ヲタッキーズ37 復讐のソフトターゲット
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"が秋葉原の平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第37話"復讐のソフトターゲット"。さて、今回はオリンピックに向け対テロ訓練を狙うテロが発生!
背後に訓練を売り込む民間軍事会社のアフリカ案件で生じた私怨があるコトを突き止めたヒロインの前に主人公の元カノが…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 狙われたテロ訓練
東京メトロでアキバに逝くなら、実は秋葉原駅よりも末広町駅で降りるのが正解だ。
往時の電気街に逝くならともかくディープな裏アキバに御用なら末広町駅がお薦め←
で、その末広町駅で…
「1番線渋谷行、地底超特急が到着します」
「各駅停車上野行は2番線から…」
「1番線お下がりください。超特急到着です」
渋谷と上野以外、末広町にしか止まらないノンストップの地底超特急が到着スル。
デイパックを背負った汗臭いヲタク、ゴスロリの腐女子、場違いなサラリーマン…
ゾロゾロと乗車のヲタク…じゃなくて支度←
「待て!ソコのヲタク…じゃなくてお前!」
緊急ブザーが鳴る!驚き慌てる群衆の中から、ふたりの男が飛び出して駆け出す!
声をかけたのはオリンピックを控え良く見かけるようになった制服姿の警備員だw
では、逃げ出した男達は誰?
「きゃあ!ヤメて!触らないで!」
「おまわりさん、痴漢です!」
「今日もまた痴漢に遭ったとブスは逝う」←
様々な思惑が交錯スル中、二手に分かれた男達は他の客を突き飛ばして逃走!
追う警備員は満員の超特急から吐き出される群衆に邪魔され身動き出来ないw
「止まれ。今すぐ止まるんだ!」
「どけどけ!どいてくれ!」
「待て!射殺スル」
逃げた男の片割れは、自動改札を飛び越えたトコロで…真正面から射殺されるw
人待ち顔で改札にいた男が、ヤニワに腰から拳銃を抜くや問答無用で撃ち殺す←
ホームに悲鳴と絶叫が溢れ大混乱w
「仲間は射殺した!投降しろ!」
「造反有理!」
「"愛の装甲擲弾兵グラナディア"よっ!今すぐ止まりなさい!」
トンでもナイのが混ざってるなw
もうひとりの男は、ホームドアをヒラリと飛び越えて線路に降りるや上野方向へ走るw
するとホームにいた腐女子は太腿も顕に隠しホルスターの拳銃を抜くや容赦無く連射←
背中から射たれバンザイの格好のママ倒れた男のデイパックを腐女子が…あれれ?
いつの間にか上は西洋甲冑、下はミニスカのグレナディアに変身してるょwスゲェ←
"愛の装甲擲弾兵グレナディア"は生身女子がコスプレしたアキバの御当地ヒロインだw
しかし何処で着替えたのかな?
まーさか衆人環視のタダ中で?
彼女は倒れた男が背負っていたデイパックの中身を暫く探っていたが、やがてゼリー状の何かが入ったビニール袋を取り出し掲げるw
すると…
「訓練終了!オリンピックを控えた対テロ訓練は終了だ!全員その場で待機。お疲れ!」
射殺された男達がふたり同時に、よっこらしょと立ち上がる。
改札を抜けたりホームに上がるのをヲタク役の男女が手伝う。
「傾注!我々は、サリン攻撃を見事に阻止した。だが、覆面警官役のスーパーヒロインの君!犯人を射殺してはダメだ。生け捕りにして情報を得る必要がアル。では、始発になる前に、もう1回やろう。全員、配置について!」
駅員役?の背の高い男が仕切る。
その時、またもや緊急ブザーが…
「出してくれ!ゲホゴホ」
「助けてぇ!ゲホゴホ」
「何だ?何が起こったんだ?」
訓練ディレクターと思しき駅員役?の男が振り向くと…
ホームに停車してる超特急の中にガスが充満しているw
立ち竦むグレナディアw
「車掌!ドアを開けろ。急げ。みんな、外へ出ろ!早くしろ」
直ちに緊急ボタンが押下されて、ドアが開く。
転がり出るようにホームへ吐き出される男女。
「早く出るんだ」
全員ホームに出て四つん這いになり咳き込む。
大惨事で大混乱だが…何処までが訓練なのか?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
程なく末広町の交差点にサイレンを鳴らしたパトカーが続々と集まる。
もう少しで夜勤明けだった万世橋警察署のラギィ警部は御機嫌ナナメw
「状況は?」
「対テロ訓練の責任者は、警部にだけお話しスルと…」
「え。何様なの?」
と、思ったら化学防護服に身を包んだ金髪の女性士官だwまさかコスプレじゃナイょね?
「中央即応群化学中隊のクリズょ」
「え?市ヶ谷の人?私は万世橋のラギィ警部。制服組が秋葉原まで出張って何やってンの?」
「生物化学兵器によるテロの対策訓練をしていたの。訓練の終了後、停車中の上野行き地下超特急内で有毒物質の放出を知らせる警報が鳴動、現場は大混乱に。もうせっかくの訓練が台無しよっ!」
「…毒の種類は?」
「危険物処理班の分析によれば、塩素系のホスゲンガス」
「で、被害者は?」
「訓練に参加していた乗客役の大江戸メトロの職員と警官役のウチの隊員が超特急内に閉じ込められた。6人が病院に運ばれたものの全員無事」
「他でも訓練やるンだって?」
「オリンピックを直前に控え、コンサルの提案で明日から1週間、秋葉原の10カ所で行う予定ょ」
「10カ所も?」
ソコへまたまた厄介系オバサン登場だw
デブ専か?地を這うパラソルみたいな…
「何が起きたの?」
「まだ分かりません。コチラ、所轄のラギィ警部です。警部、市ヶ谷のウスマ参与」
「ウスマです。警部、何かわかったコトは?」
「明らかになったのは、今後の訓練は延期にすべきだと言うコトです」
後から押し掛け事情を聞いた地を這うパラソル?ウスマ参与は立ちドコロに決断を下す。
「悪いけど、ソレは無理ね」
「なぜ?」
「1年かけて計画した訓練なのょ。オリンピック直前の集中訓練で全てを仕上げる。安心で安全な秋葉原のためににも、この訓練プログラムは後戻り出来ないの」
「でも、この件が解決するまでは…」
「訓練は続行するから。秋葉原の病院、港、宇宙往還機が離着水に使用してる神田川。色々と場所を変え、あらゆる事態に備える。どうせ、今夜の騒ぎは、ビル清掃員のうっかりミスか何かでガスが出たンだわ。ソンなコトで、世界のヲタク首都、秋葉原を危険に晒すワケにはいかナイの。安全を犠牲には出来ないわ。なお、首相官邸も私も、コレがテロである可能性はナイと考えてる」
