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【完結から1年。順次補正中】正史・銀河四國史(未来における英雄の生涯)  作者: 嶋 秀
RIU・飛龍篇

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第20話(補給)

帝國軍は、クロノス星系への攻撃を開始する。

防御指揮官代理に就いたジャン・フォー・プロシードの防御方針は......


 クロノス星系防御指揮官ジャン・フォー・プロシード准将。


 クロノス星系を守る堅固な要塞「アダマス」の指揮室に入り、その指揮官席にどっしりと座っている。


 見栄えのするその姿。

 何だか、そういう姿だけでも勝てる気がする。

 こういうのも、戦いでは重要なのだ。

 

 勿論、フォーは意識して余裕ある態度で指揮席に座っていた。

 大敗したばかりのノイエ軍は、気持ちが萎縮している。

 だから、あえてその場に居る全員に安心感を与えるのだ。


 帝國軍が、一点集中砲火を仕掛けてきた時には、内心

  シールド破られないか?

  大丈夫か?

と焦りの気持ちもあった。

 しかし、表面上には一切そのような気持ちを見せない。

 それぐらいの処世術を持っているからこそ、28歳でこの椅子に座っているのだ。


 基本的に防御手段は、シールドを守る要塞「アダマス」を徹底的に守り抜く。

 これのみだ。

 首都星系内に駐留する2個艦隊にも、それに徹するよう要請してある。

 シールド外には2000隻の帝國艦隊が獲物を狩ろうと、手ぐすね引いて待っている。

 そこに出てゆく勇気が、大敗したばかりの宇宙艦隊にあろうはずも無いので、無謀なことをする可能性はゼロであろう。


 問題は、食料と物資だ。

 エネルギーは大丈夫だが、特に食料は備蓄が尽きれば厳しいことになる。

 今、クロノス星系には約280億人のノイエ国民が居る。

 これは全国民の9割近くにのぼる。

 ところが、クロノス星系の食料生産能力は年間100億人分以下だ。

 備蓄は4ヶ月分。

 新規生産分と節約で、残り6か月分という計算なのだ。



 ライバルであるリウ・プロクターが、5年前に出した対帝國軍防衛計画案をフォーも見た。

 リウの指摘は、

  帝國軍は、その戦力に比して補給体制が貧弱である

  大帝は10個艦隊以上同時に動かしたことが無かったが、それは補給能力分しか動員出来なかったからだ

  二世皇帝は、政治家としては優秀だが軍人としては平凡なので、大動員に応じた補給体制の強化を怠るだろう

  長期戦に持ち込めば、帝國軍はエネルギーもミサイルも規格が異なる国に攻め込むのだから、現地調達出来ず、物資不足で撤退に追い込まれる

  よって、補給面で圧力を掛けるのが最上の策だ

というものであった。


 リウの言う通り、確かに帝國軍は補給面で不安を抱えている。

 長期の駐留になれば、奴等も食料は慢性的に不足の筈。

 ノイエ国民が飢える瀬戸際なので、そこに占領軍として入ってきた帝國の奴等も食料は満足に入手出来ていない筈。

 しかも、アルテミス王国は焦土作戦をとったことから、あっちの占領軍は、食料どころか物資は何も手に入っていないのだ。


 「ここは、奴等と我慢比べだな」

 フォーは、防御の任にあたっている周囲の将兵に呟いた。

 「???」

 周囲の将兵の顔が突然の指揮官の呟きに戸惑っていたので、

 「我々と奴等、どっちが先に物資と食料が尽きるかということだよ」

と説明し、

 「よし、一丁クロノス星系に居るノイエ国民に対して、芝居をしてみるか。 食料節約のな」

と言って、早速啓蒙CMを作って流すことに決めたのであった。



 「ノイエ国民の皆様、私はクロノス星系防御指揮官のジャン・フォー・プロシード准将です。 今回は皆様にお願いがあります。 防御は万全です。 強力なシールドと私以下勇敢な将兵が居るからです」

 「ところが食料だけは、私共では作ることが出来ません。 皆様の協力が少しだけあれば、帝國が敗れて撤退するまでの食料は、より十分になります。 ですから、毎日少しだけ食べる量を減らしてください。 私からのお願いです。 そして必ず勝って、その時は腹一杯食べましょう」

というCMだった。


 これには、案外効果があった。

 食料の消費が、更に1割程減ったのである。

 そして何と言っても、将来の国家元首・大統領を狙っているフォー自身の大きな宣伝にもなった。



 『しかし、防御指揮官は、意外とすることが無いな』

 自ら買って出た役職の感想がこれであった。

 『結局、リウ頼みか、個人的には不満だが......

 彼が帝國の補給部隊を叩けば、帝國の奴等は撤退するだろう

 それ待ちだな

 それまでは、士気が下がらないよう、鼓舞し続けよう』

 フォーは、そう考えており、自己の好悪の感情に左右されず、的確に防衛方針を決めたのであった。




 帝國軍も、ただ包囲するだけでは飽き足らず、シールド発生装置を破壊しようと、何度もアダマス要塞に攻撃を仕掛けてきた。

 その攻撃の度にフォーは、要塞付近のシールドに駐留艦隊が持つ固有のシールドを重ねることで強化して跳ね返し、シールド外にある防衛用の光速ミサイル発射装置から、効果的にミサイルを撃って、帝國軍に少しずつ出血を強いていた。


 その為、帝國軍は、3ヶ月以上に渡る要塞攻防戦の結果、損失艦艇数が300隻近くになってしまったことから、要塞攻略を完全に諦め、星系の包囲に専念する方針に再度変更したのであった。



