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11 作られた守秘義務

数ある作品の中から、目に留めて頂きありがとうございます!!


時間の推移は、冒頭の年代と月を参考にしてみて下さい。

楽しんで頂けたら、幸いです。


(眼鏡っていいですよね。)

1378年 萌葱(もえぎ)月(6月)


2人でゴーレムを倒してから少し経ったある日、サイモンは弟のユーゴと一緒に、王宮にある父の執務室へと訪れていた。

昨年、5歳という若さで最年少入団を果たした、宮廷魔導師団の若き英雄と噂の高いルキウスの訓練を見学に来たのだった。



「最年少って言ったってさ、ぼくらもその年になれば同じくらいつよくなれそうじゃない?」



隣でやや不貞腐れているユーゴが、口を尖らせて呟く。



「まぁ、この目で見てみないと分からないけどね」


内心はユーゴと同じ気持ちだったのに、そう返事をした。





◇◇◇





魔導師団の訓練場のすぐ脇、天井のある観覧スペースへと揃って移動した。

団員の身内と思しきご婦人や子ども達が、(まば)らに見学を楽しんでいた。


そんな中、1人の女の子に目がいった。


去年、第1王子5歳の誕生祭にて見かけたドラクロワ侯爵家のロクサーヌ嬢だったか。

紺色の髪色が特徴的だったのを覚えている。


僕らに気付くと、近づいてきて声をかけてきた。



「こんにちは。覚えていらっしゃるかしら。

ドラクロア侯爵家ロクサーヌです」




「「やぁ、こんにちは」」



双子のユーゴとは、こんな時大体声が合わさる。




「サイモンと呼んでよ。僕ら同い年でしょ」「ユーゴでいいよ」




なぜこんなところに、侍女は連れているが1人で…と思ったが、そういえば彼女は我らが英雄様の許嫁だった…、と瞬時に記憶が甦る。

他人事ではあるけれど、同い年なのに大変だね。




「僕ら、ルキウス様を見に来たんだよ。父上に優秀だからと聞いてね」



「そうそう、サイと一緒に楽しみに来たんだよ」



思ってもいない事を言いながら、ユーゴも相槌を打つ。




「そうだったのですね。では、お言葉に甘えて、サイモン様、ユーゴ様。

私の事はロクサーヌと。


ではご一緒させてください」




「「もちろん、よろこんで」」





◇◇◇





真っ白に近い輝く銀髪を携えた、その年にしては背の高い少年が魔導師団の黒地に銀糸の刺繍が入った重厚なローブを身にまとい、訓練場へ姿を現した。

ただし、他の団員の後方から並んでやってきたのを見て少しがっかりした。


あぁ、彼は支援系なのか。



これでは戦闘系の僕達の力と比べるのが難しいじゃないか…、ユーゴとも目が合う。

やはり同じ気持ちの様だ。



銀髪の少年は、少し離れたところで止まり微動だにしない。


前に立つ団員が、木人に目掛けて魔力を放出する。彼はどうやら土を帯びた光魔法の使い手だ。

足元の地面から空気が揺らめき、土埃が上がったかと思った直後、的に目掛けて土煙がぶつかり合う。

煙とは呼ぶものの、そんな生易しいものではない。

大地の力を携えた、幾千もの矢にも匹敵する衝撃が人型の標的に凸凹とした痕を残した。


流石、毎日鍛錬を重ねた大人の魔力は違うな…と正直驚いた。

隣でヒュゥと口笛を吹いたユーゴから察するに、彼もそう思ってるに違いなかった。




「次、ルキウスとの連携でもう一度っ!」



宮廷魔導師団長の掛け声で、再度実践が始まる。



先程の団員が改めて魔法を構築する。同じように大地が煙と共に空気が歪んで見える。



「今だっ!」



彼は魔力を手放す瞬間に、そう叫んだ。



いつの間にか術者の近くに移動していたルキウスは、その様子を一瞥(いちべつ)し右手をかざしただけだった。






ドオオオオン……。


耳を劈く低音が地面に響き渡る。数秒後に大地を震わす振動が、双子達のいる観覧スペースまで伝わり、危うく転ぶところであった。


他の観客から悲鳴にも似た、驚きの声が上がった。

爆心地である周辺は灰色の煙が立ち込め、(うかが)い知る事ができない。





……ようやく視界が開けてくると、先ほどとは様変わりした、訓練場に驚愕する。

着弾した場所は、他の地面より色が黒っぽく変化し、直径5mほどの窪みが出来ていた。


木人は影も形もなく消え去っていた。




「どういうこと…?」「え、何なの?」




頭で理解できない事が、僕らの目の前で起こった。



見慣れている、と言わんばかりの涼しい顔をしたロクサーヌがそれに返事をする。




「ルキウス様の支援の力は、その方の魔力を成長させ最大限に引き上げるのです」




((は?))





「「……ふうん、とんでもないね」」



2人は敗北感から、思わず自虐的に笑いがこみ上げる。あと1年ではユーゴと共に頑張っても、到底追いつけそうもないね。



はっ、くそっ…。




「なぜです?お2人も同じような力があるように見えるのですが…」


不意にロクサーヌが此方(こちら)に問いかける。



「「え?」」




「サイモン様はユーゴ様を、ユーゴ様はサイモン様をお互いに高める…そう、まるでルキウス様に似た魔力が見えます。



攻撃魔法使いには見えない色なので珍しいなと思っていました。

お2人は仲良しなのですね」



そう言うと此方を向いて笑いかけた。


僕らの関係が良好なのは、様子で見当がつくけど、連携してる所を見もせず互いの干渉が分かるとは思わなかった。

2人だけの胸の内がバレてしまった気分になる。



「何で分かったのかな…。あぁ、そうだよ。でもこれはみんなに内緒なんだ」


口元に右の人差し指を当てて、片目を(つぶ)る。




「…お2人だけの秘密だったのですね。私ったら…ごめんなさい。

誰にも言いませんので、嫌でしょうが3人の秘密にしてください」



そんな事を言うものだから、思わずユーと視線が絡んで噴き出した。




「「あぁ、3人だけの秘密だよ。忘れないでね…?」」



こうして2人は約束を取り付けた。




◇◇◇




「別に隠してないけどさ、あんな事言われたらねぇ」



帰りの馬車の中でユーゴが呟いた。(うなず)きながら相槌を打つ。



「僕らが協力してるのなんて、戦ってるの見た人ならみんな知ってるからね。



でもさぁ…」



くすくす…。




「「あんな可愛い事いわれたらねぇ。フフ、縛りたくなるよね」」







初めて双子は、お互い以外の人物に興味を持った。

それとは別の湧き上がる初めての感情と共に。

















ここまでご覧頂き、ありがとうございます!


もし宜しければ、次の回も覗いて見て下さい。

ブックマークなどして頂けると、とても喜びます!


(やっぱりこの2人がお気に入り)



修正・2021年12月2日

理由:謎の改行を消去。※内容変更はありません。

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