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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・龍翔篇

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第56話(惑星ネイト・アミューにて)

遂に出征したリウ。


今後リウとレイの生活の拠点となる惑星ネイト・アミューとは......


 出征の日の朝。


 惑星ヘーラーの軍事宇宙港内では、出征式が簡素に行われていた。

 第三、第四艦隊の旗艦乗務員の半数だけが参加する、非常に簡易なものだ。


 出征しない第一・第二艦隊の司令部や乗組員の一部、出征する艦隊の家族の一部が軍事宇宙港のターミナルに集まり、出征する将兵を見送るだけの式典であった。


 見送られる第三、第四艦隊の旗艦乗務員は、ツインタワーの玄関内で整列し、ターミナルを通ってボーディングブリッジに接続された2隻の旗艦に徒歩で向かう。


 ターミナル内に入ると盛大な拍手の中、アーゼル少将・ルー少将を先頭に、手を振りながら旗艦に吸い込まれてゆく。


 全員が乗り込んで暫くすると、ブリッジが切り離され、合計約1000隻の艦艇が軍事宇宙港から宇宙空間に向けて、飛び立って行った。



 宇宙艦隊司令長官のロバート・タイラー大将は、長官室から出征する艦隊を見送っていた。

 「行ってしまいましたね」

 第一艦隊司令官のニミッツ中将、第二艦隊司令官のホーウィン中将が司令長官と一緒に見送りながら、呟く。

 「彼等と再会出来るのは、相当先のことになるだろう。 新時代の幕開けとなれば良いがな」 

 司令長官は、2人の中将の呟きに対して、そのように答えた。

 「今迄、受け身の出動ばかりでしたが、今回はこちらから動いた出征です。 良い変化が起きることを期待しましょう」

 ニミッツ中将が旧第四艦隊で、あの大戦の死地において一緒に戦ったアーゼル・ルー両少将の成功を祈りながら、そのような感想を述べるのだった。




 「司令官、我等はどのような経路で、惑星ネイト・アミューに向かうのですか? 普通にアルテミス星系経由で向かえば2週間以上の行程ですが......」 

 副司令官コーダイ准将がリウに確認する。

 すると、リウは、次に向かう座標を全艦隊に指示した。

 「その方角だと、直接ネイト・アミューへ向かうということですか? 航路は確立されていませんが......」

 コーダイ准将が再確認する。

 それに対してリウは、

 「説明は、第四艦隊の2人が来てからしますね」

 それがこの時の回答であった。


 暫くすると、ルー少将、アイザール准将が旗艦ベルクの艦橋に到着した。

 リウは、ついに作戦の最重要部分を話し始めた。

 「それでは、今回の作戦の肝心要の部分を説明します。 これから向かう航路は、遥か昔、昔。 ノイエ国が設立されるずっと前に、未知の星系を求める新進気鋭の冒険者達が通った航路なのです」

 「その後暫く使われていた航路でしたが、途中ブラックホールが有ったり、航路上に不安定な恒星が複数あることから、危険性が常に伴うので、閉鎖されてから約250年。 人々の記憶からも消え去ってしまったのです」

 「今回の作戦に当たり、敵の不意を突くために、私は使うことに決めました。 ネイト・アミュー迄の行程は約1週間」


 「自動操縦のレアー号を先行させ、座標を確認しながら進みますので、危険性はある程度排除出来ると思います」

 リウは、今回の作戦の最大のポイントである廃航路を使っての不意打ち策を、ごくごく簡単に説明した。


 「ルーナ大将の4個艦隊が帝國領に差し掛かった頃、私達は丁度ネイト・アミュー外縁に達するでしょう」

 「駐留する帝國軍4個艦隊は、ルーナ大将の艦隊を迎撃する為に出撃しているでしょうが、突然本拠地を失った上に、アルテミス王国の新型艦艇の艦隊が迫って来るのですから、退路を失うのを畏れて撤退する」

 「若しくは、アルテミス王国艦隊と一戦交えてから撤退する」

 「更には、私達と一戦交えてから撤退するの3つの方策があるのです」

 「どれを選ぶかは、帝國軍の総大将の判断次第でしょうね」

 リウは、ルー少将以下にそのような説明した。


 『レアー号は当初、この作戦を実施する為に建造計画されたのかもな』

 レイはリウの説明を聞きながら、そのように考えた。


 副司令だけではなく、作戦の説明を聞きに来ていた、ルー少将もアイザール准将も黙ったままだった。

 それぞれが、リウの作戦計画をどう思っているのか、誰も口に出さないので分からなかった。

 リウを評価しているのか、無謀だと思っているのか。

 レイは、その様子をじっと観察していた。


 リウが沈黙に耐えられなくなり、

 「質問があるのならしてください。 何も言われないと不安になるよね」

と口火を切るも、質問も出ず......

 「レイ、何か無い?」

 リウは、レイに救いを求めた。

 「質問も無いようですから、解散ということで」

 レイは、作戦会議を解散したのであった。

 「一つだけ。 指定座標に着いたら、全艦に即シールドを張るように徹底してください。 予想外の危険発生があるかもしれないですから」

 レイはリウの説明に、参謀としての自身の考えを指示に付け加えた。


 リウとレイと副司令だけになった旗艦ベルクの艦橋にある指揮デッキ。

 レイはリウの副官のカイキ大尉を呼んで、コーヒーを三杯買ってくるように、購入カードを渡してお願いした。

 「ちょっと、大胆過ぎる航路選択だったかなあ~」

 リウがみんなの反応を見て、そう漏らす。

 「レアー号が有るから、成功しますよ。 無かったら危険ですけど」

 レイが作戦に対する、自身の評価を口にした。

 そして、リウの頭髪を優しく撫でる。

 「いつも悩んでいたよね。 ありがとう、みんなの為に」

 レイがリウの耳元で囁くと、リウの大きな瞳には涙が溢れてきた。

 「レイ、私を泣かせようとしているのでしょ?」

 「今は、勤務中だからね」

 リウは、涙を拭いながら、少し笑顔になった。


 コーダイ准将は、リウの航路選択と奇襲について、ずっと考えていた。

 『大胆な航路選択だけど、そこまでイチかバチかの作戦をする必要が、現状有るのか?』

 『大きな混乱が無く、ネイト・アミューに到着出来れば、正しい選択だったと言えるし、大きな損失が出れば失敗だったということになる。 結果が今回の計画の評価を決めるのだろう』


 レイがリウに一つ質問をした。

 「リウ様は、この航路使ったことが有るのですか?」

 「どっちだと思う?」

 「有りそうだから、確認したのです」

 「有るよ。 帝國から帰る時に使ってみた」

 「特に大きな問題は無かったよ」

 その答えを聞いて、漸く副司令が口を開いた。

 「オーソドックスにアルテミス王国艦隊と艦を並べて戦うのが良いのか、それとも今回の奇襲が良いのか、判断がつきませんでしたが、司令官が実際に試されていたのならば、今回の奇襲作戦を支持します。 先導する特別な艦艇も建造し、危険を犯して試した結果も含めて立案されたのならば、誰も文句は言えないでしょう」

