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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・龍翔篇

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第33話(テロ)

西上国とノイエ国間で軍艦売却契約が正式に交わされた。


その会場でテロが発生する......


 アルテミス星系の首都星アルテミス。


 この日は、西上国の中古軍艦1個艦隊をノイエ国軍に追加売却する正式契約の調印式が行われようとしていた。


 その場所は、アルテミス王国資本が運営する老舗ホテル

  カリステーホテル

であった。

 代表者は、ノイエ国側がリウ・プロクター少将。

 西上国側がリョウ・シヴァ丞相。


 調印式が始まると、会場の裏側の左右から両者が別々に現れ、檀上に上がってからお互い歩み寄り、中央部で和やかに握手。

 そして、

 「丞相閣下、よろしくお願い致します」

 「少将、こちらこそよろしく」

 それぞれが短い挨拶を交わして、着席。


 目の前のテーブル上に置かれた契約書にサインを入れてから、再び立ち上がり、契約書を交換。

 双方が固い握手を交わして、記念撮影を開始。

 撮影が終わってから契約書を側近や関係者に渡して、もう一度握手をしてから、二人の代表者が檀上から裏側に下がって、式典は終了となった。



 その後、式典を終えて、関係者と少し談笑をしたあと、カリステーホテルを出るためシヴァ丞相が玄関付近まで移動すると、玄関脇にリュウが立っているのが見えた。

 先程までリウ・プロクター少将を演じていた筈のリュウが玄関脇に居て、丞相に気づくと、こっちに向かって駆け寄って来るのを見て、シヴァ丞相は、

 「リュウ殿、どうしてここに?」

と声を掛けた瞬間であった。

 玄関前の外側で爆発が発生したのだ。

 塵やら破片やらを巻き上げながら、吹き荒れる爆弾による暴風。

 西上国では、急遽丞相の迎えを大型軍用車両に変更していたのだが、それもひっくり返る程の威力であった。


 その暴風が過ぎ去って、周囲を覆った煙と砂塵が入り混じった靄が流れ去ると、そこにはリュウが丞相に覆い被さるように半身の体勢で屈んでおり、丞相もリュウも無事であった。

 リュウはすっと立ち上がって、丞相に

 「丞相、大丈夫ですか? 私は、個人用シールドを使っていますから」

と説明しながら、シヴァ丞相の負傷の有無を確認する。

 リュウ自身、個人用のシールドを突き破った破片によって、左腕に長さ数センチの浅い切創傷を負ったものの、他に負傷箇所は無かった。


 結局、丞相は無傷であった。

 リュウを見上げる丞相。

 そこには凛として立つ、スラッと背の高い筋肉質の美女が周囲を見渡して、警戒を続けている。

 『レイカー君の言う通り、神話のディアーナという感じか? 若しくは伝説のジャンヌ・ダルクもこんな感じであったのだろうか?』

 そう丞相が感じるほど、テロ現場という戦場に立つリュウの姿は美しく見えたのだった。


 爆発の規模は大きく、怪我人は多数出たものの、死者は出なかった。

 死者が出なかったのは、大型軍用車両が爆弾に対する壁となったことと、リュウの使っている個人用シールドが爆風の威力を大きく減衰させた為であろう。



 爆発直後に、ホテルの玄関先で、5発の銃声が響いた。

 それと共に5人の男女が倒れる。

 倒したのは、レイカー・アーサ大佐であった。

 そしてレイは、リュウを見つけると直ぐ駆け寄ってきて、

 「父からテロ情報が入ったのが10分前だったので、防げずに申し訳ありません」

 リュウの隣に居る丞相に、状況を説明したのであった。


 リュウは、

 「レイ、大丈夫?」

と言いながら、安心したのか直ぐに涙目に。

 レイは、

 「私は大丈夫ですよ。 それよりもリュウ様、お怪我をされているじゃないですか」

 リュウの左腕の切創に気付き、慌てて治療を始める。

 「レイ、私の傷はかすり傷だから大丈夫だから、ね。」

 「ダメです。 ちゃんと治療しないと美しい体に傷が残ってしまいますよ」

 負傷程度に比して、お互いに心配し過ぎの様子。

 その様子を見ていた丞相は、

 『リュウとレイは、いつもこんな感じなのだろう。 この間私達のもとに来た時も、待合室でそうだったし』

 二人だけの世界に何処ででも入ってしまう素直な姿を、微笑ましく見守るのであった。



 テロリストが全員倒され、追加の攻撃が無く、現場が落ち着きを取り戻し始めてから、シヴァ丞相は立ち上がると、無事だった者を指揮し、

  負傷者の救護と関係機関への救護要請

  周囲を立ち入り禁止にする措置

  犯人グループに関する捜索

などを即座に実施させるのだった。 


 間もなく、カリステーホテル周辺はサイレン音がけたたましく鳴り響き、王国の警察部隊や警護部隊だけではなく、アルテミス王国軍や西上国軍、ノイエ国軍の部隊も駆け付け、騒然とした状態になってゆく。



