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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・龍翔篇

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第57話(リウの動揺)

新たな出会いがあったリウとレイ。


その出会いが2人の間に小さな亀裂をもたらしてしまう......


 レイザール・アークを養子とする方向になったリウとレイ。


 部外者のレイザールを旗艦に乗せておく訳にはいかないので、レアー号に連れて行った。

 レアー号に乗るには、生体頭脳レアの許諾が必要であるのだが、リウがいきなり決めてしまったこともあり、レアの承諾が得られなくて、困ってしまったリウ。


 「リウは、なんで何でも突然なの?」

 「レア......」

 「私はリウと同一。 だから分かるんだよ」

 「あわよくばって考えている。 リウはその子を利用する気でしょ?」

 「表面上リウは物凄く綺麗。 人々はリウの美麗さと華麗な才能に憧れている。 でも、心はドロドロじゃない?」

 「その子はピュアだよね、命を捨てているから。 リウはそのピュアさを利用しようとしている」

 「それにこの子は不味いよ。 リウがレイを裏切ることになるかもしれないから」

 「だから、今回は絶対ダメ。」

 「リウのバカ〜〜」


 結局、レイが中に入ってレアと話しをすることになった。

 「レア。 ゴメンね」

 「レイ......」

 「レイは、これでイイの?」

 「あの子は、成長したら仰ぎ見るのも尊い位の容姿になる。 天姿秀出と言われる程に」

 「リウは、きっとその姿に心を惹かれる」

 「いや、既に心の奥底で僅かに惹かれたから、養子にするって言ったんだよ、突然」

 「養子にすることで、その僅かに動いてしまった心に縛りを掛けようとしている」

 「それと、手放したくないとも思ったから」

 「レイ。 本当に良いの?」

 「あの子が成長したら、リウはレイを裏切ってしまうかもしれないよ」


 レイにとって、レアの言ったことは意外では無かった。

 レイは、ずっとリウを見てきている。

 心の機微も、わかる位に......

 養子にすると突然言い出した本当の理由も、既におおよそ理解していた。

 そして、こうも考えていた。

 『ここで、引き離してしまうと、逆にリウの心が燃え上がって、全てを捨ててしまうかもしれないな。 そういうところの有る方だから......』


 レイはレアに、

 「リウ様は、私程度には勿体ない位の存在です」

 「もし成長したレイザールに、リウ様の心が奪われてしまって、私が捨てられたとしても恨みに思いません、レア。 もしそうなっても、私はリウ様を護り続けます」

 「それと」

 「それと?」

 「レアの更なる成長の為に、レイザールは良い存在かもしれないですよ。 あそこまで人生を諦めている子供って居ないからね」

 「きっとリウ様の明るさで、あの子は大きく変わる。 その成長の過程や心の動きをレアも見守ってあげて。 レアならレイザール少年の心の底迄見えるだろうからね」


 レアは、レイが覚悟を決めて、リウの養子の話を受け容れたと知って、仕方なくリウの言う事を聞くことにした。

 

 リウは、レアが猛反対した理由を薄々分かっていた。

 確かに、リウはレイザールの姿に少し惹かれていたのだ。

 まだ少年でしかないにもかかわらず......

 『もう二度と関わらない方が良いのかもしれない』

 そう思ってもいた。

 ただ、

 『手放したくない。 皇帝の血筋、万が一の可能性もある』

 そういう気持ちも出てきてしまった。

 だから、養子にすると言ってしまったのだ。

 養母となって、レイを裏切らぬよう自分の心に縛りを掛けて......