 そう述べたので、ようやく他の指揮官の意見を聞けたリウは嬉しそうであった。


 「リウ様は、ずっと悩んでおられました。 今回の作戦については勿論のこと、そもそも出征自体必要ないのではと。 昨日も殆ど寝ずに......」

 「私は毎晩、戦略戦術シミュレータの簡易版の相手をさせられていました。 寝れないからって」

 レイは笑顔で副司令に説明すると、リウに、

 「次の座標迄は、問題が発生する可能性無いので、ひと休みしてください。 寝れなくても横になっていれば、少しは疲れが取れると思いますから」

 そう言って、有無を言わさずリウを抱き上げると、そのまま艦橋にある司令官用の仮眠室に連れて行ってしまったのであった。


 レイが戻ると、カイキ大尉がコーヒーを買って戻って来ていた。

 「大尉、ありがとう。 1杯は大尉の分だから」

と言いながらコーヒーを2杯受け取り、1杯を副司令に渡した。


 「参謀長は、知っていたのですか? 今回の奇襲作戦計画について」

 副司令の質問に、

 「いえ、知りませんでした。 本当に秘密にしておきたいことは、たとえ一緒に暮らす夫に対してでも、絶対に話さないですよ。 リウは」

 「私はリウの作戦を支持していますが、それが正しい選択かどうか、現状わからないです。 でも奇襲攻撃の方が、帝国軍の撤退する可能性が高く、犠牲者を最小限にする方策としては、最善だと思います。 味方だけでは無く敵にとっても」

と答えた。



 やがて第三、第四艦隊は、ノイエ国領の辺境部に到着した。

 ここから先は、いにしえの航路に突入する。

 既に、レアー号からは次の座標に到着したと連絡が入っており、周辺環境も安定しているとのことであった。

 「とりあえず、次の座標は大丈夫か~」

 ジョン・ルー少将は、一安心した表情で参謀長のアイザール准将に話し掛ける。

 「そのようですね」

 いつも冷静な参謀長なので、表情から心の様子はわからなかったが、声のトーンが微妙に異なる気がした。


 「参謀長は、今回のリウの作戦や航路選択、どう思う?」

 ルー少将が質問する。

 「私は、与えられた課題をこなす為に最善の努力をするだけです。 ひとこと付け加えるとすれば、レイがリウ様を信じているように、私も信じています」

とアイザールは答えた。

 『少しまわりくどい物言いだが、支持しているということか』

 「異論があるなら、代案を出さないと。 代案が無いのなら、みんなの先頭に立ってくれているリウを信じるしかないよな?」

 ルー少将はそう言うと、この作戦の是非について論じることは二度と無かった。



 その後、第三の座標迄は無事に辿り着いた艦隊であったが、第四の座標に先に飛んだレアー号との通信が途絶えてしまった。

 既に、本国との通信も途絶しており、遠征艦隊の首脳陣は第四の座標に飛ぶべきかどうか、決断を迫られていた。

 「リウ様。 レアと繋がりが切れた感覚が有るのですか?」

 レイが質問した。

 「無いよ~。 何も言って来ないけど、レアは存在している」

 リウが答える。

 「それなら行くべきでしょう」

 レイが自分の判断を述べる。

 「ただ単に、既存の通信手段が通らない特殊な環境なのでしょう」


 第四艦隊旗艦から、スクリーン越しで、次の座標に関する討論に出席中のアイザール准将は何も言わなかったが、レイの意見に賛同するかどうかの挙手では、手を上げ、賛意を示した。

 最終的には、リウとルー少将が話し合いをして決定することに。

 「私は、レアを信じる。 レアは私だから。 レアが警告して来ないのだから、絶対大丈夫」

 言い切るリウ。

 ルー少将も、

 『そこまで言うのなら』

と最終的にレイの同意した。


 そして各艦には、通常空間に戻ると同時にシールドを張るように指示が徹底された。


 緊張の瞬間。

 亜空間遷移ワープを終えて、第四の座標に到着すると......

 何も無い空間であった。

 近くの巨大恒星の激しい活動の影響で、通信が途切れていただけであった。

 「恒星風が強烈な場所だな~」

 「これ程凄い恒星風は、初めてだ」

 艦隊の全員がそう感じる程、全艦が流される強烈な恒星風であったが、特に危険な状況では無かったので、流されるがまま、第五の座標に向けての行動を開始した。


 既にレアー号は、艦隊の到着を確認すると第五の座標に亜空間遷移していった。


 「次の座標の近くにはブラックホールが有るとのことです。  シュワルツシルト半径は、50億キロに及びます」 

 リウが古文書で得た情報を説明する。

 「ですから、レアー号からの連絡を待ってみましょう」


 巨大恒星の影響で、通信が途切れ易いことから、恒星風で流されて少し離れるのを待った。

 12時間後、漸く通信が出来るようになったが、レアー号からの通信は途切れたままであった。

 「ブラックホールの影響が有るのだから、通信は厳しいでしょう」

 「通信の方角がブラックホールの方角と近い場合は、シュワルツシルト半径に入った通信波が、ブラックホールに吸い込まれてしまいますから......」


 それらの意見を聞きながら、リウは、

 「もう少し待ってみようか? レアの判断力を信じて」

 そう意見を述べると、あと半日第四座標宙域で待機し続けた。


 すると、第六座標に到着したレアー号から、通信が入った。

 第五の座標を少し訂正する改良座標と共に。

 第五の座標は、単艦ならば問題無いが、艦隊だと一部の艦艇がブラックホールに近い位置となってしまうとのことであった。

 その為、第六の座標まで1個艦隊ずつ移動させる方針となった。

 先に第三艦隊が、改良版第五座標に向けて出発する。

 そして、続けて第六の座標へ。

 遅れて第四艦隊が第五座標へ。

 第五座標に到着すると、艦体が軋む音が聞こえる。

 『これが、ブラックホールの力なのか』

 結構距離は離れているが、それでもきしむのだから、自然の力は凄い。

 『先人達は、凄いなあ~。 座標もわからないのに、どうやってこの航路を進んだのだろう』

 ルー少将はそのようなことを考えていた。

 きっと、多くの犠牲者が出ながらの新天地を目指す旅だったのだろうなと、古に思いを馳せながら......


 第六の座標で、第四艦隊は第三艦隊と再合流した。

 ここは安定した星域であり、緊張の連続の航行が続いたので、半日休憩を取ることにした。

 リウは、レアと話をすると言うので、レイも同行してレアー号に向かう。

 未知の技術の塊である生体頭脳レアの進化は早く、既に言葉を喋るようになっていた。


 「レア、異常無い?」

 「無いよ。 リウも変わり無い?」

 「大丈夫だよ、ありがとう。 第六座標に直ぐ移動してくれて」

 「御礼は要らないよ。 レアはリウだから、レアの判断はリウの能力に基づくものだからね」

 「第七座標と第八座標も宜しくね。 第七座標が最後の関門かな? 多重恒星があるから。 第八座標には大きな危険は無かった筈」

 「ラージャー。 リウも無理しないで休める時は休むんだよ」

 その会話を横で聞いているレイは、

 『リウが2人居て、会話しているのと同じだな』

と思っていた。 



 半日の休憩が終わる頃、レアー号は既に第七座標に飛んでいた。

 旗艦ベルクに戻ったリウは、レアからの報告を待つ。

 多重星の星域で、恒星同士の複雑な公転軌道が座標に近い為、半個艦隊ずつの遷移が適切だとの連絡が入った。

 その後、第八の座標に到着したレアー号から、

 『第八の座標周辺には、危険なモノは無い』

と報告が有ったため、第三艦隊の半個艦隊から順番に、第七→第八座標へと遷移をして、第八座標周辺で合流することとなった。

 第三艦隊は、副司令が別の戦艦に移乗し、第四艦隊でもアイザール准将が別の戦艦に移乗して、半個艦隊ずつの移動を実施し、2日後には第八の座標で全艦艇が無事に合流し、艦隊の再編成も終了した。

