第38話(秘密に気付いたルーナ大将)
残り少なくなった、リュウとレイ2人の惑星アルテミスでの日々。
王宮で王妃を含めた3人で、あることの相談をしていると、ルーナ大将が現れたのであった
リュウとレイが惑星アルテミスに到着してから、1か月以上が経過した。
当初は、リウ・プロクター少将が出席予定の会合やイベントも沢山予定されていたのであるが、リウの人格が消えたことで、その殆どをキャンセルしていた。
また最初、多くの参加者で賑わっていた復興会議も、時間が経つにつれて各国要人は徐々に帰国し、それに伴い駐屯している各国の軍部隊の規模も縮小され、段々と活気が無くなってきていた。
滞在期間を短縮し、残り僅かとなった、リュウとレイが気兼ねなく二人で過ごせるアルテミス王国での日々。
特に、西上国関連施設では、プロクター少将は全く知られていないので、リュウ・アーゼルとして幾らでも活動出来ていたが、それが出来無くなりつつ有るのが痛いなあと感じ始めてもいた。
ノイエ国に帰るとリュウは、当面プロクター少将を演じなければならない。
『帰国後のリュウとレイとの結婚生活は、いずれ色々と物議を醸し出すだろう。 全てを公表する日が来るまでは』
リュウもレイも覚悟を決めている。
リュウはこの日、アルテミス王国に居住する異星人のアトラス人が運営するVSNR社の秘匿施設に来ていた。
発注していた小型高速巡航艦の最終確認と受領の為である。
巡航艦と言っても、武装は無く、強力なシールドのみが搭載された特殊な艦で、武装が無いので民間船扱いだ。
リュウは、今後この艦を家代わりにし、居住することに決めていて、大戦終結後に発注していたのだ。
「リュウ様、ご確認下さい」
案内するアトラス人。
アトラス人の持つ『複合微細化、超高精細化』というオーバーテクノロジーが利用されているこの艦は、速度が高速巡航艦の約2倍という性能、シールドは大型戦艦の約3倍の強度を持ち、これだけの性能の艦艇は現状、他に存在しないだろう。
内部はリュウとその家族が住むスペースだけなので、居住空間はめちゃくちゃ広い。
操縦は無人でも可、二人居れば全ての機能を使うことが出来る。
艦の中枢には、JJ・R・アーガン社が開発している新型の超高性能な生体頭脳が搭載される予定となっているので、最終的な完成は、ノイエ国クロノス星系にあるアーゼル社の秘匿施設でとなる。
リュウは、アトラス人の説明を聞きながら、確認を続ける。
そして、
「もう、動かせるの?」
と尋ねると、
「可能です。 このままでもクロノス星系迄は問題なく行けます。 ただ生体頭脳を搭載予定と聞いていますので、中枢頭脳は最低レベルの人工頭脳しか入れていませんから、クロノス星系で速やかに入替えをしてください」
その様に説明されたのだった。
受領証にサインをして、残代金を即決済。
20億ノイエドルと、かなり高い買い物であったが、今後の生活、特に当面秘密を守り続けることを考えると、この方が効率的だ。
『とりあえず、アルテミス宇宙港に一時的に借りた倉庫で保管しておこう』
そう決めたリュウは、自ら操縦して、施設から倉庫迄移動させて格納したのであった。
「次は......」
リュウは少し考え、
『アルテミス王室を訪問しておこうかな』
と決めて、アルテシア王妃に連絡を入れた。
王妃は、王宮にいるというので、直ぐに向かうことにした。
王宮に着くと、わざわざ王妃自ら出迎えてくれて、
「リュウ。待っていたわ」
「この日が来て、非常に嬉しい」
王妃は満面の笑顔を見せるのであった。
今回の訪問は、復興会議の大レセプションの時に王妃にお願いしたことに対する、最終打ち合わせの為の訪問であった。
それは、
『リュウとレイカーの挙式』
である。
王宮内には教会があり、どんな人でも利用が可能。
リュウもやっぱり一人の女性。
他人より遥かに短い寿命という宿命を背負っている以上、全てのことを悔いなくやっておきたいと常に思っている。
今回は、秘密を知っている内輪だけの出席であっても、挙式をしたいと思ったのだ。
彼女は、もう暫く軍人を続けねばならないのだから、せめて軍務から解放されている今のうちにと......
あとから、レイも王宮で合流し、2人で王妃に相談する形となった。
もう既に日取りも決まっており、王妃がリュウに、
「私は、あなたの母親代わりなのですし、命も救って貰ったのだから、せめて晴れの舞台の日に向けての準備は、全部任せてくれないかな?」
そう言われて強く押し切られしまったので、出席者なども全部王妃が決め、案内も出してくれている。
ただ、
「当日、誰が来るかはサプライズよ」
と言って、教えてくれない。
今のところ、丞相夫妻とアルテミス王と王妃ぐらい迄は判明しているが......
