悪役令嬢のその後
「今日この日を以って、ベウストザイン嬢との婚約を破棄することを宣言する!」
王太子の言葉にパーティー会場が騒然とした。
「……そうですか」
「婚約破棄の理由をお聞きしても?」
「お前は王妃に相応しくない」
「相応しくない理由を尋ねているのですが」
王太子の顔がカアッと赤くなった。
「お前がマリーを虐めたからだ」
ちらりと、『マリー』ことマリーツィア・リンデン男爵令嬢に視線をやれば、びくっと怯えたように王太子の後ろに身を隠した。
「心当たりがございません」
「とぼけるな。器物破損に傷害、さらには暗殺未遂までしておいて」
「プレジ・ベウストザインを国外追放とする」
「………………」
「嫌なら一族郎党処刑してもよいのだぞ」
「………………」
「無視をするな!!」
「承知致しました。今までお世話になりました」
心にもない世辞を言って、その場を退出した。王子たちが何か言おうとしていた気がするが、そんなことどうでもいい。
プレジはその日のうちに荷物を纏め、国を出た。
行き先は隣国に嫁いだ叔母の屋敷だ。夫婦ともに温かい人なので、今後の進路を決めるまでの短い間なら置いてくれるだろう。
叔母の屋敷に居候をしながら、本の翻訳をして金を稼いでいる。
一人暮らしをしようと思ったが、若い女性の一人暮らしは危ないからと、叔母夫婦が許してくれなかった。
色々あったが、今は平和に過ごせている。
風の噂で知ったことだが、王太子はリンデンを婚約者にしたらしい。
「お嬢様」
「即位してから、我が国は衰退の一途を辿っています。このままでは近いうち滅亡してしまうでしょう」
「お願いします。どうか、国に帰って来てください」
ふう、と覚悟を決めるように息を吐いた。
「お嬢様には黙っていてくれと頼まれたのですが……」
少し間を置いて、話を切り出した。
「公爵様が病にお倒れになりました」
「…………」
落ち着いて見えるが、眼は潤み、眉間には皺が寄っている。
計画を練り、革命を実行した。国王夫妻はそれぞれ別で塔に幽閉された。
この世界で史上初の民主主義国家が誕生した。
プレジは官房長官になり、大統領を支えた。男女平等を目指し、多くの斬新で画期的な政策を打ち出した。人々は彼女を『民主主義の母』『男女平等社会の先駆者』と呼んだ。