 ここまで到着するのに、1週間掛かっていた。


 「いよいよだね」

 リウがみんなに言った。

 「第九の座標は、惑星ネイト・アミューが有るヤーヌス星系の外縁部だから」

 「次の遷移後、そのまま急速前進してネイト・アミューの制宙権を握り、陸戦部隊を降下させます」

 「逃亡する帝國の艦艇は、そのまま行かせてあげましょう。 イチイチ拿捕していては、行動に支障が出ますので」

 「ただし、軍艦には停止を命じ、従わない艦艇は拿捕、駄目なら破壊するということで、命令を統一してください」

 その様に攻撃態勢の指示を出して、最後の亜空間遷移の準備に入るのだった。



 一方、ルーナ大将率いるアルテミス王国艦隊は、新国家元首ジャン・フォー・プロシードより発せられた、ノイエ国艦隊との共同作戦の要請に従い、予定通り惑星ネイト・アミューに向けて出動し、通常の航路で向かっていた。

 その情報を入手した、テラ帝國のムーアー方面軍司令官ハンス・コーズウェイ大将は、帝國宰相ルーゼリア大公からの

 「三国同盟が軍事行動を開始。 皇帝陛下より『援軍は間に合わない、不利な状況ならば撤兵せよ』との命令が出ている」

との通信文を受けて、不快な気持ちであった。

 『帝國軍人であるのならば、一戦もせずに撤退など出来るものか』 

 会議に向かう途中、そのように呟いていた。


 「シヴァの8個艦隊、アルテミス王国の4個艦隊がこちらに向けて進撃中らしい」

 これから開かれる緊急会議で大将の到着を待つ、方面軍幹部達が、ヒソヒソと情報を交換している。

 そこに、コーズウェイ大将が到着した。

 「三国同盟の艦隊がこちらに向かっております」

 「閣下、どうなさいますか?」

 ムーアー方面軍の幹部達は、大将の決断を待っている。

 「アルテミス方面に出陣だ。 こちらに向かっている同盟軍の艦隊を迎え撃つ」

 コーズウェイ大将は、躊躇なく出撃命令を出したのであった。



 ヤーヌス星系周辺に駐留中だった帝國軍4個艦隊が、コーズウェイ大将以下、ムーアー方面軍の幹部の搭乗を待って、アルテミス方面に出陣したのは、ルーナ大将やリウ達が出動した4日後であった。

 会議では勇ましい言葉で決断したコーズウェイ大将であったが、内心は相当な不安を抱えていた。

 『噂の新型艦隊と対峙して、勝てる見込み無いのでは』

との。

 しかし、

 『一戦もせずに敵前逃亡したとあっては、大将という階級にある以上、近いうちに退役させられるだろう』

という個人的な理由から、迎撃を決断しただけであり、援軍が来ないと通告されていて、実のところ戦意は低かったのである。



 帝國軍が出撃して3日後、

 『アルテミス王国の4個艦隊が帝國の領域に入った』

と索敵に出ていた偵察部隊から連絡が入り、数時間後には戦闘に突入するだろうという状況になった、コーズウェイ大将麾下の帝國艦隊。


 その時であった。

 通信士官が一片の通信文を受信すると、コーズウェイ大将の幕僚達のもとに、慌てた様子で駆け込んで来た。

 「通信士官、どうした」

 「今、一片の通信文が......」

 慌てているので、言葉が続かない。

 その様子に気付いた大将が、

 「どうした。 落ち着いて話せ」

と指示する。


 「敵将、アーゼル少将より『惑星ネイト・アミューはノイエ軍が占領した』」との通信が届いております」

 通信士官が報告した。

 「なに〜」

 「意味不明だな」

 「本当なのか?」

などと幕僚達が次々と発言する。

 「偽の通信文では無いのか?」

 大将が通信士官に尋ねる。

 「真偽は不明ですが、帝國語と三国共通語の二か国語で送られてきました」

 「二か国語ってことは、アルテミス艦隊に向けての通信文でも有るのか?」

 幕僚に問い掛けるも、答えられる者は居ない。

 「ひとまず、惑星ネイト・アミューの方面軍司令部と連絡を取ってみろ」 

 コーズウェイ大将は、激しく動揺しながらも、そのように命じたのだった......



 帝國軍コーズウェイ艦隊がリウからの通信文を受信する半日前。

 リウは遠征軍に、最後の亜空間遷移の指示を出した。

 次の遷移地点は、ヤーヌス星系外縁部。

 中心惑星ネイト・アミュー迄は、ごく僅かの位置である。

 「遷移開始」

 全艦隊に命令したリウ。

 遂に、作戦の目的地に到達した瞬間であった。


 「全艦隊、目標惑星ネイト・アミュー。 制宙権・制空権を握れ」

 副司令コーダイ准将がリウの代理で命令を出す。

 第三、第四艦隊の約1000隻の艦艇が、ネイト・アミューに向けて猛進する。

 特に第四艦隊のルー少将直属の新型艦艇部隊100隻のスピードが速く、他の艦艇よりいち早くネイト・アミューの大気圏に到達し、艦艇が降下を開始していた。

 「我が艦隊は、星系に残存する警備部隊に備えましょう」

 レイがリウに進言し、第三艦隊は第四艦隊の大半の艦艇と共に、星系外からの攻撃に備えることとなった。

 「先輩からの連絡は?」

 「まだ有りません」

 「陸戦部隊の降下準備を開始します」

 矢継ぎ早に指示が出される。


 その時、

 「リウ〜。 軍港に停泊していた軍艦は全て破壊したぞ」

 ルー少将から連絡が入った。

 「司令部の建物も無力化したからな〜」

 「レアー号も一緒にいるんでしょ?」

 リウが尋ねる。

 「えっ。 あ~いるな〜。 シールド張ってるよ」

 「地上からの直接攻撃は、レアー号の強力なシールドが防いでくれるから安心して」

 「おー、分かった。 そっちの地上部隊とレッド・ドラグーンもこっちに降ろしてくれ。 一気に制圧するから」

 「ブルー・ドラグーンは既に活動を開始しているぞ~。 あっという間の司令部制圧は彼等のお蔭だ」


 ルー少将の依頼を聞いたレイが、

 「宇宙母艦3隻と母艦が搭載している強襲艦と小型戦闘艇、人型兵器モビルスーツ部隊を惑星ネイト・アミューに降下させます」

 リウの承諾を得て、部隊の降下命令を出した。

 「帝國軍の地上部隊は?」

 リウがルー少将に確認する。

 「今のところ、殆ど居ないなあ~。 司令部に残っていた帝國軍の連中は、抵抗しなかったというし」

 「第四艦隊の残りの400隻は、リウの指揮下に入るよ。 そっちにはアイザール准将が残っているから」

 ルー少将はそう言うと、通信が切れたのであった。

 