 


 「レイ......」

 リウは2人っきりになると、ひとこと発したきり、少し黙ってしまった。

 心を決めて、

 「レアから聞いたのでしょ?」

 「ゴメンなさい。 勝手に心が揺れてしまって......」


 「リウ。 レアに聞かされなくても、何となく分かっていました」

 「そして、これだけは言っておきます」

 「近い未来に、リウの心が私から離れてしまっても、恨みに思うことは無いです。 人間の心っていうものは、頭ではダメだと分かっていても、動いてしまった心はどうにもならないのですから......」

 「どんなことが有っても私は、死ぬまで約束を守り続けます。 貴方を護り続けるという約束を。 幸いに寿命も短いですから、辛くなっても耐える時間は短くて済む......」

 レイは、ここまで言うと、その藍色の瞳から二筋の涙が落ちたのであった。


 リウは、その様子を見て大泣きし始めた。

 「レイ、本当にゴメンなさい。 やっぱり養子にする話は止めるし、クロノス星系の施設に入れるから......」

 「不覚でした。 涙が出てしまうなんて......」

 「リウ。 私はレイザールに負けるつもりはありません。 リウは渡さない」

 「まだ子供ですけどね、相手は」

 「もし将来、リウの心を奪う勝負になったとしても、最後に勝つのは私ですよ、きっと」

 「それに、最後に勝敗を決めるのは、レアでしょ?」


 『レイは、どうしてそれに気付いているの? 私とレアの約束を......』   


 リウはレイを見つめ続けた。 

 「レイ、私の心のさざ波を忘れさせて......」

 リウは、そう言うとレイを力強く抱き寄せた。

 この夜のレイは、今迄にないくらい荒々しかった......



 旗艦ベルクでは、思いがけぬ形で司令官と参謀長の秘密の関係を知った2人が、そのことを消化しきれずに残って居た。

 すると報告の為に、惑星上空から降下してきたコーダイ准将が現れた。

 「珍しい組み合わせの2人が残っているな?」

 ラートリー中佐とカイキ大尉の姿を見て、そう語り掛けた。

 「司令官と参謀長は?」

 その質問に、今日の出来事を簡単に説明した2人。

 「拾った帝國人の子供を養子にね~」

 『何か秘密の有る子供だな? 2人共、口止めされているのがバレバレ。 嘘が下手な正直者だから』

 コーダイ准将は中佐と大尉の態度でピーンときた。


 「事情は分かったけど、どうして2人だけ残っているのだ?」

 「副司令は知っているのですか? 司令官と参謀長の、その〜」

 「知っているよ。 もう、それ程隠している話でも無いけどな」

 「特に副官。 一番身近に居るのに鈍感だなあ」  

 コーダイ准将は大笑いした。

 「まだ人事関係の発表は先の話だから、仮定の話だけど、今回の戦いの結果で昇任したら、カイキ少佐はルー中将の副官に異動となる」

 「ラートリー大佐は、アーゼル中将護衛任務の兼任。 女性同士で最適任だからな」

 「アーゼル中将の副官は、護衛能力の高い方が新たに就く」


 「今後司令官は、命を狙われる出来事が増えるだろう。 残念ながら......」

 「まして、女性だと徐々に知れ渡っていく。 相当な美女だという事も」

 「それが、より狙われる原因となる」

 「だから、我々も彼女の警護を強化する。 今迄三国の民の為に、自身の人生を投げ出して、戦場だけでなく、政治や経済などの色々な場面で戦い続けてきた彼女への恩返しだよ。 我々にはそれぐらいしか出来ないからな」

 「副官。 今回の異動予定は決して外される訳ではないぞ。 これからの軍務はルー中将が行う。 アーゼル中将は占領地の統治責任者になるから、軍務から離れる。 今後アーゼル中将の副官の任務は、身辺警護がメインとなるからな」

 コーダイ准将は、昇任後の予定を2人に説明したのであった。


 

 帝國にも、今回の戦いの結果が伝わってきた。

 宰相ルーゼリア大公は、二世皇帝のもとに報告に来ていた。

 「陛下。 残念ながら最悪の結果となってしまいました」

 残念そうに伝える宰相。

 「旧ムーアー領域の駐留軍が惨敗したのか?」

 「さようで、陛下。 申し開きのしようもありません」

 「トオーン星系も寝返ったか」

 「はい」

 「最早、帝國軍全体の改革が必要であろうな。 撤退する様に命令しても、一戦交えないと引くことが出来ない。 敵に対して時代遅れも甚だしい残虐行為を繰り返すことも含めた、その体質をな」

