第50話(別荘にて)
景勝地で過ごすリウ達。
新たな出征に向けての準備も進んで行くのであった。
渓谷での滞在2日目。
この日は、リウ達が滞在している別荘地が、VIPの会合の場となる為、周辺は朝からざわついた雰囲気に。
しかし、別荘の敷地内は薄い朝靄の中、静けさに包まれていた。
リウは、レイと一緒に寝ていたベッドから起き上がり、窓を開けてテラスに出た。
渓谷の美しい景色の中、テラスで1人佇むリウ。
窓の開く音で起きたレイは、その姿に見惚れていた。
『この瞬間が、ずっと続いて欲しい』
そう思いながら......
レイが起きたことに気付いたリウが振り返る。
「レイ、おはよう」
綺麗な風景が、リウの笑顔をいつも以上に美しく見せる。
「リウ、おはよう」
いつもと異なるレイの挨拶に、少しドキッとするリウ。
ベッドから出て、下半身にバスタオルを巻いたレイが、テラスに出てきて、2人並んで景色を眺める。
やがて手を繋ぎ、見つめ合う2人。
『ずっと、このまま......』
唇が重なり、レイはリウを抱きしめるのであった。
ダイニングでは、ロボット達が朝食の準備や片付けを行っている。
家庭ごとに起きる時間も違うので、朝食をもう食べ終わった家族も居れば、まだ部屋で過ごしているリウとレイのようなカップルも居る。
やがて、リウとレイもダイニングに現れて、遅い朝食を摂り始めた。
「今日は会合有るから、こんなに遅い朝で大丈夫なの?」
エミーナに心配されるリウ。
1階のテラスでは、エミーナの夫であるリョウとディオ、シュウゴの3人が朝食後のコーヒーを飲みながら談笑している。
「ちょっと寝坊しちゃったかな?」
少しニヤけながら話すリウ。
「リウの顔を見たら、理由が分かったよ。 お盛んで羨ましいわね」
レイの方も見ながら、エミーナがため息混じりに言った。
「うちなんか、子供が多過ぎて、そういうこと出来ないもの」
周りを見渡すとジョンは、サーラと2人煖炉の火を見つめたまま、何か楽しそうに話している。
「エミーナ、子供達は?」
リウが尋ねると、
「庭で遊んでいるよ。 側近達に見てもらっている」
「いくら永遠の20歳って言っても疲れるから」
歳を取らないエミーナ。
「レイ、そう言えば埋め込んだのでしょ? 不老装置」
「リウ、その件私は今でも反対だからね」
遅い朝食を終えたリウとレイ。
いよいよリウは会合に出なければならない。
ルー少将がリウに確認する。
「今日来る方達は、この別荘に来るのかい?」
「隣のリゾートの方だよ。 ここだと、ちょっと狭いから」
「先輩、お昼ぐらいに戦艦クレアシオンに乗って待ってて。 ゲストの見学会を実施するから」
「丞相、エリーさん、そろそろ会合に向かいましょうか?」
リウはそう2人に話し掛けて、少し離れたリゾートのホテル棟に向かった。
既に隣のブライドフュールリゾートには、所有者であるアーゼル財閥の総帥ラーナベルト・アーゼル、ASJグループのトップであるナタリー・シュンゲンCEO、SAV社のナミュール・シン会長が到着していた。
「これは、これは。 アルテミス王国並びに西上国を代表する企業のトップをお迎え出来て、非常に光栄です」
「ここのリゾートにとって、大きな箔が付くことになるでしょう」
総帥が賓客に挨拶をしていた。
「こちらこそ、総帥と会長にお会いできて、光栄ですわ」
とCEO。
「総帥、お元気そうで何よりです。 儂も総帥と同世代だから、健康第一でやっておりますぞ。 CEOはまだまだお若いから羨ましいですわ。 我等年寄りは仕事以外のことにも留意せねばならないからの〜」
最長老の会長が挨拶を返す。
「今回、遠路はるばるこちら迄来て頂いた訳は、孫娘のリウから今後の三国同盟の経済活動について、重要な話があるということだからです」