 異変に気付いた、ヤーヌス星系の警備部隊10隻が接近してきたが、敵だと気付いて第三艦隊に攻撃を仕掛けてきた。

 彼等は航続距離の短い警備艦艇なので、逃げ切れないと判断して、無謀な攻撃に打って出たのだ。

 即反撃を受け、一瞬で消滅した帝國軍警備部隊。


 地上では、ノイエ艦隊の急襲を受け、ネイト・アミュー人は呆然と事態の推移を見守っているだけであったが、帝國人達は、敵襲という初めての事態に、阿鼻叫喚の状況となっていた。

 方面軍司令部が直ぐ陥落したため、帝國軍は組織的な動きが出来なくなっていた。

 情報も錯綜し、大混乱の惑星ネイト・アミュー。

 軍事宇宙港は、ノイエ軍に占拠されていたが、民間宇宙港は通常通りであったので、本国に逃げようとする帝國人達が殺到していた。

 既に、上空には多数のノイエ軍艦艇が旋回しており、民間船の発着状況を監視中。

 地上にも次から次へと部隊が降下してきており、惑星上の要衝は占拠されつつあった。


 帝國軍装甲兵部隊は、漸く敵襲に気付き、迎撃の準備を始めていた。

 だが、方面軍司令部が即陥落したことで、指揮系統が壊滅し、情報収集が出来なくなった上に、一部の艦隊所属の装甲兵部隊は、艦隊の出撃に行動を共にしており、惑星上に残っている装甲兵部隊は5000人程度であった。

 「強靭な帝國軍装甲兵の実力、軟弱な三国の兵に目に物見せてくれてやる」

 息巻く装甲兵達。

 その言葉とは裏腹に、

 『敵中に取り残された焦り』

は相当のものがあり、戦意は低かった。

 既に、ノイエ軍は方面軍司令部で得た情報から、装甲兵部隊の拠点を把握し、完全包囲していた。


 やがてイルバール大佐とブルーム大佐が帝國軍装甲兵部隊の拠点に対し、

 「既に完全包囲した。 投降せよ」

 帝國語で呼び掛けるも、その返事は銃撃や小型ミサイルで返ってきた。

 「やむを得ないな」

 両大佐は目で合図して、拠点に対し、総攻撃を開始した。

 敵の兵数が多く、味方の損害を減らす為に、最初に巡航艦の艦砲射撃で徹底的に建物を破壊することとなった。

 完全包囲の範囲を広げて、味方の艦砲射撃に備える、レッド・ブルーの両ドラグーン特殊部隊。

 巡航艦が地上攻撃用の威力を抑えたミサイルを発射しながら、中性子ビーム砲で建物の周囲を深く掘るようにエグって焼き払い、帝國軍装甲兵部隊の拠点は完全に崩壊した。


 その後、宇宙母艦の牽引ビームで建物跡を引き剥がす。

 残骸が牽引ビームで次々と宇宙母艦に引き揚げられていく。

 その際、圧死した装甲兵がバラバラと落ちる。

 中性子ビームで焼かれた兵も多数出た。

 残酷だが、それが戦さである。

 降伏勧告を拒否した以上、宇宙艦隊時代の地上戦で生き残れる可能性は殆ど無いのだ。


 帝國軍装甲兵部隊の拠点は、大きなクレーター跡の様になったところで、特殊部隊が突入するも、生存していたのは、建物の地下最下層に逃げていた100名程のみであった。

 彼等は降伏し、地下通路を伝って逃げた兵が居ないか、捜索を開始しながら、陸戦部隊のロボット兵や人型兵器が帝國軍の遺体を次々と回収して運び出し、運搬用のコンテナに積込んでゆく。