「おやおや。その論拠は?」
「私の頭の中の常識ね。テロリストは、常に最大の被害を求める。訓練現場など狙うハズがナイわ」
「それは分析の1つに過ぎナイでしょ?」
「では、誰かが故意にガスを撒いたと?ならば犯人を見つけるのは、貴女方、警察の仕事ね」
「あらあら。市ヶ谷が所轄に命令スル気?この街で私に指図しないで」
「わかったわ、好きにして。その代わり、私達も仕事を続けるから」
ズズズっと歩き去る、地を這うパラソル…
溜め息をつき見送るラギィ警部…とクリズ。
どうやら部下?も呆れモノが言えない様子。
「ねえねえ。いつもあの調子なの?」
「うーんアレはアレで正論なのょね。戦艦大和の向きは変えられないわ」
「沖縄の手前で沈められても?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、原子力発電所の副所長をやっていて、帰京=御帰宅は2週間に1回ぐらいのペース。
今日がその日で、御屋敷が開く前の昼頃に顔を出したら…タイヘンな騒ぎになっている。
「椅子を40脚追加して。宴会用のテーブルと御屋敷の角に東屋を作りたいの。出来る?じゃ土曜日に。よろしくね…あ、テリィ様。おかえなさいませ」
「ミユリさん、何コレ?運動会でもやる気?」
「あはは。テリィ様、面白い。ところで、もう2週間経ちましたっけ?」
コレだょ。
単身赴任が決まった時は、いつも御帰宅の日を指折り数えて待つ耐える女だったンだが←
僕の推し、ミユリさんはスーパーヒロインなんだけど、変身前はココのメイド長ナンだ。
しかし、この変わりようは…逞し過ぐるw
でも、本日最大のサプライズはこの後に…
「奥のバックヤードは、花嫁の着替えに最適ね。よかった…テリィ様!お久しぶり。私の(御屋敷の)卒業以来ですね?」
「アカネ…めちゃくちゃ綺麗になった」
「ありがと。末広町駅でお別れして、リアル帰宅されるのをお見送りしたのが最後です」
「あの後、人身事故で宝町で半日足止めされたw」
微笑を残し、そよ風のように去るアカネは…僕の元カノだっ!
元カノが今カノの御屋敷で一体何やってルンだょ!地獄絵図w
とにかく、ココは今カノ…じゃなかった今推しであるミユリさんから話を聞いてみようw
「どうしてココにアカネが?」
「"結婚"…をスルんだそーです」←
「ええっ?!ココで式を?」
ミユリさんは淡々と語る。
今カノの余裕って奴かなw
「予定では挙式は秋だったけど"彼"のロンドン転勤がヨーロッパのコロナ収束を見据えて早まったとかで。お母様がもうパニックだそうです」
ウソだ。
アカネは、ワケあってアキバの顔役だった父親に育てられ、母親の顔を知らない。
この話は、もちろんミユリさんも知ってるけどこーゆー話をスルのは…あぁ厄介w
「私も、御招待されて初めて事情を伺ったのですが、内輪の式にしたいけど、彼チャマの億ションが売却済みだそうで、ウチでどうかなと思って」
「そりゃ、迷惑な話…だね?」
「別に」
何となくミユリさんを正面から直視出来ない僕だが…チラ見スルと挑むような視線だっ!
ヤバい!コレは徹底的にヤバいょ心の中は冷や汗で溺死しそうだw神田明神ょ護り給へ←
ソコへ諸悪の根源アカネが爽やか笑顔で出没w
「テリィ様、原子力発電所の副所長さんになったンだって?スゴーい」
「宇宙発電衛星の立地をやるコトになって、そのための現場経験を積むコトに…ってソンな話はどーでもよくて、アカネ、お相手は?」
「お医者様ょ」
「お医者にロンドン転勤ってアリか?そー逝えば、ナースのコスプレ、好きだったょな?」
「アレは、テリィ様がお喜びになるからでしょ?ナースならミユリさんにも負けナイわ…ところで、ルイナは元気ですか?」
え。ルイナ?つきあってた頃と同様、彼女には全く歯が立たない僕だけど…え。ルイナ?
ルイナは、ミユリさん率いるスーパーヒロイングループ"ヲタッキーズ"の科学参与だ。
「ルイナとは、実はテリィ様をめぐって、取っ組み合いの喧嘩をしたコトもアルのょ」
「ええっ?!」×2
「何?ミユリさん、テリィ様と異口同音?御主人様と息がピッタリなのね。妬けちゃう。ミユリさん、今はルイナと一緒に働いてるって聞いたけど?」
「え。ええ、そうょ。ウチのヘルプメイド。今、屋上で実験…じゃなかった、式の準備をしてるわ」
「え。屋上?花嫁がヘリで降り立つ…ナンて演出なの?素敵!」
御屋敷は、秋葉原駅に直結した高層ビルの最上階にあるが、屋上にはヘリポートがアルw
しかし、全般的に何かが歪んでる気がしてならナイ。ココはひとまず退却し戦線整理だ←
「アカネ。思い出話は楽しかったけど、用事があったの忘れてた」
「お会い出来て良かったです、テリィ様。式には出てね」
「必ず出るよ。結婚おめでとう。綺麗だ」
「ありがと。うれしいわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アカネの招待状は、僕の帰京と入れ違いに発電所の単身寮の方へ届いてたらしい。
寮のおばちゃんに出席で返信スルよう頼んでから僕はビル屋上にルイナを訪ねる。
ルイナは屋上にいたが…メイド服のママ、ライブの音響技師みたいに機器に囲まれてるw
「あら、テリィたん。真昼のお月見ですか?」
「やぁ、ルイナ。君こそ、コレも式の準備なのかな?」
「え。式?何ですかソレ?コレは、ジャドーから頼まれてるニャートリノ通信の実験です。光を追い越す速度で、ジャドーの月面基地と通信が出来ルンですょ」
ジャドーはアキバに開いた"リアルの裂け目"から襲い来る災厄と闘う秘密防衛組織だ。
ミユリさん率いるヲタッキーズは民間軍事会社で、ジャドーと契約スル言わば傭兵集団。
「0.0002秒か。今、ココから打ち出したニャートリノがジャドーの月面基地に設置した特殊ミラーに反射して戻って来たトコロですょ。テリィたん、またまた歴史的瞬間に立ち会えたね」
「そりゃ光栄だな」
「ニャートリノの発振器には、ファラデーの電磁誘導の法則を応用してるの。でも、コイルの電流をもう少し調整してみなきゃ…テリィたん、アカネに会ったの?」
「うん」
「綺麗になってたね、彼女」
「う、うん」
「テリィたんの推しだモンね」
「昔の話だょ。なぁルイナ。僕達に共通の友人とかいたかな?」