「お二方にも大いに興味を持って頂ける話だと思いますよ」
総帥が会合のテーマを話す。
「更に、三国の宇宙艦隊の再整備と、新技術の導入についても、建艦を請け負っている我等にとって、大事なお話が有りますから、よろしくお願い致します」
「それでは、別荘から来る3人が合流して、準備出来次第、始めましょうか?」
総帥が、会長とCEOに会合の開会を告げたのであった。
リウとシヴァ丞相とエリー・シュンゲンが、別荘を出てリゾートの建物に到着すると、
「既に、3名の賓客が到着しております。 どうぞこちらへ」
と建物内で一番大きな最上階の部屋に案内される。
この部屋は、最も高級なスイートルームであるが、この建物内には会議室などの施設が無い、純粋な宿泊専用超高級リゾートなので、スイートルームが会合の場所に選ばれていた。
建物の外側は物々しい警備体制が敷かれていたが、中はシーンと静まりかえっていて、少し不思議な感じだ。
リウと丞相とエリーの3人は、最上階の5階に上がり、会合会場となっている部屋に入ると、総帥と会長とCEOが同じソファーに座って、雑談をしており、それぞれの側近達が別室に控えている形となっていた。
「おお、これはこれは丞相閣下。 護衛も側近も無しで来られるとはビックリしましたぞ」
シン会長が声を掛ける。
「会長、遠路はるばるありがとうございます。 ここは最強の盾が守っている場所なので、護衛は要りませんよ」
丞相が答える。
「CEO、お疲れ様」
エリーが姉に話し掛ける。
「CEOは止めてよ~。 実の姉妹なのだから」
緊張感の有る場だけど、普段通りでいこうとナタリーが提案した。
「そう言えば、AA様が来ていらっしゃらないようですが」
丞相が確認すると、
「遅れて到着するとのことですよ」
総帥が答えた。
「おお、リウちゃん。 相変わらず美しいの〜。 総帥と仲直りしたのかい?」
シン会長が、リウに話し掛ける。
「いえ、全くです。 シン会長」
リウが苦笑いしながら、答える。
「まあ、それも仕方ないかの〜」
「それでは、皆様揃ったようなので、会合を始めましょうか?」
リウが挨拶をして、会合が始まった。
「この度、漸く新設計の艦艇整備計画に、ノイエ軍も加わることになりました」
「その為、JJ・R・アーガン社とアーゼル財閥が共同開発した、新しい人工頭脳を各艦艇に搭載してゆく事になります」
「ただ、現状では生産能力に限りが有るので、年間500隻分が限界です。 ですから、新造艦に搭載を優先し、建艦済みの艦への搭載は、増産体制が整ってからの後回しという形でお願い致します」
リウが先ず説明と要請を行った。
「次に、ASJグループが新型艦隊の建艦に加わります。 現在はフル稼働で建艦して頂いていますが、今後はもう少しゆとりを持って建艦出来るようになるでしょう」
とリウが語り、SAV社の承諾を求めた。
「うちも、従業員からだいぶ不満が出ていたから、少しは休みをあげられそうじゃの」
シン会長はそういう言葉で、賛成の意を示した。
「シン会長、御承認ありがとうございます。 当社でも年間100隻程度ですが、建艦に加わらせて頂きます」
ナタリー・シュンゲンCEOが御礼の言葉を述べた。
「新しい人工頭脳は、今ここの防衛を実施しているレアー号に搭載の生体頭脳より能力は劣りますが、今迄の人工頭脳と比べて処理能力は約3倍となっており、搭乗人員を旧型艦の半分以下にすることも出来ます」
「コストも低く抑えましたが、エルフィン人のご協力が無ければ、達成し得なかっただろう位の、非常に高い性能を持たせることが出来ました」
「AA様、並びにJJ・R・アーガン社の皆様、本当に無理な要望を叶えて頂き、ありがとうございます」