 イルバール大佐は、

 「残酷だが、致し方ないな」

とブルーム大佐に話し掛けると、

 「帝國艦隊は健在だし、いつ連中が戻って来るかわからないのだから、この様なところで時間を掛ける訳にはいかないからな」

 強行手段を取らざるを得なかった理由を答えた。

 「降伏勧告を拒否した以上、致し方ない」

 「地獄行きは確定だからな、我々は」

 そう言って、苦笑いするイルバール大佐であった。


 地上の主な戦闘は1時間程で終了し、その後数時間で建物跡はキレイに片付けられた。

 地下に潜った装甲兵が数名居ることも明らかとなったが、帝國軍が再びネイト・アミューを占領しない限り、いずれ逮捕されるか降伏するであろう。


 半日あまりで、惑星ネイト・アミューの帝国軍残留部隊は殆どが降伏し、帝國の拠点は軍政民全てがノイエ軍に占領された。


 先ずリウは、旧ムーアー国の国民には『通常通りの生活を続けるように』との総司令官布告を発出した。

 巷では『戦乱が来た』と便乗値上げが相次いだが、戦闘が直ぐ終結してしまったので、目聡い人達は一儲けを諦めたのであった。


 ノイエ軍は、ロボット陸戦兵部隊に加え、ロボット治安維持部隊、クローン治安維持部隊も展開し、惑星ネイト・アミューの治安体制は、帝國占領時以上に引き締まった。


 ネイト・アミュー人達は、その様子を見て、

 「三国同盟は、帝國より技術的に進んでいると言われていたが、本当のようだね」  

 「軍だけじゃなくて、治安部隊や警察迄全部ロボットやクローンだとは......」

と少し驚いていたのだった。


 この時リウは、布告を追加した。

 『戦闘が終わると、帝國との国境は閉鎖となる。 帝國に戻りたい希望者は、今のうちに民間船に乗って、国境閉鎖迄に退去するように』

というものである。


 惑星ネイト・アミューには、旧ムーアー王国の宮殿に、現在生きている二世皇帝唯一の男の実子

 『レイザール・フォン・アーク』

が、帝國のムーアー王として半ば軟禁状態で据えられていた。

 しかし、人々から忘れられている様な存在であった。

 妹2人のどちらかが女帝として即位すれば、大逆犯の係累として処刑される身であったから、それも致し方ない。

 今回の三国同盟の軍事行動に際し、二世皇帝も帝國宰相も、レイザールの存在に言及することは無かった。

 それ程軽視されていたのだ。

 レイザール自身、運命を受け容れており、ただ処刑迄生かされているだけと、人生を諦めていた。

 毎日、学校に通うことも無く自主学習のみの勉強と、側近の者が作るご飯を食べ、午後に運動をするだけの日々。

 王宮の敷地から出ることは許されず、毒見役も置かれて居ない皇太子であり、それは毒殺される価値も無かったからである。


 そうした境遇のレイザールのもとにも、ノイエ艦隊が突如現れたことについて、情報が入っていた。

 入ったというよりは、ごく僅かの側近や警備の者が

 「三国同盟が攻めてきた」

と口々に騒ぎ、手荷物を整理して一斉に逃げ出したことで、事態を知ったのであった。

 足手まといになるレイザールを連れて逃げようなどという者は誰も居ない。

 そして、まだ12歳のレイザール自身、この緊急事態に対し、どうしたら良いのか、全く分からなかったのだ。


 帝國の宮廷に勤める者が全員逃げ出すと、旧王宮内は無人となった。

 そうなると、ネイト・アミュー人達が略奪出来る物は無いかと王宮内に入って来る。

 レイザールは、

 「このままだと、殺されるか、奴隷、若しくは慰み者にされてしまう」

ことに気付いた。

 彼は幸いにも、旧王族がイザという時の為に作っていたシェルターの場所やそこへの入り方を知っていた。

 その為、ひとまずシェルターに逃げて隠れて様子をみることにしたのだった。



 リウは、惑星ネイト・アミューを把握することに成功したので、艦隊の一部を駐屯させて、惑星の治安維持を図ると共に、ルー少将に艦隊に戻るよう要請した。

 帝國軍がネイト・アミューに戻って来る可能性を考慮してである。

 「先輩、お疲れさまでした」

 リウが慰労する。

 「俺は何もしてないよ。 スムーズに占拠出来たのは、リウがスカウトした特殊部隊が活躍してくれたお蔭さ」

 「戦いが終わったら、慰労してあげないとね」


 「ところで、帝國艦隊は何処にいる? 占拠した司令部に残っていた連中の話だと3日前にアルテミス王国方面に出撃したとのことだったぞ」

 「予想だと、アルテミス王国との国境付近に展開していて、間もなくルーナ大将の艦隊と交戦に入りそうだね」

 「それで、どうする?」

 「こっちに戻って来る可能性も高いから、ヤーヌス星系外縁部に迎撃の為布陣するだろ?」

 「うん、そのつもり」

 「それと、帝國、アルテミス両艦隊向けに通信文を送ってみるよ」

 「『惑星ネイト・アミューはノイエ軍が占領した』という一文だけを」

 「戦闘せず、連中に帝國へ帰るよう促す訳だな?」

 「そうです。 それでもこっちに来るのなら、アルテミス王国軍の新型艦隊で追跡して貰えば、ヤーヌス星系外縁で挟み打ちに出来るでしょ?」

 「分かった。 それでは迎撃体制を作って、戦闘に備えよう」

 ルー少将とリウはこの様な話をして、方針を決めたのであった。



 『惑星ネイト・アミュー占拠』の通信文は、アルテミス王国艦隊にも届いていた。

 通信士官が、ルーナ大将の旗艦レートーに集合していた幕僚一同にその内容を伝える。

 「リウは、無事に『道なき道』を通過することが出来たみたいだな」

 嬉しくなって、幕僚の末席に座っていた妻マリーに思わず『リウ』と名前だけで話し掛けてしまった。

 「大将閣下。 盟友とはいえ幕僚の揃っているところで、少将閣下を呼び捨てはダメですよ。 当軍では中将待遇の方なのですから」

 マリー・ルーナ少将に、そう咎められると、笑いが起きた。

 「帝國軍は、現在我々の前に布陣していますが、どのように動くと見ていますか?」

 副司令官のカール・ミュッケベルン中将が質問しながら、自分の意見を

 「小官は、帝國領方面に撤退すると思いますが、どうでしょうか?」

と述べた。

 「このまま撤退してくれれば最良だが、一戦も交えず逃げるのを由とせず、ネイト・アミューに戻ろうとするのではないかと思う」

 「そこで、ノイエ艦隊と挟み打ちにするために、我軍も足の速い新型艦隊2.5個艦隊で帝國軍を追跡しよう」

 「残りの艦隊は、補給部隊を守りながら、ネイト・アミューにあとから向かってくれ。 途中で撃破された帝國艦艇の武装解除をしながら、ゆっくり来てくれれば良いから」

 「副司令、残りの艦隊の方の指揮をお願いする。 私は追撃艦隊の指揮を采るので」

 ルーナ大将はそのように指示し、早速艦隊編成の変更に着手しながら、コーズウェイ軍の追撃体制に移行した。



 帝國軍コーズウェイ艦隊は、方面軍司令部からの応答が無いことで、事態が重大局面に陥っていることに漸く気付いた。

 『このままでは敵中に孤立し、帝國領に戻る道が閉ざされる』

 『目前のアルテミス王国艦隊と接触する迄、3時間程度しかない』

 そのように考え、戦線離脱を決断したコーズウェイ大将。

 「小癪なノイエ艦隊に、一撃加えてからで無ければ、撤退など出来ん。 4個艦隊も預かっているのに、ただ逃げただけでは物笑いだ」

 コーズウェイ大将は、内心と裏腹に、強気な発言のままであった。

 幕僚達が直接帝國本土方面に撤退することを薦めたにもかかわらず、惑星ネイト・アミューに居るノイエ軍に一撃を加えてから撤退する方針に決こだわり、結局総大将の意見の通りに決した。


 転進したコーズウェイ軍であったが、惑星ネイト・アミューに向かう途中で、アルテミス王国艦隊の新型艦艇に追い付かれてしまった。

 追い付かれる度に、無防備な後方部隊が集中砲火を浴び、大破する艦艇が続出する帝國軍。

 しかし、反転して反撃に出る余裕は無い。

 反転する瞬間に半数の艦艇が沈められてしまうからだ。

 『これが、奴等の新型艦艇の性能か。 速度が違い過ぎるから、戦いで犠牲が出た隙に、一時的に引き離しても、直ぐ追い付かれてしまう』

 先の大戦で、最終的に帝國軍が敗北するに至った、その性能差を初めて実感したものの、時すでに遅し。

 「ひたすら、前進するしか無い。 とにかく全速力でネイト・アミューへ向かうのだ」

 叫ぶように全艦隊に指示し、各艦も必死でそれに従う。


 コーズウェイ大将は、最初から真っ直ぐ帝國領に向かって逃げれば、半数は逃げ切れたのだろうが、ネイト・アミューに向かったことで泥沼に嵌ってしまっていた。

 大将も既に自身の判断が間違いだったことに気付いていたが、最早ひたすら逃げ続けることしか手段が無くなっていた。

 追い付かれる度に、100隻ぐらいが大破や航行不能になって戦力を消耗していくコーズウェイ艦隊。

 犠牲が出ることで、航行不能艦が進路の妨害となって、アルテミス艦隊の追撃速度も落ちるが、それをかわすと再び加速し、また追い付かれて攻撃を受ける。


 アルテミス艦隊のルーナ大将は、

 「傷付いた敵艦を完全撃破する必要は無い、そのまま放っておけ。 とにかく、後尾に喰らいついて、出血させ続けることが大事だ」

と的確な指示を出していた。

 その結果、ヤーヌス星系外縁に到着する迄に、十回も同じことが繰り返された結果、コーズウェイ艦隊の艦艇は1000隻程度と、出撃時と比べて戦力が半減してしまっていた。


 

 アルテミス王国艦隊の戦況は、ネイト・アミューに近付くにつれて、ノイエ艦隊でも詳しく把握出来る様になっていた。

 帝國艦隊が真っ直ぐ帝國領方面に撤退せず、ネイト・アミューに向かったことで、戦力を磨り減らす結果になっていることや、ルーナ大将の艦隊が帝國艦隊の最後尾を補足し続けていることも完全に把握していた。


