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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・龍翔篇

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第26話(リュウの思惑)

リウの中のリュウは、レイカー・アーサ大佐に興味を持ち始めていた。

一人の中の2つの人格がせめぎ合ってしまい......


 暫くして、リュウの姿から戻ったリウは、レイに

 「ごめんね、リュウの姿でお願いしちゃって」

 「ああいう言い方じゃあ、お願い聞くしかないものね~。 ちょっとズルいと思ったんだけど......本当にごめんね」

とキチンと謝罪した。


 ただリウはレイに、

 「最近、リュウとリウの性格の解離が酷くなってきているんだ」

 二重人格っぽくなってきて、苦しんでいることを打ち明けた。

 「リウは、品行方正な優しい男。 でも弱い部分が結構あって、先の大戦でも泣き虫だったんだよね」

 「リュウは、男前な強い女。 口調も男っぽくて、サバサバしてる。 気が強くてウダウダ悩むんだったら、直ぐやっちゃえって感じ」

と大雑把に2人の性格を説明し、

 「士官学校入ってから、先の大戦迄、一度もリュウにはなって無かったんだけど、亡くなったハーパーズ提督の前で一度戻ってからは、リュウが出て来るのを徐々に抑えられなくなってきているんだ」

 「だから、さっきもリュウになることを抑えられなかった。 本当にごめん」

 「そして、今後もリュウがレイに迷惑かけちゃうかもしれない。 その時は、リュウを受け入れてあげて欲しい」

 最後の言葉は、少し意味深なお願いに聞こえたのであった。



 この日は、遅くなったので、宇宙艦隊司令部の隣にある軍事宇宙港停泊中の第三艦隊旗艦バルバドス内の司令官室で休むことにしたリウ。

 レイは、いつも通りアーゼル家の御屋敷に帰ったのであった。



 帰宅後、レイは、ずっと考え込んでいた。

 『リュウ様は、想像以上に苦しんでいる。 虐待に近いような幼少期の影響で、2つの人格が構成されている』

 『リウは、総帥が理想とした品行方正で誰にでも優しい男。 ただ優し過ぎて弱い部分も多い』

 『リュウ様は、恐らく本来のリウの姿。 総帥の理想に反発する心が作り出したもう一人の人格で、非常に強い女性』

 『先の大戦で大きな悲しみを受け続けた影響から、優しいリウが抑えつけられ始め、リュウ様の方が強くなってきているのかもしれない』

 「『もし、リュウ様がリウに勝ってしまったら......』自分はどうすれば良いのだろうか?」

と呟き、この日は眠れない夜を過ごしたレイカー・アーサであった。



 翌日、副官のカイキ大尉が出勤すると、少将も大佐も既に司令部室の自席に座っていたが、何だか空気が重いように感じた。

 大佐は考えすぎで寝不足、リウは昨日の夜のリュウとの解離で疲れていただけだったのだが。


 そこで、大尉は、

 「あの〜」

と2人に話し掛け、

 「私が帰った後、2人の間に何か有りましたか?」

 「何だか、部屋の空気が凄く重いんですけど......」

と質問した。

 素朴な大尉の、素朴な質問。

 それには、リウもレイも同時に笑い、

 「空気が重いか~」

 「流石、少将が副官に任じただけありますね」

とアーサ大佐が言うと、

 「そうでしょ?」

 リウが答えて胸を張ったので、大佐が、

 「でも、本当は......」

と言い掛けたところ、リウがリュウの目線で睨み付けたのに気付いた。


 「ああ、何でも無いです。 そういえば大尉、今日も研修会では?」

