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第102話(開拓の道)


レアとレイカーは、ルー大将の首都星系への転籍と共に、惑星ネイト・アミューを離れる決断をした。


西上国の首都星アイテールを訪れて、新しい人生への準備と、丞相夫妻との再会の約束を果たす。


そして、2人は未踏の惑星を目指して、出発するのであった......


 リウが居なくなってから約2年後。


 ジョン・ルー大将は、ネイト・アミュー方面軍司令官の地位をシュウゴ・コーダイ中将に移譲し、大将自身は首都星系で宇宙艦隊司令長官の任務に専念する方針を決断したのであった。


 そこで、レアとレイカーもルー大将と一緒に、惑星ネイト・アミューとは一旦別れを告げることに決めたのだった。



 「中将、あとのことをお願いしますね」

 レアは、コーダイ中将に別れを切り出す。

 「2人も、大将閣下と共に行ってしまうのか〜。 もう少し、この惑星に滞在し続けて欲しいところだが......」

 そんな感想を述べながら、寂しそうな表情を見せる中将。

 「リウと一緒に、この惑星にやって来て7年半。 残っている主な幹部では、コーダイ中将とブルーム少将だけになってしまいますが、よろしくお願いします」

 レイカーも、当面の期間における最後の挨拶をする。

 「中将。 首都星系に戻りたくなったら、いつでも言ってくれ。 もう赴任して長いから、直ぐにでも首都星系へ戻ることが出来るぞ」

 ルー大将もそう話し掛けて、中将の寂寥感を宥める。

 「いえ。 小官は退役の日まで、この地で過ごします。 あと15年も残ってないですから」

 それが、自身の代わりに苦戦の中で奮闘し、戦死した亡きカイキ准将の遺志に報いることだと、心に決めていた中将。

 栄転の話も全て拒否し、方面軍司令官の地位で退役する心づもりであったのだ。


 「ネイト・アミューには、中将が寂しさを感じ過ぎないよう、レイと一緒に時々来るからね。 統治官としての仕事も有るし」

 レアはそう言いながら、中将の背中を軽く叩いて励ます。

 「イイなあ~。 俺のところには来てくれないのか?」

 ルー大将がレアに確認するも、

 「クロノス星系には用事が無いね、当面は」

 アッサリ断られ、ガクッとなってしまうのだった。


 「2人共、退役して暇になったら、一緒に私の仕事を手伝う? そうしたくなったら、レイに連絡頂戴」

 「仕事って、何をやるんだ?」

 「それは、まだ内緒」

 レアはそう答えると、コーダイ中将と別れの握手をする。

 「中将、お元気で」

と言いながら。

 そして、ルー大将、レイも続けて中将と握手をする。

 「方面軍のこと頼みます」

 「再会の日まで、ご壮健で」

と、それぞれの感慨を言葉にして交わすのだった。


 レア、レイカーとルー大将夫妻の4人は、同じ客船で惑星ネイト・アミューを離れることに。

 リウに率いられ、水の惑星と称される、美しいこの地へとやって来て、多くの喜びと悲しみを味わった、リウとその幕僚にとっての思い出の地。

 見送る方も、見送られる方も、寂しさで心がいっぱいになってしまうのだった......