「いないわ。私とアカネはホーリン幼稚園の同級生だった…でも、テリィたんが2週間ぶりのミユリ姉様をほったらかしてまで私のトコロへ来たのは、ソンな話をしたいから?」
やれやれ。お見通しだ。
「ホスゲンガスを知ってるか?希釈物が末広町駅で撒かれたらしい」
「え。ソレ、大変なコトょ?テロリストの仕業かしら?」
「事故かどうかは、ラギィ警部が調査中だ。ビル清掃員が業務用洗剤を誤って混ぜた可能性もアルらしい」
「うーん確かに染料や農薬の製造に使われるガスなの。塩素系で毒性が強い。理論上は、清掃作業中に偶然発生し得るけど…まぁ特定の洗剤が順序良く偶然に混ざればの話ょね。ソレって考えにくいわ」
「では、事故じゃないと?」
「ガスの放出はエアダクトから?それとも容器から撒かれたのかしら?」
「わからない。なぜ?」
「ガスは消える時に痕を残すから、ソレを辿ればガスを放出した場所がわかるかも」
「場所が分かれば…」
「きっと犯人につながるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
末広町駅構内では、ラギィ警部が制服組に駅のゴミ箱のゴミを全てブチ撒けさせている。
「あら。いかにも何か出そうなゴミ箱だわ。素敵。収穫ありそうょ」
傭兵風のキャップを見つけて被ってみせる。
「今回の訓練の参加者は、大江戸メトロか警官に化けて来たに違いナイわ」
「多分メトロ職員じゃないスか?」
「そして、混乱に乗じて小道具をゴミ箱に捨てて、何食わぬ顔で立ち去ったって感じ?」
ラギィ警部が、次に摘み上げたゴミは…
「ビンゴ!ガスマスクよっ!」
「ソレから…シチュー缶ですね。私、コレ好きナンです」
「ん?穴を開けた後で、また閉じて何かに再使用してるわ」
「地球を救うリサイクル?さてと。どうします、警部?」
「シチュー缶はジャドーへのお土産にするわ。アソコの鑑識に凄腕がいるのょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
30分後のジャドー司令部。
「見たコトのあるシチュー缶ね。アキバの街中で良く見かけるわ」
「どーなってるの?」
「内部に加熱機能がアル。底のボタンを押すと水と生石灰が混ざる。すると60度の熱が発生して…」
「おいしいシチューが出来上がる」
おどけてみせるのはムーンライトセレナーダー。
ミユリさんが変身したスーパーヒロインの姿だ。
黒セパレートでヘソ出しタイプのコスチューム。
一方、科学参与のルイナは、お約束の白衣姿だ。
「恐ろしい毒ガスも出来上がるわ。ホスゲンは8度までは安定した液状だけど、温まると毒性のガスになる。警察や消防の計測値をもとに超特急内のガス濃度を調べた。ガウスブルームモデルで分析スルと、ガスの拡散パターンがわかる。人間の目には、放出されたガスは1つの大きな雲に見える。それが空気に乗り、開いたドアや窓に向かって拡散するの。障害物により拡散パターンは変わるわ。雲って、実は多くの噴煙で構成されていて、一般的な拡散方程式によって、ガスの放出場所を辿るコトが出来る。犯人は、この車両の真ん中でガスを撒いたハズょ」
「なぜ真ん中?」
「最大の拡散効果を見込めるから。周辺にガスの出口がないから…恐らく死者数を最大にするコトが出来るわ」
「あら?でも、実際にはガスは無害な添加剤で薄められてたみたいょ?」
万世橋の鑑識レポに目を通しながら口を挟むのはジャドーのレイカ司令官だ。
華麗なるコスモルックに身を包んだ、ハデなコスプレのレイカは…アラサーw
「でも、化学戦の手口は明らかにプロだわ。ミスじゃない」
「つまりワザと殺さなかったと?」
「ならば何故テロ対策訓練を狙ったのかしら?」
「きっと犯人は、ハイリスクを追い、スリルを求めるタイプなのね」
「ゲーム感覚ナンだな」
「アドレナリンを求め、スリリングな犯行を繰り返す連中wきっと、次はもっと大胆にナルでしょう」
「そして、間違いなく犠牲者が出るわ」
第2章 仮想敵株式会社
例の地を這うパラソル、ウスマ参与が民間軍事会社アグレサ社CEOであるコトを調べたのは万世橋のラギィ警部。事情聴取に同行スルw
「ウスマ参与、いや、PMCアグレサ社のウスマCEO。聞く耳持たナイでしょうが、テロ対策訓練は延期すべきょ」
「あの時の警察の人?私、同じ話を繰り返すのは好きじゃないわ。訓練は続ける。秋葉原の安心安全のためだから」
「ガスの散布は、何者かが意図的に行なってるのょ?」
「なぜわかるの?」
「数学的な観点からの分析ね」
「ホント?私、数字なら強いわょ。13×47は611、26×73は1898、68×51は3468」
「インド人なの?今、言えるのはガスが再び撒かれると言うコト。そして、今度は犠牲者が出る」
「確かに、秋葉原には化学プラントや港、食料品に上水道など、重要なのにマルで無防備な施設、つまりソフトターゲットが多いわ。だから、秋葉原を守るには訓練が必要なの。訓練の延期は絶対に出来ない」
「では、貴方の判断は間違いだと記録に残しておくわね。せめて、訓練の参加者には状況を通知すべきだと思うわ」
「そして、訓練を台無しにしろと?OK?私は戦後我が国初の海外拠点となるジブチ基地の警備参与をしたけど、その時は今よりもっと難しい決断をして来たわ。貴女ならどっちを選ぶ?基地のほぼ全員が助かるか、数人のために全員が犠牲になるか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
何となくウスマCEOに気圧されたママ御帰宅スルと、御屋敷は相変わらズのテンヤワンヤw
「あれ?ルイナ、もう実験終わったの?ついに君まで(僕の元カノのw)式の準備に駆り出されたか」
「あ、テリィたん。地下鉄のテロ対策訓練中に毒ガスが撒かれた件、犠牲者はどーなった?」
「幸いホスゲンガスの濃度が薄くて全員無事らしいょ」
「良かった!じゃケータリングの受け入れを手伝って!」
「ゴメン!死んだ親父の遺言でケータリングの受け入れだけは手伝うなって…」
「アカネさんは元カノでしょ?ホトンド自分で撒いた種ょ?」
「え。何ソノ理屈?とにかく、場所は提供したから。準備は(今カノにw)任せるょ…」
と、小声で逝ったハズが振り返ると今カノ、じゃなかった、今推しのミユリさんがいるw
思い切り猫撫で声ナンだが目が笑ってない←
「ところで、ルイナ。貴女とアカネさんは同じ幼稚園だったそーね?」