 実は、クロノス星系攻略中の帝國軍4個艦隊は、食料は占領地から略奪した分で当面賄えたが、エネルギーとミサイルは規格が異なる為、略奪での現地調達が出来ていなかった。

 にもかかわらず、要塞を陥落させようと攻撃を繰り返した結果、ミサイルは残ゼロとなり、エネルギーも欠乏が顕著になって、帝國へ帰還する分の燃料も残っていなかった。


 「不味いな。 エネルギーが足りなくて、攻撃も出来ないぞ」

 第15艦隊旗艦の高級サロンに集まっていた四提督。

 グラスに入った高級ワインを傾けつつ、シルバーバーチ中将が、僚友の三提督に苦境を相談し始める。

 「星系のシールドを破ろうと、無駄撃ちし過ぎだ」

 マー中将が事実を指摘する。

 「アルテミスの集積拠点惑星のアクタイオンにも、ノイエの集積拠点惑星のケイロンにも、物資が全く無かったからな」

 敵都クロノス星系周辺の物流拠点星系2箇所を襲撃するも、得るものが無く、既に物資が遠くに運び出されていたことが痛かったと、リューネ中将が残念そうに語る。


 「アルテミス星系に駐留している3個艦隊から分けて貰えば良いのでは? 彼等は戦闘していないのだろ?」

 ウリヒ中将が、三提督に提案をする。

 「補給艦が殆ど無いらしいぞ。 ウォルフィー元帥率いるシヴァ方面軍が苦戦していて、補給艦が足りないからって言われて、空で本国に返したらしい」

 リューネ中将が、裏情報を僚友達に話す。

 「老将衰えたりっていうところだな。 戦力で勝っていた筈なのに、初戦で油断し過ぎなのだよ」

 シルバーバーチ中将が、シヴァ方面軍が敵の先制攻撃で1個艦隊以上の損害を出したことに触れる。

 「今回の大戦後、老将は引退だろう。 大帝のもとで勇名を馳せたかつての名将も、歳には勝てずってところだ。 今回実績をあげた我等四提督の時代の到来かな?」

 マー中将がほくそ笑みながら、三提督の同意を求める。

 「全く同感だな。 アルテミス方面の連中もちょっと負けたからって、以後動いていないのだろ? 我等の昇進は固い」

 四提督は嬉しそうに、その意見に頷く。

 「物資は本国に要請すれば、送ってくるだろう。 唯一勝っている我等の艦隊に優先的に配分するように、強く求めよう」

 こうして、四提督の意見は纏まった。

 そこで、本国に対し、大規模な補給艦隊の派遣要請を強く求めたのだった。


 この頃、アルテミス星系に駐留中の帝國軍3個艦隊は、戦闘こそ無かった為、エネルギーとミサイルの備蓄はまだ残っていたものの、食料が底を尽きかけていた。

 将兵への配分を1日3食から2食に減らしたが、このことが士気の低下を招いていた。

 その為、クロノス星系方面の部隊と同様に、本国に対して大規模な補給艦隊の派遣要請を繰り返し求めていたのだった。



 この少し前からシヴァ艦隊は、帝國軍の補給物資を消耗させ尽くそうと、ウォルフィー艦隊に猛攻を繰り返していた。

 補給線が長いウォルフィー艦隊は、シヴァ艦隊の猛攻に応戦する為、多くのミサイルとエネルギー砲を撃ち尽くした結果、劣勢の上に物資不足にも陥っていた。


 「シヴァめ。 我等の物資不足を狙って攻勢を強めて来た」

 オズワルト大将がボーデン中将に嘆きの言葉を発してしまう。

 「ただでさえ、新型の影響で敵が優勢な上に、補給線に圧力をかけてくる。 流石と言わざるを得ません」

 中将が、シヴァ丞相の戦いっぷりを評価すると、

 「大帝も評価していた人物だからな。 このぐらいの手腕は当然だろ。 それで、本国から補給艦隊がこちらに向かっているのだよな?」

 大将は確認をする。

 「既に10日前に出発したそうです。 間もなく到着すると思われます」

 中将が答えると、

 「ウォルフィー元帥は重ねて、全軍撤退の命令発出要請を皇帝陛下に話して下さっているが......」

 「陛下は聞き入れようとしないのですね?」

 「開戦して3ヶ月。 おそらく、他の2カ国に向かった艦隊は、物資切れを起こしつつあるだろう。 帝國軍は今回の動員規模に比して、補給艦艇が少ない。 補給艦隊はこっちの補給を終えてから本国に戻って、それで改めて2カ国側に向かう予定と聞く。 それでは物資切れを起こして、将兵が飢えてしまうだろうな」

 「だから、元帥は不興を買うのを承知で、補給体制が弱くて戦線を維持出来ないからと説明し、何度も撤退要望を出してくれているのですね」

 「そうなんだよ。 だがもう手遅れだろうな」


 この時点で既にオズワルト大将は、2カ国側に向かった帝國軍本隊が補給切れで敗北すると予想していた。

 ただ、帝國は専制国家。

 皇帝の意思が何よりも優先する。

 負けるとわかっていても、勝手に撤退することは出来ない。

 大将としては、元帥と協力して、自分達の配下に所属する将兵達を一人でも多く、家族や恋人のもとに帰してやれる様に、与えられた持ち場で奮戦して努力するしか方法は無かったのだ。


 その後、補給物資を受け取ったウォルフィー軍は、徐々に帝國領方面に後退しながら、アルテミス・ノイエ2カ国方面に向かった帝國軍本隊が敗北する状況に備えていた。

 負けたと情報が入れば、味方の士気は大きく低下し、敵の士気は上がって、かさにかかって攻めてくるだろう。

 既に、その状況に備えなければならないほど、劣勢であったのだ。



 ついに、リウがかつて予想した通り、帝國軍の補給能力が破綻をきたし、戦局の転換点が近づいてきたのであった......


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