第40話(レイの苦悩と決意)
レイカーは、実弟の言葉に激しく動揺する。
それをリウは優しく受け止めるのだった。
帰国後、レイカーの決意が......
結婚式当日の夜。
ベッド上でレイは、リウを激しく攻め続けた。
リウは、この様なレイを初めて見るのだった。
リウはあまりに激しいレイに、逝かされ続けてしまった......
レイが果てきって、疲れて眠りに落ちつつあった時に、リウはレイを抱き締めながら尋ねた。
「レイ、今日、誰かに何か言われたのでしょ?」
「その話をしてくれない?」
レイは、迷いながら、
「リウ様、すいません。 ちょっと感情がコントロール出来なくなってしまって」
「その〜、激しくなり過ぎてしまい......」
「謝ることじゃないよ~。 でも、心配で......」
優しいリウ。
レイは少し迷いながら、
「実は、弟に......」
「弟は、凄腕の傭兵なのです。 私では弟に敵いません」
そう言って、話を切り出した。
「でも、弟は心が真っ直ぐな人間では無いのです。 だから、ずっと縁を切っています」
「その弟から、『リウ様が狙われているよ』と警告されました」
「リウ様も男での生活も長かったので、ある程度理解出来ると思いますが、女性を自分のモノ、所有物とみなす男って結構居るのです」
「そうした男達の中で、リウ様に狙いを定めて、傭兵稼業の連中に拉致依頼をした変態野郎が居るらしいと、聞かされました」
「弟は『家族には手を出さないよ』と言っていましたが、それでも『リウ様を護り切れるのか?』と不安に......」
その様に話すレイは非常に辛そうであった。
リウは、
「レイは優しいね」
「でも私は大丈夫。 変な連中に狙われるのは嫌だけど、帰ればみんなが居るじゃない?」
「私も、軍施設からなるべく出ないようにするから、心配しないで......」
諭すように話しながら、優しくレイの頭を抱え込んで、撫で続けた。
レイは疲れ果てていたので、暫くすると、寝息を立て始める。
リウは、
「これ以上、レイに負担を掛けないようにしないと」
と考えながらも、気が付くと眠ってしまっていた......
朝、目覚めたベッドで横になったまま、リウはレイに質問をした。
「今までレイが色々と私を護ってくれていたと思うけど、どれぐらい変態系って有ったの?」
するとレイは、ベッドから起き上がって、小さな箱を持って来て、中身を見せた。
いくつかの壊れた小さな機械みたいなのが入っていたので、
「これは、もしかして......」
リウが引き攣った表情で、一応確認してみると、
「惑星アルテミスに来てから見つけた、盗撮機器と盗聴器ですね」
「こんなに?」
「そうです。 リウ様は綺麗なので、しょっちゅう狙われていますよ」
当たり前のように答えるレイ。
「マジか~。 これが現実......」
ちょっと絶句してしまうリウ。
「常に撮影妨害装置はオンにしておくことをお薦めします」
「それでも、声は防げませんけど......昨晩のようなのは、全部拾われているでしょうね~」
表情を変えずに説明をするレイ。
「えっ、マジ。 結構大きな声出しちゃったけど......」
「きっと盗聴野郎は、リウ様のあの声に興奮して、あれしてますよ」
「ガーン」
ショックの様子のリウ。
「と言いたいところですが、電波妨害装置と音波干渉装置をホテル滞在中は使っているので、多分大丈夫」
レイが少し笑顔を見せながら種明かし。
「レイ、それを早く言うんだよ」
リウがぷちブチギレモードに入って、昨晩の仕返しとばかりにレイの大事なモノを......
朝から元気な2人であった......