「はい、ムーンライトセレナーダー、じゃなかった、ミユリ姉様」
「そして、ふたり共テリィ様に夢中だったのね?」
「え。当時、私は幼稚園だったし、ただの憧れみたいなモノで…」
「その後、アカネさんがメイドになって(私が未だ池袋でグズグスしてる内にw)テリィ様の推しになり、ふたりは電気街口広場で白昼、取っ組み合いの大喧嘩をしたワケね?」
「え。あ、その、ソンなコトも…若い頃の懐かしい想い出だわ、あはは」
「ぼ、僕をめぐって君達が喧嘩を?」
「かなり熱の入った喧嘩だったらしいです」
「ねぇミユリ姉様。その話はもうやめょ?ずっと昔のコトだし。ほら、早く仕事をしないと」
「あ。ケータリング、手伝えるか親父の墓前に相談してみるょ」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同じ時刻のジャドー司令部。
レイカ司令官が頭を抱える。
「ウスマCEOのアグレサ社は、訓練を続行する気だ。明日3回明後日4回。市ヶ谷は、OB企業の強引な売り込みを眉を顰めながらも、ヤメてくれとは誰も言えないらしい」
「司令官、その分コッチも狙いが絞れます。逆に好都合ですょ。ターゲットを絞り込みましょう」
「あんたバカァ?全部で10カ所ょ?とても警備し切れないわ」
「でも、絞り込む手がかりが集まりつつあります」
「え。何?」
「末広町駅の防犯カメラに容疑者が映っていました。ご覧ください。あ、今、服を捨てた男です。顔認証をかけたトコロ、ロダシ。31歳。元レンジャー」
「待って。シャツを脱いで剥き出しになった腕にタトゥーが」
「あ、ホントだ」
「あのタトゥーは…奴は北富士教導団特技戦チームの隊員です」
「特技戦チーム?」
「テロ訓練の時の仮想敵を演じる精鋭部隊です。テロリストになりきり、対象に攻撃を仕掛けたりシミュレーションしたり。例えば、基地や武器庫を実際に模擬攻撃してみせて、警備のレベルをチェックしたりスル連中です」
「仮想敵のテロリスト版かしら。仮想テロリストみたいな」
「YES。基地を模擬攻撃し、安全性を評価スルのが任務です」
「じゃ今回の末広町駅みたいなテロ行為は…」
「お手のものです。しかも、この男は退役後も民間で同様の仕事を請け負ってます。最後の仕事は2ヶ月前、個人所有の化学プラントへ模擬攻撃を行なっています」
「ソコでホスゲンをゲットしたのね。仕事はチームで行うのかしら」
「この手の仕事は常にチームです」
「あ、末広町駅の動画を戻して。止めて。耳の部分をズームして大きく。もっと大きく…ソコょイヤん」←
「イヤんじゃなくて、イヤホンですね。誰かから命令を受けて行動してるようだ」
「2ヶ月前の化学プラント強襲の指揮官は?」
「ナッシという男で…元半島の特殊部隊。数年前に陸軍除隊。以後傭兵として海外で荒稼ぎしてます。タマに半島に戻り訓練とかも請け負ってる。心理作戦、サイバー戦、秘密工作などの訓練経験あり。ややっ?去年、秋葉原で自前のチームを率いて遣独潜水艦のドックを強襲、原子力U-boatを奪取していますねw」
「え。原潜をジャックしたの?!」
「YES。しかも、わずか3名で」
「ナッシの経歴とチームの写真を至急手配して。居所を探るのょ!海軍基地から原潜を盗んだ奴等か。秋葉原のテロ攻撃ナンて片手で出来ちゃうわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
で、そのナッシには妹がいて、アキバでメイドをやってるとのコトw
聞けばミユリさんと顔馴染みとのコトで早速事情聴取を兼ね御帰宅←
「おかえりなさいませ、御嬢様…あ、ミユリ姉様。ご無沙汰してます!」
「ただいま、リライちゃん。元気してた?」
「はい…あ、もしかして!コチラが、あの、その、噂のテリィたん様ですか?」
傭兵隊長?ナッシの妹リライは、黒髪をシニョンにまとめたチャイナメイドだ。
ミユリさんについていった僕を、パンダを初めて見た時みたいにジロジロ見るw
ま、僕も彼女の深いスリットに視線が釘付けw
「リライちゃん。お兄さんがいらっしゃるのね。最近会ってる?」
「数ヶ月前に香港で警備の仕事があると。そして、いつも突然いなくなるのです。兄が何か?」
「別に。今、どちらかしら」
「最近は疎遠で」
「なぜ?」
「兄は変わったのです。アフリカへ従軍スルようになって」
「半島時代の軍歴は拝見したわ」
「象牙海岸で部下を失くし、辛い思いをしたようなのです」
「でしょうね」
「ミユリ姉様も何処かで御経験を?」
「アキバの大晦日戦争」
「え。あの未来人やヲタクが大勢亡くなった戦いを?でも、ソレならお分かりですょね?」
「あのね。リライちゃん、私達はお兄さんとお話をしたいだけなの。ソレもなるべく早い方が良いわ」
「お役に立てなくて…ミユリ姉様、ホントにゴメンナサイ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局、手ブラ(グラビアじゃないょw)で"潜り酒場"に帰った僕達をルイナさんが出迎え。
「そぉですか。やっぱりナッシは行方不明か」
「恐らく妹のリライは何か知ってるけど、何も教えてくれなかったょ。まぁもともと万世橋も、現行犯逮捕しかあり得ないとのスタンスだけど」
僕は、まるでパリでフランス人がヤルみたいに、手の平を天に向けて肩を竦めてみせる。
「その通りかもしれませんね」
「でも、惨事は事前に食い止めたい。起きてからじゃ遅いんだ」
「テリィたん。パーコレーション理論を使ってみるわ。対象物が目的達成のために、どう進むのかを推測スル理論ょ」
あぁまた難しいコトを逝い出したぞ。
ルイナはヲタッキーズの科学参与だw
「あ。今、私のコトを面倒な女だと思ったでしょ?でも、来て。ねぇ人生はパチンコに似てると思わない?」
「え。スロットじゃなくて?」←
「ええ。人生はパチンコ。私達は、釘の間を落ちていく玉。釘は警報システムなどの物理的な障害。穴は、行く手を阻む警備の罠。目的を遂げるためには、ソレらを上手く回避する必要があるわ。もちろん、台が違えば仕掛けも異なる」
「なるほど。人生が、じゃなかった、訓練が違えば、警備システムも違うワケか」
「YES。末広町駅への侵入方法を分析すればナッシの手口を予測出来るカモしれない。でも、残りの訓練のデータが必要だわ」
「OK。ジャドーのレイカ司令官に頼んで市ヶ谷のデータベースにアクセス出来るように頼んでみる」
