30 後回しの刑
今回もご覧頂きありがとうございます!
楽しんで頂けたら幸いです。
もうすぐ完結です。
1387年 深緑月(7月)
「では、改めて我の誕生祭を宣言し、宴を再開する!」
ガブリエルのその声で、会場中の人々が一斉に動き出した。
エリーズは、そのガブリエル本人がダンスに連れて行ってしまったし、シルヴィといえば、
「あぁ、ちょっと未来の旦那様の様子を見て来るわね」
と滑らかにロクサーヌの前から居なくなってしまった。
さて、どうしよう。とりあえず壁の方へ…と移動しかけ、はたと気づく。
気が抜けたのか、僅かに震える足元。
少々無理をして魔力を使い過ぎたなと、改めて思う。
不味い、このまま居続けては会場で倒れてしまうかもしれない。
祝いの席でケチが付いては…とロクサーヌは人知れず、その場を後にした。
後ろから、紫の視線がロクサーヌに絡んでいた事に、彼女は気づいていなかった。
◇◇◇
ルキウスは苛立つ気持ちを抑え、立ち去るロクサーヌを見守った。
「会場での接近は許可出来ない。
ルキウスも分かっているだろう。今まで、どれだけ抑えてきたか、思い出して欲しい。
触れれば…いや、近づいただけで魔力が溢れるな。
それはそれは美しい虹を、会場中にまき散らすだろうね。
いや、見てみたいと思わない事もないよ?
でもね一応さ、国家の機密事項だから、皆に気付かせる訳にはいかない。
楽しみが、ほんの少し延びるだけ…そう思って我慢して欲しい」
屈託のない笑顔を向け、そう指示するガブリエル。
いくら説得されても抑える事が難しい、怒りとも悲しみとも似た感情が、沸々と湧いていた。
「それで、もう1つお願いがあるんだ。ルーにしか出来ない重要な任務なんだ」
ガブリエルがルキウスを愛称呼びする時は、大体碌な事がない。少し構えて、次の言葉を待つ。
「呪術師とマルタン男爵の魔力剥奪と護送をだね…」
―――その瞬間、ルキウスが吠えた。
◇◇◇
翌日、ルキウスはドラクロワ邸へと進む馬車の中にいた。侯爵夫妻には既に先触れを出してある。
いつもと変わらないはずの馬車の進みが、途方もなく遅く感じる。
昨日は結局、ガブリエルが思う通りに仕事をこなしてしまった。首謀者2人と手下凡そ10数名の魔力を剥奪し、2度と魔法の使えない身体にしてやった。
ほんの少し加減を間違えたのは、断じて態とではない。
憂さ晴らしだった、なーんて事は決してない。
ルキウスが味わった昨日1日の苦しみに比べたら、揺り籠で寝かされている位、優しい出来事だと思う。
逸る心とは裏腹に、左手に嵌る生命の指輪を、落ち着きなく触る事しか出来なかった。
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