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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・龍翔篇

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第46話(新たな出征計画)

帝國領の一部を奪取し、緩衝地帯を作る計画が進み始めた。


リウは、中核となる盟友達に、計画の概要を説明するのだった......


 翌日、第七陸戦特殊連隊、通称『レッド・ドラグーン』は、全連隊員が地上軍直属から第三艦隊所属に切り替わる人事異動が発表された。


 前日、急遽異動を命ぜられたレッド・ドラグーンのブルーム大佐とラートリー中佐は、初めて宇宙艦隊司令部の建物に入るのだった。


 『これが、宇宙艦隊司令部か~』

 感嘆する程、地上軍の司令部とは雰囲気、従事している人数が全く異なる。

 高さ1000メートル級の超高層建築物が2棟並立する司令部。

 隣には、広大な軍事宇宙港が併設されており、全長1000メートル前後の宇宙戦艦を始め、軍艦で最も巨大な全長1500メートル級の宇宙母艦、全長300メートル級の巡航艦等が整然と並んでいる。

 地上軍とは別世界の未来に居る感覚に囚われる位の相違だ。


 「予算の規模も桁違いだからな。 宇宙軍は地上軍の100倍以上だよ」

 大佐は中佐に説明した。

 第三艦隊の司令部は、ツインタワーB棟の3階に有るという。

 第四艦隊の司令部は、同じツインタワーB棟の250階(最上階)にあるというから、これも随分な違いだ。


 階段を1段置きで駆け上がる2人。

 あっという間に3階に着くと、司令部室の入口には警備の機械兵が立っている。

 IDを見せると、機械兵が自動ドアを解錠操作し、中に進む2人。


 かなり広い司令部の部屋。

 窓際には、司令官のデスク。

 両隣に、副司令官と参謀長のデスクが並んでいる。

 幹部3人のデスクの前には、大きなソファーとテーブルの応接セット。

 少し離れた場所に、副官と幕僚のデスクが壁沿いに整然と並んでいた。

 また、部屋の中央部には巨大なテーブルと大型のスクリーン、そのテーブルには多くの精密機器が埋め込まれており、各種会議から作戦の立案、麾下各艦との通信やある程度のコントロール等も出来る大型のシステムが設置されている。


 この時はまだ、副官以外出勤していなかった。

 副官のカイキ大尉が、2人に気付いて敬礼し、

 「本日からよろしくお願い申し上げます」

 元気よく挨拶をする。

 大佐と中佐も、

 「昨日は失礼しました。 本日より宜しくお願い致します」

と丁寧に返礼した。


 副官は、

 「お二人のデスクは、空いているデスクのどれでも良いそうですよ。 うちの艦隊は、ヒラ参謀がいないので、ほぼ全部空いていますが、出入口から見て最奥のデスクは、今後異動してくる人が使うと決まっているそうです」

と説明した。

 

 ブルーム大佐は、

 「その方の階級は?」

と確認すると、

 「女性の大佐だそうです」

 カイキ大尉が答えたので、ラートリー中佐に、

 「それであれば、その隣が中佐で、私は中佐の更に隣にしようか?」

と決めて、空きデスクに座るのであった。


 暫くすると、始業時刻直前に、アーゼル司令官、コーダイ副司令官、アーサ参謀長の3人が話をしながら、司令部に入室してきた。


 新任のブルーム大佐とラートリー中佐は、3人の幹部の入室に気付いて起立して敬礼し、

 「本日より第三艦隊でお世話になります。 心を入れ替えて誠心誠意尽力致しますので、ご指導ご鞭撻の程宜しくお願い申し上げます」

と大声で挨拶をした。

 それに対してリウは、笑みを浮かべながら、

「今日から宜しくお願いします。 そんな堅苦しい挨拶は明日から止めて下さいね。 『おはようございます』だけで良いですよ」

 所属が変わってから初めての朝の挨拶をした。


 「今日から約3ヶ月間、レッド・ドラグーンの訓練内容は、対帝國白兵戦の実戦訓練でお願いします。 帝國軍は装甲兵2万が駐屯しているそうなので、1人最低10人は倒して貰わないといけません。 毎日の訓練プログラムの選択は2人にお任せします」