アルテミス星系での滞在も、あと一日。
この日リウは、腰の辺りにまで伸びていた髪を肩の長さに、バッサリと切って貰っていた。
提督に戻る準備である。
その間、レイは軍のオフィスに行き、撤収準備を進めた。
流石に、ゲンナリする現実を知ったリウは、最後の日は大人しくホテルの部屋で過ごすのだった。
レイが執務を終えて部屋に戻って来たので、リウ・アーゼル少将になる準備を一緒に始める。
「リウ様、髪を短くされたのですね。 ショートも凄く似合っています」
レイに褒められて、リウは嬉しそうだった。
「切ったのは大戦の前だから、結構経ったよね~」
久しぶりのショートヘアーに少しドキドキのリウ。
キャップ型の制帽を被り、その後ろから束ねた髪を出すも、だいぶ短くなったので、少しだけとなった。
「さあ、ホテルLSGアルテミスに行って、駐留軍に退去の挨拶をしておきましょう」
ホテルに到着したリウは、挨拶を聴くために集まってくれた駐留軍に対して、
「皆さんのお蔭で、大戦後の一大行事であった復興会議も、何事も発生せず無事に過ぎております。 あと少しですので、頑張って下さい」
という簡単な挨拶をしてから、自分のオフィスを閉鎖し、鍵を管理部門の兵士に渡して、退去準備完了となった。
その後レイは、リウに、
「帰りの船は、どうされるのですか?」
と尋ねたところ、1か月半前、レイと強引に関係を持ったことを思い出して、少し顔を赤らめてしまうリウ。
「か、か、帰りは、船を準備してあるから、それで帰るよ」
と、珍しく少しドモリながら答えたので、レイも来た時のことを思い出して、真っ赤になったのだった。
惑星アルテミスでの最後の夜2人は、セレーネーホテルのレストランで、ささやかなお祝いをしていた。
レイの30歳の誕生日だったのだ。
「結婚式の翌日が誕生日なら、覚えやすいね」
とリウが嬉しそうに言う。
「ありがとうございます、リウ様。 祝って頂いて」
「今までの誕生日で、一番嬉しいです」
素直に感謝の言葉を口にするレイ。
「2人だけで、人知れぬ惑星に移住して、死ぬ迄ひっそり暮らそうか?」
と突然リウが提案したので、レイは驚いた。
「昨日の夜、レイの苦しみを知って考えたんだ。 そういうのも良いかな?って」
「この間の、エロ捜査官達の件も有ったし、狙われているって話を聞いて、もう十分かなって。 目立てばもっと狙われちゃうから」
「私はレイがそばに居てくれれば、それだけで......」
そこまで言うと、リウは黙ってしまった。
その話を聞いたレイは、
「そうしましょうか? リウ様がそれを望まれるのであれば、私は反対しません」
「リウ様は、今まで人々の為に頑張って来られました。 2つの人格共に......」
「ここで、もう舞台から降りても、誰も文句を言わないでしょう。 スタンディング・オベーションで迎えてくれますよ」
「でも、きっと後悔すると思います。 途中で投げ出したことを」
と答えた。
「自分で始めたことは、最後までやり通せってことか~。 おそらく20年後に私が死ぬ迄、ずーっとになっちゃうよ? それでもイイ?」
「結婚を期に、私が女だって公表して、軍を退役するのが、最初で最後の大きなチャンス。 本当に迷っているんだ......」
リウは心が揺れていることを素直に打ち明ける。
レイは、
『どちらの選択がリウ様にとって幸せなのだろうか?』
と考えるも、結論が導き出せず黙ったままだった。
「クヨクヨするのも、私らしく無いか。 ごめんねせっかくのレイの誕生日にちょっと暗い話しちゃって」
そう言うと、この話題を打ち切り、運ばれて来た食事を楽しむ2人であった。
翌日、ついに帰国する日。
リウはレイを連れて、アルテミス宇宙港に隣接する倉庫にやって来た。
「じゃじゃじゃーん」
リウはファンファーレを自分で言いながら、倉庫を全面開放する。
真新しい新型艦が、姿を現す。
「もしかして、買ったんですか?」
と確認するレイ。
「いくらだと思う?」
嬉しそうに質問するリウ。
「5億ノイエドルぐらいですか?」
「ブー。ハズレ。 20億ノイエドル」
「えっ、そんなにするの?」
流石にびっくりするレイ。
『そうだ、この人は超大金持ちだった』
普段の姿が、30ノイエドルぐらいの服を着ているなど、あまりにも適当なので、つい忘れがちな事実を思い出させられた。
『配当金だけで、毎年100億ノイエドル以上貰っているんだものなあ~。 それも遺産相続した11歳から』