 その後、大佐が射殺した5人の持ち物や身元から、犯人は反グローバリズムを謳う過激派グループと判明した。


 「レイは射撃のスペシャリストさんなんだね?」

 リュウが嬉しそうに尋ねる。

 レイは、

 「リュウ様を狙う者に容赦はしません。 私はリュウ様よりも腕力が無い位なので、射撃の腕で補っているのです」

と説明すると、リュウは、

 「それって私が怪力だって言ってるの?」

 そう言いながらむくれたものの、レイは無視して、リュウの耳元で、

 「それより、少将は?」

と尋ねる。

 表情が一変するリュウ。

 「あっ、忘れてた。 どうしよう」

 調印式終了後、テロ事件発生直前に忽然と居なくなっている状態のリウ・プロクター少将について、どうやって再登場させるのか、全く考えていなかったのだ。




 調印式直前に時間を戻すと、

 レイの元に、突如父親からの暗号通信が届く。

 それは、

 「シヴァ丞相、プロクター少将、いま過激派に狙われている。危険」

との内容であった。

 驚くレイ。

 隣に居る少将姿のリュウに小声で、

 「丞相と少将に対するテロ情報が入ったから、個人用シールドを使って」

 真剣な表情で伝える。

 リュウには詳しい状況は分からなかったが、レイのただならぬ様子に、

 「うん、わかった」

と返事をして、二分後に始まる調印式が終わったら、直ぐに作動させると伝えたのだった。


 レイは、

 『ホテル内は厳重警戒だから、狙うのなら外からだろう』

と判断し、

 「ちょっと、周囲を探って来るから、調印式は欠席するね」

 リュウにテロ対策に従事すると伝え、直ぐに軍服の上からコートを着て少し変装してから、ホテルの外に出る。

 もちろん現地の西上国軍、ノイエ国軍の情報部にも、テロ情報が有るとの連絡を入れてからの行動である。


 そして、ホテルの直ぐ外で怪しい人物を注意深く探していると、

  玄関前から少し離れたところで談笑しながら、中の様子を窺っているような怪しい男女5人組

を発見した。

 『ちょっとおかしいな』

と思い、様子を見ていたところ、5人組は数分後に突如ホテルの玄関に向かって走り出して、爆弾を投げ付け、爆発。

 更にこの5人組は、ホテル内に突入しようとしたので、レイは使っている光子銃の出力を最大に設定。

 そして直後に全員を即射殺したのであった。

 射殺したのは、追加の攻撃や自爆攻撃を防ぐ為でもある。



 リュウの方は、調印式終了後に、直ぐ個人用シールドを作動させた。

 調印式中はシールドを使うと、他の人と握手とかが出来なくなってしまうからだ。

 少将が狙われているということだったので、リウの姿からリュウに戻ってリスクを減らしてから、玄関に移動。

 レイと合流するつもりだったのだが、ちょうど丞相が来たので、危ないと感じ、咄嗟に駆け寄ったのだった。



 「しかし、逃げるんじゃなくて、咄嗟に私を護ろうとしてくれるとは、本当に申し訳ない」

 丞相はVIP、しかも女性に怪我をさせてしまったことを心の底から詫びると共に、

 「折角、情報を貰っていたのに......」

 「それにしても、リュウ殿は、勇敢だね」

 改めて謝意と、感想も述べると、今度はレイがみるみる涙目になってしまった。

 それを見たリュウが、

 「レイ。 私はシールド使ってたんだから大丈夫だよ。 泣かないで」

 いつもとは逆の光景に。

 「リュウ様......シールドは完璧では......ありません......無茶は......止めて......」

 レイが涙声で諫める。

 「ごめんね。 でも身近な人が危ないと感じたら、レイも同じことするでしょ?」

 そう言われてしまうと、返す言葉の無いレイであった。



 テロ発生後の大騒ぎの中、どうやってリウ・プロクター少将を登場させるか?