 1週間後。

 レアとレイカーは、ルー大将夫妻との別れの時がやって来た。

 その場所は、客船の寄港地である惑星アルテミスにおいてであった。

 「先輩、サーラさん、お元気で」

 レアも流石に寂しそうな表情を見せる。

 「レアさん、色々とありがとうございました。 貴方の中に居るリウさんにもよろしく伝えておいてください」

 サーラ・ルーは結婚への背中を押してくれた、もう遭うことの出来ないリウに感謝を述べた。

 「2人と家族ぐるみの付き合いになって、8年も経ったのか。 本当にありがとう」

 ルー大将が最後の言葉を交わして、レア、レイとハグをする。

 「ノイエ国と軍のこと、お願いします。 緊急事態でレアが戻らないで済むように」

 レイカーはそう言いながら、クロノス星系への出発準備を始めた客船をレアと一緒に下船を始める。

 「またね~」

 見送りデッキから手を振るレアとレイカー。

 それに対して、客船のデッキからルー大将夫妻も手を振る。

 やがて、客船は宇宙港を旅立ってしまう。

 レアとレイは、その客船が大空の彼方に消えるまで、見送り続けるのだった。


 「レア、僕達も行こうか?」

 西上国の首都星アイテールに向けて、2人も出発する。

 リウ・アーゼルが歩んで来た道とは、ここで完全に決別し、2人だけの新たな道を歩み始めた、この日は記念日となったのだ。




 10日後。

 惑星アイテールでは、丞相夫人のエミーナやレイザールが2人の到着を出迎えてくれた。

 「遊びに来るって言ってから、2年も経っているよ。 2人と違って、私の時間は残り少ないんだからね」

 寿命の短い39歳のエミーナは、レアに再会?するまで時間が掛かり過ぎたことへの文句が最初の挨拶であった。

 「しかし、パッと見はリウそのものね。 胸が少し大きくなったところぐらい? 違いって」

 初めて実物で見るレアの感想をエミーナが述べる。

 「僕も初めて会いますが、本当に大将閣下では無いのですか?」

 レイザールは、リウのことを階級で呼ぶ癖が直っておらず、この時もそれが出てしまう。

 「私は、大将閣下じゃないわよ。 そもそも軍人になったことも無いんだからね」

 レアがそう答えたことで、ようやくリウとは別人なのだと実感するのだった。


 「しかしイイ男になったね、レイザールは。 今まではレアー号のカメラ越しに見ていただけだったけど、実物はやっぱり違うね〜」

 レアの褒め言葉に対して、少し困った顔をしたエミーナとレイザールの表情の変化に気付く。

 「あら。 せっかく褒めたのに2人共、表情が曇ったわね」

 レアはそう言いながら、ほんの少し理由を考えてみる。

 そして、

 「わかった。 モテモテ過ぎて困っているのでしょ? エミーナの3人の娘さんも、レイザールに惚れちゃったの?」

 図星の答えに、苦笑いするエミーナとレイザール。

 18歳の長女と16歳の双子の娘がいるエミーナ。

 既に、丞相一家の娘3人は、レイザールの彼女の座を狙って、激しいバトル状態であったのだ。


 「確かに、今まで生きてきた中で、レイザールよりイイ男は居なかったなあ~」

 レイカーも、19歳になったレイザールの容姿をベタ褒めする。

 「そうなんだ〜。 私は地球人の容姿の良し悪しって今ひとつ理解出来てなくて、リウの記憶と情報から判断しているだけなんだよね」

 レアが、人類とは別の生命体であることを、初めて感じさせる様な言葉を述べた。

 「もう、うちの中は激しい対立状態よ。 それだけじゃなくて、大学でも女の子の取り巻きが出来ちゃって困っているらしいのよ」

 リウの代わりに、レイザールの保護者代理となったエミーナ。

 本当に困った様子を見せるのだった。


 それを聞いて、

 「レイザールはどちらかと言えば、優柔不断な方だからね。 いっそのこと3人ぐらいと結婚して、子供を沢山作ったら?」

 レアは面白い答えを導き出す。

 「えっ、3人と結婚?」

 レイザールも、リウの代理の保護者にそんなことを言われるとは思わず、ビックリした声をあげてしまう。

 「地球人の宗教観の問題でしょ? 結婚が一対一っていうのは。 一夫多妻、稀に逆の多夫一妻を認める場合だって地球人にはあるのだし、他の種族でも夫婦が必ず一対一っていう訳ではないわよ。 レイザールの宗教観はどうなのか知らないけど?」