「よろしく。ソレから、ミユリ姉様だけど…顔を合わせると式の準備の話ばかりで…」
「そーナンだょな。アカネの結婚式の準備に夢中だ。花嫁雑誌まで買ってるw」
「ウェディングプランナー気分で盛り上がってるワケね?式準備の手伝いを無茶ぶりされると分析に支障が出るので…にしても、テリィたん。ミユリ姉様の反応、色んな意味でヤバくない?」
「やっぱり(僕とのw)結婚とか意識してるのかな」
「そもそも元カノが今カノの御屋敷で結婚なんて絶対ヘンょ」
「でも、御屋敷の貸し出しはミユリさん自身がウケた話だからな」
「ソコよっ!」
「ドコだっ?」
「テリィたんの、その煮え切らない態度!私がテリィたんを好きだったのに、貴方はアカネを推した!」
「え。嘘だろ?まだ怒ってるのか?」
「…いいえ。色々と思い出しただけ」
「何を?」
「アカネの下で、いつも引っ込み思案だった私。若い頃、アキバは辛かった。周りはみんなメイドとは言えキャバ上がりで。でも、アカネだけが普通に接してくれたの」
「そりゃヲタク側だって同じだょ。少しくらいモテたって大目に見てょ」
「3年目の浮気?あのね、テリィたん。手口がわかっても、パーコレーション理論では、標的までは予測出来ないから」←
「え。そうなの?」
「ナッシ次第ょ。過去の任務まで分析出来れば、何かわかるかもしれない」
「あちょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早速その足でデータを回してもらえるようにジャドー司令部に出向いたら作戦会議の最中w
「ナッシのチームによる化学プラント強襲時のメンバーですが、先ずナッシ。さらに、爆発物の専門家、電子工学マニア、ペテン師に詐欺師…」
「オーシャンズ12なの?ナッシが昔の仲間を集めて末広町駅の訓練を攻撃したとして、なぜ市ヶ谷を目の敵にスルのかしら」
「奴は去年傭兵としてアフリカの象牙海岸へ行ってます。ソコの安全とされた拠点基地で部下を2人、自爆テロで失っています」
「で、市ヶ谷との関係は?」
「拠点基地の警備は、アグレサ社が請け負ってました。同じアグレサ社の警備ミスが秋葉原でも起こると警告してるのでは?」
「ガスを撒いてまで?」
「アフリカでは何も出来なかった。だけど、秋葉原なら違う。復讐は感情であり理屈じゃない。ナッシは、感情に任せて死んだ部下の復讐を成し遂げる気なのカモ」
なるほど。色々整理出来たトコロで、僕はルイナから頼まれてたデータベースへ話をフルw
「化学プラントを強襲した後、ナッシのチームは姿を消したンだょね?ケータイやカードも全部STOPしてる」
「ところで、テリィたん。ナッシの妹の方はどうだったの?」
「ダメだった。居所は知らないらしい。でも、ナッシが再び動く前に何とか見つけたいょね。ちょっち調べたいコトがあるンだけど、市ヶ谷のデータベースにアクセスさせてもらえないかな」
すると傍らの金髪士官がファイルを寄越す。
良く見ると末広町駅で見た市ヶ谷のクリズ。
「今回の訓練の基本計画書ょ。参考になるかしら?」
「え。素晴らしい!協力に感謝するょ。助かるなー」
「ソレからコレも。ウスマCEOのアグレサ社の事業内容や職員への脅迫行為をファイルにしてアル。私達が契約上知り得たモノは、全て入ってるわ。ウスマCEOは、市ヶ谷のOBで今は参与だけど、やり口が強引だから、省内でも敵が多いのょ。彼女のテロ対策訓練に対する批判は、アチコチで聞くわ。で、このファイルの件は、ウスマCEOには内緒にしてね。私、闇夜に刺されちゃう」
「了解(ROG)。でも、ソレだけの悪評ならウスマCEOの耳にも入ってるだろうに。彼女は聞こえないフリ?」
「この業界では、ビジネスに脅しは付き物と割り切ってるようね」
「君は違うのか?」
「私は、ウスマCEOが良く使う北富士の特技戦チームを良く知ってるの。あの連中は、噛む気がなければ決して吠えない人達ょ」
「なるほど」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
データベースへのアクセス権限をゲット、意気揚々"潜り酒場"に戻ると当のルイナは…
「あれ?ホワイトボードに何を描いてるの?新しいアルゴリズムかな?」
「ハズレ。結婚式の座席表でしたw案の定、あの後でミユリ姉様から頼まれちゃって、今も矢の催促w」
「え。あれほどルイナさんには仕事をフルなと逝っておいたのにw」
「ソレが逆効果だったのカモ。私、姉様の"隠れ恋敵"だったワケでしょwでもね!席次表も、人の流れや音響パターンとか、グラフ理論で分析して色々評価してみたら意外に面白いわ」
「僕は、いつも新婦の男友達か、遠縁の親戚テーブルに追い込まれるけどな」
「ソレ、ウケるwでね。実は、分析で難問にぶつかっちゃったの」
「難問?」
「ナッシのターゲット選別のパターンょ」
「…他には?」
「え。何の話かしら」
「メイドになりたての頃、アカネと争ったと聞いたけど。その、あの、僕のコトで」
「うーん確かにアカネと私には、その時のシコリがアルわ」
「話し合ったのか?」
「昔の話ょ。気持ちにケリをつけるコトが、席次を決める以上に難しいトキもアル」
「確かに簡単なコトじゃナイ。誰でも新郎新婦の正面の良い席に座りたい。でも、いくら調整しても、ハズレの席がこの世からなくなるワケじゃナイ。つまり、狙いにくいターゲットって…」
「常に存在スルってコトょね?共通点はソレだわっ!特技戦チームの模擬攻撃は過去32回。ターゲットは、常に警備厳重な施設ばかり。自分達でターゲットを決めてたコトもアル。その時でさえ、敢えて難攻不落のターゲットを選んでいたわ」
「ほーらパターンが見つかったね」
第3章 真実のターゲット
ジャドー司令部の作戦会議はなお続いているw
「ナッシのチームの連中の職歴です。化学プラント強襲の前に働いていたのは、建築会社や電器店などです」
「え。特殊技能の傭兵が、何でソンな給料の安い職人仕事に就くのかしら?」
「特殊部隊の人間は、常に手近なモノを活用する訓練を受けています。海外ドラマの冒険野郎みたいに」←
「なるほど。確か、末広町駅を襲撃した毒ガスの噴霧器は、秋葉原名物のシチュー缶を再利用してたわ」
「化学プラントでの作戦でガスをゲット…次の仕事の材料集めのタメの襲撃だったと言うのか?」
「ナッシの部下達が勤めてる間に盗まれたモノが無いか、雇用主に確認して!」
