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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・龍翔篇

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第35話(エミーナの姉)

アルテミス王国政府は、中央捜査局捜査官の異常な捜査に漸く気付くも、リュウの反撃で窮地に陥る。


そこで西上国との交渉役に、エミーナの次姉エリー・シュンゲンが抜擢されるのだった......


 リュウは、尾行してきたアルテミス王国政府中央捜査局の捜査官2名を西上国軍に拘束させた。


 これが、想像以上の大きな問題になってゆくのだった。



 ノイエ国のプロクター少将に続いて、西上国のシヴァ丞相からもテロ事件の捜査に関し、

 「我々を犯人扱いするな」

との厳しい抗議が寄せられたので、アルテミス王国政府は動揺した。


 翌日に、シヴァ丞相夫妻を招く宮中晩餐会が開かれる予定もあり、西上国からの抗議に事態の重さを認識した首相府は、急遽調査を開始。


 その結果、中央捜査局が今回のテロ事件に裏が有ると決め付けて、犯人とは認められない関係者にまで捜査を拡大し、追跡や尾行を繰り返していたことが明らかとなったのだ。


 また拘束された捜査官2名について、中央捜査局は当初「当局の職員では無い」と否定していたものの、「事態を公表する」とシヴァ丞相側から仄めかされて、一転職員であると認める始末。


 拘束中の捜査官2名について、然るべき地位の者が引き取りに来なければ、西上国に移送の上、裁判に掛けるとも通告されたアルテミス王国政府首相府は、対応に頭を抱えていた。

 


 アルテミス王国政府首相ウィリアム・リイトンは、

 「どうしてこのような事態になったのだ」

 怒声をあげたものの、側近の中に誰も答えられる者は居なかった。

 首相府内では、

 「王室に、問題解決の依頼をされるしか無いのでは?」

という意見が大勢となり、翌日の宮中晩餐会の席でシヴァ丞相夫妻に首相府から詫びを入れる機会を設けさせて貰うことで、結論をみた。


 問題は、拘束されている捜査官の返還交渉である。

 「誰が引き取りに行くのか?」

という件は、なかなか埒があかなかった。

 シヴァ丞相の名声・威名は先の大戦で益々大きくなり、アルテミス王国政府の官僚・閣僚レベルの小者では、話にすらならない状況にあるからだ。


 首相府では急遽、中央捜査局の幹部全員を呼び出し、

 「お前達の不始末だから、引き取ってこい」

と指示したものの、中央捜査局の幹部全員が逃げ腰で、誰も引き取りに立候補しようとしない。


 「お前達の判断ミスで被害者側を怒らせたのだろ? 責任を取れ」

 首相自ら捜査局の幹部を問い詰めると、全員が辞表を提出する事態となってしまった。

 「我が国の高級官僚は、オベッカ使いばかりで、イザというとき役に立たん」

 そう言って、首相は怒り心頭なるも、

 ただでさえ、世界が注目する大復興会議中に、テロが起きて大恥をかいているのに、その捜査が的外れの方向に進んでいたことで恥の上塗りとなってしまい、事態が急激に悪化したのである。

 新たな問題を引き起こした中央捜査局が事態の収集を放棄して、幹部が全員辞表を提出したため、問題解決の対策会議を急遽招集することにした。



 「3ヶ月後には、ノイエ・アルテミス連合政府の国家元首選挙もあるというのに、何という失態続き」

 焦りを見せるリイトン首相。

 「先ずは、クメルホテルに出向いて、恥をかいてくる奴だ」

 「誰か居ないのか?」

 大勢集まった閣僚や高級官僚に立候補を求めるも、誰も手を挙げない。

 「お前等、これだけ揃っていても、シヴァ丞相の前に出て頭を下げることが出来る奴が一人も居ないのか?」

 首相は罵倒し続けるも、結局誰も立候補しなかった。


 「それでは仕方ない、何か良い意見のある奴は?」

 すると、一人の高級官僚が手を挙げた。

 「言ってみろ」

と意見具申を促す。

 その官僚は、

 「丞相夫人は、ASJグループの四姉妹の末っ子です。 姉の三姉妹の誰かに、拘束されている捜査官2名を引き取りに行って貰うというのは如何でしょうか?」

と述べた。

 「才媛三姉妹に頭を下げてお願いするのか? 俺がか?」

 首相は嫌そうだったが、他に意見は出ない......