 「僕は、特に宗教的な考えは持っていないです」

 「じゃあ、良いんじゃない? もちろん、妻になる女性達が納得しなければ駄目だけどね」

 レアがそんな話をしたところ、レイカーの表情も曇ってしまった。


 「レイ、どうしたの?」

 「レアがそういう考えだと、いずれ、僕以外の夫も持つのかなって......」

 それを聞いて、レアは思わず笑いだす。

 「レイ、もしかして嫉妬?」

 「うん」

 悪びれず素直にそう答えたレイカーをレアが抱き締める。

 「バカね~。 私自身は特殊な生命体として配偶者を求める気も無いし、必要も無いの。 私の夫になれるのは、リウの夫だった人だけ。 だから未来永劫、レイ以外の夫は、私に存在しないのよ」

 そう言って、レイカーの頭を撫でるレア。

 ホッとした表情を見せるレイだった。


 「まあ、とにかく今日は久しぶりの再会だから、ゆっくりしていってよ」

 エミーナはそう言って、レアー号の隣に停泊しているアプロディテ号へと案内を始める。

 「この船も、私と丞相が亡くなったら、レアに返すわね。 もう暫く戦いは無いだろうし、子供達に引き継ぐと、大きな金銭的な負担になってしまうから」

 丞相とエミーナの間の5人の子供達は、政治や軍事の世界に行く予定は無く、ごく普通な社会人となる予定らしい。

 それは、丞相の意向でもあるそうだ。


 「政争や戦争に明け暮れて、心の休まる暇の無い生活を子供達にさせたく無いからな」

 執務を終えて帰って来たリョウ・シヴァは、レアとレイカーに心情を吐露する。

 「もう、私も62歳になったよ。 リウお嬢様と出会ってから20年近く経って、だいぶ年老いただろ?」

 レアにそう言うと、ガハハと笑う。

 「近頃は、軍の出動も無くなり、ようやく平和な時が訪れたという実感が得られる様になったな」


 「丞相閣下も、お体を労ってくださいね。 今まで心労を重ねて、蓄積されたものがあるでしょうから」 

 レアがいつもと異なる喋り方をしたので、レイが思わず吹き出してしまう。

 「レア。 もしかしてリュウお嬢様の話し方の真似をしたの?」

 「そうですわよ。 懐かしい雰囲気を味わって頂きたいと思いまして」

 まだ続けるレア。

 レアはほとんどタメ口なので、レイにとって違和感が大きい様だ。

 初めてレアと直接会話をした丞相は、少し不思議そうな表情をしていたが、

 「普段は全然違うのか?」

と逆に尋ねられてしまった。


 「あ~あ。 やっぱり慣れないことはするべきじゃないわね」

 レアは普通の話し方に戻したので、少し笑いが起きる。

 「ところで2人は、今後どうするのだ? この惑星にやって来たということは、リウお嬢様が歩んで来た軍事や政治の道とは異なる方向へと進むつもりなのだろ?

 その質問にレアは、

 「ゴニョゴニョ、ゴニョゴニョ」

と丞相の耳元で、自身達の当面の進む道を囁いて教えるのだった......



