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青が読めなくなっても  作者: 綾沢 深乃
「第4章 夏夜のアスファルト」

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「第4章 夏夜のアスファルト」(6)

(6)


 直哉が話し終えると、三人はまた黙り込む。彼の話を聞いて、それぞれに考えがあるのは予想していた。何を聞かれても答られるつもりでいる。


 まず最初に口火を切ったのは、森谷。


「どうしたらいいのか分かった。ただ、佐伯くんの考えている展開になったら、美結が大変だと思うけど平気そう?」


「私も心配。ねえ、佐伯だけが知ってる美結のプライバシーの問題っていうのを教えてよ」


 梅沢が直哉に詰める。口調が最初の頃より多少柔らかいが、それは美結を心配しているからであって、彼に対して優しくなったのではない。


梅沢の気持ちは直哉も理解出来る。それに直接、口には出さなくても森谷も同じ気持ちである事は伝わっていた。


 だからと言って、“心読み”について、教えてしまうと最後、もう元には戻れない。仲が良いなら尚更だ。普段、いつも話していた相手に自分の心が読まれていたなんて事実。下手したら、美結を助けるという話の根幹から崩れてしまう。


 そうなって美結が孤立でもしてしまったら、結果的に彼女を苦しめただけで終わってしまう。でも、話さないままでいると、各々に不満が残っている。一体、どれが正解なのか。


直哉が葛藤していると、真島が優しく寄り添うように話かける。


「まあ、二人の気持ちも分かるけど、そこは直哉を信じてくれないか? こいつが話さないのは、何も意地悪でしてる訳じゃない」


「優人の言ってる事は分かるけどね……」


 森谷が弱々しく答える。そこを逃さず真島が追撃した。


「そもそも、いつも一緒に二人に言わず、直哉だけに話した新藤さん。きっとそれもちゃんとした理由があるんじゃないか」


 真島がそう説明すると、二人は本当かと目で直哉に訴えかけてきた。その迫力に若干、押されつつも負けないように正面から受けて止める。


「真島の言ってる事は、本当だ。新藤さんが二人に言わなかったんじゃなくて、言えなかったんだ」


 美結の気持ちを聞いて、二人はまた考え込んでしまう。やがて、森谷が観念したようにため息を吐いた。


「分かった。佐伯くんがそう言うなら、きっとそうなんだろう。一回はそれでいこうって承諾したんだし。佐伯くんの中で私たちを都合の良いように使ってくれていい」


「ありがとう、森谷さん」


 直哉が礼を言うと、森谷は微笑んでから、梅沢を見る。視線を向けられた彼女は戸惑っていたが、て両手を挙げて降参のポーズをした。


「二人がそう言うんじゃ、もう私が何を言っても無駄。はいはい、何も言いません、好きにして下さい」


「梅沢さん、ありがとう」


 今度こそ、本当に三人全員の同意が得られた。これで何も問題はない。


「三人とも、ありがとう」


 直哉はあらためて三人に礼を言って頭を下げた。

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