リウはそう言って、総帥に頭を下げたので、出席者全員が驚いた。
「流石、お孫さんだ。 私が総帥で無いと気付かれるとは」
そう言って、総帥の姿の人物は笑って答えを教えた。
「皆様、失礼致しました。 私がアーガン社のAA・アーガンです。 本来の姿でここに座ると皆様を驚かせてしまうので、今回は総帥のお姿をお借りしています」
「今日の会合では、私がアーゼル財閥のラーナベルト総帥の全権代理でもありますので、ご了承頂きたく思います」
と流暢に三国共用語で話したので、またまた全員がビックリした。
「100隻分をASJグループに建艦して貰う件については、財閥とSAV社から50隻分ずつ回す形でよろしいですか? シン会長」
AA・アーガン氏が申し出て、シン会長が同意し、決定した。
「もう一つの議題は、間もなく私が指揮を采って実施する、惑星ネイト・アミューなどの占領計画についてです。 水の惑星ネイト・アミューを中心に長期に渡り占領し、三国同盟側の領土とする予定でおります」
「また、テラ帝國が3代皇帝に代替わりすれば、女帝になるでしょうし、いずれは交易の再開も見込める情勢へと変化するでしょう」
「そこで、十年単位での先を見込んだ、ネイト・アミュー占領後の統治地域への先行投資をお願い出来ないかということです」
「今回は、ノイエ国、アルテミス王国共に統一政府の選挙中であるため、政治面からのお約束はまだ出来ませんが、アルテミス王国寄りの小星系を西上国とアルテミス王国に割譲する予定でいます」
「その星系を橋頭堡とし、小さな投資で構いませんので、将来を見据えた行動を取って頂けたら幸いです」
リウは、シン会長とシュンゲンCEOに、直接で無ければ極秘の軍事行動計画を漏らせないので、遠く迄来て貰う形となったのである。
「それでは、全てのピースが揃って完全完成した1号艦の戦艦クレアシオンへご案内致しましょう」
リウが、シン会長、シュンゲン姉妹、シヴァ丞相とAA氏を引き連れて、別荘地に停泊中の戦艦クレアシオンに向かう。
外装に、周囲の景色と溶け込むことが出来る光学迷彩機能も搭載されているが、これは新しい人工頭脳があっての機能である。
搭乗用のエレベーターで、艦内に入った6人。
先にルー少将と准将3人が搭乗しており、デモンストレーション用の操作を行う。
「無人での運航や戦闘も可能ですが、戦闘能力が大きく落ちてしまうので、現実的ではありません」
リウの説明が続く。
「新しい人工頭脳の能力として、搭載艦艇同士であれば、他の艦艇と完全同調した高速移動、同調した攻撃を行うことが出来ます」
「この機能によって、旗艦にベテラン将兵を集めて運航すれば、周囲の他艦艇は新人乗組員のみであっても、ベテランと同じ作戦行動が取れるようになるのです」
この様な説明を続け、案内役を終えてからリウは、
「新戦艦クレアシオンは、今からノイエ国軍第四艦隊の旗艦になります。 ですからルー少将、貴方に指揮キーをお渡しします」
その様なサプライズを発表して、艦隊の指揮を采るのに必要な、人工頭脳に差す旗艦用指揮キーをリウは手渡した。
「おーー」
みんなから起きる拍手。
ルー少将は、
「皆様の叡智と努力で完成に至った高価な旗艦です。 出来るだけ壊さないように、大切に乗ることにします」
そう挨拶したルー少将。
「総帥からの伝言です」
総帥の姿をしたAA氏がそのように発言したので、アイザール准将とレイが、
『えっ』
という顔をした。
「『総帥が私財を投じて建艦した100隻の新型艦艇、内訳はクレアシオンを含めた戦艦10隻、巡航艦20隻、駆逐艦70隻ですが、これをノイエ軍宇宙艦隊に寄贈する。 次の出征から使って貰って構わない』とのことです」