 

 「わかった。とりあえずASJグループの会長室に連絡を入れてみろ」

 首相は側近に指示をした。


 すると暫くして側近が、

 「エリー・シュンゲン様が引き受けてくれるそうです。 勿論条件付きですが......」

と首相に伝えてきたのだった。



 エリー・シュンゲン。

 四姉妹の次女で、ASJグループのCOOの地位にある才女だ。

 エミーナの十歳年上の姉で、如何にも仕事が出来るという感じのキャリアウーマンである。


 エリーは通常通り仕事中、突然、首相府から、

 「三姉妹の誰かに、シヴァ丞相夫人との仲を取り持って欲しい」

との連絡が入った時に、たまたまASJグループの本社会長室に居ただけである。


 秘書からの連絡を受け、

 「何それ。 意味がわからないんだけど?」

 首相府が言ってきたことが、完全に意味不明なので、イチから説明する様に求めた。


 その結果は、

 『昨日壊されたうちのホテルのテロ捜査で、中央捜査局が暴走して、シヴァ丞相の怒りを買ってしまったらしい』

ということまでは理解出来た。

 「うちはホテルを半壊させられた被害者よ。 なんで政府と妹との仲を取り持たなきゃいけないの?」

 エリーは秘書に文句を言ってみる。

 テロの現場となったカリステーホテルは、ASJグループが保有する老舗ホテルだったのだ。


 「そうね。 テロの被害額を全部政府が補償、更にプラスアルファーして払ってくれるのなら、話を聞いてあげるわ」

 エリーCOOは秘書に、協力する条件を話して、首相府に確認するよう促した。

 秘書がその旨を首相府側に告げると、首相府は即その条件を丸呑み。

 それを聞いて、

 「これは、相当困っているってことね」

 即その様に理解したので、秘書と側近に、

 「『三十分で首相府に行くから、そこで詳しく話をしましょう』と伝えて」

と言ってから、復興会議で惑星アルテミスに滞在中の妹のエミーナと連絡を取り始めた。


 「エミーナ、超久しぶり〜。元気にしてる?」

 画面越しのエミーナに手を振る。

 エミーナは子供達と一緒に遊んでいたようだ。

 「エリーお姉ちゃん、急にどうしたの?」

 突然連絡してきた姉を不思議がる様子。

 「同じ惑星に居るうちに一度位、連絡しておこうかなと思って」

 「だって、明日晩餐会で逢うでしょ?」

 エミーナが『おかしいよね』と言いたげな雰囲気で答える。

 「そうなんだけど......周りくどい言い方しても仕方ないか〜」

 「エミーナに一つ聞きたいことがあるんだけど、丞相府とうちの政府、何かトラブル発生中?」

 単刀直入に聞くことにしたエリー。

 「えっ、そんなに大きなトラブルじゃないと思うけど......」

と答えるエミーナに、

 「詳しく教えてくれないかな?」


 「そう言えば、お姉ちゃんごめんね~。 折角無理言ってホテル貸して貰ったのに、テロで壊されちゃって」

 「丞相も『晩餐会で三姉妹とお逢いしたら、謝罪と補償をしないと』って言ってるから」