 リウとルー少将は、ヤーヌス星系外縁部で900隻の艦艇を布陣し、帝國艦隊の足を止める万全の態勢を整えていた。

 「帝國艦隊は、撤退の方向を誤ったね」

 「新型艦艇の速力を知らなかったからだろ? 致し方無い結果じゃないか?」

 「もし、帝國軍の指揮官とリウが同じ立場だったら、どうする?」

 「うーん、難しいよね。 帝国軍の指揮官で4個艦隊預かっていたら、一戦交えないと帰国出来ないかもね」

 「捕らえた帝國軍の指揮官によると、二世皇帝は不利なら撤退するように指示していたらしいぞ」

 「そうなんだ。 だったら撤退するよ、私なら」

 「だって、これ以上戦力を消耗したら、流石のテラ帝國でも、保有戦力的に不味いでしょ? 三国同盟と対峙する為の最低ラインを割り込んでしまうよね」

 「4個艦隊が壊滅した後、直ぐに三国同盟が帝國を滅ぼそうと、全力を出したら、多分テラ帝國は崩壊するよ」

 「ただ、テラ星系の人達は、地球第一主義で他国の風下に立つことをよしとしないから、その後は長い戦乱になっちゃうだろうけどね」

 リウとルー少将は、帝國艦隊の到着を待つ間、この様な話をしていたのであった。



 哨戒活動中の部隊から、

 「帝國艦隊発見。 接近中」

との連絡が入ったので、リウとルー少将は麾下艦隊に、一点集中攻撃の主砲斉射準備を指示した。

 スクリーンには、千近い光が映し出され始める。

 接近中の帝國艦隊である。

 更にその奥には、ビーム砲の光らしい閃光も見え始めた。

 追撃しているアルテミス艦隊と見られる。


 やがて、索敵担当士官から、

 「敵艦隊、間もなく射程距離に入ります」

 「5・4・3・2・1」

 「射程距離に入りました」

 その声の瞬間、

 「主砲斉射」

 リウとルー少将が同時に各艦艇に指示を下した。

 まばゆい中性子ビーム砲の光の束2筋が、帝國艦隊に向かって突き刺さる。

 大きな爆発の明るい光が、幾つも発生する。

 帝國艦隊からも光が幾筋か放たれたものの、バラバラの為、最前列に並んだ防御の固い戦艦のシールドで弾かれる。

 再び、ノイエ艦隊から光の大きな束が2筋。

 帝國艦隊は更に大きな閃光に包まれる。

 後方から迫って来るアルテミス艦隊からも大きな光の束が幾つも放たれ、帝國艦隊の後方に位置していた部隊が大きく爆発し続ける。


 コーズウェイ艦隊は、足が完全に止まり、挟み打ちにされたことで、急速に戦力を消耗してゆく。

 コーズウェイ大将自身も、当人が気付いた時には、エネルギーの波に体が飲み込まれ蒸発していた。

 総旗艦がエネルギーの渦の中に消滅したことで、残存の帝國艦隊はネイト・アミューへの進撃を放棄し、必死に帝國本土方向へ転進し、逃走を図る。

 ノイエ艦隊とアルテミス艦隊は、逃げる帝國艦隊の残存部隊をヤーヌス星系外縁部から追い払う為、一定の追撃をしたが、途中で打ち切り、遂に合流したのであった。


 「ルーナ大将、ありがとうございます」

 リウがスクリーン越しに挨拶をする。

 「リウも無事に到着出来て良かった。 『道なき道を行く作戦』だったから心配していたぞ」

 「とりあえず、惑星ネイト・アミューに降りましょう。 話はそれからで」

 リウがそのように提案したので、ネイト・アミューの軍事宇宙港に向かうこととなった。



 『水の惑星』と称されるネイト・アミュー。

 地球テラ以上に美しいとも表現され、惑星の直径約8000キロとテラより二回り大きく、人口約80億人を抱える。

 艦隊戦が行われている間にも、ノイエ軍によって続々と治安維持の対策が取られており、既に惑星上には陸戦兵20万、治安維持ロボット、クローン500万体が配置されていた。

 特殊部隊のレッド・ドラグーン、ブルー・ドラグーン両部隊は、リウの指示で捕虜となった帝國人の帰還手続きを進めていた。

 「この領域の統治官を兼務するアーゼル少将から、帝國人は速やかに帝國へ帰還させるよう、特別な配慮への指示が有った。 間もなく国境が閉鎖されるので、帝國方面に向かう民間船に出来るだけ乗って帰国するように」

 帝國の捕虜にそのように説明し、家族が居る者はそれらの者が全員集合した時点で、帝國へ向かう民間船に乗せて順次出発させていた。

 その為、艦隊戦が終了した時点で、惑星占領時に捕虜となった帝國人は、大半が帰国の途についており、惑星上の帝國人はほぼゼロとなっていた。


 最初の攻撃で一部破壊されたものの、応急修復された軍事宇宙港には、リウの旗艦ベルク、ジョン・ルー少将の旗艦クレアシオン、ルーナ大将の旗艦レートーが着陸し、レアー号が3隻の周辺をにシールドを張って、ここを当面の間の司令部とすることに決まった。

 戦艦クレアシオンで、両艦隊の幹部が集合することとなり、リウやレイ、パルトネール大佐の他に、アルテミス王国軍のルーナ大将、リヒター中将、ルーナ少将の3名がルー少将のもとに集まって来た。

 「無事合流出来て良かったです」

 リウが代表して挨拶をし、

 「先ず、三国それぞれに作戦成功の報告をしましょう」


 全員が指揮デスクの椅子にズラリと座って、ノイエ軍宇宙艦隊司令部、アルテミス王国宇宙艦隊司令部、西上国のヒエン国務長官へと続けて、報告をした。

 

 一通り報告が終わると、

 「初めまして、ジョン・ルーと申します」 

 ルー少将が、アルテミス王国軍の幹部に挨拶をした。

 「貴方がルー少将ですか。 リウから話を聞いていますよ。 リク・ルーナです、よろしく」

 ルーナ大将は挨拶を返すと、

 「一緒にこちらに来ている幕僚は、参謀長のリヒター中将、今後ネイト・アミュー駐留軍司令官になるマリー・ルーナ少将です」

と紹介した。

 「ルーナ少将は、大将閣下の?」 

 「そう、妻です。 数年間はこの惑星で一緒に滞在しますので、よろしくお願い致します」

 マリーは自己紹介したのであった。


 「私の役目も、これで終わりかな?」

 リウは安堵の表情で、突如そう呟いた。

 「あとは、自分のやって来たことの後始末、 この占領地の人々が安心して暮らせる様に経済を活性化し、政治的にも安定させること」

 「それが、私の短い残りの人生の宿題だね」


 「停戦の実現は?」 

 ルー少将が尋ねると、

 「それは、私だけじゃなくて、みんなが考えることだよ」

 「今回帝国軍が更に戦力を減少させたことが、停戦に繋がるかもしれないよね。 国力も軍事力も逆転したのだから」

 リウはそう答えると目を瞑るのだった。


 「ルー少将。 これからは貴方がノイエ軍を引っ張って行くのですよ。 リウさんにその役目をこれ以上負わせるのはダメですからね」

 マリーはルー少将を窘めた。

 「私は二十年前から、リウさんを知っていますが、これ程疲れた表情をしているのを初めてみました。 ノイエ軍の皆さん、少しリウさんを重圧から解放してあげて下さい」


 「ですから、ルー少将。 まだネイト・アミュー以外の周辺星域の占領が行われていませんので、その指揮は少将が采るということになります。 ルーナ大将とリヒター中将が手伝ってくれるそうですから」