「そういうことで、総帥が寄贈した新型艦艇群は、ルー少将の部隊になります。 旗艦の乗組員以外は、特別な訓練を積む必要は無いので、出征の日迄に旗艦だけ極秘訓練して下さいね」
リウが説明を付け加えた。
ひと通り見学が終わり、戦艦クレアシオンから降りる前に、リウはシン会長とナタリー・シュンゲンCEOに、改めて遠路来て頂いた御礼を申し上げた。
「出征計画の部分が無ければ、こんなに御足労掛けずに済んだのですが。 本当に申し訳ありません」
「テラとの交易再開の可能性。 これは面白い話ですから、遠路来た甲斐が有りました。 勿論直ぐにというものでもありませんが、他社より早く準備出来るのだから」
とナタリーは言い、
「私とシン会長だけがここに招待されたというのは、譲渡される星系と本国間との星系間輸送を受け持って欲しいということでしょ? どちらも星系間輸送が祖業の企業ですものね」
流石に、リウの目的を見抜いていた。
「惑星ネイト・アミューを中心とした新領土の星系間輸送は、私の方で新会社を作りましたので、そこが実施します。 星系間輸送の警備企業の設立も合わせて行いました。 その先の部分をお二人の会社にお願いしたいのもあって、今回来て頂いたのです」
リウはそのように説明して、
「あくまで、帝國軍に勝って、無事占領政策に移行出来たらの話ですが」
「私もシン会長もね、リウさん、貴方に賭けて投資しているのよ。 今迄も、そしてこれからも。 ね、会長」
「まあ、そういうことじゃな。 リウちゃんは本来ならアーゼル財閥に利益をもたらすべき立場だろうに、そうはせず他の企業にも利益をもたらそうと考えているじゃろ?」
「総帥と関係が悪く、依怙贔屓無いからな、 リウちゃんは」
「だから、今後も仲直りしないでおくれよ」
シン会長はそう言って、ナタリーと笑うであった。
「せっかく、風光明媚な地に招待して貰ったから、儂は一泊滞在して、明日アーゼル財閥のラーナベルト総帥のところを表敬するかな。 CEOはどうするのじゃ?」
「私も一泊してから帰ります。 3番目の妹に1週間任せて来ましたから。 シヴァ丞相の船で惑星アルテミス迄送って貰いますわ」
と言い、リウに
「そういうことで、リゾートの方で滞在するわね。 ご招待ありがとうございます」
御礼を言って、搭乗用エレベーターを一緒に降りてから、戦艦の外で待っていた側近とリゾートの建物の方へ戻って行った。
リウはそのまま外で待っていると、艦内に居た全員が搭乗用エレベーターに乗って出て来たので、合流した。
「リウ様、今回の会合は終わったのですか?」
レイが尋ねる。
「うん、終わったよ」
「ところで、総帥の姿をした方は?」
「エルフィン人のAAさんだよ。 雰囲気が違うから元側近のレイなら気付いたんじゃない?」
「いえ。 全く」
「そうなんだ。 側近から離れて結構経っているからね~」
と言ってリウは笑うのだった。
「リウさん、私もひと晩ご一緒してもよろしいですか?」
総帥姿のAA・アーガンが声を掛けてきた。
「是非是非。 明日の送迎場所は、軍事宇宙港で良いのですよね? 部屋は別荘の方で準備してありますから」
「それで構いません。 特に護衛とかも要りませんので」
「じゃあ、別荘へ戻ろう」
リウが言うと、AA・アーガンは、総帥の姿からリウの姿に変身した。
「おお、リウが2人......」
「どっちが本物か分からなくなる」
「レイ、間違ってAAさんにキスしちゃダメだよ」
みんながざわつきながら、レイを冷やかす。
「これって変身なのですか?」
「いえ、光学迷彩を応用した技術ですよ。 実物の私に他人の姿を写し出しているだけです」
別荘に戻ると、沢山の子供達が不思議そうな顔をしている。
「リウちゃんが2人居る〜」
「双子?」
エミーナは目が点に......