僕とルイナが会議に飛び込んだのは、まさにこの瞬間だった(らしい。後で聞いた話だが)。
「みんなを集めて!ターゲットがわかったわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
緊急招集された会議には、ウスマCEOも顔を揃える。冒頭からルイナのブリーフィング。
「世界貿易センターテロの後、アメリカ国家安全保障省の数学者は、線形判別分析で次の攻撃を予測しようとしました」
「あらあら。コレは数学の講義なの?ソレともジャドーの作戦会議?どっちなの?」
「両方ですょウスマCEO。お静かに」
地を這うパラソルこと、ウスマ顧問の発言を封じる僕…こんなコトでしか協力出来ないw
「過去の任務から考えて、ナッシは警備が最も厳重なターゲットを狙います。警備への挑戦の意味もアルのでしょう。ソレを踏まえ、残りの訓練の場所を線形判別分析を応用し、さらに1連の変数を加えて脅威評価を行ってみました。変数としては、各施設の出入り口や監視カメラの数、警察の存在、逃走経路となる首都高の近さ、その他交通の利便性などです。コレらターゲットの難易度を格付けした結果、ついに判明しました。ナッシが次に狙うのは"ひとり焼肉"です!」
「え。訓練は明日の午前9時の予定だ」
「流行りの"朝焼肉"を狙う気か!くそっ!盲点だった。しかし"ひとり焼肉"って最も警備が厳重な施設なのかな」
「とにかく!猶予は11時間ね?」
「ソレだけあれば、パーコレーション理論で("ひとり焼肉"のw)攻撃方法を予測出来ます」
ソコへ"ひとり焼肉"の言葉に驚き、或いは呆れているウスマ顧問に至急のメモが回る。
「あら?ウチのビルに侵入者だわw」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
犯行現場?のアグレサ社のオフィスに駆けつけるウスマCEOに、僕とルイナも同行スル。
「侵入者は?」
「あ、CEO。ソレが監視カメラには何も写ってないのです。行動探知機にも反応ナシ」
「侵入者はゼロ?とにかく、ビル中を再捜索して!訓練計画のデータとかに不法アクセスは?」
「セキュリティに異常ありません」
「良いから調べて!誰かが侵入したと思わせてるのかしら」
「でも、なぜ警報を作動させる必要が?何か目的があるハズょ」
「うーん警報が作動スルと何が起きるのかな?」
「私達がココに集まるわ。そして、監視システムにアクセスした…」
「ソレが目的?侵入の目的は私達なの?その誰かは…今も監視ビデオに侵入してるのかしら?」
「確かに回路は同じです、CEO」
「とゆーコトは…今も監視カメラで私達を見てるのね」
「なぜ私達を見るのかしら?」
「反応を見てる…のかな」
「逆監視か」
不安げ顔のウスマCEOがパソコン画面に映っている。
ソレをジッと見詰める者の腕に彫られたタトゥーは…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕達がジャドー司令部に戻ると未だ会議は続いている。会議は最長1時間でヤメましょう←
「せっかく侵入したのに、アグレサ社の訓練計画を盗まなかったのはナゼだ?」
「ナッシは訓練をさせたいのかな?攻撃目標を失いたくないのカモ」
「ナッシの仲間の職場で盗難を確認しました。建設現場からは雷管。ホームセンターからコルデックス農薬。電器店からはケータイ電話」
「農薬と火薬を混ぜるのは、自爆テロのお約束ょね」
「ソレに雷管とケータイが加われば…」
「即席時限爆弾の出来上がりだわ」
会議の全参加者がウスマCEOを見ているw
「コレでナッシが爆弾を持っているコトは、火を見るよりも明白になりました」
「心理分析に拠れば、ナッシは警告を聞かない私達に苛立ちを感じ始めていると思われます」
「しかし、かと言ってテロ訓練を中止すれば、ソレこそナッシの狙い通りだわ」
ウスマCEOは決断を躊躇い苦しげにうめく。
「訓練を続ければナッシを刺激し犠牲者が出ます。そうょね、クリズ?」
「YES。市ヶ谷としても、テロ訓練は中止すべきと考えます」
「御決断を、ウスマCEO」
司令部の全員が容赦の無い視線を浴びせる。
「…わかったわ。ナッシが逮捕されるまでテロ訓練は延期します。関係者に伝達しましょう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
テロ訓練中止の陣頭指揮でウスマCEOは作戦会議をハズし残りのメンバーがヒソヒソ話。
「ウスマCEO、意外にアッサリ引いたな」
「爆弾と聞けば当然じゃね?」
「でも、とても忠告に従うような女じゃ無いンだがな」
「だとしたら、前回から何か変わったのかな」
「そー言えば、アグレサ社が侵入を許したと聞いて、妙に慌ててたな」
「足元を崩されたから当然では?」
「他にも何か理由が?」
「さぁな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜遅く。とっくに閉店した御屋敷に御帰宅スルとカウンターでルイナがお夜食中だw
「テリィたんがダッジオーブンでつくる参鶏湯、美味しい」
「おお。食べると不老不死になる秘薬が入ってるンだ」
「ホント?媚薬でもOKょ。あぁコレが"あの頃"だったならな。"永遠の無を盛装で迎えよう"」
「Woody Allen ?ルイナが引用スルとは意外だな。面白い」
「テリィたんは、いつも面白いわ。"あの頃"は、お互いをわかってなかった。ねぇそうでしょ?」
「え。そうかな」
「ソレが、今は私達が一緒に仕事をスルなんて。思ってもみなかったわ」
「僕達、今は問題ナイょね?」
「モチロンょ。私は大丈夫だから」
「"あの頃"…もし、ルイナを傷つけていたのなら、僕は謝らなくちゃね」
「良いのょ。私は若かった」
「僕達は、若過ぎた」
「そして、アカネは魅力的だった。今でもね。お医者と結婚ナンて、アカネの例のパパは、きっと大喜びしてるわね」
「相手が人間なら大喜びだろw」
「だょね」
ルイナは愉快そうに笑ってから声を潜める。
「で、ナッシのターゲットについて分析を進めてみたんだけど」
「ウスマCEOがテロ訓練を中止したから、少し時間が出来たね」
「ソレが…ナッシのターゲットは、訓練じゃなかったのょ。線形判別分析は、過去の難易度の高いターゲットに基づいているの。空母キラーの発射サイロとかね」