「リュウちゃん。 挙式を期に、名前を一本化するんでしょ?」
「はい。 今迄は男女2つの人格を使い分ける為に、名前を分けていましたが、今後は『リウ・アーゼル』の名前だけにします」
レイも聞いていなかった名前変更宣言。
「リュウ様、いやリウ様......」
「リウは中佐位まで呼び捨てだったから、何だか慣れるまで言いにくいなあ~」
レイが突然の変更を聞いて、少し嘆いている。
「もう男の人格は消えたんだから、いつまでも、リュウとかリウって使い分けるのもおかしいでしょ?」
「それにどっちかって言うと、リュウは男の名前で、リウが女の名前だよね」
笑いながら理由を説明するのだった。
「ああ、そうだ。 これから一人お客さんが来るんだけど。 あなた達2人の挙式に出席したいんだって」
王妃が突然、でもなんだかわざとらしい口調で、その人の要望を告げる。
リュウとレイは、
「誰ですか?」
そう質問するも、王妃は、
「それは来てからのお楽しみ〜」
と言って、教えてくれなかった。
当日着る衣装の打ち合わせをして、大体決まったところで、その人はやって来た。
それは......
リク・ルーナ大将だったのだ。
リュウは、ルーナ大将を見て、
「どうして、大将が......」
と言ったきり、珍しく固まっている。
大将は、
「リウ、こっち来てから、殆どリュウさんで動いていれば、嫌でも気付くって」
笑って答えてくれた。
なんとなく気付いてしまった理由を。
レイは、
『前に、ルーナ大将かルー少将にバレたら公表するって言ってたなあ』
そのことを思い出したので、リュウに、
「全面公表しますか? そういう話しも有ったですよね?」
と確認するも、まだ固まったまま。
そこで、動かないリュウに代わり、レイが、
「大将閣下、どのような経緯でリウの件、気付かれたのですか?」
と尋ねた。
大将は、
「リウがずっと体調不良だって言うんで、先日、ノイエ軍が駐留しているLSGホテルに見舞いに伺ったら、『リウ・プロクター少将を最近見掛けない』って言われたんだよね」
「それで、滞在していると教えて貰ったあの高級ホテル......そう、セレーネーホテルに行って確認したんだよ」
「そうしたらフロントで、『リウ・プロクターっていう人は滞在していない』様なことを言われて......」
「ちょうどその時偶然、リュウさんが大佐と一緒にホテルに戻ってきて、そのままホテル内を上がって行ったのを見たので、『あのノイエ軍の軍人さんは?』ってホテルの従業員に尋ねたら、『ずっと宿泊している方ですが、詳細は教えられない』って言われてね」
「でも、大佐は確か大レセプションで、リウと一緒に居た側近の人だったなって思い出して......」
苦笑いしながら説明を続けるルーナ大将。
「昔、リウだと思って声掛けたら、リュウさんだったことが有ったけど、やっぱり、リウとリュウさんが同じ人なのじゃないか?と感じたんだよ。 その時にね」
以前の出来事も有ったから、繋がったのだということであった。
「それにもし、リウが今でも存在するのだったら、2〜3回位は俺のところに遊びに来てるだろ?」
「でも、1回も来ないし、招待されているイベントも一つも出ていないっていうから......」
「最近アルテシア王妃を訪ねて、確認したんだよ。 絶対に口外しないから、教えて欲しい。 リウとリュウさんが同じ人なのか?って。 そうじゃないのなら、リウはもう居ないんじゃないのか?ってね」
「でも、人格は消えても、もう一つの本来の女性の人格、リュウさんと会えたからホッとしている」
「もしかしたら、本当はもう死んでて、影武者が実在しているように見せ掛けているんじゃないかとも考えていたから......本当に良かった」
と言うと、ルーナ大将は涙ぐんでしまった。
リュウも固まった状態から元に戻り、
「ルーナ大将、本当に申し訳ありません。 もっと早く打ち明けるべきでしたが、リウとの友情が深かったので、迷ってしまっていました」
と言って、落涙するのであった......
リュウは大将に、
「リウの人格は消えてしまいましたが、私の中にも大将とリウとの記憶は残っています。 それもほぼ全部そのまま......」
「だから、安心してください。 ただし私は女性なので、以前の様な男同士のハグとかは出来ませんけど」
リュウは、泣き笑いで話し続けたのであった。
少し昔話をしてから大将は、
「本当は女性なのに、ずっと男の人格が中心で、男を演じ続けるのは苦しかっただろうに」
「リュウさんが女性として、大佐のような良い理解者と巡り会えて、本当に良かったと思うよ」
「結婚おめでとう。 式には必ず出席するからな」
そう言ってから、笑顔を見せて安心した様子で帰って行った。
リュウは、
「もっと早く打ち明けるべきだったと後悔してます」
と言ったきり、涙が止まらなくなってしまった。
「一番最初の理解者だったのに......」
「なんか、裏切ってしまった気分です......」
嗚咽が止まらないリュウ。
レイは優しく頭を抱き寄せ、撫で続けるのだった。
「リウ様。 ノイエ国に帰ったらタイミングを見て、早い段階で親しい信頼出来る幕僚にはカミングアウトしましょう。 2人だけでは秘密保持が難しいですし、ルー少将あたりにはより早い方が良いと思います」
その様にレイは進言し、王妃も、
「信頼出来る人には、早く伝えた方がいいわ。 ノイエだと、総帥周辺以外、秘密を知っている人が少な過ぎるので、本当に心配に思います」
レイと同意見だと言って、同じように勧めると、リュウは頷くのだった。