「リウが戻って来たら、2人に......」
ここで、AA・アーガンが、
「私は偽物です」
と声を変えないで話したので、やっと区別が付くようになった。
「色々聞いてみたいことが有るのですが、食事とかは地球人と同じで大丈夫ですか?」
リウが興味津々で質問する。
みんなも集まって来て、2人のリウを囲むように座った。
「食事は同じで大丈夫ですよ。 私達は地球人とそれ程相違点があるという訳では有りません」
AAが答える。
でも、端から見ると、同じ人同士が喋っているので、不思議な感じだ。
リウは、AA・アーガンに沢山質問した。
「寿命ってどれぐらいなのですか?」
「200〜250年ですね」
「エルフィン人の人数は」
「500万人位です。 段々と減少しています」
「人口減少を防ぐ為に、超高度なバイオ技術で遺伝子をいじり過ぎた結果、逆効果となり、衰退はもう止められないのです」
「不老装置も、人口増加を目指して作られたものですね。 ずっと若さが保てれば、子供が増えるかもしれないという理論で」
「私達は、地球人と異なって、老化が遅いので、現在では不必要な装置です。 150歳位迄は見た目の変化が殆どありませんから」
「ただし、子供が出来る年齢は、地球人とそれ程変わりません。 だから不老装置が開発されたのです」
「滅び行く種族という運命をもう受け容れています。 五千年後には、殆ど居なくなっているでしょう」
「ですから、今回の戦争は痛かったですね。 同朋が数千人亡くなってしまいました」
「大半のエルフィン人は、医師をしていると言われていますが......」
今度はアイザール准将が質問する。
「医師が多いのは事実でしょうね。 一番多いのはJJ・R・アーガン社の社員です。 三国同盟イチの巨大医薬複合企業体ですから」
「随分、質問があるみたいですが、基本的には皆さんと一緒に普段に生活して居ますよ」
「見た目も地球人とそんなに差はありません。 体格も少し背が高い位で」
「リウさんは、子供の時手術でエルフィン人の医師を見ているでしょ?」
AA・アーガンは纒めて答える形にした。
「見ていますね。 それ程差を感じ無かった覚えがあります」
この様なやり取りが続いて、人々は知識の欲求を満たしたのであった。
エルフィン人への質問コーナーが解散し、間もなく終わる束の間の休日であるリゾート滞在をもう少し楽しもうと、それぞれがそれぞれ流のリラックスした過ごし方に入った。
リウはレイと2階のテラスでソファーを倒して寝そべっていると、リウの姿をしたAA・アーガンがやって来た。
そして、リウとレイに、生体頭脳レアについての注意事項を話し始めた。
「リウさん、あなたがレアと名付けた生体頭脳ですが、あれは特別な生体頭脳です。 我々の最新鋭のバイオ技術を惜しむこと無く注ぎ込んだ、特殊な実験的存在です。 自己進化型の為、毎日毎日成長していきます」
「人々の生活や心の動きなども学ぶ対象です。 モノを作ったり、人を治療したり、そういうシステムを増設し、生体頭脳がその経験を積むと、進化が加速します」
「リウさんとレイさんの普段の生活からも学びます。 2人の愛情や性生活の快楽、普段の怒り喜びなども積極的に吸収していきます」
「やがてレアは意思を持ち、最後には生命体になりたいと思うようになるでしょう。 生命の神秘を究めると、そういう結末になるのです」
「その時生体頭脳レアは、リウさんと融合することになります。 これは、新型艦艇の製造計画に参画する際、3つの種族から出された条件であり、その承諾を頂いているので、その様になる様に我々の方で調整したのもありますが、最大の要因は、レアの起源がリウさんの脳だからです」
