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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・龍翔篇

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第32話(母と娘)

戦後の復興会議を彩る史上最大級のレセプション。


リュウ・アーゼルはプロクター少将として出席せざるを得ないが......


 惑星アルテミスに到着してから、2週間が経ったリュウとレイ。


 リウが消えてから、最大の難問がついに降り掛かってきた。

 それは、復興会議における大規模レセプションへの招待であった。


 リウが消えたことを、今迄は王室の方で上手く誤摩化してくれていたので、色々な招待がキャンセルとなっていたが、誤摩化しの効かないイベントが来てしまったのだ。


 リュウは、

 「レイ、大丈夫かなあ~」

 不安そうな表情で言う。

 レイは、

 「普段通りにしていれば、大丈夫ですよ。 リュウ様は、リウなのですから」

 「リュウ様が思っている以上に、リュウ様は堂々として見えるんです。 それは長年リウ・プロクターだったからなのでしょう」

 その様に説明をすることで、リュウを励ますのであった。


 「今回のレセプションでの最大の問題は、リウが一番親しかったルーナ大将でしょうか?」

 「リュウ様に確認しますが、ルーナ大将とリウのやり取りは、結構覚えてらっしゃるのですよね?」

 「うん。 あの頃は人格の乖離が少なかったからだと思う」

 「それならば、相違部分は、記憶障害で通せるでしょう」

と改めて状況確認をする。


 「ただ、リュウ様とルーナ大将にも接点が合ったのですよね?」

 「そうなのよね。 それは完璧に覚えているよ」

 「そうなると、雰囲気で気付かれるかもしれませんね。 リウじゃなくてリュウ様だと」

 「もし気付かれたら、教えて下さい」

 「その時は、私が大将に説明しますから」

 「私も、レセプションで対応しなければならないこともあるでしょうし、ずっと一緒に居れないと思いますので」

と言い、必要があれば、駆けつけて対応するから安心するように伝えるのだった。


 この出張が終わると、今回の西上国中古艦隊の調達に関する功績も評価されたレイは、准将に昇任予定であった。

 役職は、第三艦隊の参謀長のままであるが。

 将官になれば、今迄以上に、外部の人との接触が増える。

 その為、レセプションでは、レイ自身も色々な人々と対応をしなければならない。


 そして2人共、ノイエ国軍の礼服に着替えた。

 少将と大佐は少し異なるが、真っ白の軍の礼服は、それを着ているだけで、非常に格好良く見える。


 「それでは、行きましょう。 少将」

とレイは言い、ホテルの玄関に迎えに来たアルテミス王国軍の車両に乗り込み、会場に向かった。



 本来は、王宮がレセプションの会場となるのだが、今回は大規模修繕工事中のため、

 「アテーナイ・ガーデン」という大規模複合施設・展示場

で行われる。

 3カ国の軍官民の関係者が一同に集まる、今回の復興会議で最大級のイベントだ。

 参加者は数万人規模。

 一説では10万人近くになるとも言われる。

 警備やスタッフ等を加えれば、その5倍位の人間が1箇所に集まるのだ。

 『お互い、一度離れたら、終了迄見つけるのは困難だろう。

 色々な人と談笑もしなければならないし』

 レイはリュウを横目で見ながら、そのように考えていた。


 会場に到着すると、早速リュウは話しかけられる。

 「これはこれは、プロクター少将閣下ではありませんか?」

 「今回の大戦の英雄に、こんなところでお会いできるなんて、非常に光栄です」

 その挨拶に対してリュウは、

 「英雄だなんて、滅相もございません。 小官はただの一軍人でしかありませんから」

と返答をしてから、話し掛けてきた人にお辞儀をし、案内係に付いて会場内に入っていった。

 レイもとりあえず、同行出来るところ迄は同行しようと、あとを追いかける。



 案内された席は、リュウとレイが隣同士になっていた。

 これは、王室の配慮であろう。

 ただ席に座っていられるのは、最初の二十分程度で、以後少将は何処かに連れていかれるだろうと予想された。


