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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・飛龍篇

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第22話(勝利への道)

二世皇帝は、派遣した帝國艦隊へ補給部隊を送ったが、既に手遅れであった......


 ジョン・ルー准将は、先程リウから言われたことを思い出していた。

 「逃げてきた、帝國軍敗残兵の処遇は一任する」

という言葉だ。


 『敗残兵の処置か〜』

 今迄、そのようなことは考えたことも無かったし、そのような立場になったことも無かったので、どうすれば良いのか、直ぐには決められなかった。


 事実、もう逆転勝利は確定的と言える。

 帝國遠征軍は物資不足で、士気が大きく低下していることは容易に予想が付く。

 これから来る補給部隊を殲滅しなくても、今、総攻撃を掛ければ、帝國遠征軍は敗北するだろう。

 ただ、シヴァ丞相もアルテミス王国軍もリウも、帝國軍が二度と大遠征出来ないように、全滅させることを狙っている。

 だから、補給部隊を殲滅させることで、心理的なダメージを与え、

 『アルテミス星系に駐屯している帝國軍を全面降伏に追込み

、クロノス星系に駐屯している帝國遠征軍を全滅させる作戦

なのだろうと、ルー准将は予測していた。

 何故、クロノス側の遠征軍だけを全滅させようとしているのかと言うと、それは取り残された市民に対して、略奪や暴行だけでは無く、大虐殺までやった部隊だからだ。


 この敗残兵を捕捉した場合、どうすれば良いのか。

 ルー准将は決めかねていた。


 そこで、リウの意見を聞いてみること。

 どういう反応をするかは、ある程度想像していたものの......


 リウの部屋を訪れて、単刀直入に意見を聞いてみた。

 すると、想像以上にリウは激情してしまった......

 「帝國の敗残兵の処置、イマイチ決めかねていて、リウの意見を......」

と言った途端、リウは

 「八つ裂き、処刑。それ以外考えられない」

と怒りを込めての言葉だった。

 「戦艦トパーズで死んでいった仲間達のことを忘れたんですか? 先輩」

 「人道?人権? そんな綺麗ごとを与えて良い連中ですか? 奴等は」

 「地球テラ第一主義。 それを否定し、新天地を求めていった叛徒共の子孫が作った三国同盟の国民なんか、ゴミ屑だって今でも言っている連中ですよ。 テラは」

 「狩猟の如く、市民に襲い掛かり、残虐非道を繰り返してきた奴等。 今回もじゃないですか?」

 「ここで全滅させて、こ○してやるのが、当然でしょ?」

 「......」

 今迄のリウの人柄からは、考えられないような強い言葉の連続であり、その後言葉に詰まって、泣き出してしまったのだ。


 「わかった、わかった」

 「せっかく、立ち直りかけていたのに、すまなかった」

とルー准将は言い、宥め続けるしか無くなってしまった。

 「勿論......こんな言い方しちゃ......駄目だって......わかってるよ......でも......」

と言ってから、嗚咽が止まらなくなってしまったリウ。


 その姿を見て、引き続き宥めながら、ルー准将は、

 『実際、兵士の中に、リウの強い言葉と同じ反応をする者が多数出ることが予想される。 上司、同僚、部下を、この星系の大会戦で亡くした者が多いのだから......その後の大虐殺に家族や友人、恋人が巻き込まれた者も居るだろう......』

 そう考えさせられるリウの言葉であった。


 「綺麗ごとは言ってられないか」

 ルー准将は決断をして、リウに向かって言い、

 「降伏する者は、降伏を認め、処分は政府に委ねる」

 「逃亡を図る者は、容赦無く砲撃を加えて撃滅する」

 決めた方針をリウに説明する。

 そして、

 「明日迄、俺が指揮するから、今日は休んでてくれ。 本当にすまなかった。 頼ってばかりで......」

と言い残し、リウの部屋をあとにしたのだった。




 帝國内部では、先に補給部隊を送ったウォルフィー元帥の軍だけではなく、アルテミス王国、ノイエ国への遠征軍から補給部隊の派遣要請が相次いでいることを憂慮する声が大きくなっていた。