 その後は、暫く丞相一家やレイザールと一緒に過ごしたレアとレイカー。

 レイザールの大学での様子を見学する為に、一緒にレアが登校した時には、いつも以上の大騒ぎになってしまった。

 「レイザール君が......」

 「誰? あのコ」

 「もしかしてレイザール君の彼女」

 「あの子、モデルのレアじゃない?」

という具合に。


 昼食どきまで一緒に過ごしてみたレア。

 尋常ではない様子が、よく理解出来た様だ。

 「レイザール。 いつもこんなに注目されているの?」

 「今日はレアが居るからいつも以上だよ。 レアはこの惑星でもモデルとしての知名度が上がってきているからね」

 「そうなんだ......落ち着かないね」

 豪胆なレアで有っても、昼食を食べている時まで、ジロジロ視線が送られているのは、流石に気になる。

 「もう、慣れちゃったよ」

 そう答えると、レアに笑顔を見せたレイザール。

 その瞬間、

 「きゃ~」

と悲鳴が上がる。

 「いや〜あ、レイザールが笑うだけで、凄い反応ね~......」

 半ば呆れてしまったレア。


 そして、

 「私が帰った後、お友達から質問が有ったら、レアが保護者だと答えるんだよ。 私も妬まれるのはちょっと面倒だから」

 そう言うと、レアは立ち上がる。

 「えー、もう帰っちゃうの?」

 レイザールが寂しそうな表情を見せると、遠くから再び悲鳴が......

 「だって、落ち着かないじゃない、この状況。 私も仕事が有るから」

 アウローラ社の売却手続きが完了し、この年から、アウローラ社の事務処理請負と方面軍の事務処理請負を停止したレア。

 主な業務は、統治官としての事務処理とアーゼル財閥の事務処理請負だけに減らしていたが、それでもそこそこ忙しいのだ。


 「わかりましたよ。 ちょっとデート気分で楽しかったのに......」

 ブツブツ呟くレイザール。

 「私は人間じゃないから、レイ以外の人とデートしても、特に楽しくないのよ。 レイザールがどんなにイイ男でもね」

 レアは、本当につまらなさそうな表情だったので、意外な感じがしたレイザール。

 「なるほど~。 レアって忠誠心が高いんだね。 浮気とかは絶対にしないの?」

 少しイヤミも入った言い方に、

 「レイザール。 私にはそう言う人間特有の感情や考えは無いの。 『邪』とか『裏切り』とかっていう思考とは無縁の生命体なのだから、その点だけは理解してね」

 そう言い残すと、レイザールに向けて軽く手を振って、その場を去って行くレアであった。


 2人の取り巻きの一部は、レアを追い掛けていくが、やがてレアに叱責されて、解散させられる様子がガラス張りのテラスから見えた。

 その様子を見て微笑みながら、

 「レアって面白い存在だな〜。 レアー号の生体頭脳だった時からそう思っていたけど、リウ・アーゼルの姿になって、余計にね......」

 レイザールはそんなことを考えながら、午後の勉強に向けて、立ち上がる。

 将来の進路を考え始めていたレイザール。

 その進むべき道が、レアと話すことで、見えてきた様に感じたのであった。

 


 レアは、レアー号に戻ると、ネイト・アミューの統治官としての仕事は始める。

 統治官席に座っているロボットから状況報告を受けながら。

 リウから引き継いだ中で、唯一残っている、最も大事な仕事。

 リウは自身の作戦で占領した地に住む市民達に迷惑を掛けたくないと、統治だけは他人に委ねようとしなかった。

 その為、レアもその意思を尊重しているのだ。

 今のところ、惑星ネイト・アミューの統治状況に問題は発生していない。

 その高い能力であっという間に事務処理を終えると、他の仕事も速攻で終えるレア。

 そして、レイカーのもとにやって来て、

 「そろそろ、私達も新たな出発の準備を始めようよ」

 レアにそう言われると、

 「もう、色々と手配しているよ。 大型の特殊重機やロボット、機械兵や物資も調達している」

とレイカーは答える。

 「レアー号に搭載されているシステムも、ドヴェルグ人にお願いして、バージョンアップして貰う予定だから」

 レアの方も、着々と新生活への準備を整えていたのだ。




 惑星アイテールに到着してから約3か月後。

 レアー号は、新たな地へ向けての出発準備を完了していた。

 「丞相、エミーナ、お元気で。 また来ます」 

 レアが挨拶をする。

 「2人共、無理するなよ」

 丞相もレアとレイカーに言葉を掛ける。

 「レイザール。 もし大学卒業後、私達の仕事を手伝いたいのだったら、丞相やエミーナと相談してね。 超光速通信は使える筈だから」

 レアはレイザールにも声を掛ける。

 そして、レアー号は丞相一家とレイザールに見送られて、惑星アイテールの軍事宇宙港を飛び立ったのであった。



 レアー号は、道なき道を進む。

 星星の大海の中を。

 受け取った通信文に記された座標を手掛かりにして......