 「私は、リウさんとそちらの女性の大佐さんと、女性だけで惑星ネイト・アミューの新体制づくりに専念しますので」

 「リヒター中将、今の話にはリウさんの秘密事項が含まれているので、当面口外しないようにね」

 マリーは女性陣で統治体制を作ると宣言した。


 「参ったなあ。 マリーに全部仕切られちゃった」

 ルーナ大将が苦笑いする。

 「リウ。 アーゼル財閥本店から頼まれていた輸送品が、あとから来る補給部隊に民間補給船3隻を混ぜて運んで来ているよ。 民間航路安全維持の為に至急必要だろうから、特別に持って来たよ」

 

 「大将閣下、ありがとうございます。 これからは統治者として、軍務から離れますので、全域の占領が終わりましたら、援軍の体制作りをお願いします」

 「それでは、先輩の指揮のもと、残りの星系の占拠もお願いしますね」

 リウは、久しぶりの笑顔を見せた。


 「しかし、この惑星は本当に美しいですね。 何処も彼処も、水が豊富で青色に覆われている」

 ルーナ大将の最側近である参謀長のリヒター中将が、スクリーンに映し出されている惑星ネイト・アミューの景色を見ながら、感想を述べた。

 惑星の表面面積の7割以上が水に覆われている。

 経済的にはかなり遅れているのに、人口が多いのは、その美しさに有るのだろう。

 「全く同感です。 これ以上戦乱に巻き込まれないように、安定させないといけないですね」

 レイが決意を示すのであった。


 その後、ルーナ大将やルー少将は、残りの数箇所の惑星の占拠計画を話し合い、リウはレイとマリー・ルーナ少将、パルトネール大佐等と今後の統治について、討議をした。



 暫くすると、双方向での会話が出来ない超光速通信が入電した。

 最初は、新国家元首のジャン・フォー・プロシードからであった。

 「皆さん、遠征ご苦労様です」

 「帝國艦隊は3個艦隊が撃破され、残存部隊は帝國方面に逃走したと聞きました。 完全勝利おめでとう」

 「占領した地域の統治は、当初の予定通りアーゼル中将以下の軍政でお任せする。 専制政治に馴染んでしまっている地域ですから、民政に移管するのは当面無理でしょう」

 「それでは、よろしく」

 そう話すと、通信は切れた。


 「フォーは今のところ、意外と大人しいな」

 ルー少将が、いつも通り感想を述べる。

 「目障りなリウが遠くに行って帰って来ないから、安心なのだろう」

 「彼には彼の思惑が有るのでしょう。 でも私は政治の世界には絶対に行かないので、彼のライバル心の対象では無くなりますよ、今後は」

 リウは穏やかな表情でそう述べた。


 続いて、2本目の超光速通信はシヴァ丞相からであった。

 「作戦が無事成功して良かったです」

 「ウォルフィー艦隊は、こっちで様子を見ながら暫時撤退させるので、気にする必要は無いですよ」

 「帝國軍も今回の敗戦で保有戦力が5000隻を切ってしまい、暫くは内政に注力するしか無い。 帝国の侵攻の可能性はほぼ無くなったと言えるでしょう」

 「我々も大戦の被害からの復興に力を入れていきましょう」

 それで通信が切れた。


 「丞相には、何のメリットも無いのに、金だけ掛けて大軍を動かさせてしまって申し訳ないなあ」

 ルー少将の感想であった。

 「帝國と長年帰属を掛けて小競り合いが続いていた、中間線の辺境部に有る中規模のトオーン星系が、『こっちの占領が成功すれば』との条件付きで帝國から寝返る予定なので、手ぶらで帰る訳では無いですよ」

 リウが裏事情を説明し、

 「それでは、皆さんお疲れさまでした。 今日はひとまず休みましょう。 星系周辺に駐屯中の各艦隊も交代で休みを取らせながら」



 翌日。 

 惑星ネイト・アミューは、完全に平常を取り戻した。

 ミュッケベルン中将率いる、アルテミス王国艦隊の残りの部隊は、ネイト・アミューに向かう途中で、戦闘で破壊され各所に放置されている帝國軍の大破した艦艇から生存者を救出しながら、随時捕虜にして徐々に前進していた。