「でも、まだ未完成なので、このまま財閥の秘匿施設に入港させます」
リウは初航海の行き先を説明した。
「JJ・R・アーガン社にも向かうんだけど、もう心の準備は出来てる?」
「本当にごめんね。 私の我儘を聞いて貰って......」
そう言い出すと、リウは涙ぐんでしまった。
「120年生きられるのが普通の時代でね、5、60年に満たない寿命で死ぬ宿命を背負ってしまって......」
「私ねえ。 一人だけ先に寿命が尽きて死んで、最愛の人に忘れられていくのが耐えられ無い」
「エミーナには、『そんなのズルいよ~。 レイ君だったら絶対受け入れちゃうじゃない? あれは、開発したエルフィン人だって誰も使わない装置だよ? 私はリョウ君に出来るだけ長く生きて欲しい。 私の分迄って思うけど? リウのやる事いつもは賛成だけど、これだけは大反対!!』ってハッキリ言われたよ。 私もそう思う......ズルいって」
レイは、ただリウの想いだからといって、単純に受け入れた訳では無かった。
レイの最大の願いは、リウを守り続けること。
しかし、年齢を重ねるに連れ、徐々に護衛としての能力が落ちて来ていることに気付いていた。
だから、これ以上老化しなければ、今の能力を維持出来る。
そういう考えも有って受け入れたのだ。
「出発するね」
準備が完了すると、リウは合図をしてから、自動操縦でクロノス星系第4惑星「ティアー」へ向かった。
まだ、名前も付いていないこの艦。
内装も殆ど実装されていないので、それらの工事を行う為にティアーに行く。
「寝るベッドも何もまだ無いから、到着迄は操縦席で休んでね~」
レイに説明するリウ。
通常、1週間かかるクロノス星系〜アルテミス星系間であるが、リウが買った最新鋭艦は、3日で到着出来る。
ティアーには、アーゼル財閥傘下の秘匿施設があり、隣接するJJ・R・アーガン社の研究施設と共同事業・研究がある場合、よく使われる場所だ。
ティアーの施設に入港させてから、JJ・R・アーガン社の研究員が乗り込んで来たので、新型生体頭脳の設置位置等を相談するリウ。
レイは下船し、JJ・R・アーガン社の研究施設に入った。
それは、不老装置の埋込をする為。
これがリウが結婚時に出した唯一の条件であった......
これを埋込んだ地球人の平均寿命は55歳。
大概は20歳前後で埋込むので、余命は35年となってしまう。
通常の20歳は余命約100年だから、究極の選択となっていて、埋込む人の大半は資産家の俳優・モデル等容姿を仕事にしている人だ。
それ以外は、瀕死の大怪我を負ったり、不治の病を患った大資産家の子供が殆どである。
エルフィン人の医師がレイに、
「準備は良いですか?」
と尋ねる。
レイは、
「はい」
そう答えると、意識が徐々に無くなっていった......
気が付くと、病室のベッドの上。
隣では、リウがうとうとしている。
起き上がろうとすると、リウが気付いて抱きついてきた。
「レイ、ごめんね。 そして、ありがとう」
そこまで言うと、涙が溢れるリウ。
レイは、
「この件での『ごめんね』は、これで最後ね」
そして、唇を重ねるのだった。
リウがエルフィン人の医師を呼ぶ。
やって来た医師が説明を始めた。
「今までと何も変わらないので、普通に生活して下さい。 一部の古傷は、装置の融合時に消えていると思います」
「貴方は30歳ということなので、残り余命は三十年位でしょう。 歳を取ってから装置を導入した場合、若い場合よりも少し寿命が長くなります」
「この装置には若返る能力はありません。 だから貴方の場合、今の年齢で全てが止まります」
というものであった。
そのまま退院すると、リウの艦の工事も終わっていた。
「ティアーに到着してから、何日経ったのですか?」
レイはリウに尋ねると
「3日だよ、結構目覚める迄時間が掛かったので、心配しちゃった」
と言われ、思っていた以上の時間が過ぎていたことを知るのであった。
「この新型艦が、今日から私達夫婦の家。 名前は『レアー』にしようと思うの」
「レアーがあれは、レイの負担も大きく減るでしょ?」
盗撮だの盗聴だの小さなことに迄、気を遣っているレイの負担を減らす意味合いでは、非常に大きな存在となる筈だ。
「ありがとうございます。 確かにこの船での居住なら、今まで以上に安心出来て、熟睡出来そうです」
レイは笑顔で答えたので、リウは
『買って良かった~』
と思い、嬉しくなるのであった。