 リウは当面の予定を指示し、大佐と中佐に厳しい訓練の実施を求めた。


 「当艦隊と第四艦隊の陸戦部隊も今日から訓練に入ります。 出征時動員するのは機械歩兵20万体を予定していますので、コントロール要員1万名の訓練を実施します」

 レイが今後の作戦の為の事前訓練の説明をし、宇宙艦隊司令部の訓練施設で約2か月に及ぶことも付け加えた。


 「連合政府の正式発足後、直ぐの出征予定で、連合政府では対外軍事行動を統一することから、アルテミス王国艦隊との合同作戦となります。 詳細はまだ言えないですが、直前迄帝國側に情報漏れの無いよう、今聞いたことは直ぐ忘れて下さい」

 リウが冗談を混ぜながら、簡潔に作戦予定の方針を説明した。 

 「ブルーム大佐、ラートリー中佐。 第三艦隊の所属になった理由は、既に極秘で承諾を得ている軍事作戦の為です。 第四艦隊にも近々何処かの部隊を1個連隊所属させますので、その部隊と協力し、競い合いながら、先の大戦における地上軍の汚名を濯いで下さい」


 「大佐と中佐。 夕方は、こっちに来なくて良いからな。 翌朝報告してくれれば結構だから」

 副司令が最後に付け加えた。


 ブルーム大佐とラートリー中佐は、

 「それでは、地上軍の本部に出発します」 

と申告し、連隊の訓練へと出発していった。


 2人は宇宙艦隊司令部を出て、レッド・ドラグーンの待機室に着くと、急な所属替えで連隊自体が浮ついている状態だった。

 大佐は、

 「何を浮ついているんだ。 所属が変わっただけで、やることは何も変わらないぞ」

 「ただ今日から、今までの様な甘い気持ちでの訓練は無しだ。 これから数ヶ月間、死ぬ気で訓練を受けろ。 真剣に取り組め。 生き延びる為にな」

と指示をしたことで、連隊員にも『初めての実戦が有るかもしれない』との緊張感が生じるのだった。



 「そう言えば、ケイト・パルトネール大佐の第三艦隊への異動要請、人事官から『通りそうだ』と連絡有りましたよ。 あくまで3ヶ月後ですが」

 レイがリウに話をした。

 「『計数の魔女』の異名を持つ才女が艦隊に来るのですか?」

と副司令が確認をすると、

 「あはは、私はちょっと苦手なんですけどね」

 リウは苦笑いしながら肯定する。

 「アーサ准将が居なければ、次代の後方司令官の最有力候補ですけどね」

 「パルトネール大佐に譲りますよ。 私はアーゼル司令官の補佐役を続けたいので」

 コーダイ准将がレイとパルトネール大佐の2人の評価を語ると、レイはその様に答えるのであった。


 「彼女の事務処理能力は、ノイエ国軍ナンバーワンって言われてますからね」

 「そうだ、副司令。 今日夕方残って貰っても良いですか? ルー少将も交えて、次の出征計画について、少し話をしようと思いますので」

 リウがさり気なく、提案をすると、

 「わかりました」

 コーダイ准将は素直に了承したのであった。

 その言い回し方から、

 『リウ様、昨日の今日でいきなり打ち明けそうだな。 隠すの面倒になっているから』

とレイは感じた。



 勤務時間が終了し、副官を帰らせてから、第四艦隊のルー少将とアイザール准将が第三艦隊司令部にやって来た。

 「レイ、司令官は?」

 リウの姿が見えないので、ルー少将が確認する。

 「部屋内に居ますよ、先輩。 ちょっと準備中ですね」

とレイが返事をする。

 ルー少将が、

 「何の準備?」

と尋ねた途端に、髪をおろしたリウが現れたので、

 「やっぱり〜」

 「もう隠すの面倒になったんでしょ?」

 半ば呆れ気味の少将。


 ひとまず、第四艦隊参謀長のアイザール准将にルー少将が説明しようとしたら、

 「レイから聞いてますよ。 他言無用のお願いも」

 意外な返事を返された。

 アイザール准将が『レイ』と言ったので、

 「もしかして、准将......」

と尋ねると、