 「陛下、一旦兵を引かれては如何でしょうか?」

と進言する重臣も増えてきていた。

 シヴァ艦隊と対峙中の老将ウォルフィー元帥からも、

 「戦況が非常に悪く、補給も途切れがちで、出直した方が良い」

との書簡が何度も届いていた。

 二世皇帝自身も

 『戦況が悪いこと』

は十二分に理解していた。

 しかし、皇帝自身の

 『父を超える実績を残したい』

という執念が、史上最大の大遠征を始めた動機であり、既に未曾有の大きな損失も被っている以上、簡単に撤兵の決断は出来なかったのだ。


 暫く考え込む二世皇帝。

 熟慮の末、

 「要望通り、補給部隊を編成し、敵領へ派遣しろ」

と皇帝は命じた。

 帝國では、絶対君主である皇帝の意向に逆らうことは出来ないので、議論は終結。

 遠征軍の方針は、

  『継戦』

と決まったのであった。



 帝國軍では皇帝の命令を受け取ったものの、予備戦力が払底していたため、補給部隊に大規模な護衛を付けられない状況であった。

 仕方無く、戦線に近い星系の警備部隊から30隻の警備用巡航艦を集めて、即席の護衛部隊とし、120隻の大型・中型補給艦にエネルギーやミサイル、食料を満載して、アルテミス星系方面へと出発させたのであった。




 エペソス星系付近で、偵察衛星に反応があったと偵察部隊より連絡があったのは、ルー准将がリウを泣かせてしまってから5日後だった。

 内容は、

  帝國領方面から、艦影複数

との情報であった。

 指揮デッキに居たリウは、休憩中のルー准将を呼び起こすよう指示して、部下を走らせると共に、全艦に攻撃準備を指示した。


 急いで、艦橋に駆け込んで来たルー准将。

 待望の瞬間がやって来たのだ。

 近付いて来た艦影から、大半が補給艦であり、護衛艦艇の数はかなり少なかった。

 「リウ。 いよいよだな」

 ルー准将は緊張の面持ちで語り掛ける。

 「最終局面です。 護衛が少ないので、一挙に全滅出来るでしょう」

 リウも心臓がバクバク。

 もの凄くドキドキしながら答える。


 そして、ついにその時は訪れた......

 リウとルー准将は、麾下艦隊に、

 「全艦総力戦用意」

 「全艦全速前進」

と命令した。

 そしてスクリーン越しだが、直ぐ眼の前に、帝國軍の大型補給艦の集団が見えた。

 「全艦、攻撃開始」

 リウとルー准将が同時に命令を発する。

 その指示を聞くと、

 「中性子ビーム砲、撃て〜」

 「撃て〜、撃て〜、撃て〜.......」

と各艦の艦長が復唱し、連呼する。


 今迄、これほど速やかに命令が遂行されたことは無かっただろうというくらい、待ちに待った瞬間であった。

 クロノス星系を出発して約4ヶ月。

 帝國軍補給部隊とその護衛部隊は、エペソス星系に差し掛かる星域に於いて、一瞬で全滅し、戦況は完全に逆転したのであった。



 補給部隊を撃滅後リウは、8年前に西上国からノイエ国に帰る際、丞相から渡された超小型の超光速通信器のスイッチを入れた。

 帝國軍補給部隊を撃破した合図が、同盟陣営に流れた瞬間であった......


 この合図を期に、先ずアルテミス王国軍が移動を開始した。

 リウを迎えに来たアルテミス王国軍の新型艦の艦隊が、ルー准将の眼の前に現れたのは、補給部隊を撃破した5分後であった。

 『何という速さなんだろう』

 ルー准将は、あまりにも速いアルテミス王国艦隊の到着に驚いたが、

 『万が一、我々が補給部隊に逃げられた場合に備えていたんだな』

と気付き、あとはリウに言われていた通り、この宙域で300隻の混成艦隊は駐留し、同盟領内深く入り込んだ帝國遠征軍の帰還を阻止する行動に移るのだった。



 リウは、迎えに来たアルテミス王国艦隊に移乗する際、

 「先輩、あとはお願いします。 それと先日はありがとうございました。 思いっきり汚い言葉を吐いて、気持ちが軽くなりました」

と言い残し、アルテミス王国艦隊の新旗艦「レートー」に乗り込むと、アルテミス王国領方面に艦隊はあっという間に去っていった。


 ルー准将の側に居た部下から、

 「どうして、プロクター准将がアルテミス王国艦隊の艦隊司令官をするのですか?」

と不思議そうに尋ねられると、

 「それは、十数年前からの約束だからさ。 男と男の約束がもたらした結果だよ」

と答え、それは、

 『ルーナ大将とリウとの間の、昔の約束が果たされたこと』

を意味するのだった。


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