第41話(真実)
帰国したリウとレイ。
ルーナ大将のアドバイスに従い、ジョン・ルーに対し、真実を......
クロノス星系第5惑星「ヘーラー」
ここに、ノイエ国軍宇宙艦隊司令部がある。
リウとレイは、約1か月半ぶりに宇宙艦隊司令部に戻って来た。
宇宙艦隊司令長官タイラー大将に帰国を申告。
直ぐ後、レイカー・アーサ大佐の准将昇任式が続けて行われた。
将官への昇任なので、ロボット音楽隊の国家演奏が行われ、宇宙艦隊司令長官から直接辞令を受け取るという形式であった。
第三艦隊司令部の部屋に入ると、副司令官のシュウゴ・コーダイ准将と副官のジム・カイキ大尉が司令官と参謀長の帰りを待っていた。
「アーゼル司令官、アーサ参謀長、任務完遂ご苦労さまでした」
挨拶をすると、2人が敬礼する。
リウは、
「ありがとうございます。 留守番ご苦労さまでした」
と返礼してから、
「まあ、ゆっくりして下さい」
2人に自席に座るよう促した。
副司令が、
「参謀長、准将昇任おめでとうございます」
祝いの言葉を述べると同時に、ルー少将が司令部に入って来た。
「2人共、お帰り〜」
嬉しそうに話し掛けるルー少将。
リウは、挨拶を返してから、
「向こうでは体調が優れなくて......少し記憶障害があるので、ルー少将のことだいぶ忘れちゃってます」
と冗談のようで本当のような微妙な言い回しをした。
微妙な変化を感じたジョン・ルー少将は、
「大丈夫なのか?」
と言って、少し心配そう。
「大佐、准将への昇任おめでとう。 それを言いに来たんだった」
ルー少将は、思い出したかのようにレイに言ったので、レイは、
「ルー司令官、コーダイ副司令、お祝いの言葉ありがとうございます」
と纏めて返礼をした。
「2人の顔を見に来ただけだから、それじゃあ」
ルー少将がそう言ってから部屋を出たところで、レイはさり気なく追い掛けて行って呼び止めた。
「ルー少将、実は大事なお話しがあるので、本日の勤務時間終了後、アーゼルタワーの特別ラウンジに来て頂いてもよろしいですか?」
艦隊司令部近くのアーゼル財閥本社ビルでの待ち合わせをお願いした。
するとルー少将は、
「記憶障害って言ってたけど、本当なのか? 少し雰囲気が違うような気がしたが......」
既にリウの異変に気付いていたようなので、
「その件も含めた大事なお話しです」
レイは深刻そうな表情で告げると、
「わかった。 必ず行く」
少将も真面目な表情で言って約束をすると、手を振りながら、自分の艦隊司令部に戻るのだった。
第四艦隊司令部では、艦隊の再編成についての話し合いが、この日の主な仕事であった。
先日決まった、西上国からの中古艦艇500隻の追加購入に伴い、第5艦隊の新設と、第三、第四艦隊へ50隻ずつの追加配置が決定したので、人員の再配置などについてが議題であった。
ひと通り、艦隊の増強についての方向性を決めてから、勤務時間終了後、ルー少将はアーゼルタワーに向かった。
すると、タワーの入口でレイが待っていたので、
「わざわざ、待っていてくれたのか、ありがとう」
と礼を言うと、
「少将一人だと、中に入ったら迷いそうなので」
レイが冗談っぽく理由を述べる。
少将はその言葉に同意し、
「タワー内広すぎで、絶対に迷う」
と言って、大笑いするのだった。
その後少将はレイのあとをついて行くと、建物内をスイスイ進み、慣れた感じで、特別ラウンジに入っていくので、
「准将は、よくここに来るのか?」
と疑問に思ったことを尋ねる。
レイはその質問に、
「まだ3回目ですよ」
と答えたのだった。
そして、予約したブースを案内するレイ。
「どうぞ、少将お先に」