 リュウは、敢えてレイの方をあまり見ないようにしている。

 見ていると、恐らく、恋人感が自然と出てしまうだろうからと、警戒しての行動だ。


 時間が経つに連れ、多くの人が集まってきて、2人にも色々な人が挨拶をしてくる。

 特に、リュウには、ひっきりなしに挨拶する人が来て、それだけで本当に大忙しだ。



 夕方午後6時。

 惑星アルテミスの王都はまだ明るい時間であったものの、レセプションは始まった。


 主催者のアルテミス王国政府首相が挨拶をした後、アルテミス王が乾杯の音頭を取る。

 「乾杯〜」

 もの凄い数の声が唱和したことで、会場の建物全体が震える様な轟音が響いた後、各所で談笑が始まる。

 やがて立食形式に改められ、リュウとレイは離れ離れとなってしまった。


 レイは、それ程知り合いが居る訳では無いのだが、ノイエ国軍の関係者からは、結構挨拶を受けている。

 『近い将来の後方司令官』

 間違いなく出世するだろうという評価が、レイカー・アーサ大佐であるからだ。



 リュウは、既に揉みくちゃ状態。

 次から次に人が押し寄せて来て、握手や記念撮影を求められる。

 アルテミス王国とノイエ国の官民が、我先にという感じだ。

 挨拶だけなので、リュウは完璧にリウ・プロクターを演じることが出来ている。

 でも、流石に疲れて来て、

 『いい加減、ひと休みしたいなあ』

と思っても、仕切ってくれるレイとはぐれてしまったので、なし崩し的に、挨拶を続けていた。


 その様子を、偶然通りがかったアルテシア王妃が見て気付き、近づいてきて、群衆の中を割って入り、

 「少将閣下は体調が優れないので、このあたりにしておいてあげてくれませんか」

と呼び掛けてくれたので、リュウは漸く満員電車の様な状態から解放されたのだった。


 「王妃、ありがとうございました。 仕切ってくれる者が居なくて......」

とお礼を述べると、

 「大丈夫? 体触られたりしなかった?」

 女性らしい気遣いの言葉を掛けてくれた。

 「大丈夫でした。 私も今は軍人ですからね」

 リュウは力強く答えると、

 「確かに。 見た目はリウそのものね」

とリュウの耳元で言い、

「ひとまず、私と側近が少将と一緒に居ましょう。 大佐さんが、気付いてここに来てくれる迄」

と申し出てくれたのだった。


 ところが、王妃の存在に気付いたリク・ルーナ大将の一団が近づいて来てしまったのだ。

 リュウは、

 「これは不味いかも」

と思い、緊張感が走る。

 ルーナ大将が、

 「王妃、こちらにおられたのですか?」

と声を掛けて来たのち、リウがいることに気付いた。

 「おお、これは大戦の英雄殿。 王妃と一緒におられたのですね」

 「大将閣下も、ご健勝で何よりです」

 当たり障りの無い言い方で乗り切ろうとするリュウ。

 「おっと、そんな固い挨拶は『らしくない』から、もっと楽に行きましょう。リウ」

と言われてしまい、

 『しまった』

と思ったリュウ。

 リウとルーナ大将は、『忘年の友』だからである。


 「レセプションが始まる前から、挨拶ばかり2時間位続けていたので、つい固い言葉になっちゃいました」

 言い訳をしながら、上手く言葉遣いを和らげるリュウ。

 「そりゃあそうだ。 みんなが殺到してきて大変だっただろ? そう言えば、ノイエの軍関係者は、リウの周囲に居ないなあ」

 「人が押し寄せて困っているみたいだから、とりあえず、俺の護衛から数人割いてここに置いて置くよ。 王妃もおられるし」

 そう言って、取り巻きの護衛から3人を割いて、王妃と少将の警護と人流の整理を指示してくれたのだった。

 そして、

 「俺も階級だけ高くなっちゃって、色々周らなきゃイケナイ立場だから、一旦失礼するよ」

 「リウ、お前のせいだからな」

 指を差しながら言われてしまい、

 「ははは」

 愛想笑いで返すリュウ。

 「それじゃあ、また」

と言い残して、大将はその場から離れていった。


 王妃も気になって、黙って見ていたが、

 「大将は、ちょっと鈍感だから、今回は小さな変化に気付かなかったようね。 でも、私でも『やっぱり何か違う』って感じる位だから、ルーナ大将だけは気を付けてね。 もう駄目だと思ったら、私から説明するから......」

