改めてネイト・アミューの旧帝國の統治関連施設へ、税関連の各種文書や資金の差押えに出向いて行った。

 パルトネール大佐がこの日、速やかにネイト・アミュー地方政府の資金の流れに、再度の捜索を実施したことで、不正に流出しかけていた資金を回収することに成功したのであった。

 それを聞いたリウは、

 「やっぱり、地方政府の帝國官僚は捕虜になった時に全てを話していなくて、まだ沢山隠してあったのね。 ケイトさんの専門的知識が無かったら、帝國の金融機関の口座なので、流出しちゃったでしょうね」 

 そう感想を述べ、ホッとした様子であった。


 

 翌日には、アルテミス王国艦隊の残りの部隊がネイト・アミューに到着した。

 リウは、ルーナ大将の右腕である副司令官カール・ミュッケベルン中将を出迎えた。

 「中将、お待ち申し上げておりました」

 「かなり遅れてしまい、申し訳ありません」

 「航路上の追撃戦で、大破した帝國艦艇からの生存者救出が、思っていた以上に手間取りまして」

 「それよりも、元気そうで何よりです。 リウ・プロクター候補生」

 「お久しぶりです、ミュッケベルン教官」

 「あの頃の演じていた姿よりも、ありのままの今の自分の方が絶対に良い筈ですよ」

 「しかしまあ、思い切ったことをずっとやって来たのですね、少将は。 ノイエ軍が保守的な体質だからとは言え、前代未聞のことを」

 「今回のアーゼル少将の功績で、ノイエ軍もだいぶ変わるでしょう。 同盟国として、そう期待しています」

 ミュッケベルン中将とリウは、十五年位前にアルテミス王国の騎兵学校において、生徒と幹部教官という関係で面識があった。

 当時、2人の間に特別な出来事が有ったわけでは無かったが。


 「そう言えば、財閥から我軍が委託を受けた輸送艦10隻の搬送も、無事終わりました」

 「ありがとうございます。 積み荷は統治用のロボット兵1000万体と警備艇50隻などです。 治安を確保するために、これが足りないと占領政策が始まりませんから」

 「中将、ひとまず将兵も疲れていることでしょう。 ネイト・アミューの治安体制は、今回の積み荷の到着でほぼ万全となりますので、ゆっくり過ごして下さい。 ルーナ大将からもその様に伝えて欲しいと指示がありました」

 「了解しました。 では軍の委託部門から渡された、受領証明書にサインを」

 中将はそう言うと、副官がリウに書類を差し出したので、サインをして返し、輸送艦の起動キーを受け取った。

 「輸送艦は、この軍事宇宙港に着陸させて有ります。 到着した艦隊は、軍事宇宙港のキャパシティの問題で、惑星の周回軌道上に駐屯させていますから、将兵はシャトルで降下させて、半分ずつ交代で休ませる様にします」

 「それでは、また」

 中将が旗艦ベルクから降りる時に、リウもレイを連れて、一緒に降りて見送った。


 「レイ、治安維持用のロボット500万体を惑星ネイト・アミュー用にセッティングするから手伝って」

 「ラージャー」

 2人は一旦、レアー号に戻り、レアと話をした。

 レアー号に搭載している予備の人工頭脳2基を利用して、治安維持用ロボット全てと、新たに導入する警備艇50隻、輸送艦10隻のコントロールを実施し、それをレアが管理することに決まった。