「ソレらから割り出して、次のターゲットは"ひとり焼肉"と判明したのでは?」
「ところが、ナッシの行動パターンを考えると見落としがあった。末広町駅もアグレサ社も"ひとり焼肉"も、ナッシにとっては楽な標的に過ぎない」
「ナッシの手口には合ってナイって逝うコト?」
「YES。つまり、犯人はナッシじゃないのか、或いは…」
「ターゲットが違うのか、か」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日、ジャドー司令部から御座敷がかかる。
「テリィたん、おは」
「あ、レイカ司令官。アグレサ社の監視カメラの画像をゲットしたんだって?」
「恐らくナッシがハッキングして観てた画像ょ。テリィたんも写ってる。ルイナさんと仲睦まじく。ソレかろウスマCEOも」
なるほど。司令部の大スクリーンいっぱいに僕とルイナの"仲睦まじい"動画が流れる。
フト視野の隅に、ムーンライトセレナーダーに変身して放電準備中のミユリさんを確認w
ヤバい!僕は、慌てて大声を出すw
「見ろ!ウスマCEOの目や顎が、不自然に緊張しているぞ!」
重要な指摘ナンだが、声が不自然w
「ホントだわ!横のPC画面を見た直後ね?アレは、ナッシがハッキングしたPCじゃない?」
「え。とゆーコトは、ナッシが逆監視してた対象は、ウスマCEOだったのかな」
「PC画面のメッセージを見て、明らかに動揺していますね」
「解像度を上げて」
「了解」
"KIA2名。死んでもらう"
「KIA?半島のCIAか!次のターゲットだな!しかし、またも半島絡みだったワケかw」
「韓国のCIAはKCIA。ソレに職員は10万人。KIAは…"戦死者"の意味だょ killed in action」
「アフリカで犠牲になった部下のコトかw」
「爆弾処理班をアグレサ社へ。ウスマCEOを保護。ターゲットは、テロ訓練じゃなかった」
「ウスマCEOがターゲットだったンだ!」
ソコへバタバタと情報が入り乱れるw
「ウスマCEOは朝から行方不明です」
「ナッシが妹の御屋敷に御帰宅しました」
「私達も御帰宅よっ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
中華メイドカフェ"どらごんガール"は、裏アキバのとある雑居ビル3Fにある。
完全武装のジャドーの特殊部隊が、狭い階段に押し合いへし合いで配置につく。
「司令官。チーム6、突入スタンバイ」
路地裏に駐車したワゴン車が現地本部だ。
「スタンバイのママ、突入命令を待て」
「了解(ROG)」
「マズイ。妹が帰って来たわ」
買い出しに逝ってたリライが、深いスリットを風でハタめかせて、リアル御帰宅してくるw
突入スタンバイのミユリさんが(ムーンライトセレナーダーに変身してるのも忘れw)声かけ←
「リライちゃん。ちょっち、コッチへ…」
「え。ムーンライトセレナーダー?!裏アキバで何やってるの?ってか声がミユリ姉様にゲロ似てるけど…あら?貴方達は誰?サバゲーなの?自宅警備隊?」
「見つかったwチーム6!突入!突入!突入!」
リライを突き飛ばすようにして完全武装の特殊部隊が御屋敷に突入!
短機関銃を視線で構え、たちまちカフェ内を制圧、御主人様を確保w
「ナッシ!ドアから離れろ!跪け早く。手を頭へ。手は頭!」
「誰が通報を?」
「おかえりなさいませ、特殊部隊様!」
様々な思惑と、ソレゾレの事情に応じた元気な叫び声が、中華な御屋敷の中を交錯スル。
「落ち着いて。私は何もしないから」
「女?一歩でも動けば撃つ」
「出来れば身体検査はムーンライトセレナーダーにお願いしたいわ」
ナッシは…男装の麗人?
「ウスマCEOは何処だ?」
「誰のコト?」
「爆弾は?」
ナッシは呆れ顔で長い長ーい溜め息をつく。
「ハデに踏み込んで来た割には、ヤタラと質問が多いわねw」
「ふざけるな。お前はもう終わりだ」
「え。終わらないわ。誰かが残っている限りね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ナッシの取調べは、ジャドーから移送された万世橋で行われる。
刑事ドラマみたいに、マジックミラー越しに取調べを拝見する。
「観念しろ。もう終わりだ」
「だ・か・ら!まだ終わらないの。ウスマの居所は知らないわ。私は無関係ょ」
「市ヶ谷を脅迫したろ?」
「言論の自由だわ。長い間、この国を守ってきたの。黙秘権ぐらい許されるでしょ」
「ウスマは、アフリカの象牙海岸で拠点基地の参与をしてた。そして、彼女が警備計画を立てた基地で傭兵が死んだ」
「YES。しかし、ウスマはその仕事で大儲けをした」
「市ヶ谷にも訴えが通じズ、頭に来たのょね?ソレで強行手段に出た。化学施設からガスを盗んで地下鉄で撒いたのね?」
「あら。私は何も指示してないけど」
「責任逃れ?今さら信じられると思う?」
「化学プラントを模擬襲撃してからは、仲間とは一切会ってナイわ」
「ウスマCEOの居場所を歌えば司法取引に応じる用意がアルけど」
「あのね。そもそも私が犯人なら、こんなトコロにいないわ。間抜けなジャドーや、その下請けの万世警察ナンかに捕まるようなヘマはしない。しかも、妹の御屋敷ナンかで。甘く見ないで」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ナッシが取調官と自信満々で切り結んでいると、その自信を裏付ける情報が続々集まる。
「ナッシはこの4週間、コロナで隔離されてたそうです」
「マジ?」
「国に接収された横須賀の薬物依存症の厚生施設にいました。施設にも期間を確認しました」
「なら、誰がウスマCEOを?」
「ジャドーの資料に答えがあるわ。そもそも私達にナッシが怪しいと思わせたのは誰だっけ?」
「市ヶ谷のクリズか!」
「アフリカで部下を失ったのは、ナッシだけじゃなかったのょ」
ラギィ警部のスマホが鳴動w
「…わかったわ。すぐ行く。テリィたん、ウスマCEOが見つかった!」
「え。何処?」
「クリズとアグレサ社の屋上に」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
完全武装のジャドー特殊部隊は、隊列を組んだママ今度は非常階段を屋上まで駆け上がるw
「いたぞ。手を上げろ!」
「いやょ。あら。近づかないほうが良いわ。みんな、吹っ飛ぶわょ」
「げ。自爆ベストw」