 リュウが演じるリウの状況について、小声でリュウに説明するのであった。

 その評価を聞いて、

 「やっぱり、少し違いますか?」

と確認する。

 「同一人物だから、違う筈ないんだけど、近しかった人だけが感じる微妙な空気感かな?」

 王妃はその感覚的な相違を的確な表現で説明してくれたのだった。



 そして王妃は、側近に何かを指示すると、

 「リウ、久しぶりだから、暫く私と談笑しましょう」

と言い、

 「リュウちゃんとこうして話すのは、初めてだね」

 耳元で囁いてから、

 「何も食べて無いのでしょ? さっきの様子だと」

と尋ねられたので、

 「全くその通りです。 ずっと人の波にさらわれていましたから」

 苦笑いしてリュウは頷いて答える。

 すると、側近の者が食べ物を持って戻って来たので、

 「少し食べながら、近況でも話しましょう」

 王妃は気を遣って、そう言ってくれたのだった。


 プロクター少将に話し掛けたいという人達は、近くに沢山来ていたが、流石に王妃と話をしている状況では割り込め無いので、様子見をするだけの状態となった。

 「ありがとうございます。 王妃のお蔭でこっちに来たい人も遠慮してますね」

 リュウが周囲を見渡しながら感謝を述べると、

 「流石に育ての親との再会を邪魔することは出来ないでしょ?」

 そう言いながら、会話が周囲に聞こえなくなる消音装置を王妃は作動させた。


 「これで、安心して話せるわね」

 「一度リュウちゃんと女同士という立場で、キチンと話をしてみたかったのよ」

 王妃は嬉しそうに話し出す。

 「私がリュウちゃんを女の子だって知ったのは、不老装置の手術の時ね」

 「それまでは、知らなかったわ」

 それに対してリュウは、

 「私自身もそのことを知ったのは、十歳位ですからね」

 「今でも、祖父様を恨んでますよ」

 「お蔭で、三十歳目前迄独身ですからね。 人生の半分が過ぎたのに」

 肩を竦めながら冗談を交えて話すと、王妃は暗い顔になってしまい、

 「ごめんなさい。 銃撃の時庇ってくれたせいで......」

 昔のことを言い出したので、リュウは、

 「気にしないで下さい。 今でも19歳のままでいられるのは、結構面白いですよ」

 「漸く、彼氏も見つかりましたし」

 少し嬉しそうに話すのだった。


 すると、王妃は、

 「彼氏って、あの大佐さんでしょ?」

 一発で当てられてしまったので、

 「ええ。ノイエ国軍士官学校の同期生なのですけど、それ自体が祖父様の命令だったという面白い状況で」

 「でも、今思い返しても、あの頃からリュウの中では好きだったんだと思います。 リウと彼は学校以来ずっと親友という関係でしたが」

 実は結構前から気になっていたのだと説明をし、

 「リウが少将に昇任して、自分の幕僚を選べる立場になったときに、大佐は自身の正体を告白して、側近に加えて欲しいって言って来たのです」

 「それから約4ヶ月。 ほぼ毎日一緒に過ごすようになって一気にって感じですね」

 「彼は私を好きになって約13年だそうなので、本当にピュアな恋ですよ」

 リュウは笑顔で惚気話を育ての母にするのであった。


 すると王妃は、

 「こういう会話が出来る日が来るなんて思わなかったわ。 リウは無理して男のリウ・プロクターを演じ続けていたから」

 「私もです。 前から本当の母親は王妃だと思っていましたけど、リュウとして話す日は、もっとずっと先だと思っていました」

 お互いに母娘という関係で、話を出来て嬉しいとようやく言えたのだった。