「だから、進化が進み過ぎたと思ったら注意してください。 飲み込まれるおそれが有るので」
でも、リウは、
「私とレアは同一ですから大丈夫ですよ、きっと。 だって私がレアだったら、『もう少し待って欲しい』と言われたら、融合しないです。 そう考えますから......」
と答えた。
「わかりました。 同じ思考を持っているから、リウさんがそう考えるのなら、レアもほぼ同じ思考を辿るでしょう。 私が心配し過ぎだということですね」
アーガンはそう説明を訂正した。
「レアはいずれ言葉を話すようになります。 自分でロボット達を使って設備を増設したりもするでしょう。 温かい目で見守ってあげてください。 最初は子供っぽいこともするでしょう。 ベースはリウさんですからね」
「お休み中、失礼しました。 ゆっくり過ごして下さい」
そう言うと、アーガンは部屋に戻って行った。
「レアって特別な存在なんだね。 リウ様は知ってたの?」
「......」
「要は、レアってリウ様?」
レイが質問する。
「そうだよ。 でも異なる経験を積んで行くのだから、私と同一っていう存在でも無いよ。 リウはリウ、レアはレア」
「でももし、私に何かあったらレアに相談して。 レアは私でも有るから、きっと解決してくれるよ」
「何だか複雑ですね。 リウ様のことで直接相談しにくいことは、レアに相談してみます」
レイは、リウに少しイジワルを言ってみたのだった。
別荘地も日が傾き、夕景の美しい時間帯となった。
殆どの滞在者が、その美しい景色を目に焼き付けようと、2階のテラスに出て来て眺めている。
リウとレイが夕景を見ながら、キスをしていると、その姿を見た各家族の子供達が、両親に尋ねる。
「パパとママは、リウちゃんみたいなことしないの?」
「若い頃はしたわよ。 でも段々としなくなるものよ」
と言いながらも、『珠には』という男女も出て来て、デッキ上は、素敵なムードに包まれた夕景となった。
夕食を終えて、最後のバータイム。
グラスを傾けながら、ほろ酔い状態で会話が弾む。
『リゾートでのこういう時間は、今後なかなか取ることが出来ない』
と理解している提督達。
誰しも、大した話はしていないのだが、何だか一生の思い出に残る瞬間にはなったようだ。
翌朝、帰る時間が近づいて来た。
リウは、シヴァ丞相とエミーナに別れの挨拶をしていた。
「今後、お会いできる機会が少なくなってしまうと思いますが、どうかお元気で」
リウが挨拶すると、
「リウさんこそ、これから大変だと思いますが、体を壊さないように」
丞相が、政治面の困難さを思い量って、挨拶を返す。
「リウ、ありがとう。 エミーナより先に死んじゃダメだからね」
エミーナが半分泣きながら、リウに別れの挨拶をした。
「私は体鍛えてますから」
リウも貰い泣きしそうになるのを耐えながら、笑顔で話す。
丞相の艦に、丞相一家とシュンゲン姉妹一家、側近達が乗り込んだ。
その艦をリウやレイ、ルー少将達みんなで見送る。
レアー号の姉妹艦は、別荘地を飛び立つと、あっという間に宇宙空間へと飛び去って行った。
「我々も戻りましょう」
余韻に浸る一行にコーダイ准将が呼び掛けて、リウ達も5分後には、ヘーラーの軍事宇宙港に戻っていたのだった。
「それでは、私はこれで」
AA・アーガンがリウの姿のままそう挨拶すると、本来の姿に戻って、軍事宇宙港のターミナルを颯爽と歩き去り、待っていた迎えの人達と合流していった。
最後にAA・アーガンの本当の姿を見たリウ以下一行。
一様に
「確かに地球人とは少し違うけど、意外と若くて、カッコイイ方だったんだ」
「あれなら、総帥やリウに変身する必要無いじゃん」
「あれも誰かの変装なの?」
と感想を言い合うのだった。




