成人の義
突発的に始めたので更新が不定期になったりしますが、お付き合いいただけると嬉しいです。
無数に存在する大陸の内、ウラグアナ大陸は最も広い面積を持つ。
そんな大陸の南端、ミリの村という田舎で少年は産まれた――
世界には法則――というものがある…その多くは未だに解明はされていないとされているが、
確かなそれを一つ挙げろと言われれば、皆口を揃えてこう言うだろう――
遥か彼方に住まう神々から与えられる――成人の儀式で授けられる『神託』という存在があると。
この国…ムフォード王国での成人年齢は15とされている。
多くの魔物が蔓延っていたり、ダンジョンが存在するせいか死人の数も多く…
成人年齢を引き下げて子孫を繁栄させなければ、結果的に国民が衰退してしまうからだ。
それ見た慈悲深い神の御力によって、数百年前から神託が授けられるようになった。
神託を授かるとは、神がその者に最適のスキルを与えることである。
その為、成人を控えた子供たちは、例えどんなに辺境の村からでも召集される。
表向きの理由としては、どんな境遇の者にも平等にスキルを与える神に習っているらしい。
だがその裏側で、他国への抑止力となる者や自国の脅威となる者の把握が目的だろう。
今年成人を迎える僕の住む村は、大陸の最南端なので王都まで馬車で片道3日かかる。
そのせいか王都から来た迎えの馬車の御者は気だるそうに村長と話をしていた。
ミリの村からは僕ともう一人、合わせて二人の子供が成人を迎えるようだ。
それにしては荷台の空きスペースが多く、聞けば4日掛けて周辺の村を回るらしかった。
食料や夜営道具はもう一台の馬車で運んでいて馬車を囲むように王都の騎士団が数名護衛をしている。
何も問題が起きることもなく、4日後には僕を含めて20人に増えていた子供たちも教会に案内された。
王都は10メートルはある城壁に囲まれていて、入り口門は声をあげるほどに大きい。
町に入れば大通りの両端に建物が並んでおり、村しか知らない僕にはどれもが輝いて見えていた。
「ではここに並んでおけ…」
教会の前まで辿り着くと、子供は列をつくって整列させられた。
その後は10人程だろうか、纏めて教会内部に呼び出されては纏まって出てくる。
僕も同じようにして教会に案内され、それぞれ指示された横長の椅子に座らされた。
「女神ウェヌスは我々人類を…」
すると神官と思われる装いの男が聖書片手に何やら話を始めた。
周りを見渡せば真剣に聞き入っている子供もいれば眠そうな子供もいる。
村長の長話よりも長くて難しいことを朗読する神官は、
数分後に聖書を閉じて僕たちの顔を一瞥した。
「これより、第2項…神託の祈りに移る」
神官がそう口にすると、僕らに手を組んで祈るように指示を出した…
神から授けられる力への感謝の意識とこれから人生への決意を思い浮かべろと。
「俺、身体強化かぁ」
一人の子供がそう漏らした声が聞こえた。
神託を授かった子供から、鑑定用紙というものを渡されるのだ。
そこには自分がどんなスキルを持っているのかが記され、初めてスキルを把握できる。
僕も用紙を手渡され、数秒後そこには以下のように記されていた。
<強化>
俗に言う身体強化というスキルである…その名の通り身体能力を強化することで、
通常よりも強い力を発揮するスキル。
先ほど一人の子供がいっていたのも同じスキルだろう…身体強化はかなり知名度が高く、言ってしまえば一般的なスキルに分類されている。
その多くは騎士や冒険者になる者が多いいと聞く。
「な、これは珍しいですぞ!」
神官が声色を変え、誰が見ても分かるくらいに目の色を変えると、一人の少女の肩を掴んだ。
少女は銀色の髪を持ち、鋭い視線で神官を睨むと、肩にのせられた手を弾いた。
「女性にあまり気安くさわらない方が良いですよ」
凛とした態度と姿勢に気圧されたのか、汗を流して手を離した神官は続けて言った。
「これは失礼…過去に一度だけ見られたスキル…<剣姫>を目にして興奮してしまいました」
<剣姫>がどんなスキルなのかは知らないが、神官の驚き様からして物凄く珍しいのだろう。
それほどのスキルがあれば職に困ることなんて無いのだろう…正直羨ましく思ってしまう。
だが、僕のスキルに不満がある訳じゃない…僕が目指す職業である冒険者は、<強化>というスキルが最適だったのだ。
「これを以て、成人の義を終了する」
全員のスキルを把握した神官がそう告げると、僕たちは再び馬車に乗せられ、行きとは真逆の順路で進み出した。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
少なくとも週一ペースで更新したいなと考えています。
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