 「リウとしては、帝國軍が大敗したので、やっと少し安心出来たのだと思います。悪夢を見続けて、それを避ける為に全てを捨てて生きてきたのですから......」

 「そして、リュウがレイカーへの気持ちを抑えられなくなってきたのを感じて、やっと席を譲ってくれたのです。 今までゴメン。 偽者が体を占領し続けてって言い残して」

 リュウはリウが消えた理由を説明するのだった。


 今後については、

 「もうリウは戻って来ません。 声も聞こえないし、存在を感じなくなりました」

 「ただ、彼は計画の半分しか実行出来ていない時点で、居なくなったのです。 残りの半分は、それを大体知っている私とレイで、リウの立てた計画を最後まで実行出来ればと思っています」

 「それが、私の恋のために道を譲ってくれたリウへ出来る唯一の恩返しだからです」

とリュウは王妃に言うのだった。


 「そうだ、王妃に一つお願いが有るのですが......」

 リュウはその様に別の話を切り出してから、ノイエ国に帰る前に、王室の施設を借りたいと申し入れ、王妃は喜んで承諾したのだった。



 王妃とだけ話をしていると、他の沢山の参加者に恨まれそうなので、ここで打ち切ることに。

 ルーナ大将から借りた3名の護衛にお願いをして、リウ・プロクター少将と挨拶したいという人の列を整理してもらい、一人ずつ短時間で対応し続けることにした。


 暫くすると、やっとリュウを見つけたレイが現れた。

 リュウの為に、人の列の整理をしているアルテミス王国の護衛兵の姿を見て、

 『結構上手く対応出来たのだな。 流石リュウ様だ』

と思いながら、

 「少将、こんなところでサイン会ですか?」

と茶化して、リュウに声を掛ける大佐であった。



 その後、再びルーナ大将が戻って来た。

 しかし今回は、直ぐ側にレイが居る安心感があった。

 「大将閣下、護衛兵ありがとうございました」

 「お蔭で、無事にサイン会出来ましたよ」

と言うと、大将は、

 「おっ、役に立ったかい。 それは良かった」

 「かなり疲れただろ? 体調が優れないと聞いているぞ。 大丈夫か?」

と質問されたので、

 「ちょっと、記憶障害みたいのが有るのですけれども、とりあえず大丈夫ですよ。 記憶障害で大将のことを忘れちゃいそうですが」

 冗談っぽく返すと、

 「それだけ憎まれ口叩けるんなら大丈夫だ。 お互い閣下と呼ばれる立場となって、責任も重くなり、大変だけど、もうひと頑張りしないとな」

 ルーナ大将はその様に励ましながら、手を上げて去って行った。


 レイは、ルーナ大将との、やり取りを聞きながら、

 「少将、今回は大丈夫そうですね」

 二人にしかわからない表現で伝えたところ、

 「そうだね~。 大佐が居たから安心感があったよ」

と答えることで、

 『レイが居たので、何とか無事乗り切れたね。 ありがとう』

というリュウの心の中の声も伝えたのだった。



 暫くして、レセプションは無事終わり、宿泊しているホテル「セレーネー」に戻ったプロクター少将とアーサ大佐。

 部屋に入ると直ぐ、リュウはレイに頑張ったご褒美をねだった。

 「リュウ様、ご褒美と言われましても......」

 駄々っ子に少し困った様子だったが、

 「佐官の礼服も着るのは最後でしょうから」

と言って、そのままディープキスをしてみた。

 「何だか、BLみたいだね」

とリュウの感想。

 『今後、艦隊に戻ったら、そういう雰囲気になっちゃうかなあ』

 少し真剣に対策を考え始めるレイであった。


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