 次はそこが問題であった。

 大佐がひとまず、現地のノイエ軍に

  少将は無事である

と伝えたものの、本人の登場のタイミングが難しい。

 様子をみながら、未だ大混乱の渦中にあることを利用して、ホテルの空き室に入り込んだリュウとレイ。

 そこで少将用の予備の制服を出して、リュウをリウに仕立て直す。

 リュウが最初に着ていた制服は、式典を行った階のトイレに隠したというので、大佐が行って回収する。

 そして、「体調不良で休んでいた」という理由で、丞相にも口裏合わせしてもらい、満を持して爆発でボロボロになったホテル1階ロビーに登場させた。


 「これはいったい......」

 驚いた様子の演技をするプロクター少将。

 そこでアーサ大佐が、

 「テロが発生しました。 負傷者多数ですが、死者は居ません」

 すかさず報告。

 少将は、現地に到着していたノイエ軍に対し、

 「原因究明と現場の関係者と協力して、復旧に当たって下さい」

と指示して、少し様子を確認してから、丞相と

 「お怪我はありませんか?」

などと軽く会話を交わした後、自然と現場を離れていった。



 リュウは、リウ・プロクター少将として、そのままテロ現場を離れて滞在先のホテル「セレーネー」に帰るのだった。

 そして、着替えて変装してから、再びテロの現地に戻る。

 それは、レイが犯人グループを射殺したことで、現地当局による事情聴取が始まるからであった。


 アルテミス王国政府としては、

  最上級の賓客である西上国のシヴァ丞相とノイエ国のプロクター少将が狙われたテロを未然に防ぐことが出来なかったこと

で、大きく威信が傷ついてしまった。

 その為、事件発生後、この捜査に国の威信を掛けて全力投入してきている。

 ただ、面目が潰れたことで、過剰捜査に進みそうな気配も出ている様にレイには見えた。



 特に、レイカー・アーサ大佐が直前にテロ情報を入手し、アルテミス星系に駐留中のノイエ国軍と西上国軍に、その情報を直ぐ転送し、その後犯人グループが自爆テロをする前に全員を射殺した経緯に、アルテミス王国の捜査当局は大きな興味を持っていた。

 そこで、ノイエ国軍に対して、大佐の取り調べ許可を求めるのだった。

 軍側は、大佐自身の意思も確認した上で、許可をする。



 アルテミス王国の捜査当局の要請で、現場のホテルの一室で始まったレイの取り調べ。

 かなりの長時間に及んだが、6時間後にやっと解放された。

 その間、負傷者やその家族の待合室には、心配そうに待つリュウの姿がずっとあった......

 珍しくサングラスをして、深くキャップ帽を被り、長い髪は束ねてキャップ帽の後方からポニーテールの様にして出している姿だったので、リュウだと気付く者は、誰も居なかったのだが......



 疲れたレイは、ホテルセレーネーの部屋に戻る為、待合室となっている多目的会議室の前を通り掛かると、ずっと待っていたリュウが駆け寄って来て、飛び付いてきた。

 「レイ、お疲れ様」

 「リュウ様、ずっと待っていて下さったのですか?」

 「うん、心配で」

 「ありがとうございます」

 「長かったね〜」


 そしてレイは、リュウの手を繋いで歩きながら、長時間の取り調べになった理由を話し始めた。

 「結構絞られましたよ」

 「情報源はどこなのか?」

 「アルテミス王国の当局に情報提供しなかった理由」

 「百発百中に近い銃の腕前とか」

をしつこく......


 ホテルの玄関を出てからは、周囲に人も居ないので、より具体的な話をし始めた。

 「『情報提供者は親父だ』って言っても、『何処にいるんだ』ってしつこく聞かれて......」

 「親父の居場所は、本当に知らないので『知らない』って答えたら、『そんな訳無いだろ』とか」

 「アルテミス王国の当局に連絡しなかったのは、単純に連絡先を知らなかったのと、時間が無かったからですが、『おかしい』って言われて......」

 「銃の腕前がイイのも、だいぶ突っ込まれました。 『どこかの諜報部員では無いのか?』ってね」

 「まあ、それだけは、ハズレじゃ無いですけど......」


 そして、今後の展開について、

 「このままだと、リュウ様を探し始めるかもしれません。 『死者が出なかったのがおかしい』って言い始めているらしいですから」

 レイは予想をリュウに話して、警戒する様に求める。

 「リュウ様は、いつも通り、撮影妨害装置使ってますよね?」

 レイが確認すると、

 「うん、リュウの時は100%使っているよ」

 「だから、防犯カメラや監視カメラに影しか写って無いので、その人物を見つけようとし始めたみたいなんですよ」

 「実行犯が死んでいるので、捜査の方向がズレてきてる感じがしますね」

 「キチンと犯人の組織を調べる方向に行くべきなのに、他国のみが絡んだ事件だから、陰謀論、即ち『西上国とノイエ国がアルテミス王国に恥をかかせる為でっち上げた』っていう説に乗っかりたいのかもしれません」

 「警備の失敗が引き起こした事件ですから......」

 レイは捜査当局の矛先が自分達に向くかもしれないと、警戒を強めるのであった。


 そして、やにわに、

 「リュウ様、このままホテルセレーネーには戻らず、少し違うところに向かっても良いですか?」

 レイがリュウに提案する。

 それを聞いたリュウは、

 「もしかして......」

 「その、もしかですよ」

 「つけられているのか~。 仕方無いね~」

 リュウはちょっと残念そうに言い、

 「それでは、夜のデートにしようね」

 直ぐに気持ちを切り替えて、歩みを速めたのだった。


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