コメカミに拳銃を突きつけられた地を這うパラソルことウスマCEOは…アチコチのサイドポケットに爆薬を満載したベストを着てるw
クリズが、余裕でリモコンをチラ見せする。
「ご存知デッドマンスイッチょ。押せば爆発、私が殺され手を離しても爆発」
「助けて!」
「爆弾処理班にビルを包囲させて。私が交渉人をやります」
ムーンライトセレナーダーが1歩、前に出る。
「経歴を調べたわ、クリズ少佐。貴女もアフリカにいたのね。ナッシは、貴女の部下だった。女子ばかりの傭兵部隊?何だか昭和の漫画みたい」
「劇画ょ。みんな良い部下だったわ」
「私達を吹き飛ばすつもり?」
「いいえ。殺したいのはウスマだけ」
ココで文字通り泣き声の泣きが入るw
「わ、私が貴女に何をしたと言うの?!」
「アフリカで私の部下を殺したわ。安全だと豪語していたのに。あの杜撰な誤ちを、貴女は今、この秋葉原でも繰り返そうとしているのょ」
「私は、ヲタクの命を守ろうとしているだけょ!」
「どうやって?あんな訓練ゴッコをやって?お膳立てされた、誰も失敗しようのないテロ訓練なんか、タダの猿芝居ょ。ねぇ。もっとリアルな訓練をやらない?リアルな危険は身をもって体験しなきゃ!」
「きゃー」
声にならない悲鳴をあげ、顔を覆い蹲る地を這うパラソル。ネゴシエーターに交代スル。
「ねぇ少佐。コレも模擬訓練なのょね?コレも訓練ナンでしょ?」
「部下の恐怖を味あわせてやるの、コイツにね」
「なら目的は果たしたわ。もう充分でしょ?解放して。その自爆ベストはニセモノょね?訓練の仕上げは私に任せて」
「部下の名誉は汚したくない。こんなウジ虫野郎を殺してね」
クリズは、ウスマCEOを解放して、リモコンを手にしたママ投降スル。
ムーンライトセレナーダーがムダの無い動きでウスマCEOに歩み寄る。
「大丈夫です。コチラへ」
「脱がせて!この自爆ベストを早く脱がせて!一刻も早く!」
「そうょ。そうやって恐怖を感じるが良いわ!」
ムーンライトセレナーダーがウスマCEOの胸で点滅スル起爆装置に手を伸ばす。
心臓の鼓動のように明滅を繰り返す装置を鷲掴みにして、力任せに引きちぎる。
その瞬間、悲鳴を上げ失禁するウスマ。
構えていた武器を一斉に下す特殊部隊。
「ムーンライトセレナーダー、さすがね。良く見抜いたわね、コレがタダの訓練だったって」
「ねぇクリズ。コレ、やった意味があったの?」
「あったわ。私の警告が秋葉原に伝わったのなら満足ょ」
第4章 舞い降りる花嫁
アカネの挙式当日。
屋上のヘリポート。
梅雨時だし多分雨、少なくとも陰気な曇天と踏んでたら…抜けるような青空だw
盛装の客の合間を鷹揚に挨拶して回るアカネパパ…苦手ナンだw多分向こうも←
「ミユリさん、僕のネクタイが…」
「イケてます。OK!ヘリポートのお花、どうでしょうか?」
「最高だね。でも、鉢植でも十分じゃ…」
花嫁は、ジャドーから無理ヤリ借りたUH60軍用ヘリで屋上ヘリポートに舞い降りる。
コレでBGMがワルキューレの騎行なら最高ナンだがな、などと勝手に妄想してみる←
「すごく綺麗だ。見事だ。良い結婚式になるね!」
「そぉ?ミユリさんとの参考にしてね。テリィ様、感謝してるわ」
「テリィたんと呼んでくれ。僕は、もう君のTOじゃナイ。今日から僕を様で呼べるのはミユリさんだけさ」
「そうね。さあクルッと一回り」
アカネは戯けてクルリと回ってみせる。
「素敵だ。新郎は?」
「式が始まるまで会えません。だから、見られる前に中に戻らなきゃ。テリィさ…テリィたんに先に花嫁姿を見せたかったの」
「おめでと、アカネ」
「後でまた」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
式は滞りなく行われ、コロナで人数は抑えていたが、大変和やかな披露宴が始まる。
ケータリングは Uper Eats ナンだけど、何とサービスで全員メイド服で御給仕スルw
「テリィ様。何をキョロってるのですか?」
「あ、ミユリさん。いや、メイドさんの御給仕で披露宴ナンて素敵だね!」
「ええ。昔から御主人様方が結婚式に出る目的は、新婦ご友人の物色と相場が決まっていますから。だから、今回はメイドの飽和攻撃で目眩しです」
そう逝いながら、探るような視線で僕を見上げるミユリさん。
昨日までムーンライトセレナーダーのコスプレだったンだが…
やっぱりミユリさんのメイド姿は最高だw
「ねぇ今回は、元カノの式ナンて、よくウケてくれたね。ミユリさんはホント心が広いな。ありがと」
「いいえ。実は、大変狭い了見でお受けしたのです。だって、元カノがいつまでも結婚もせズにブラブラされてるコトほど、厄介な話ってありませんから」
「あ、なるほど。そーゆーコトかw」
聞かなきゃ良かったトホホ←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
最後に…
お互い"大人なソシアルディスタンス"を心掛けてたハズが、結局アカネパパと御対面w
「新郎は医者ナンだ」
そう切り出しながら、アカネパパは余りウレしそうでもナイ。何かアルのかな?
一方、僕とパパが噂をしてるのに気づいて、指先で挨拶を寄越すイケメン新郎。
「キザな野郎だ」
「全くですね。キャプテンハーロックかょ…アカネさん、綺麗ですね」
「知ってる。ワシも見たからな…おや?あのケータリングのメイド、めちゃくちゃ美人だな。姉妹で来てるらしい。きっと妹もイカしてるぞ」
「でも、僕にはミユリさんと逝う"推し"が…」
「しっ。テリィたん、ホラ彼女だ」
「アレが?美人姉妹じゃないスか?もしや、叶…」
「なるほど。アカネより巨乳だな」
「コレは…少し考える余地がありますね」
「カワイイなぁ」
「先ず合コンから誘ってみましょう」
おしまい
今回は、海外ドラマでよくテーマとなる"テロ訓練で儲ける民間軍事会社"を軸に、アフリカで怨恨を生むCEO、CEOに裏切られた傭兵達、仮想敵業を営む元レンジャーに主人公の元カノ、元カノの恋敵?などが登場しました。
さらに、主人公の元カノの結婚、元カノとヒロインの確執、元カノとその恋敵の三角関係、元カノ父と主人公の男同士の友情などのサイドストーリーも伏線的に張ってみました。
海外ドラマで舞台となるニューヨークの街並みを、東京オリンピック直前の秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。