 大佐が確認すると、大尉は、

 「良かった~。 もしかしたら喧嘩したのかと思いましたよ。 あと半日研修会なので、行ってきますね」

と言うと、自席で研修の準備をした後、部屋を出て行ったのであった。



 大尉が出て行った後、2人は顔を見合わせて、

 「うちの艦隊には、ああいう素朴な方も必要ですね」

と大佐が言うので、

 「少し適当に選んじゃったけど、当たりだったと思うよ」

 リウは少し自画自賛気味に言うと同時に、

 「ルー先輩にも言ったけど、本人が知ったら傷つくと思うから、絶対言わないで。 言ったら次の作戦で死地に送り込むから......」

 笑顔ながらも、目元が全く笑っていない表情でリウがお願いしたことから、

 「リウ、わかってますよ〜。 さっきはすいませんでした」

と言いつつも、大佐は

 『リュウ様を少し出させてしまった。 大丈夫かな』

 昨日の件もあって、少し心配するのであった。



 リウが、副官をリストの中から、最年長者を選んだのには、少し理由がある。

 当初は、若手の中から選ぶつもりであったが、先に一つ歳上のレイカー・アーサ大佐を幕僚の一人として迎えることになったので、無理に若手を取る必要性が無くなったというのが一番大きい。

 副官候補の中には、色々なツテを使った自薦の者が多いということも聞いていたので、選びにくくなっていたのだ。

 だから、人事課の女性士官がリストを持って来たときに、リストが年齢順だということだけは気付いていたので、一番歳上の人を選んだという結果であった。



 第三艦隊としては、分艦隊司令官を今回置かないことに決めた。

 理由としては、准将の階級にある者の絶対数が少なく、副司令官と同階級になってしまうことがある。

 また、大佐を指名した場合には、戦艦の艦長と同階級になってしまい、それも問題となりそうだ。

 その為の決定である。


 カイキ大尉が研修から戻って来てから、

  司令官  リウ・プロクター少将

  副司令官 シュウゴ・コーダイ准将

  参謀長  レイカー・アーサ大佐

  副官   ジム・カイキ大尉

で、第三艦隊の司令部は決定したとの文書を作成し、宇宙艦隊司令部に提出するようにと、アーサ大佐が大尉に指示し、大尉は早速文書の作成に取り掛かっていた。

 

 漸く、第三艦隊司令部の首脳人事が決まったが、佐官級の参謀は、これから様子をみて人材を集めることにしている。

 それに、まだ大戦が終結したばかりで、出動予定は全く無いからだ。

 ひとまず、復興事業に軍部も協力することを求められているので、暫くの間はそれが艦隊のメインの仕事となるであろう。



 一週間後、副司令官に任命した

  シュウゴ・コーダイ准将

が司令部に現れた。

 「コーダイ准将です。 本日より副司令官の任務に従事します」

と司令官に申告したものの、怪我から完全回復した訳ではない為、当面カイキ大尉が、身辺のサポートをすることに決まった。

 間もなく、リウ・プロクター少将がアルテミス王国に長期出張するからである。


 副司令官を決める前に、レイカー・アーサ大佐がリウに対して

  出張云々

と言っていたが、それはアルテミス王国で開かれる政治や軍の協同会議に出席する為の出張だ。

 西上国とアルテミス王国、ノイエ共和国の三国同盟を一層強化する目的の会議で、色々なテーマ別に長期間行われる。


 商談も数多く予定されており、大戦の被害が大きかったノイエ共和国とアルテミス王国に対する大規模な復興事業も大きなテーマだ。


 今回、アルテミス王国から大戦の功労者として、リウ・プロクター少将が特別招待されているので、ノイエ軍の関係者では無く、ゲストとして約2ヶ月間滞在する予定となっている。