 「間もなく、ウォルフィー元帥も戻って来るだろうから、宰相と帝國軍総司令も交えて、話し合いをすることにしよう」


 「それともう一つ報告が」

 「まだ他に何か有ったか?」

 「皇太子のことです」

 「レイザールのことか? 朕は奴の顔を見たくないのだが。 シンキと瓜二つだからな」

 「今回の戦乱で所在不明となりました。 形だけのムーアー王でしたが、王宮の者達も軽ろんじていたので撤退する時、誰も連れ出さなかったようです」

 「そうか。 それも奴の運命」

 「見捨てて撤退して来たムーアー王宮の者どもを、処罰なさいますか?」

 「ワハハハハ。 朕もそなたも微塵も気に掛けなかった処刑見込みの皇太子を見捨てたからと、関係者を処罰したら一生呪われるぞ」

 「御意」

 「レイザールも所在不明になった方が幸運だろ? 戦乱で死んだかもしれないが、もし生き残っていればな。 そうでなければ、数年後には死ぬ運命だったのだから」

 皇帝はそのように話すと、深い溜息をつくのであった。

 国力の衰退に対する責任の重さを感じての嘆息......



 レイザールは数日間の逃亡生活で非常に疲れていたので、ずっと寝たままだった。

 漸く起きたら、保護してくれたノイエ軍の夫婦は既に仕事に出ており、居なかった。

 起きると、横に居るロボットに、

 「レイザール殿、貴方は当面、この艦から出ることが出来ない。 用件があればこのロボットに」

と言われた。

 『ムーアーの王宮に居た時とあまり変わらないな。 いつ処刑されるのか、諦めの日々だった昨日迄よりはマシというところかな』

 そう考えながら、長年の生活習慣から、

 「勉強したいから、教材を出してくれませんか?」 

 ロボットに要求すると、出された幾つかの教材から中学の教材を取り出し、自主的に勉強を始めるのだった。

 自身の存在が、リウとレイの蜜月関係に及ぼし始めた影響なんて、全く知る由もないレイザールであったが......



 レイは、一旦一人でレアー号に戻ると、モニター越しに勉強しているレイザールを見ていた。

 リウとレイの極めて親密な夫婦関係に、微妙な作用をもたらし始めた謎の存在。

 でも、レイにはレイザールに対する憎しみとか妬みといった感情は、全く起きていなかった。

 まあ、まだやっと中学という子供に対して、リウの心を奪い合うライバルになるかもしれないという実感が無いのは当たり前であるが......

 それどころか、レイザールの容貌を見て感嘆しているぐらいだった。

 『まだ少年なのに、なんと恵まれた容姿なのだろう』

 『シンキ元皇妃の美しさが予想出来る。 見たことは無いが』


 逆に新たな緊張関係が少し生じ始めたのを、楽しむ気持ちすら起きていたレイ。

 『平穏よりも波瀾を好むとは。 我ながら救いようの無い性分だな』

 生まれてからずっと、平穏な人生とは縁遠い生き方をしてきたレイ。

 『戦さが終わり掛けているから、少し平穏になるかなと思っていたけれど...... 今後も色々有りそうだな。 リウとの結婚生活も』

 消したモニターに薄っすらと映し出された自分の顔を見ながら、そのように考えていたレイであった。



 一旦レイと離れたリウは、会議の席に出ていたものの、全く話を聞いておらず、

 『レイに対し、自分がしてきたこと』

を振り返って、悶々としていた。


 『私からレイに告白し、結婚して、条件としていた不老装置の埋め込みも受け容れて貰った。 それなのに、僅か数ヶ月で他の人、しかも少年に心が揺れてしまうなんて。 あまりにも身勝手な自分に嫌気がさす......』 

 『このままでは、レイに顔向けが出来ない。 どうしよう』

 裏切りとかが大嫌いなリウであったのに、自身がそういう存在になってしまったと思うと......

