09 二つ星の共同戦線
数ある作品の中から目に留めて頂き、ありがとうございます!
時間が色々前後していて、分かりにくいかもしれません。
目安として、冒頭に年代と月が記入てあります。
楽しんで頂けたら幸いです!
1384年 紅葉月(9月)
ロクサーヌ達が学園に入る丁度2年前、ガブリエルは入学式を迎えていた。
少し前までの暑さが嘘のように、清々しい青空を見上げる、翠の双眼。
ロベール王国の第1王子であるガブリエルは、やるべき事を胸に今日を迎えた。
この国の貴族であれば12歳になると義務付けられている、トーマ王立学園への入学。
周りに注意を向ければ、学園生活へ期待を胸にした子息・令嬢が数多く歩を進めていた。
ガブリエルに気付くと、簡易ではあるものの皆が会釈をしていく。
その中に見知った顔を見つけ、近づいた。
「やぁ、ルキウス。探してたんだ」
恐ろしいほど整った顔のアメジストの様な瞳が、此方を真っすぐ見ている。
礼と同時に左肩辺りで纏めた輝く銀髪が、サラリと落ちる。
結ばれた紺色の組紐が目に入り、少しだけ胸に刺さる。
「殿下、本日より宜しくお願い致します」
「固いな…。同級生なんだ、学園だけでも友人として接して欲しい。
あと学生同士だ、殿下ではなく名前で頼む。親しい仲だろう?」
そう、おどけた様に返してみれば、戸惑うように顔を少し顰める。
「…わかった。…では一緒に、講堂へ向かうか」
遠慮のなくなった、その態度に満足する。
「そうだな、我々が遅れる訳にはいかないからね」
二人並んで照葉の会、言い換えるならば、入学式の会場へと向かう。
道すがら取り留めのない話をする。
「やはり授業は魔導に絞るのか?既に魔導師団入りして7年、今更習う事もあるまい」
「あぁ、だが団にいながら何もせずという訳にもいかない…。
全て最高点をたたき出してこい、そう団長殿に言われた」
「っく、アラリー公爵殿らしいな…息子にも容赦無し…か」
くつくつと笑うガブリエルに向かって、表情を変えずルキウスが問いかける。
「間を縫って剣技も習うつもりだ。
…だがガブリエル様の方が色々と課題は多い…だろう?」
…やはり気づいていたか、却って話が早くて助かる。
「王家で決められた、剣技・魔導・学問すべてを網羅した授業を成績上位で突破しろとの仰せだよ。
その間に王国の課題もあるから、1人では手が足りない。だから…」
「大丈夫だ、分かっている」
全て伝えるまでもなく、ガブリエルが求めていた欲しい答えをすんなりとくれるルキウス。
令嬢相手であったなら、すぐに落ちたに違いない…恐ろしい男だ。
「そう言ってくれると思っていたよ。助かる、礼を言う」
驚き、一瞬だけ紫色の目を瞠ったルキウスは、即座に表情を戻し呟いた。
「厳しい相手になりそうだな?」
「あぁ、だからこそ守るぞ?2人で」
「…望む所だ」
ルキウスの答えと同時に、講堂へ着き扉が開かれた。
ある人物の大きな影を思い浮かべ、僅かに目を細める2人。
不敵な笑みの王子と表情一つ変えない公爵子息は、共に立ち向かっていくのだった。
ここまでご覧頂き、ありがとうございます!
もし宜しければ、次の回も覗いて頂けたら、嬉しくて飛び跳ねます!
修正・2021年12月2日
理由:謎の改行を消去。※内容変更はありません。




