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12 暗躍する土くれ

数ある作品の中から、目に留めて頂きありがとうございます。


時間の流れが前後しております。

冒頭に年代と月を記入してありますので、目安にして下さい。


楽しんで頂けたら幸いです。


1386年 朽木月(11月)


ロクサーヌの誕生会から1ヵ月程のある日。ルキウスからの誘いがあったロクサーヌは、少し浮かれていたのかもしれない。


「明日のこの時間、王宮に登城して欲しい。…来れば分かる」



久しぶりにルキウスの方から会話が(つむ)がれ、即座に()、と答えていた。





あくる日、指定された時間に王宮に到着したロクサーヌは、シルヴィやエリとも出会った。



「お2人とも…、偶然ではないのでしょうね…?」


ロクサーヌが思考を巡らせながら問いかければ、2人も溜息混じりに頷いた。



「私は殿下からお声掛け頂きまして…。シルヴィは?」




「わざわざユーゴ様よりご招待頂いたわ。…漸く彼の方々も心を入れ替えたのかしら」



三者三様に思いを巡らせるものの、全く想像がつかなかった。




「ここで悩んでいても意味はないわね、向かう所は一緒の様だし…参りましょう、か」



シルヴィに賛成し、侍従に案内されて王宮の一室へと3人は向かった。





そこは貴賓室、中でも最上級の煌びやかな扉の前へと促された。


先頭のエリーズが左右の2人を見渡し、3人は揃って頷いた。




ガチャリという金属音と共に、大きく開かれた扉へと吸い込まれた。











―――この状況は何なのだろうか。






贅を尽くした黄金色のドレスを身に纏った、可愛らしい令嬢を中心に、上位貴族の御子息が囲む様に歓談していた。




夜会かと思われる様なドレスは、この時間に、そぐわず浮いていた。

そして恐らく、学園に現在籍のある、全ての嫡男(ちゃくなん)が集結しているであろう。




一種異様な、この状況に3人の御令嬢は凍り付いた様に固まっていた。



「あぁ、来てくれたのか。今日はマルタン嬢の誕生日を祝って、我らで会を開く事にしたのだ。控えめな彼女は、親しい令嬢がまだいないというのでな、我々の婚約者に参上してもらったというわけだ。


…3人とも、仲良くして欲しい」



ガブリエル殿下が、男爵令嬢に寄り添い、流れる様に言葉を紡ぐ。

マルタン嬢が3人を、睥睨(へいげい)し言い放つ。



「ピピ・マルタンです、仲良くしてください!

……ガブリエル殿下、ルキウス様とサイモン様の所へ参りましょう!



…それでは、また後程」



すぐに視線を殿下に戻し、2人で見つめ合いながら離れていった。



それから3人の元には、誰一人として来はしなかった。

終始無言を貫いたロクサーヌ達は、頃合いを見計らって早々に、その場を後にした。





◇◇◇





ドラクロワ邸の客間に入った途端、堰を切った様にシルヴィが叫んだ。




「なんなのかしら、あの混沌とした会合は!私達が挨拶する間も無く、さっさと立ち去るなんて。マルタン嬢は私達と仲良くする気は毛頭無いようね」



「私も今日という今日は本当に、その……頭にきましたわ!

お兄様の足を踏んづけて差し上げようかと思いましたもの」


エリーズが物騒な事を、サラリと言ってのける。



「あの場には御子息しかいらっしゃらなかったようですが、お1人で大丈夫かしら…」



「放っておいて平気よ!あれが彼女の希望でしょうからっ」



ロクサーヌの少しズレた感想に、シルヴィが語気を荒げる。



「私達を前にして、殿下に加えルキウス様やサイモン様の名前を挙げる辺り、相当癖のある方ですわよ、彼女」



「「どういう事ですの?」」



最早、あの御令嬢と関わり合いを放棄し、彼女への思考が停止しかけていた2人が声を合わせる。



「私達の婚約者にとって、特別な存在は自分の方だと誇示してきたのよ」



「「まぁ!」」



「ただ、私の辺境伯での立場は理解していないようね。

この国の貴族なら認知されているけれど。だから私の婚約者候補が、ランベール侯爵家にいると知ってサイモン様だろうと思ってしまったんでしょうね」




「なるほど…、厄介な方ですわね」




エリーズは一言で、マルタン嬢の性質を言い表した。



深いため息が3人から聞こえてきた。





◇◇◇





「…皆様にお祝いして頂けるなんて、こんなに幸せな誕生日は生まれて初めてです!」



目尻に涙を光らせてた上目遣いで、集まる十数人の御子息連中にお礼を述べる1人の令嬢がいた。

女性陣3人がいなくなっているのに、誰1人気にも留めない。



彼等の瞳には、ピピの姿しか映していない。恋慕(れんぼ)の情が見える。

ピピは優しく微笑みながら、胸の内では主導権を握ったこの状況にほくそ笑んでいた。




―――気に食わなかったの、あの澄ました顔が。




「だから奪ってやったの。…ううん、運命ね。最初から私のものだわ。

…ほんと、いい気味」



小さな呟きは、喧騒(けんそう)の中では掻き消され、誰の元にも届かなかった。













ここまでご覧頂き、ありがとうございます!


もし宜しければ、次の回も覗いて見て下さい。

ブックマークなどして頂けたら、とても嬉しいです!!


(気のせいか恋愛要素が薄いような…)



修正・2021年12月2日

理由:謎の改行を消去。※内容変更はありません。

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