 この日も朝からいつも通り、レイと一緒に行動していたが、リウ自身かなりの緊張状態だった。

 レイに変わった様子は殆ど無かった、一つを除くと。

 『リウ様』がリウに呼び方が変わった部分を除けば......

 『やっぱり、レイも内心は怒っているのだろうな。 『様』を付けて呼んで貰う必要無かったのだけど、その価値も無い女だから、急に付けなくなったのかも』

 そう考えていたのだ。

 くよくよするリウ。

 暫く、そのようなことばかり考えていたが、堂々巡りで何も進まない。


 ネイト・アミュー以外の占領が完了しておらず、統治に向けて、色々なことを決めていかねばならないのに、仕事が手に付かない状態であった。

 「ああ、もうダメ。 くよくよするのは私らしくない。 先ずはレイとじっくり話し合わないと」

 突然、そう大声を出したリウに、その場に居た副司令や副官、パルトネール大佐はびっくりした。

 「リウ、私の話聞いてた? 聞いて無かったでしょ?」 

 パルトネール大佐がリウに確認する。

 「ごめんなさい。 聞いてませんでした」

 「ああ、もう仕方がないわね。 貴方が上の空状態だと、何も進まないわよ」

 「何があったのか知らないけど、今すぐ解決してきなさい。 レイのところに行って」


 「ケイトさんの言う通りです。 皆さんごめんなさい」

 リウはそう言うと、会議の席から出て行ってしまった。

 その姿を見送ると、副司令は肩を竦めて、

 「大佐の言う通りですね。 司令官はずっと心此処にあらずでしたから。 とりあえず私達で決められるところは、先に決めておきましょう。 司令官が個人的な悩みを解決したら、直ぐ動けるように」