 先ずエミーナは、テロでASJグループ所有のホテルが壊されたことを謝罪した。


 「それでね。 今こっちで、アルテミス王国の中央捜査局の捜査官2名を拘禁しているよ。 多分トラブルってそのことじゃないかな?」

 エリーは、

 「もうちょっと詳しく教えて」

とお願いする。


 そこで、エミーナは、

 「簡単に言うと......アーゼル財閥のリュウちゃん居るでしょ?」

 「うん」

 「中央捜査局がリュウちゃんをテロ絡みで怪しいって尾行して、リュウちゃんに反撃されて、捜査官2名がこっちの軍に捕まったってこと」

 「罪名はストーカー。 引き取りに来たら返すって言っている筈だけど」

 これを聞いて、エリーは笑い始めた。

 「そうなんだ〜。 あんなカワイイ子のあとをずっと付けてたら、その時点でストーカーだわ」

 妙に納得してから、

 『政府が困っているのは、捜査官の引き渡しね。 シヴァ丞相にビビって誰も行こうとしないんでしょ』

 『だから、私に行ってくれっていう話ね』

と政府の思惑を理解し、

 「エミーナ、あとでそっちにお邪魔するわ」

 結局、今日中に訪問する旨を伝えたのだった。



 その後、エリー・シュンゲンは首相府に移動すると、首相自ら出迎えを受けるという極端な歓待を受けた。

 「これはこれは、私ごときを首相閣下自らお出迎えとは恐縮です」

 「余程お困りなのですね。 今回のトラブル」

とエリーは言い、出方を窺ってみると、

 「COO自ら直ぐに来て頂いたのに、出迎えなければ失礼に当たりますからな〜」

 ひとまず余裕の態度を首相は見せる。


 首相府の貴賓室に案内されてから、エリーは

 「首相、私が何も調べもせずに、ここに来たとお思いですか?」

 キツイ一言を喰らわす。

 「形式上の挨拶はもう要らないですよね?」

 「こちらの条件は、先程言った通り補償+迷惑料。 テロ発生の責任の一端は政府にもありますから。 公文書で約束頂きましょう」

 「それともう一つ。 そちらで丞相に詫びを入れる地位の高い方を2〜3名出して下さい。 私は仲を取り持つだけで、謝罪する立場ではありませんから」

 エリーは交渉の矢面に立つ条件を言った。


 首相は、

 「誠に申し訳ない。 中央捜査局の局長と上司の長官を差し出すので、どうぞよしなにお願い申し上げる」

と独断で決定し、秘書官に直ぐに呼びに行かせた。


 エリーは、ビビリながらやって来た2名を見て、

 「今回の件、貴方達は自ら立候補して丞相のもとに謝罪に行くぐらいじゃなきゃ駄目じゃないの?」

 ピシャリと叱責してから、

 「懐に辞表を入れて置きなさい。 それぐらいしか丞相に出す手土産無いでしょ?」

と指摘され、2名は首相府の秘書官が直ぐに用意した辞表を懐に入れた。


 「それでは、リイトン首相閣下。 行ってきますわ。 一言付け加えさせて頂きますけど、2名の捜査官を今日は引き取りません。 無関係の美女をストーカーしたことで明日までしっかりお灸を据えて、晩餐会後に改めて引き取るという予定でお願いしますね」