 その為、到着迄もう一日掛かると連絡が有った。

 ルー少将は、ヤーヌス星系から近い小星系の制圧を進めるべく、第四艦隊を率いて出撃。

 第三艦隊は副司令官コーダイ准将が率いて、ヤーヌス星系の警戒に従事し、アルテミス王国艦隊は、星系に駐屯したまま一日休憩を取ることになった。

 既に敗北した帝國軍の残存部隊は、旧ムーアー国領域から脱出し、そのまま帝國本土へ撤退し続けていることが、追尾している偵察部隊により確認されていた。


 リウは、レイと副官のカイキ大尉、ラートリー中佐を護衛に連れて、惑星各所の視察に出発した。

 治安が安定している軍事宇宙港周辺だけであったが、今後統治するこの惑星の雰囲気を味わっておきたかったようだ。

 先ず、旧帝國軍の方面司令部の建物を確認したが、

 「ここには帝國軍の各種情報が残っています。 その能力を把握する為に、徹底調査することにしましょう」

 リウはそのように指示した。


 次に、先日完全破壊された装甲兵部隊の拠点を訪れ、花束を供えたが、感想を述べることは無かった。

 その後、帝國の統治部門の建物や民間部門を確認して周ったが、今後の統治に使う場所として気に要らなかったようで、特に指示を出すことは無かった。


 最後に、旧王宮を訪れた。

 流石に、王国時代の王宮跡なので、広大な敷地であったが、建物は老朽化が激しく、略奪が発生したこともあり、雑然としてボロボロであった。

 「酷い状態だね~。 『盛者必衰夢の跡』って感じだなあ」

 リウが感想を述べる。

 「新しい政庁や軍の施設を作るのならば、やっぱりここかな? 所有者が帝國で、もう居ないから、占領者の所有権に出来るからね」

 「王家の大事な施設は残して、それ以外は取り壊しましょう。 それならば、王家に忠節を持っている一部のネイト・アミュー人も理解してくれるでしょう」

 レイが賛同した。


 すると、

 「センサーに生物反応がありますね。 地下ですが」

 ラートリー中佐が探査システムを確認しながら、警戒心を示した。

 「誰か隠れているのかもしれません。 確認しましょうか? 帝國軍の装甲兵が数名逃亡しているようですから」

 レイが光子銃を取り出しながら、地下への入口を探し始める。

 「私も行くよ」

 リウが好奇心で目を輝かし始めた。

 『リウ様は、こうなると止めても聞かないからな~』

 レイはそう思い、

 「それでは、司令官。 私とラートリー中佐の間に居て下さいね。 副官はラートリー中佐の後ろで」

 探査装置を確認して、地下への階段を見つけて降りたところ、床下の直下に生物反応が強く出た。

 「何処かに、この下へ降りる入口がある筈ですが......」

 レイとラートリー中佐が周囲を探し始める。

 リウは副官に、

 「大尉は、私の後ろに隠れていて」

と指示し、銃を取り出して2人の様子を見守る。


 暫くしてレイが、突如銃を構えると、壁に向かって2発放った。

 そして壊れた壁を剥がして、中に隠されていたスイッチを入れると、機械音がし始めて、何かの装置が動き始める。

 『ガーガーガー』と古い機械音。

 音が止むと、床下が開き、階段が現れたのだ。

 銃を構えたまま、レイが突入する。

 ラートリー中佐とリウ、カイキ大尉が続く。

 階段の奥はシェルターとなっていた。


 「古いシェルターだな」 

 レイが呟くと同時に、光子銃を1発放った。

 明るい光に一瞬照らされた人影。

 レイとラートリー中佐が

 「動くな」

と人影に向かって、大声で警告する。

 「ゴニョゴニョゴニョ」

と、帝国語らしい小さな声が聞こえたので、

 「出てきなさい」

 レイが帝国語で命令する。

 すると、両手をあげて、子供が出て来たのであった。


 「子供?」

 リウが帝国語で話し掛ける。

 「はい、帝国人です」

 三国共通語で返事があった。

 「三国共通語話せるの?」

 リウが確認する。

 「日常会話程度なら」

と答える。

 副官が持っていた小型照明で周囲を照らす。

 その顔は非常に汚れていたが、リウは、

 「シンキ皇妃??? そっくりだね」

 リウは、その子供に問い掛けた。

 帝国に居た時、帝国イチの美女と言われていたシンキのことを知ったので、覚えていたのだ。

 「僕はレイザールと言います。 シンキは母です、幼い頃に処刑されてこの世におりませんが」

 「どうしてここに、居たの?」

 「ここは、元王宮ですが、帝国も王宮として利用していたのです。 三国同盟の攻撃でここで働いていた帝国人は逃亡し、略奪の暴徒が押し寄せて来たので、ここにずっと隠れていました」

 「ですから、汚くて臭くてスイマセン。 連れて行かれる前に、ここのシャワーを使わせて下さい」

 覚悟を決めた様子で話すレイザール。

 「わかりました。 ここを出ましょう。 もう治安は落ち着いていますので」

 リウはそう言うと、一緒に地上に出たのであった。

 そして、レイザールの案内で王宮内に入り、シャワー室に行ってレイザールが身支度を整えるのを待った。

 「司令官、あの子をどうしますか? 今度出発する帝国行きの輸送艦がありますが」

 副官がリウに尋ねる。

 「戻ったら、もう少し私があの子と話してみます。 私の予想が正しければ、送り返すと処刑されてしまう境遇なのです。 あの子は」

 リウは3人にそう説明した。


 レイザールは準備が出来て、4人の前に現れた。

 子供ながらも、驚く程の優れた容姿を持った子であった。

 「見違えたな~。 驚いた」

 副官が素直な感想を呟く。

 「旗艦に戻りましょう」

 レイがレイザールの持ち物や衣服を調べながら、リウに帰還を薦めた。


 旗艦ベルクに戻ると、子供連れの司令官の姿に乗組員は一様に驚いていた。

 そのまま指揮デッキ迄レイザールを伴い、じっくり話をすることにしたリウ。

 「そこに座って」

 リウがレイザールに指示する。

 ラートリー中佐とカイキ大尉も適当に座った。

 リウが質問を始める。

 「貴方の名前はレイザール・フォン・アーク、年齢は12歳ね」

 「はい」

 その名前を聞いても、ラートリー中佐と副官がピーンときていないようなので、レイが説明を加えた。

 「二世皇帝、唯一の男子ですよ」

 驚きの顔に変わった2人。

 そこからは、リウとレイザールの会話を息を呑んで聞くこととなった。


 「今後、貴方はどうしたい? 帝国に帰りたい?」

 「僕は、帝国に帰ったら殺されます。 それが僕の運命なので、諦めていますが」

 「お母さんが、皇帝弑逆事件の首謀者の一人だものね」

 「僕には妹が2人居ます。 どちらかが女帝になるまで、万が一に備えて生かされているだけなのです」

 「三国同盟にとって、帝国は憎い存在ですよね? 先の大戦で大虐殺をしていますから......」

 「僕が二世皇帝の実の子だというのは変えられない事実です。 今回処刑されるのなら、それを受け容れます」


 「何だか暗い考えだね。 レイザールは」

 「紹介して居なかったね。 私は今回の遠征軍の司令官、リウ・アーゼル」

 「今の話を聞いて決めました。 レイザールを帝国に送り返すつもりはありません」

 「そして、先の大戦の責任をレイザールに押し付けるつもりもありません。 あくまで開戦の責任は二世皇帝にあるのですから」

 「父の罪を子が背負うような時代では無いでしょ? まして聞いたことも無い程、冷遇されているのにね」

 「中佐、大尉。 今の話はここに居る者だけの秘密ですよ。 もちろん秘密とは、レイザールが二世皇帝の子であることです」


 「レイザール。 今から貴方は私の養子です」

 「レイも了解でイイかな?」

 「養子は嫌ですか? レイザール」

 「嫌ではありませんが、僕なんかを養子にしても何の価値もありませんよ」

 「価値が有る無しで、人生が決まるものでは無いでしょ?」

 「レイザール。 せっかく、人と違う変わった星のもとに生まれてきたのだから、もう少し楽しく生きてみようと努力してみたら?」

 「今回、私達に保護されたことで、貴方の人生は大きく変わったのです。 まだ子供なのに、人生諦めるにはまだ早過ぎるよ」

 リウは、珍しく説教めいたことを言った。

 そして、

 「養子になるの? それとも嫌なの?」

 「はい、よろしくお願いします」

 「よろしくね。 レイザール」

 リウは笑顔を見せると、レイザールはドキッとした。

 『凄い綺麗な笑顔』


 レイザールはリウに質問した。

 「司令官は、女性ですよね? そうなると養母ってことになりますから」

 この質問に、ラートリー中佐とカイキ大尉がびっくりしていた。

 「子供は、鋭いね」

 リウは、ラートリー中佐とカイキ大尉の方をチラリと見ながら、レイザールの質問にその通りと答えた。

 「中佐、大尉。 今迄隠していてゴメンなさい」

 「正式に中将になったら、2人にも打ち明けるつもりでしたが、私は女性です。 さっき思わず養子にする承諾を参謀長、レイにも求めてしまいましたが、レイカーと私は夫婦です」

 リウは、2人にも秘密を打ち明けたのだった。

 もう秘密とは言えないぐらい女性っぽくなっていたが。


 「ところで、レイ。 レイザールを養子にする件、イイかなあ?」

 『皇帝の血筋に繋がるレイザールに、今後何らかの価値が出るかもしれないと考えたのかな? 他にも心が動かされた何かがある感じだ......』

 「反対はしません」

 レイは、そう答えた。


 こうして、レイザール・フォン・アークは、リウとレイの養子になることがほぼ決まった。

 リウのこの判断が、今後の2人の人生にどのような変化をもたらすのか。

 それは当たり前であるが、この時点では誰にも分からなかった。



 通常の3〜4話分の長編です。


 

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