 「私はレイとは立場が異なります。 アーゼル財閥と繋がりがある点は同じですが」

との回答を得るのであった。

 ルー少将は、

 「何だか、そういう人ばかりだなあ~。 と言っても参謀長にしたのはレイの紹介だったから、当然か~」

 ぶつぶつと呟く。


 「それでは皆さん揃ったので、説明会を始めます」

 リウ・アーゼル女史が口を開いた。

 「先ず、ここから先のことは全部ご自分の胸の中に留めて置いて下さい。 見たこと、聞いたこと、全て他言無用です」

 「もし破ったら、命貰います」

 半分冗談半分本気の前置きをしてから、説明が始まった。


 「先ずは、情勢分析からです」

 「帝國軍は旧ムーアー国領域とその周辺星系の維持に、4個艦隊を駐屯させています」

 「旧ムーアー国とその周辺領域はアルテミス王国から近いですが、帝國の本領域からは遠く、その維持費用は莫大で、帝國の財政の重荷になっているようです」

 「大帝はムーアー国を属国にして、直接統治しませんでしたが、それは財政負担を考えたからでしょう」

 「二世皇帝は自身の暗殺計画への怒りから侵攻し、直轄領にしましたが、先の大戦の大損害もあり、ムーアー国とその周辺の維持を放棄することも考えているようです。 統治も低調で税収も少なく、帝國にとって旨味は殆どありません」


 「ただ放棄して、三国同盟の領域になると、国力比が逆転してしまいますので、迷っているようです」

 「現状、帝國対三国同盟の国力比は53対47ですが、ムーアー国とその周辺を放棄すると、48対52になります」


 「次に、侵攻の狙いです」

 「我々は大戦の損害が大きく、大戦終結後の間もない出征は厳しいですが、それは帝國も同じ条件です」

 「そこにチャンスを見出し、旧ムーアー国とその周辺領域をノイエ国が占領し、帝國との緩衝地帯を作る」

 「そして最終的には、帝國との停戦に持ち込む。 これが基本線です」


 「侵攻後の方針についてです」

 「緩衝地帯にするために、第三・第四艦隊は旧ムーアー国領域で長期に渡り駐屯し、軍政をひいて、占領し続けることになります」

 「軍政をひくに当たっては、計数の魔女様に来て頂いて、私と魔女様やその他統治官も任命して、政治・経済面の施政を実施します」

 「軍に関しては、ルー中将を中心にお願いすることになります」

 「ムーアー国とその周辺の小星系は、殆どが独裁政権だった為、三国同盟の様な共和制による統治は馴染まないだろうと考えていますので、軍政が長期間続く形となるでしょう」


 「最後に、侵攻時の戦略・戦術ですが」

 「侵攻に当たって、我々は奇襲を仕掛けます。 詳細は出征当日発表します」

 「アルテミス王国軍は、ルーナ大将率いる4個艦隊が真正面から堂々と侵攻し、帝國の駐屯部隊と対峙します」

 「シヴァ艦隊には大規模動員令だけ出して貰い、帝國軍の援軍派遣を阻止します」

 「奇襲が成功すれば、帝國軍の4個艦隊は戦わずに撤退するでしょう。 地上部隊を捨てて帰国するものと予想されます」

 「そこで帝國軍の地上部隊を掃討し、長期の占領の為に、両艦隊に特殊部隊を1個連隊ずつ移籍させて、対応します」


「以上が簡単ですが、作戦概要です」

と言い、リウは説明を終えた。


 感想として、先ずコーダイ准将が、

 「いずれ家族を呼び寄せる形となるのか~」

と呟いたので、

 「そうなります。 学校なども順次開設予定です」

 「占領地の経済力強化が当面の課題でしょう。 元々地理的には恵まれた場所なので、帝國と三国同盟間で経済交流が始まれば、大いに発展するポテンシャルを秘めています」

 リウは説明を加えた。


 アイザール准将は、それを聞き、

 「占領体制が確立したら、私とレイで、アーゼル財閥の力を引き込めるよう、尽力しましょう。 三国同盟の各大企業グループも、帝國と交易出来るようになれば、続々と進出して来るでしょうから」