 約3か月後。

 『オケアノス』と名付けられた惑星の衛星軌道上に到着したレアー号。

 そのまま、惑星オケアノスに着陸。

 宇宙港なんていう代物は存在しない、まだほとんど手つかずの惑星。

 そう。

 レアとレイカーは、フロンティア開拓を新たな仕事とすることに決めていたのだ。


 惑星オケアノスの開拓団団長は、シュン・コトク元西上国軍大将。

 開拓団も新しい艦艇の到着に気付き、何人かの人々が集まってきた。

 「おお、凄い美女が降りて来たぞ」

 艦艇から降りて来たレアの姿を見た開拓団員が少し騒ぎ出す。

 「あれっ、もしかしてリウ・アーゼル提督ですか?」

 開拓団員の一人がレアに声を掛けて来た。

 きっと、何処かでリウと関わりのあった人物なのだろう。

 「提督はお亡くなりになって、2年半以上経ちますよ」

 レアがその質問に答えていると、

 「レアさん、初めまして。 私が団長のシュン・コトクです」

 年長の背の高い男性が声を掛けて、握手を求める。

 「私こそ、初めまして。 リウ・アーゼルの衣鉢を継いだレア・アーサと申します」

 レアがコトク団長に挨拶を返しながら、団長の差し出した右手に握手をする。


 「リウお嬢様は、例の約束を果たされたのですね。 遠く離れた異世界の様なこの地ですから、なにぶん人間界の出来後に、みんなが疎くてね」

 団長は比喩表現を入れて笑いながら、惑星の事情を説明する。

 「リウは、こういう仕事を最後にやってみたいと願っていました。 私はその願いを叶え、それを私達の生涯の仕事にすべく、合流させて頂くことに。 勝手な願いを受け容れて頂き、本当にありがとうございます」