 勿論、ノイエ国・軍としても、少将を利用したアピールの場にしたい思惑もあり、長期間に渡り軍務から離れることを許可している。



 リウが出張へ出発する一週間前、2人きりで司令部室に居たとき、アーサ大佐は少将から、

  出張に同行すること

を求められた。

 「リウ、私も行かないとダメなのですか?」

 大佐が確認する。

 するとリウは、

 「行きたく無いの? それならば無理には同行求めないけど......」

 その言葉とは裏腹に、

 『付いて来て欲しい』

と暗に仄めかすような言い方をしている。

 「リウとリュウ様が心配ですから、付いて行きたいのは山々ですが......」

 少し渋る様子をみてリウは、

 「同行する理由付けが出来ないからっていうこと?」

と尋ねる。

 レイは、

 「その通りです」

と答えると、

 「それならば、もう許可貰ったよ」

「えっ」

 「『プロクター少将の護衛だ』って説明して......」

とリウが説明するので、レイは

 『護衛? ちょっとおかしい』

と感じ、

 「本当ですか? 私は参謀上がりですよ、表向きは。 そんな理由は通らない筈......」

 そう言ったところで、違和感を感じた。


 『まさか、リュウ様が......』

と思った瞬間、リウの様子が一変した。

 「今、レイが考えていること、当たり〜」

 「私のこと心配じゃないの?」

 突然、強い女性の言い回しに変わった。

 そこで、

 「リュウ様ですか......」

と確認すると、

 「向こうでは、シヴァ丞相とも何回か会合するから、嫌でも私が出て来るんだよね〜。 もうリウは用済みで出て来なくなるかも」

 「......」

 「冗談よ。 でもアルテミス王国に対してはリウ、シヴァ国にはリュウで対応するから、今のリウの状態だと、レイが必要ね」

と言われてしまった。

 レイは、

 「......」

 無言のまま、返事を出来ないでいると、

 「だいぶ不安定だからね、リウは。 もう役目を果たしたでしょ? 帝國軍を防いだのだから」

 そう言い放つリュウからは、

 『リウが消えるかもよ』

と仄めかす感じが漂っていたのだった。


 そして、

 「リウはみんなの為の存在」

 「でも同じ人物の中に私も居る」 

 「っていうより、リュウが本物」

 「リウは偽の存在、作られた存在なんだよね」

 リュウは、レイが懸念していた通りのことを主張したのだった。

 「それに気付いているのは、そう、レイだけ」

 「それで、どうする? レイカー・アーサ大佐」

と笑いながら、決断を求められた。

 レイはどうするのが最善なのか判断が付かず、

 「......」

 黙って考えていたが、

 「リュウ様、少し時間を下さい」

と答えるとリュウ様は消えて、リウに戻った。


 「レイ、本当にごめん」

 「もう、リュウが出て来るのを抑えられなくなってきているんだ」

 「本当の自分はリュウだから......」

と苦しそうな表情で言い、

 「リュウは、レイと話したがっている」

 「だから、レイを見るとリュウになっちゃう」

と言って、頭を抑えてうずくまってしまった。


 「リウ、リウ、しっかりしろ」

 レイが叫ぶと、

 「とりあえず、大丈夫だから」

と立ち上がり、自分の席に座った。

 そして、

 「レイ。 リュウが今すぐ返事を求めてる」

 リウが苦しそうに言うので、

 「アルテミス王国にお供しますから......」

とレイが答えると、リウは、

 「わかった、もう大丈夫だよ」

 そして、目を瞑ってしまった。


 暫くして、

 「レイ、ありがとう」

 「これで、リュウの悪さは収まりそうだ」

 リウは、そのまま椅子を倒して眠りについてしまった。


 レイカー・アーサ大佐も自席に戻り、リウの様子を気にしながら、仕事を再開すると、リウが立ち上がり、

 「第四艦隊の司令部室に行ってくる」

と言い残して、部屋を出て行く。


 暫くすると、ルー少将の声が近づいて来て、扉が開いた。

 「アーサ大佐、リウから話しは聞いた。 しっかり出張のサポートをしてくるんだぞ」

 「第三艦隊の方は、俺の方で一緒に管理しておくから気にするな」

と説明した後、部屋を出て行ったのだった。


 「これは、もう覚悟を決めて、行くしかない」

と悟ったレイ。

 既に、リウの中のリュウが根回しを始めていて、出張の同行にそれなりの理由が付いているようだ。

 『一体どうなるのだろう』

 かつて超やり手と言われた、憧れのリュウ・アーゼルの思惑に、少々戦慄を覚えるレイであった......


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