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1間奏-音楽隊

 国王に招かれた二人の人物。


 男性は金髪を上にカールさせ、上にはベストと金色の刺繍が施されたジュストコール、下にはキュロットとタイツを身に纏い、いかにも身分の高さが伝わる。


 一方女性は金髪縦ロールで、ドレスを着ており、コルセットの割に胸は残念ながら殆ど強調されていないが、ウエストから腰にかけての美しいラインが魅せる抜群のスタイルは、恐らくこの世のどの女性にも劣らないだろう。


 男は国王に一礼すると、チラリと奏太達に視線を送った。


「陛下、ご機嫌麗しゅうございます。ところで、こちらがこの度召喚された者達でございますか。」


「うむ。こちらの律動殿をそなたらの音楽隊に推薦しようと思っておる。

 まことに優れた才能を持つ音楽家ゆえ、必ずや活躍が期待出来る。」


「青井 律動と申します。未熟者ではありますが、精進して必ずや映えある音楽隊の一員としてお役に立ってみせます。」



 律動は謙虚な言葉を選びつつも、国王に褒められ少し得意気な顔で自己紹介した。


「私はローラント・マルクル、王国第一音楽隊隊長だ。貴殿の入隊を歓迎しよう。

 それで、他の者達はどうなさるのですか?」


 ローラントは横目で3人を見る。


 こいつが国王直属の音楽隊隊長か。いかにもプライドが高そうな男だ。


「こちらの3名は訳あって冒険者となる事になった。」


「なるほど。どおりでこの者らには、音楽家に相応しい品を感じぬと思いました。

 ただ一人を除いては……。」


 ローラントは奏太と金重を軽蔑の目で見て罵った後、響子にいやらしい視線を送った。


「えっと、あの……。」


 響子は戸惑いながらおどおどと下を向く。


「僭越ながら、以前私が申し上げました通り、やはり召喚などヴィシュガルド王国には不要だったのではありませんか?

 このような者達を頼らずとも、王国には我々王国第一音楽隊を筆頭に、素晴らしい音楽隊がおります。」


 いきなり現れて、俺達を馬鹿にするだけでなく、響子さんをジロジロ見やがって。


 奏太はローラントを睨み付け、喧嘩を買ってやろうと口を開くとーー


「よさぬか。彼らはミューサ神によって選ばれた才ある者達だ。

 ただ我らの意向と違えたというだけで彼らを見下げるとは、そなた、よもやミューサ神を()()()()()()()()()()()()()()?」


 それまで一貫して冷静だった国王が、突然異様な雰囲気を発し、ローランドに鋭い視線を送った。


「し、失礼致しました。失言をお許しください陛下。

 そ、それでは律動君、第一音楽隊の音楽堂を案内しよう。」


 ローラントは国王の厳しい言葉と視線に狼狽えながら、そそくさと場を去ろうとする。

 すると、何故か隣に立つ金髪娘は後に続こうとせず、俺達の方をジッと見つめる。


「お父様、少しよろしいでしょうか。」


 金髪娘がおもむろに国王へ進言し、周囲は何事かと一斉に目を向けた。


「どうした、アイバニーゼよ。」


 国王が金髪娘に問いかけた。


「先程こちらから漏れる2つの楽器の音を、外で聴いておりました。どちらとも素晴らしい音色でした。

 ですが、こちらには4名の召喚者の方がいらっしゃいます。

 もし2名の方がまだ楽器を演奏されていないのであれば、そちらを是非ともお聞かせ願いたいのですが。」


 本日二度目の、女性による意外な申し出に、周囲はどよめく。


「アイバニーゼ様、この者達はどうやら冒険者になるようですから、わざわざ演奏を聴く必要はないのではないですか?」


 ローラントがアイバニーゼを制止する。


「ですが、ミューサ神様が才能を認められた方々です。ですから私はこの方々にどのような音楽の才能があるのか、是非とも拝見したく思います。」


 俺の演奏を聞きたいだなんて、流石美人は他とは違うぜ。

 まあちょっと幼い見た目だし、響子さんの美しさには勝てないけど。


「おお可愛い我が娘よー! そなたはなんと聡明な見識か!

 よいぞ! よいぞ! そなたの申す通り、今すぐ他の二人にも腕前を披露させるゆえ、そなたも余の元に来て一緒に拝見しようぞ!」


 突然国王がさっきまでの冷静な喋り口調から一転、異常なまでのハイテンションで娘に話し始めた。


 なんだこのおっさん!?娘相手にキャラ変わり過ぎだろ!


 奏太が国王の突然の変貌に狼狽えているとーー


「では奏太殿、金重殿、そなたらの楽器の腕前を披露してもらおう。」


 また冷静な口調で俺達に演奏を要求した。

 全くついていけない。いつもこんな感じなのか?


 そう思って周りを見渡すと、「また始まってしまった」という顔で誰もがため息をついている。

 どうやら国王の子煩悩さはこの国において周知の事実らしい。

 それはともかく、ギターを弾けるのはまたとないチャンスだ。

 奏太は意気込んで、楽器を魔法で呼び出したーー


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