 「レア、よろしくね」

 「大丈夫だよ。 全然負担にはならないし、必要だったら人工頭脳増設するよ」

 レアは軽やかに請け負ってくれた。

 「セッティングを手伝う為に、レアのロボットも連れていってね」


 レアー号を降りて、同じ軍事宇宙港内に停泊中の輸送艦10隻のもとに向かう、リウとレイと、レアの手足となっているロボット達。

 ミュッケベルン中将から渡された起動キーを入れて、全輸送艦のハッチを開ける。 

 すると、積み荷が姿を現わした。

 レアのロボット達が、ロボット兵の起動スイッチを次々と入れていく。

 起動したロボット治安兵は、レアのコントロール下に入り、周辺のロボット治安兵の起動をすると、次々と警備艇に乗り込む。

 レアの遠隔操作で、作業はメチャクチャ速い。

 ロボット治安兵を満載した、警備艇が次々と飛び立ち、惑星ネイト・アミューの各所に散らばってゆく。

 1時間程で、ロボット治安兵500万体が、ネイト・アミューの治安維持に従事し始めた。


 「あっという間だね。 流石レア」

 「本当に凄いね。 これで惑星上に700万体の治安維持ロボットとクローンが配置されたから、ほぼ万全でしょう」

 リウの事前準備が功を奏し、占領時の最初の課題である治安の維持の問題がクリアーとなった。


 「そして、いよいよ私とレイの『アウローラ社』が事業を始めるよ」

 「最初の受注は、恒星間輸送です」

 「ネイト・アミュー方面軍から、必要物資の輸送と航路の警備を受注しました」

 「具体的には恒星アルテミスから、惑星ネイト・アミュー迄の定期輸送と、同盟両国に譲渡するケレス星系とウルカヌス星系からヤーヌス星系間の航路の警備業務です」

 「それって、思いっ切り職権乱用?」

 レイが確認する。

 「そうだよ。 司令官の職権乱用かもね」

 リウが笑う。

 「占領したばかりの領域だから、航路の警備上、当面は軍じゃ無いと出来ない業務だけど、軍が恒星間輸送やその警備を全て引き受ける訳にはいかないでしょ?」

 「でも、物資の輸送は絶対必要だから、民間部門を作って、やるしかないのですよ」


 「それでは、業務開始」

 リウがそう告げると、ロボット兵を載せた警備艇と残りのロボット治安兵を載せた輸送艦が飛び立って行った。

 占領した残りの小星系に立ち寄って、治安維持ロボット兵をコントロールユニットと共に降ろしながら、惑星アルテミスに向かう輸送船団。

 2人だけで始まったアウローラ社の最初の業務であり、レアの全面バックアップがあって、無事船出したのであった。




 今回リウが統治する領域は7つの星系からなるが、その経済力の8割を惑星ネイト・アミューが占める。

 2つの小星系、ケレス星系をアルテミス王国に、ウルカヌス星系を西上国に譲渡するので、5星系が統治対象だ。

 この時点で、ルー少将からアルテミス王国艦隊の援助もあって、6星系の占領が終わったことと、ルーナ大将からケレス星系を占領した連絡が入っていた。


 「無事、予定の作戦は全て終了したよ」

 本国に連絡を終えたリウは、レイに話し掛けた。

 「これでリウが長年予定していた軍事活動は、ほぼ終わりましたね」

 レイにそう言われると、少し安堵の気持ちが出た。

 「結局、大戦を防ぐことは出来なかったし、残虐行為も起きてしまい、多くの人が死んだので、終わった感は無いよ」

 「やって来たことの後始末も、これから山積みだから」

 「みんなが居るから、大丈夫だと思うけど。 レイ、これからもよろしくね」

 リウは遠くを見る目をしながら、過去を少し振り返っているようだった。



 この日の夕方には、ルーナ大将の艦隊が戻って来ていた。

 「大将閣下、お疲れさまでした」

 リウが挨拶すると、

 「疲れる様なことは、無かったよ」

 「本国から統治の準備部隊が、ケレス星系に出発したと報告も有ったからね」

 「早いですね」

 「プロシード国家元首から、ケレス星系をアルテミス王国の管轄にする許可が直ぐ出たってことらしいよ。 かなりご機嫌らしいぞ。 犠牲者も殆ど出て居ないからな」


 「予想外に帝国駐留軍が自滅しましたからね。 帝国の軍事力の衰退も著しいので、暫く大きな戦いは無いでしょう」


 「もうこれ以上の戦争は止めるべきです。 人命を失うだけじゃなくて、巻き込まれた一人一人の生活も壊され、経済的にも大きなダメージを受け、破壊のみが残る無駄の塊ですから」

 「人間は愚かだから、何時の時代にも争いを止めることが出来ない。 進歩が無いですよね、本当に」

 「今後も、戦争が無くなることは無いでしょう。 でも、出来るだけ、戦さにならないよう努力し続けないといけないのです」

 リウは、そう力説すると目を瞑り、亡くなった人達に哀悼の意を示しているようだった。



 捕虜となった帝國人を帝國に帰還させるため、輸送艦の手配とリストの作成をパルトネール大佐に指示したリウ。

 ルー少将の艦隊にも、少数の捕虜が居るとのことで、それらがネイト・アミューに後送され次第、帝國に帰還させる方向となった。

 多数の捕虜を確保しているアルテミス王国艦隊の担当者との協議も始まった。


 「これからは、帝國との国境になるアワ・ドー星系が重要になりますね」

 レイがリウに指摘する。

 「そうだね。 経済力はほぼゼロの星系だけど、軍事的、外交的には重要な星系だよね。 この星系の統治は、惑星ネイト・アミューから期間限定で派遣する輪番式にしようと思っているの」