そう勧められたので、ルー少将がブースの扉を開けると、そこには美女が立って待っていた。
少し驚いた表情を見せる少将。
振り向いてレイに、
「こちらの方は?」
と尋ねる。
すると、直ぐに美女は、
「先輩、お忘れですか? リウ・アーゼルです」
と自己紹介したので、ルー少将は大変驚いてしまい、リウとレイを繰り返し見渡す。
レイは扉を閉めてから、
「ルー少将、とりあえず座りましょうか?」
と言って、落ち着くようにと促すのだった。
『そう言えば、先の大戦で、シャワー上がりのリウを見てしまった時に、一瞬女性と思ったことが有ったなあ』
記憶が蘇ったルー少将。
少し落ち着いてから、2人に説明を求める。
そこでレイが、今までのことを簡潔に話すと、
「リウは男と女の二重人格で、本来は女性だったということか......」
ルー少将は漸く理解した。
そして、改めて確認をする。
「今回の出張中に男の人格が消えて、女性の人格しか残っていないと」
「そういうことなので、先輩と付き合いの深かった方のリウとは、もう会えません」
レイが答える。
「こうなった以上、全てを公表して退役することを考えています」
リウが唐突に退役宣言をすると、
「ちょっと待ってくれ。 それは俺を含めて残されたみんなが困ってしまうよ。 ノイエ国軍は、人材欠乏が甚だしいし、大戦の傷跡も全く癒えていない。 人間で言えば集中治療室に入院中で瀕死の重体状態だ」
「そこで、リウに退役されたら......」
ルー少将は、非常に困ったという顔をしながら、リウの退役を止めようとする。
「と言われても、女性のリウは軍才があるかどうか分かりませんよ?」
自分自身の能力に疑問を呈しながら、
「それに、私達結婚しちゃいましたし......」
と追加で重大な告白をする。
「え~~。 出張中のこんな短期間に決めて、実施しちゃったの?」
ルー少将がツッコむと
「すいません。 リウ様とは士官学校以来、結構長い付き合いなので」
とレイが冷静に答える。
「それで、先輩はどうするのが良いと思いますか?私達」
リウに確認の質問されると、ルー少将は、
「退役だけはするな。 俺に出来ることは協力するから」
と答えた。
続けて、
「人格は別でも、同一人物だろ? だったら能力面もほぼ同じ筈だ」
「艦隊を指揮したことが無いのは、俺も一緒。 大戦であまりにも沢山死んだので、特別昇任で艦隊司令官・少将に祭り上げられただけだからな」
「ダメで当たり前だから、一蓮托生で行こうよ? もし、女性だということで批判が来るようだったら、その時はそんなことで批判する国に三行半付けて、俺も一緒に辞めてやるからさ」
そこまでの姿勢を見せて、全面協力すると宣言した少将。
「それで、軍内部でこの秘密を知る人は?」
と確認すると、
「今ここに居る者だけです。生きている人では」
とリウが説明する。
「というと、戦死した人の中にも居たってことか〜。 ハーパーズ大将だな?」
鋭く見抜いたルー。
「大将には、最後バレてしまいました」
リウがその通りだと認めると、ルー少将は、
「だからあの時、説得されて急に退艦命令を受け入れたのか~。 なるほど」
と納得し、続けて、
「その亡き大将の為にも、安易に退役するなよ。 行き残った者は責任が重くて、退役したいのは山々だけどさ」
「あのフォー・プロシード少将も政界転身だろ? 好き嫌いはともかく、帝國軍侵攻時の要塞防御指揮はなかなかのものだったし、それだけの軍事的才幹を有しているのだから、そういう面では痛いよな。 これだけ人材不足だと」
「それに流石に3人だけでは、リウを守り切れない。 これだけ綺麗な女性だって気付かれたら......いずれ徐々に気付かれると思うけど、絶対悪いことを考える奴が権力層から出てくる」