 レアは、ここに来た理由と感謝を述べる。


 「軍を辞める前に、レアさんのことはリウお嬢様から聞いています。 何でも出来る凄い存在だと。 いずれ開拓団を率いるリーダーとなってください」

 団長はそう言うと、早速状況を説明し始める。

 「現在、この惑星の開拓団は200名程しかいません。 しかし、ここは可能性に富んでいます」

 「ティアプリアという希少鉱石が埋蔵されており、この採掘と精製や加工に成功すれば、途端に億万長者ですよ」

 コトク団長は嬉しそうに笑う。

 「こういうのが、未踏の惑星の開拓の魅力です。 レアさん」


 すると、終始黙って聞いていたレイカーが、

 「レアはリウと見た目も性格も瓜二つですが、お金大好きな点だけが異なりますからね~。 今の話を聞いて、目を輝かせていますよ」

 「ちょっと、レイ。 いくら何でも、レディにそれは失礼だよ」

 「そうかな~。 よだれが垂れかかっているよ」

 指摘を受けて、慌てて口元を手で拭くレア。

 垂涎な話を聞いて、本当に少しだけよだれが出かけていたのだ。

 「ハハハは。 開拓団員は、そういう気持ちで良いのですよ。 厳しい環境で、しかも命懸けの仕事。 だから夢ぐらい、大きくて、欲望まみれで、イイじゃないですか?」

 「だってさ、レア。 レア向きの仕事だね」

 レイに誂われて、口を尖らせるレア。

 しかし、翌日には早速、希少鉱石『ティアプリア』の採掘に取り掛かっていたのだった。


 レアー号の特殊ロボットを使って、ピンポイントで発掘を始めるレア。

 地表に手を当てて、自身の能力を使って、元素の調査もしている。

 その様子を見た開拓団のメンバー。

 「団長。 あの美女は何者なのです?」 

 「彼女は見た目は地球人だけど、特殊な生命体。 3種族が奇跡的に生み出したんだよ。 だからレア(希少)と呼ばれていて、当人もその名前を名乗っている」

 「ウソ。 人間じゃないの?」

 「だから、美女だからといって、欲望を出して、間違っても襲おうとするなよ。 暗黒世界に引き込まれ、二度と起き上がれなくなるからな」

 コトク団長は冗談の様な、本当の様な微妙な言い回しをして、一応警告をしておく。

 一様に信じられないという表情を見せる、開拓団の団員達。


 『荒くれ者も多いから、実際に目の当たりにさせて、余計なトラブルの発生を防ぐべきだろうな......』

 そう考えたコトク団長は、仕方ないという顔をして、

 「レアさん。 一発レーザー銃を撃ち込んでもイイかい?」

と確認をする。

 「なんで〜」

 質問が返って来たので、

 「レアさんのことを簡単に団員達へ説明したのだけど、誰も信じてくれなくて。 余計なトラブルがあっちゃいけないと思ってさ」

 すると、レアは

 「イイよ。 私に向けて一発撃ち込んでみて」

 その返事にビックリする団員。

 しかし、コトク団長はレーザー銃を構えて、躊躇することもなく、レアに向けて一発放つ。

 途端に、レアの体に当たって弾き返されたレーザーが団員の足元近くの地面に突き刺さる。

 「こういうことだよ。 もし彼女を襲ったら、二度と日の光を拝めなくなるから、気を付けろよ」

 団長は笑って団員に言うと、レアのもとに向かってしまった。

 ざわつき続ける団員達。

 レアを手籠めにしようかと思っていた団員も少数だが居たものの、人間では無いと知って、荒ぶれた気持ちも萎えてしまうのだった。


 コトク団長は、レアのところに行き、謝罪をする。

 「荒くれ者の多い、開拓団だもの。 こんなこと気にしないで下さい。 私も襲って来た団員を返り討ちにして半身不随にしちゃうのは、可哀想だと思いますから」

 そう答えると、レアはニッコリ笑う。

 「もしかして......鉱脈見つけた?」

 団長は、レアの笑顔が『ティアプリア』発見のことによるものと、直ぐに気付いたのだ。

 「はい。 サンプルを分析させて貰いましたから、多分間違いないですよ。 分子構造からみて」

 レアはそう答えると、直ぐにレアー号にいるクローンを呼ぶ。

 そして、発見した場所付近に、自動掘削ロボットを設置。

 やがて、ロボットが『ティアプリア』の藍色に輝く結晶体を幾つか掘り出したのだった。


 嬉しそうなレアや団長、レイカー。

 遠巻きに見守る団員達。

 みんな、羨ましそうである。

 早速、レアが構造を分析して、純度を高める精製方法を計算し始め、精製機器の作成を開始。

 その日のうちに、精製機器も完成し、より純度の高められた結晶体が精製された。

 「1グラム、10万ノイエドルぐらいで取引されているから、今日精製された100グラム程で、1000万ノイエドルは固いね」

 レアが相場を見ながら、レイカーに語る。

 「半分は開拓団にあげるよ。 この惑星開拓団に参加させて貰った御礼として」

 そこでレイカーは質問をする。

 「この鉱石は宝石なの?」

 「宝石でも使われるけど、精密機器にも使われているね。 あんまり採掘しすぎると、相場が崩れるから、程々にしないと」

 こうしたところは、非常にきっちりしているレアであった。



 これが、レアとレイカーの新しい生活。

 2人は、永遠の様な時の中で、新しい惑星の開拓を続けることになる。

 そしてこの日こそ、開拓が2人の使命の一つとなった記念日であった......

 

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