 「何も無さすぎて、駐留させると将兵や文民に酷だからね。 常駐は可哀想でしょ?」

 「そうですね。 持ち回り式で良いと思います」

 「ヤーヌス星系からちょっと離れているので、固定の施設も作らず、移動式の設備だけにしようと思うの。 それならば、万が一帝國軍と小競り合いが起きても、被害は僅少で済むだろうから」

 リウは、帝國国境の星系の警備体制を最小限にする方針であると説明した。


 「アワ・ドー星系の人口は?」 

 レイが質問する。

 「数万人らしいよ。 帝國軍の駐留部隊が撤退して居なくなったので、更に大幅に少なくなるって」

 「何時の日か、停戦が実現したら、一気に価値が出る星系だろうから、先行投資しておこうかな?」

 リウは経営者らしい冗談を言ったが、アウローラ社がアワ・ドー星系の土地の買い占めを実施したのは、この会話の直後であった。



 今後の第三艦隊の指揮体制について、リウはコーダイ准将とレイを呼んで協議し始めた。

 第三艦隊は、ネイト・アミュー方面軍の直属艦隊に再編成されることになり、

  方面軍総司令官は、リウ・アーゼル中将

  方面艦隊司令官は、ジョン・ルー中将 

と内々に決定している。

 アーゼル中将は基本的に新領地の統治に専念するので、ルー中将が全艦隊の指揮を采り、旧第三艦隊はルー中将の指揮下に入って、実質的にはアーゼル中将の代理となるコーダイ少将が指揮を采ることに決まった。


 「副司令に、第三艦隊の指揮はお任せします」

 「帝國軍に大きな動きが有った場合には、改めて対応を協議しましょう」

 「それに私は、艦隊戦の専門家では有りません。 副司令の方が元来、艦隊戦の専門家ですからね」

 リウは、この様に話をして副司令に艦隊の指揮権を移譲したのであった。


 「レイはどうしようか?」

 「参謀長のままで良いの?」

 「本来、デスクワーク畑だものね。 ディオもそうだけど」

 「近い将来の後方司令官候補筆頭だから、私より統治官向きだよ」

 するとレイは、

 「リウ。 そんなことありませんよ」

 「リウは、大財閥の跡継ぎ候補として、英才教育を受けて来たでしょ? ノイエ軍に入る前の実績もあるし、軍務よりも統治官としての方が、実力を発揮出来るのでは?」

 「それに比べたら、私の事務処理能力など、お話しにならないレベルですよ」 


 「副司令の希望はどうですか?」

 「司令官が艦隊勤務から離れるのですから、残って欲しいですね」

 「でも司令官は、側に置いて置きたいのでしょ?」

 コーダイ准将にその様に言われて、リウは、

 「それでは兼務にしましょう。 アイザール准将も同様にして」

 「艦隊参謀長兼総司令官補佐って言う形で」

 あっさりと兼務が決まったレイとアイザール准将。

 『今後、艦隊参謀長の仕事は殆ど無いだろうから、構わないが......』

 『リウの側に居れるので嬉しいけど、アイザール先輩もってことは、こき使う気だな』

 リウの思惑に気付いてしまったレイは、思わず小さな声で呟いてしまった。


 地獄耳のリウが、レイの呟いた言葉に、

 「何か言った? レイ」

と咎める。

 「いえ、何でもありません。 司令官の付託に応えられるよう、精一杯、新しい肩書の任務に努めます」 

 わざと堅苦しい言い方をすると、

 「レイ。 そんなに身構えなくても大丈夫よ。 しっかりこき使ってあげるから」

 そう言うと、笑いが止まらなくなったリウであった。


 『こういう、明るい時間が続けば良いのになあ』

 笑っているリウの姿や副司令の姿を見ながら、レイはそう思うのであった。

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