「だから、信頼出来る人物を見つけて、その人達で幕僚を固めておく必要が有るな」
「幸い、俺達にはその権限が有る。 とりあえず次の戦、もう直ぐ出征するんだろ? 急に軍艦を大量買い付けしたのだから......」
「それまでに、めぼしい人物は、幕僚に抜擢しておこう」
続けざまに今後の方針をルー少将は提案し、リウとレイも同意したのだった。
翌日の定時後、第三艦隊司令部室では、リウとレイがグダグダしていた。
「退役、仕損ねた感じだなあ~」
リウが残念そうに言う。
「昨日の話っぷりだと、あまり、そういう感じは出ていなかったですよ」
レイが冷静に指摘。
「とりあえず、ルー先輩は協力してくれるとは言え、如何せん人材不足が甚だしいなあ」
「口が固くて、信頼出来る良い人材知らない?」
リウがレイに、副司令官探しの時のようなことをしてくれると期待して尋ねる。
「そんなに都合良く知りませんよ。 リウ様こそ心当たりないんですか?」
そんなことを話している時に、ルー少将が入って来た。
「随分寛いでるなあ~。 2人っきりだと」
と言うと、リウが手を挙げて挨拶をした。
「結構、雑だなあ~。 前と較べると」
厳しい指摘をすると、
「本来の私はこんなものですよ。 前が上品過ぎたのです」
リウが悠然と言った雰囲気で答える。
「レイ、そうなのか? お前の嫁さんは」
「私からは何も申し上げられません。 少将閣下」
その質問には、夫婦円満を優先されて上手く逃げられてしまった。
「ところで、先輩。 良い人材知りませんか?」
リウが情報を求める。
「うちの艦隊は、未だに副司令官不在なのだぞ。 知っているなら、こっちが教えて欲しいぐらいだ」
とかなり苦悩の表情。
「そうだ、次の副官になら良い奴知ってるぞ」
思い出したように、ルー少将が嬉しそうに言う。
「口が固い奴だよ。 亡きハーパーズ大将の副官だったエーレン少佐だ」
「病気療養のせいで、副官の任を最後果たせなくて、一緒に死ねなかったことを悔やんでいるんだよ」
「偏見とかもしない奴だし、中将になったら副官で登用してやって欲しい。」
と薦めるのだった。
「先輩の副官にしないのですか?」
とリウが確認すると、
「俺の副官には勿体無いな、武勇もある奴だから。 俺は命狙われる程の大物じゃないよ」
エーレン少佐を自分の副官に登用しない理由を説明をした。
「他には、心当たりありませんか? 皆さん」
リウが人材募集の候補者を求めるも、誰も名前を上げられず......
「こんな状況で第五艦隊新設するんだろ? 大丈夫なのか?我軍は」
と嘆くルー少将。
「大丈夫じゃないけど、帝國領の一部を奪取して、緩衝地帯を作らないと......」
思わず作戦を少し洩らしてしまったリウ。
「そういう作戦だったのか~。 根回しは済んでいるのか?同盟国と。 その為の長期出張だったのだろ?」
『当たりだろ』という顔で、ニヤリとしながら話すルー少将。
「いや、全然」
と即、完全否定するリウ。
「じゃあ、何で1か月半も......まさか......」
「当たり〜。 レイと一緒になる為だよ~」
ニコニコと話すリウ。
「レイ、否定してくれ。 それだけが目的じゃないよな?」
ルー少将からの質問に、思わず目を逸らすレイ。
「あのリウが、こんなに軽くなってしまうとは......」
信じられないという表情のジョン・ルーに対してレイは、
「根回しはしてないけど、絆は強くなりました。 それだけでも、あの出張に大きな価値が有ったから大丈夫ですよ。 多分」
微妙な言い回しをして慰めるのであった。