 「そうですね、副司令。 レイカーも居ないので、代わりに必要があれば、アイザール准将に意見を聞きましょう」

 今後の統治体制の為に、駐留軍の家族官舎や官舎、独身寮などを緊急整備する会議だったのだが、リウが上の空で全く進んでいなかったのだ。


 リウは会議を飛び出すと、レイを探した。

 レアー号に行くと言っていた筈だが、居なかった。

 レアに確認するも、レアは一言も答えない。

 相変わらずへそを曲げたままで、リウの問い掛けに答える気は無いようだ。

 仕方なく、レアー号を出て、レイが行きそうなところを考える。

 と言っても、まだこの惑星に来たばかりで、心当たりは無い。

 あまり遠くに出歩くと、みんなに迷惑を掛けるから、好き勝手に歩き回る訳にもいかない。


 『レイ、何処行ったの?』

 心の中で呟くリウ。

 ふと行きそうな場所が思い浮かんだ。

 旧王宮。

 きっと、そこに居る。

 軍事宇宙港から、それ程離れていない、旧王宮。

 走って向かうリウ。

 旧王宮の内外は、ノイエ軍の陸戦ロボット兵が警護しているので、IDを照合して中に入る。

 広大な旧王宮の敷地。

 暫く、歩いて探すと、旧王家の石碑が立っている小さな丘に人影が見えた。


 『きっとレイだ』  

 息を切らせて、めいいっぱいの全速力で、人影に駆け寄る。

 誰だか確認しないまま、リウは飛び付いて抱きついた。

 「リウ、どうしてここに? 会議は」

 レイが、いきなり抱きついて来たリウを抱き止めて質問する。

 「会議はすっぽかして来た」

 「えっ?」

 「ダメな私を赦して。 レイに色々要求して全部満たして貰ったのに、裏切る様な気持ちを僅かに抱いちゃって」

 「それを気にしてここまで来たの? リウは律儀だね」

 レイが笑う。

 「私は、昨日からずっと反省しています、レイ」


 「どうしようかな〜」

 「寿命も半分になっちゃったし、じゃじゃ馬を護り続けて、命も削って、神経を擦り減らし、体も傷だらけ」

 幾つかの傷跡を少し指差す。

 「それなのに、レイザールが将来美形になりそうだからって、乗り換えるかもって言うんだから」

 「......」

 「......」


 ついにリウの瞳にが涙を滲み始めた。

 「リウ。 そんなに気にすることじゃ無いですよ」

 「まあ、例えて言ってみれば、彼女とデート中に横を美女が通って、それに見惚れたことと同じ様なものでしょ?」

 「リウの心が揺れたと知って動揺して、不覚にも涙が出てしまいましたが、そのせいで余計にリウの悩みを深くしたようですね。 ゴメン」

 レイは優しく言い聞かせるように話した。

 「レイは、私に対して怒って無いの? まだ結婚して数ヶ月なのに、気持ちが少しグラついて」

 「夜も怒っている様な感じで、その〜、激しかったし......」


 「ちょっと、感情が入っちゃったのかもしれませんが、怒って無いですよ」

 「だって、リウはずっと一緒に過ごしてくれているでしょ? 今迄と変わりなく」

 「昨日の夜のリウは、しおらしくて、いつもより可愛く感じられたので、燃え上がってしまったのです」


 ここで急に真剣な表情に変わったレイ。

 「あと数年は、自分のもとに居てくれるでしょ? リウ」 

 「それだけで十分だよ。 リウは自分にとって女神のような存在だって話したでしょ? 最初に告白された感動は永遠に忘れられない。 今でもこうしているのが夢の様だし、自身を責めて探しに来てくれた。 本当に嬉しいよ」

 「リウがほぼ完璧な存在であるのに比べると、レイカーって奴は大したこと無いって自覚しているから。 近い未来にリウの心が離れたとしても、受け容れられるよ」


 それを聞かされたリウは大泣きし始めた。

 感情の堰が壊れたかの様に、ワンワン泣く。

 その頭を優しく抱き寄せるレイ。

 他に誰も居ない、石碑の丘で、リウは数ヶ月分の涙を流し続けたのであった。

 そして、リウは迷う心にケリを付けようと、自らレイにディープキスをした。

 今迄に無かったほど長時間の、リウの愛情が最大限入ったディープさで、レイの下半身が反応してしまう程であった。

 「リウ。 誰も居ないとは......言え...... ヤバい......」

 レイがそう言おうとしたのも、唇と舌で抑え込んでしまった。

 やっと、吹っ切れたリウ。

 「戻ろうよ、レイ」

 いつもの快闊なリウに戻ることが出来たのであった。


 「やっと『様』を外してくれた。 でも突然だったよね?」

 「夫婦になったけど、呼び捨てにするのが、少し恥ずかしくて」

 「でも今回のことで、素直な気持ちを表さなきゃって思い直したんだ」


 「何で旧王宮に居たの?」

 「ここに、施設を色々建てるのでしょ? それだから、確認に来ていたよ」

 「特に、家族官舎や官舎を早く作らないと。 ずっと艦隊の中では、狭くてみんな辛いでしょ?」

 「ヤバい。 その為の会議だった......」

 「さっきレアー号から、惑星アルテミスにあるアーゼル財閥本店に発注しておいたよ。 移動式の建物を持って来るだけだから」

 「費用は、統治官持ちだけどね」

 「私?」

 「その為の統治官でしょ?」

 「当面のやりくりが大変だなあ」

 「帝國軍が統治で使っていた口座を全部差し押さえて有るから大丈夫だよ。 必要な物はそこから支払えば良い」

 「帝國の通貨だからダメだよ。 ここの通貨との交換レートも直ぐ決めなきゃだね」


 レイザールの出会いから始まった、リウの心の大きな乱れは、こうして収まった。

 あまりに生真面目過ぎるリウ。

 その性格が今後、自身を追い詰めてしまうのだが、そのことに気付かされるのは、まだ当面先であった。

 

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