 その様にエリーは言い残すと、アルテミス・クメルホテルへと出発するのだった。



 クメルホテルに到着すると、エリーを待っていたエミーナの側近がおり、直ぐにホテル内へと案内された。

 しかし一緒にやって来た局長と法務長官は、警備をしている西上国軍関係者から

 『通常のセキュリティチェックを受けるように』

と指示され、露骨に待遇の差があった。

 「普段尊大な、小者共にはいい気味だわ」

 その様子を見ていたエリーは、早速エミーナのもとに向かう。


 エリーが案内された部屋には、エミーナとフォルラン准将、それに若い女性が待っていた。

 『この子がエミーナの親友のリュウ・アーゼルね』

 面識は有るが、話すのは初めての二人。

 エミーナが

 「お姉ちゃん、久しぶり〜」

とエリーに抱き付く。

 「エミーナ。 変わらずカワイイままね~。 ちょっと羨ましいわ、女性として」

 外見上歳を取らない妹と、再会の挨拶をした。


 「お姉ちゃん、この子がリュウちゃん」

 エミーナが紹介すると、

 「リュウ・アーゼルです。 どうかお見知り置きを」

と挨拶された。

 エリーは、

 「リュウさんのことは、以前からエミーナより話を伺っております。 何度かASJビルのラウンジでお見掛けもしています。 姉のエリーです。 こちらこそよろしく」

と言いながら、

 「初めて話すけど、ラフな格好でも超カワイイ子だなあ」

という感想を持った。


 「私は丞相閣下の警備室長をしているフォルラン准将です。 今回の件についてこれからご説明させて頂きます。 よろしくお願い致します」

 エリーに准将が自己紹介すると、

 「妹のエミーナの警護、いつもありがとうございます。 二番目の姉に当たるエリー・シュンゲンです。 こちらこそよろしくお願い致します」

 先ずは軍の代表者に挨拶を交わす。


 「それでは、早速......」

 准将からエリーは、今回の事件の概要の説明を受けた。

 「原因は、テロの被害者である西上国やノイエ国を中央捜査局が深読みし過ぎて、勝手に犯人扱いしたことにあるのね。  アホな連中」

 エリーは冷たく言い放ち、

 「しかし、リュウちゃんの尾行をするなんて、どうしてそこまで極端なことするのかしらね~。 理解出来ないわ」


 「ところで、エリー様。 本日捜査官2名引き取っていかれますか? 丞相の許可が貰えればですが」

 准将が確認するも、

 「もう一日預かって頂けますか? 少しは痛い目に合わせた方が良いのですよ。 浅慮あさはかな連中なので」

 「必要なら、引き受けの書類は今日作って置くので、明日の晩餐会後にでも放り出して下さい」

 エリーは准将にお願いをした。


 「それでは、ご尊顔を拝見しに行きますか? マヌケな捜査官2名の」

 エリーはそう言うと、フォルラン准将の案内のもと、一緒に連れて来た長官と局長も、捜査官2名の様子を見に行った。


 軟禁状態の捜査官2名は、部屋の外の訪問者に気付き、その中に中央捜査局局長の顔があったので、ぱっと明るい顔となったが、局長が一向に視線を合わせようとせず、暫くしてそのまま去って行くのが見え、絶望的になった。

 『これは、西上国へ連れて行かれるかも』


 一行は、別の部屋に移動すると、

 「さてと」

 エリーは厳しい顔をして、小さくなっている法務長官と局長を一瞥した。

 そしてリュウが呼ばれてやって来たので、

 「この超カワイイ子が、あのマヌケな捜査官2名に付き纏われた被害者」

 「あんた達、この子に何か言うことは無いの?」

と説教を開始。


 法務長官と局長は、顔が引き攣っているリュウに対して、

 「中央捜査局の捜査官達が、西上国のみならず、我が国の法律にも触れる行為をしたことについて、お詫び申し上げます」

 絞り出すような小さな声で謝罪した。

 すると、リュウは、

 「声が小さくて聞こえね〜んだよ」

と一喝。

 これにはエリーも

 『おー、怖ー』

とビビるぐらいであった。


 「あたしが何したって言うんだよ、オッサン達よ~。 勝手にテロの犯人扱いしやがって。 付き纏うな」

 ブチギレた口調のリュウ。

 「あたしの彼氏にも付き纏いやがって。 法の執行者としての自覚が足りね〜から、自分達で法律破るんだろ〜」

 「で、今回の付き纏った捜査官達、どうするんだよ。 全部で十人位居るんだけどよ」

とブチギレたままのリュウ。


 局長と法務長官は、

 「懲戒免職処分にします」

と小さな声で答える。

 「は〜。 それじゃあこっちが逆恨みされるかもしれね〜じゃねーか。 何処か遠くの小星系に飛ばせよ。 降格させてな」

 「はい、そうさせて頂きます」

 二人を睨むリュウ。

 そして、そのまま部屋を出て行った。


 「あんた達、あの子が誰だか知ってる?」

 エリーが長官と局長に質問する。

 「知りませんが......」

 「あの子の姓はアーゼルだよ」

と教えるエリー。

 「この話が総帥の耳に入ったら......」

 「だから、今の口約束、キチンと実行しなさいよ」

 しっかり脅しておくのだった。


 シヴァ丞相は側近から、

 「テロの不適切な捜査の関係で謝罪したいと、王国の長官等が来ていますが......」

という確認があったが、それを聞いて溜息をつき、

 「辣腕女性経営者に仲立ちしてもらわないと、ここに来れないような小者だろ? 会う必要ないんじゃない?」

 「エリーさんとは会うから、その旨は伝えておいて」

と回答するのだった。


 みんなが待機している部屋に、エミーナが丞相の回答を持って戻って来た。

 「エリー姉さんとだけ会うって」

 「だから、他の人はもう少しここで待機していてね」


 ちょうどこの頃、レイはノイエ軍から求められた、今回のテロに関する追加報告を終えて、ホテルに戻ってきた。

 ところが、部屋にリュウが居ない......

 『これは、きっと、追尾者達を誘き出すために、クメルホテルに行ったな』

 そう判断したので、軍服から私服に着替えてクメルホテルへ向かうのだった。


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