と話した。


 ルー少将は、軍事部門の担当者として、

 「帝國の圧力を考えると、2個艦隊駐屯だけでは戦力不足の様な気もするなあ」

とボヤくと、

 「アルテミス王国艦隊がいつでも応援に来られるよう、態勢を整えておけば、大丈夫でしょう。 ルー中将」


 レイは、リウが女性の姿で説明したので、

 「副司令。 見ての通り、司令官は女性で、私とリウは先日のアルテミス王国滞在中に極秘結婚し、今や夫婦です。 今回の作戦が成功し、占領体制が確立されたら、いずれ公表するつもりですが、まだ暫くの間、このことは一部の人達の間でのみ共有される秘密事項として頂きたいのです」

とコーダイ准将に呼び掛けた。

 「わかりました。 昨日気付いたのですが、早々に教えて頂き、嬉しく思います。 秘匿の件も了解です。 司令官が『命貰います』と言ってましたからね」

と笑い、了承を得られた。


 「ディオ、そういうことだから、まだ当面は秘密ですよ」

 リウがアイザール准将に念押しする。

 准将は、

 「分かっていますよ、リウ様」

と『ディオ』『様付け』で双方が話したので、ルー少将が、

 「参謀長は、リウとも知り合いだったの?」

と確認すると、リウは、

 「女性の私が16歳で財閥の交渉人としてデビューした初期の頃、総帥が付けた補佐役の一人です。 ただ男性のリウとは面識ゼロでした。 そして先輩に参謀長として薦めたのは私じゃなくてレイだからね」

 そう言って先輩にウィンクをした。


 「軍とアーゼル財閥やLSグループとの関係は極めて密接です。 我軍は西上国と異なり、自前の艦隊工廠や兵器工廠を持たず、全て外部発注しています」

 「人事交流も活発で、退役者をアーゼル財閥とLSグループで受け容れる代わりに、現役のエリート士官の一定数は、財閥やLSグループから送り込まれた将来有望な若手が占めています。 士官学校の2年課程は、ある意味その為に存在しているのです。 私もその一人ですね」

 アイザール准将はルー少将に説明した。


 「だから、我軍のエリート士官は、40歳前後から退役者が一定数出るのか~。 元の所属企業に戻る為に」

 「あと少しで中将、あと少しで司令官っていうところで、軍での栄達を捨てて、准将や少将で退役する人が居るから、不思議に思っていたんだよね」

 説明を聞いて、ルー少将が納得の表情をした。

 「戻れば、相応のポジションと軍での俸給の数倍の年俸が得られますからね。 軍に残る人は殆ど居ませんよ」

と言ってアイザール准将は笑う。

 「そこが、レイと私の異なる点ですね。 私はもういつでも財閥に戻れますが、レイはリウ様が軍を辞めないと戻れません」


 「こういう状況だから、軍と大企業の癒着だと、批判する人も居るけど、それはちょっと違うのよね」

 「本来なら軍に来ないような民間の優秀な人材が入って来ることで、軍民の人事交流と組織の活性化に繋がっているし」

 「両社合わせると、三国同盟経済の1割以上を占めるアーゼル財閥とLSグループの低コストでの調達力、生産力を利用出来ることでの軍事予算の大幅削減効果」

 「両社はアルテミス王国軍や西上国軍の調達・技術開発にも関与しているから、最新鋭技術へのアクセス権も両社を介せば労せず得られること」

 「こういうメリットが多いから、容認されているのよね」

 「ただ、今回の大戦で、両社から送り込まれていた優秀な人材も失われたのが非常に痛いね」

とリウは解説するのであった。


 「他に質問ありますか?」

 「間違っても引っ越しの準備しないで下さいね」

 リウは言いながら、髪を結い直して、帽子を被り、

 「はい、これが種明かし」

と笑いながら、今後の作戦予定説明会を終了した。



 「遅くなったので、帰りましょうか?」

 誰ともなく言い出して、その日の夜は、それぞれが今聞いた話を自分の中で消化する時間となるのであった。


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